新コーナー「街の先輩に聞く!」。この街ってどんな街? その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の暮らしぶりを「街の先輩」に聞いてみました! 第2段は「中目黒」です。


駅前には大きなビジネスビル。少し山手に上がれば瀟洒な高級住宅街や大衆居酒屋もあれば、最先端のセレクトショップも立ち並ぶ、中目黒。川沿いがピンクに染まる桜の季節はもちろん、最近では休日になると、この街に引き寄せられるように、多くの若者が集まってきます。

そんな中目黒の路地裏で、小さなコーヒーショップを営む若者がいます。世界中を巡り、この街にたどり着いたオーナーに、外国人と古きよき日本が交差するこの街の魅力を聞きました。

■裏路地の突き当たりにある「隠れ家」

路地に面したONIBUS COFFEE 中目黒店。カウンター越しに、焙煎機が見える。

駅前から5分、裏路地の突き当りに、「ONIBUS COFFEE」はあります。長屋の一角にあった飲食店を、オーナーの坂尾篤史さんが今年1月にコーヒーショップに改装しました。

駅の向こう側にはビルも建っていますが、中目黒の街自体はあまり開発されていないので、古い家が結構残っているんです。東京ならではの狭い店舗ですが、自分たちが動きやすいように少しずつ手を加えてきました。

広いテラス席には静かな時間が流れ、オーナー自らが淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、都会の喧騒を忘れ、隠れ家にいるような気分になります。

グリーンが溢れるテラス席。知り合いから株分けしてもらった植物をスタッフ全員で育てている。

カウンター裏には焙煎機が。こじんまりとした店内を動きやすいようにアレンジ。

■「日本でもコーヒー文化を作りたい」

なぜ坂尾さんは、中目黒でコーヒーショップを開いたのでしょう。

20代の頃オーストラリアに滞在していました。その時に、街中のいたるところにカフェがあって、毎朝カフェでコーヒーを飲むのが当たり前という風景に出会ったんです。顔見知りの店員とお客さんとが、何気ない話をしながら、一杯のコーヒーを飲み、そこから1日が始まる。そこに自然なコミュニティが生まれるコーヒー文化がいいなと思ったんです。

オーナーの坂尾篤史さん。店舗が増えても現場に出て自分でドリップすることを大切に。

しかし、日本に帰国した坂尾さんは、そんな「コーヒー文化」が日本にはないことに気付き、自ら店を開きました。

まず1号店をオープンしたのは、2012年1月のこと。ONIBUS COFFEEの始まりは奥沢でした。そこから、道玄坂のコーヒースタンド「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」なども手掛け、今年の1月にオープンしたのが、中目黒店です。

でも、お店をやってみて思うのは、理想の「コーヒー文化」はまだまだ日本には馴染みが薄いなということです。皆さん忙しいんでしょうね(笑)

From Seed to Cup をコンセプトに、透明性のあるコーヒーを届ける。坂尾さん自身、ルアンダやグアテマラなどの栽培農家を訪ねている。カップは近隣にアトリエを持つ作家イイホシユミコさんが手がけたオリジナルの作品。人とのつながりを大切に、ひとつひとつ活動している。

■お客さんの4割が外国人、午後は日本人

中目黒にある、坂尾さんの店を訪れる客の4割は外国人だと言います。「特に午前中はほとんどが海外の方です」と坂尾さん。そこに、中目黒という街の特徴があるそうです。

日本の方は、だいたい皆さん午後3時〜5時に来るんです。逆に夕方は海外の方はコーヒーを飲まないので、完全に棲み分けしてますね。

カウンター越しに、お客さんに積極的に話しかけるというスタッフ。小さな会話から出会いが。 

インタビューの途中、ひとりの外国人男性が訪れました。ニューヨークから出張でやってきたセバスチアノさん。迷子になって、辿り着いたと言います。

■ブルックリンのような雰囲気

セバスチアノさんは、渋谷の方に向かって歩いている途中、美味しそうなコーヒーショップを発見し、寄り道したそう。「雰囲気がちょっとブルックリンっぽいですね」と微笑みます。
                        
「ニューヨークにオススメのコーヒー屋さんはありますか」と坂尾さんが尋ね、ふとした情報交換で、盛り上がります。

■「東京を楽しむコツは、電車に乗らないことじゃないかな」

フフフ。さっきの方みたいに、迷って偶然訪れたという人が多いんですよ。海外の方が多いですが。

それは、裏路地を歩くと発見があるということでしょうか。

そうですね。東京を楽しむコツってやっぱり電車にあんまり乗らないことじゃないかな。

坂尾さんは、自転車に乗って街を移動するという。スタッフにも自転車通勤手当を出しているそうです。

僕自身は、下馬に住んでいて、中目黒の店まで毎朝緑道沿いを自転車で通っています。この辺りは、意外と緑が多いのが魅力です。

スタッフには「自転車通勤手当」を支給。身の丈にあったライフスタイルを何より大切に。

■「豊かな暮らしを考えて欲しい」

スタッフには、食文化や生活含めて、どういうものが豊かな暮らしかを考えて欲しいと思っています。店にコンポストを置いてゴミを肥料にしたり、グリーンを人から株分けして一緒に育てたり。

スタッフみんなで世話をしているコンポスト。ゴミが肥料に変わる。

お客さんと話したいからと付け足した小窓。ここにも株分けされた植物がたくさん。

また、お店では、コーヒー以外にも、アロマや石鹸作り、靴磨きなどのワークショップを開催しているそう。

丁寧なハンドメイドを行っている知り合いにお願いして開催しています。コーヒー以外の切り口から興味を持ってくださる人との接点になればというのと、スタッフにもいろんなことに興味を持つきっかけになったらなと思って。

■疲れた東京の中で、「ゆるっ」としてもらえる店に

半年この店をやっていて、中目黒に住んでいる人も、東京の消費社会の中で疲れてるのかな、 という気はしています。だからこそ、こういう店で、もう少しラフにゆるっとしてもらえたら、と思ってるんです。

ビジネス色の強い中目黒駅の東側と対照的に、商店街のある西側は、古着屋や小道具屋など、 個性的で面白い店が多いと、坂尾さんは語ります。

あんまりビジネスビジネスしてなくて、ゆるゆるとやってるところがいい(笑)。よく行くのは、ビンテージ古着の『ジャンティーク』とか。 店員さんとも仲がいいです。

@noripippi0627が投稿した写真 -

▲ビンテージ古着の『ジャンティーク』

■「僕は東京がすごく好きなんです。特に西側のこのエリア」

飲食店では、クラフトビールと餃子を食べさせる『OHKA THE BEST DAYS』とか面白いですね。あとは、ちょっと中目黒から離れちゃいますけど。並木橋の『Ata』とか、神泉の『アルル』 とかは、よく行きます。おしゃれだし、食材にもこだわってて、オーナーさんも近いマインドの人 が多いので刺激されますね。

YOKさん(@sundaysbest_yok)が投稿した写真 -

▲「OHKA THE BEST DAYS」の様子。

@yuyanaraが投稿した写真 -

▲「アルル」の様子。

おすすめのお店をお聞きすると、坂尾さんの表情が輝くのがわかります。

今後、中目黒含め、東京がどんな風になっていけばいいと考えているのでしょうか。

僕は東京がすごく好きなんです。特に、西側のこのエリアは刺激になる店も多いし、すごく居心地がいい。

中目黒はどんどん変わっていくと思います。昔から住んでいる人は、「チェーン店も増えて、良くなくなっていく」と嘆く人も多いけど、だからこそ自分たちが暮らす町が、もっといい風に変わっていくような、きっかけや気づきが得られる店でありたいと思いますね。

<ONIBUS COFFEE 中目黒店>

「日常に溶け込んだ一杯」をテーマに、豆の栽培や焙煎からこだわったスペシャリティコーヒーを 丁寧にドリップして提供する。中目黒店は駅東口から徒歩2分。不定期でクラフト系のワーク ショップや、自然野菜やクラフトビールを集めたマルシェなども開催。

ウェブサイト:http://www.onibuscoffee.com/
住所:東京都目黒区上目黒2-14-1
電話:03-6412-8683
営業時間:9:00-18:00 (不定休) 

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