マンション売却時は火災保険を解約!失敗しない返金方法とタイミング
お金の話
住宅ローンを利用してマンションを購入したときは、住宅ローンを組んだ金融機関から火災保険の加入を促され、多くの場合は加入することになります。
それでは、その後にマンションを売却すると、現在加入中の火災保険はどうなるのでしょうか。
この記事では、火災保険料の解約時期や手続き方法・流れなど、マンション売却時の火災保険の手続きについて解説します。
この記事は、不動産売買&リノベのサービス「cowcamo(カウカモ)」が提供しています。カウカモでは、中古マンションやリノベーションマンションの売却・購入をお手伝いしています。
マンションを売却したら火災保険の解約手続きをしよう
マンションを売却するときには、その売却金をローンの一括返済に充てることが多いため、一括返済とともに住宅ローンの借り入れが解消されて住宅ローン保証料が戻ってきます。その場合の返還手続きは、銀行が行ってくれます。
しかし、火災保険の解約手続きに関してはご自身で対応する必要があります。放っておくと、かける必要がない物件に使われることがない火災保険だけが残り続けることになります。
それは、保険加入者が解約の申告をしてこない限りは、加入者がマンションを売却したことを保険会社は知る手段がないからです。
火災保険の解約手続きといっても、必要書類を記入して郵送するだけです。マンションを売却する際には、必ずご自身で適切な時期に、忘れずに解約手続きをしておきましょう。
火災保険を次の所有者へ譲渡する場合は要注意
マンションに掛けている火災保険は、書類で手続きさえすれば次の買主へ譲渡することはできます。また本人からの譲渡や解約の手続きがなされない限りは、マンション所有者の名義が変わって火災保険の効力が失われても、以前の保険はそのマンションのその部屋にそのまま残り続けます。
火災保険を譲渡する際には、マンションの所有権が次の買主へ書き換わる前に手続きを完了させないといけません。
適切な日に保険加入者を入れ替えるために、譲渡の手続きは保険会社へ確認しながら確実に完了させたいところです。
しかし、火災保険の譲渡はおすすめしません。その理由は次の3点です。
保険会社によっては認められていない場合がある
損害保険会社によっては火災保険の譲渡を認めていない場合があります。認められていなければそもそも火災保険の譲渡はできません。
買主とのやり取りが煩雑になる
火災保険の権利の譲渡は、当然ながら現在の保険加入者が手続きを行います。
手続き自体は書類での申請で済みますが、その譲渡手続きに関して保険会社に聞いたりネットで調べるのはもちろん、買主に電話して聞きとった新しい加入者情報もこちらから保険会社へ申請しなければならず、買主とのやり取りが必要になってきます。
また、火災保険の譲渡は解約ではありませんので、保険会社からの未経過保険料の返金はありません。そのため、新しい買主と火災保険の費用を精算するには、マンションの引き渡し日を境に未経過保険料を自分で計算して按分し、現金で精算して領収書を発行する手続きが必要になります。
マンション買い替えの忙しい時期に煩雑な仕事が増えることになりますし、この作業は不動産の仲介業務の範囲外のため、不動産会社に頼るわけにもいきません。
適正な日に確実に譲渡されないといけない
民法上も通例上も、不動産の所有権を持つ人がその不動産に起こるすべての責任を負うことになっています。
引き渡し日(所有権移転の日)よりもずっと前の日に、保険の譲渡手続きが完了してしまっていた場合、もしも引き渡し日の直前にマンション内で火事が起こったとしたらどうなるでしょうか。
売買契約に基づいて、完全な状態で買主へマンションの引き渡しを遂行するために、マンション内の補修の全責任を売主は負っています。本来なら補修費用は火災保険から出るはずですが、すでに保険の契約者が買主へ変わっていれば、その保険は売主のためには使えません。
以上のようなリスクを抱えてまで、火災保険を譲渡するのはおすすめしません。マンション売却時には火災保険は売主側で解約して、買主には自らで火災保険に加入いただくようにしましょう。
火災保険解約時の返金額は申込み時の契約で決まっている
火災保険は長期で契約すると保険料が割引されるので、どうせ長期で入るものだからと、ほとんどの場合が複数年で加入しています。
もしも一括支払いではなく月々の支払いにしているなら、前払いでまとめて預けている保険料はありませんので、解約をしても戻ってくるお金はありません。
戻ってくる保険料は解約の通知をしてから計算されるのではなく、火災保険の加入時に既に契約内容として決められています。
したがって、戻ってくるお金の概算金額は、解約時に保険会社へ問い合わせなくても残った保険期間から表を見ればすぐに分かるようになっています。
下の表は火災保険の未経過料率係数の例です。
保有期間 | 2年契約 | 3年契約 | |||
---|---|---|---|---|---|
経過年数 | 0年 | 1年 | 0年 | 1年 | 2年 |
1ヵ月まで | 87% | 43% | ... | ... | ... |
2ヶ月まで | 81 | 39 | ... | ... | ... |
3ヵ月まで | 76 | 35 | ... | ... | ... |
4ヵ月まで | 71 | 31 | ... | ... | ... |
5ヵ月まで | 65 | 27 | ... | ... | ... |
6ヵ月まで | 63 | 23 | ... | ... | ... |
7ヵ月まで | 60 | 20 | ... | ... | ... |
8ヵ月まで | 57 | 16 | ... | ... | ... |
9ヵ月まで | 55 | 12 | ... | ... | ... |
10ヵ月まで | 52 | 8 | ... | ... | ... |
11ヵ月まで | 49 | 4 | ... | ... | ... |
12ヵ月まで | 47 | 0 | ... | ... | ... |
未経過料率係数とは、長期一括払の契約で保険の内容変更や解約により戻ってくる保険料を算出するときに払い込んだ一括保険料にかける係数のことです。経過月数に応じた返還割合を%で表記しています。
上記に例示した表の割合に基づいて、一括保険料が2年間で3万円だとすると、上記例で戻ってくる保険料は以下のようになります。
30,000円×52%=15,600円
このように、契約書を見れば簡単に概算の金額を知ることができます。
マンション売却時の火災保険解約における返金手続き
返金手続きはそれほど難しくはありません。
大切なのは、解約手続きの流れと解約時のリスクを知って、その上でベストなタイミングで解約手続きを進めることです。
火災保険解約手続きの流れ
まずは、加入者本人から保険会社へ、売却にともなう解約の意思を伝えます。
連絡方法はWeb・電話のいずれでも構いませんが、保険証券が手元にあって必要事項が分かる状態で連絡したほうがよいでしょう。
解約の意思が保険会社に伝わると、契約地(現宅)へ解約の書類が送られてきます。Web受付の場合でも、解約手続きは書面で行うのが一般的です。
火災保険の解約書類に必要事項を記入して、返送します。火災保険の解約請求書を保険会社が受理して解約手続きに入ります。解約請求書の記載に誤りがなければ、保険会社内部で返金手続きへと移行します。
火災保険解約申し込みから返金までに要する期間
保険会社に一旦送った解約請求書の記載事項に誤りがある場合には、連絡の上で返送されるか、Webから書式をダウンロードして、正しい記載内容の書類を改めて保険会社へ郵送します。
保険会社によりフローや期間は異なりますが、書類の誤りが解消されて保険会社が正式に受理してから 1週間程度で、指定口座に振り込まれます。受理してからの期間は、解約の意思表示を初めて行った日ではなく、誤りのない解約請求書を保険会社が受理してから の期間だという点にご注意下さい。
詳しくは、加入している保険会社に確認してみましょう。
マンション売却における火災保険のベストな解約タイミング
火災保険の存在意義は、なにかが起こった時の対処後に、その回復のために費やした大きなお金を調達するための手段に尽きます。
つまり、必要な間は保障が続き、万が一の場合にきちんとお金が支払われる状態に保険料を支払っているのです。
解約のタイミングによっては、そのような安心感を損なってしまう可能性がある点に注意が必要です。
所有権が完全に移転してから解約する
民法上の危険負担(きけんふたん)という考え方をご紹介します。
売主か買主かどちらかがそのリスクの責任(回復費用)を負担するのかという基本ルールのことで、引き渡す時期と引き渡す物の状態によって、責任を負う側と責任の大きさが決まっています。
マンションの売却などの不動産取引に関しては、買主へ物件を引き渡して名義が変わるまでは、なにかがあった際の責任は売主にあると規定されています。
仮に数分後に引き渡しを控えていても、引き渡しが完了していない状態で火災が起きれば、売主がそれを修復して物件を引き渡す義務を負います。こうすることで買主の権利を守り売買契約を安定して完遂させられるという考え方です。
所有権が完全に移転してから解約することで、負担を負うことを避けられます。
物件を引き渡した後に書類を郵送する
あらかじめ解約日を指定した解約手続きはできますが、万が一でも物件の引き渡し日や所有権移転の日がずれてしまった場合に、リアルタイムに火災保険の解約日の変更をすることはできません。
何かが起こるなんてまず無いだろうと油断して、マンション引渡し予定日に火災保険の解約を予約していたとしても、マンション引き渡し日が変更されて火災保険の効力とずれが生じた挙げ句に、もし何か保険を使わないといけないようなことが起こってしまったら、後悔してもしきれません。
必ず所有権が完全に移転したのを確認した後に書類を投函するなど、慎重に確実に行ってください。たとえ引渡し日より数日遅れて解約書類を投函して返戻金が少なくなったとしても、確実に悪影響が出ない状態で保険を解約できたという、安心には代えられません。
一方で、所有権が既に買主へ変わっているのに火災保険の解約をずっと忘れていた場合、マンションの所有権が変わった日へ遡った日を火災保険の解約日とすることはできません。解約日は保険会社へ解約の申し出をした日以降である必要があります。この点にも注意しましょう。
マンション売却時に火災保険について知っておきたい注意点
火災保険は、自身が申告をしないと保険会社はその変化に自動的には気づいてくれませんし、手続きは必ず契約者本人がしなければいけません。
加えて、火災保険金を目的にする質権(しちけん)という聞き慣れない権利のことも解説します。
火災保険の解約は自分で行う
保険の加入者が解約を申し出るまでは、一括払いしている保険料は経過期間とともに消化していきます。月払いの場合は毎月保険料を引き落としていって、やがて契約期間の満了とともに保険契約を終えます。
火災保険が自動的に解約されないのは、なにも保険料をたくさん受け取りたい保険会社の思惑などではなく、マンションの売却が済んでも保険会社はその事実を知るすべがないからです。
次の買主へ物件の所有権が移る前に、必ず一度は補償内の補修箇所がないか住戸内や身辺を自身で確認しておきましょう。そしてもしあれば保険会社へすぐに連絡して、処置を済ませておきましょう。
火災保険に質権が設定されている場合は金融機関に連絡する
住宅ローンを組んでマンションを購入する際に、多くの方が火災保険に加入しています。火災保険は住宅ローンを利用する銀行で、長期に設定して加入することが多いです。
保険期間を長期で一括支払いにしたほうが割引率が高くお得になったり、返済期間内にもし火災があっても、火災保険で保険金がおりていれば、銀行は融資資金の回収がしやすいという理由があります。
銀行は保険金を確実に銀行側で回収するために、この保険契約の保険金請求権を銀行へ差し出させて質権設定をしていることがあります。
返済や売却で住宅ローンを返し終わったら、必ず金融機関で質権消滅承認の書類と火災保険の保険証券を受け取って、保険会社へ質権の消滅を申請しておきましょう。
マンションの売却ではなく返済による住宅ローン完済での質権消滅手続きで、今後もその火災保険はそのまま残しておきたい場合には、特に手続きは必要ありません。質権を消滅させても火災保険は影響を受けずにそのまま残ります。
まとめ
火災保険を使う状況になってほしくはありませんが、火災保険は万が一のときには役に立つサービスです。
解約すべき日さえ間違わなければ手続きは自体は難しくありませんので、マンションを引渡して名義変更の完了を確認した後は、手続きを忘れず必ず終えるようにしましょう。
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