お久しぶりです、戸建てさん。

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リノベーションマンションのご紹介を続けているカウカモですが、このたび期間限定で戸建ての特集をさせていただくことになりました。中古マンションと比べると、都内の中古戸建ての流通量は約1/5。街を歩けば戸建てはたくさん見かけるけれど、それだけ二次流通がないのには一体どういった理由があるのでしょうか? 売主さまにお話を伺いながら、じっくりと向き合ってみましょう。

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この坂道を下れば、「林試の森公園」まで徒歩3分(210m)。本日ご紹介する物件は、丘の上の静かな住宅地で、わたしたちをじっと待っていました。

売主さま

自然豊かな環境に建つ、建物面積143.06㎡の戸建てです。最寄りは東急目黒線の「不動前」駅ですが、「目黒」駅も徒歩圏内で、バスを使えば「目黒」「渋谷」「五反田」などへも便利にアクセスできますよ。

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道路から少し奥まった場所に建つ目的地。写っていませんが、アプローチには車1台分の駐車スペースと、ゆるやかなスロープがありました。三角屋根の下、玄関へと向かいましょう。

売主さま

こちらの住宅は、納谷建築設計事務所(納谷学氏+納谷新氏+島田明生子氏)に設計を依頼し、リノベーション工事を実施しました。デザインだけでなく、安心して長くお住まいいただけるよう、耐久性や耐震性などに関しても第三者検査機関を入れて徹底的に向き合い、更にメンテナンスをしながら長く使える素材を集めて完成させました。

お邪魔します

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重たいガラス戸を開けると、まっすぐに伸びるモルタル土間。右手には高さ調整が可能なオープン棚がずらりと並び、左手には木の柱が4本均等に並んでいます。4人家族であれば、おひとりにつき一本ずつ割り振って、鞄やコート掛けとして使うと楽しそうです。

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玄関の突き当たりには、弧を描く壁面がひとつ。ドアを開けると、中は手洗い付きのトイレ。写っていませんが、スリット型の窓があり、明り採りと換気の役割を果たしてくれます。

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トイレの前から左を向くと、2階へと続く木の階段。まるで “前庭” のように広がる約15帖の土間空間、どのように使いましょう?

売主さま

こちらの住宅では、環境を紐解き居心地のよい空間をいくつか用意し、あえて各空間に明確な役割は与えていません。“柔軟な箱” として、我々の方では8-9割を完成させ、残りの2-1割はお住まいになる方の手で埋めていっていただきたいと思っています。将来起こり得る家族構成の変化にも対応できるよう、可変性を持たせ、ニュートラルな間取りとなるよう心がけました。

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階段前から振り返ると、左から水まわり、約7.1帖の洋室、約4.7帖の洋室がふたつ。順番に見ていきましょう。

自宅で半露天風呂

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手前の洗面脱衣室は、洗濯機を置いてもなお余りある広さ。その先にはガラス張りの浴室が続きます。木製ルーバーから陽の光が落ち、日中の入浴がとにかく気持ちよさそう。

約8.1帖のサンルーム

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浴室からそのまま奥へ進むと、そこには長い長いサンルームがありました。こちらに架かっている木製ルーバーこそが、こちらの物件最大のポイントである「葦簀(よしず)」をヒントにして造作されたもの。ルーバーの外には窓があり、リモコンで開閉できるようになっています。各個室に光が届くのはもちろん、家全体に風も通してくれますよ。

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ガラス張りの浴室には抵抗があるお客さまもいらっしゃるかもしれません。

売主さま

そうですよね。例えばガラスにシートを貼って中が見えないようにすることもできますし、カーテンで目隠しする方法もあります。カーテンを付ける場合、どこで仕切るかも一緒に考えたいですね。例えば洗面室・浴室・サンルームをひとつの空間として結び、サンルームの一部にカーテンを下げれば、ここのスペースで外気浴を楽しんでいただくこともできますよ。

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確かに、ここにデッキチェアを置いたらとっても気持ちがよさそうです!

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見上げると、ルーバーは2階部分まで届いています。

売主さま

植物をたくさん置いていただいたり、洗濯物をずらっと並べたり、ここの使い方もお住まいになる方次第です。

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日中にゴロゴロできるデイベッドを置くのも快適そう。

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約7.1帖の洋室は、収納もないプレーンな空間。お隣のふたつの洋室も同様です。こちらに関しても、お住まいになる方ご自身でカスタムしていただきたい部分。

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左・仲よく並んだ約4.7帖の洋室ふたつ。/右・個室の前から振り返ると、土間の一角にはオープン棚とハンガーラックがありました。ご家族みんなのお洋服をここに集めてもいいですし、共用の工具などを吊ってもかっこよさそう。ちょっとガレージっぽい雰囲気があるのもまた素敵です。

階段を上って2階まで

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南一面に開口があり、とても明るい2階部分。柱や梁があらわになり、より “戸建てらしさ” を感じる大空間になっています。広さは約35.5帖。

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床がルーバーになっているの、ちょっと怖いです!

売主さま

建築家の納谷さんからいただいた提案で、暗くなりがちな1階の北側にも光が落ちるようにとルーバー床にしましたが、上にカーペットを敷いていただくなど、工夫次第で気にならなくなると思いますよ。

大きなキッチン

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キッチンだけで約4帖の広さ。造り付けの棚は大容量なので、お鍋やお皿などたくさん収納できそうです。これだけ充実していると、ホームパーティーはもちろん、自宅でお料理教室なんかも開くことができそう。

売主さま

キッチン奥のスペースはパントリーとしてお使いいただくのもいいかもしれません。

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わたしだったら梁にハンモックをぶら下げて、読書スペースにしたいです!

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キッチンに立って、正面を見た時の景色がこちら。「林試の森」の大きな木々が顔を覗かせています。

売主さま

“戸建てって寒そう” というイメージを抱かれる方も多いと思いますが、こちらの窓は断熱性を向上させるため、複層ガラスを採用しています。また、床・壁・天井を囲うように断熱材を入れました。車の燃費を気にするように家の燃費も気になると思うので、“家の燃費性能” を表示する証明書「エネルギーパス」を発行し、エネルギー消費量を見える化しています。

使い続けたくなる素材たち

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キッチンの腰壁と冷蔵庫置き場の目隠し壁にはラワン材を採用。昔からある柱や梁の表情、新設されたフローリングの表情と相まって、全体にナチュラルな雰囲気です。

売主さま

長く愛着を持って暮らしていただきたいので、素材に関してはメンテナンスがしやすく、今後も廃盤になる可能性が低いものを選んでいます。お財布に例えると、ピカピカのものより、革のように育てる素材がお好きな方に選んでいただきたい物件です。

夜は大人な表情

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夕暮れになると暖色が灯り、何ともしっとりとした空間に。ジャズを流し、毛布に包まって、キャンドルの炎をただただぼーっと眺める……そんな贅沢な時を過ごしたくなります。

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照明を点けると浮かび上がる木製ルーバー。さすが建築家の方が設計を手掛けた物件。美しいです。

家族みんながオンとオフを分けられそうな 魅力的な周辺環境

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こちらが物件から徒歩3分(210m)の距離にある「都立林試の森公園」。明治33年(1900年)6月に当時の農商務省林野整理局が「目黒試験苗圃」としてスタートしたのが始まりで、その後「林業試験場」に名称を変更、林野庁の付属となり昭和53年まで営々として使用されてきました。東西に700m、南北に250mと細長く、外周の園路を一周すると45分程でまわれるそう。

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左上・「目黒不動尊瀧泉寺(通称:目黒不動尊)」は、「不動前」駅の由来にもなっているお寺。瞑想の会やヨーガの会、不動尊縁日など、境内では定期的にイベントが行われています(270m 徒歩4分)。/右上・大きな滑り台がある「不動公園」(300m徒歩4分)。/左下・目黒駅からバスに載って帰る際は、元競馬場前バス停で下車し「東急ストア 清水台店」でお買い物すると便利(450m 徒歩6分)。/右下・「Point No.38」はオリジナルランプとアンティーク&ヴィンテージのショップ(400m 徒歩5分)。休日は目黒通り沿いのインテリアストリートをそぞろ歩くだけで、なんだか満たされた気持ちになれそうですね。

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カウカモ編集部より

いつものカウカモとは違う「戸建て物件」のご紹介、いかがでしたか? 今回売主さまとお話しをしている中で教えていただいたのは、都内で持ち家の戸建ては155万戸あるのに対し、マンションは133万戸。それにもかかわらず、二次流通される戸建ての数は、マンションのわずか1/5程度なのだそう。それはなぜなのでしょうか?


筆者も仲介のお仕事をさせていただいていた経験から感じたのですが、戸建てってマンションに比べると、“開けてみないと分からない” 部分がとても多いのが特徴です。購入前に床や壁を壊す訳にいかず、ある意味致命的な瑕疵(かし)が潜んでいるかもしれない状態で、購入の意思を固めなければなりません。そういった意味で、戸建てのリノベーションはマンションに比べ、ハードルがとても高いのです。

今回なぜこちらの住宅をご紹介させていただくことになったかというと、売主さまがそうした “ブラックボックス” に入りがちな情報をすべて開示し、しっかりと安心して長くお住まいいただける家づくりをされていたから。専門的なお話なので記事の中では割愛していますが、戸建てだと特に重要な地盤・耐震性・断熱性など、様々な項目に第三者検査機関を入れて徹底的に向き合い、現行の基準を上回る性能をもたせた上で、デザインにもこだわっていらっしゃいます。

普段マンションを見る機会が多いからこそ、今回戸建ての良し悪しを改めて確認することができました。マンションのように修繕を管理会社で計画して実施してくれることはありません。引渡し後のメンテナンスは、基本的に家主の方にすべて行っていただくことになります(ただしこちらの住宅に関しては、様々な保証やメンテナンススケジュール案が用意されています)。しかし、管理を一手に引き受けることと引き換えに、やはり空間の伸びやかさ、プライバシー性の高さ、“自分の家だ” という愛着については、戸建ての方が上回る部分が多いのではないかと感じました。

プレーンな箱だからこそ、自分たちの色に染めていける。近くに広大な森のある家で、どんな暮らしを紡いでいこうか……。イメージが膨らんだ方は、まず現地を訪れ、この空間美を体感してみてください。

writer / editor:伊勢谷 亜耶子(一部写真提供:吉田誠)