マンション売却での減価償却費の計算方法とは?知っておきたい基礎知識を解説

お金の話

所有するマンションの売却を現在検討している方や、将来的にマンションを売却する可能性がある方もいるでしょう。

マンションを売却して利益が出た場合は所得税の課税対象となるため、マンションを売却した翌年に確定申告をし、納税する必要があります。その確定申告の際にポイントとなるのが「減価償却費」です。

この記事では、減価償却の概要や、マンション売却時の減価償却費の計算方法など、減価償却に関する基礎知識を中心に解説します。

この記事は、不動産売買&リノベのサービス「cowcamo(カウカモ)」が提供しています。カウカモでは、中古マンションやリノベーションマンションの売却・購入をお手伝いしています。

減価償却とは費用を一定期間に配分する会計処理方法のこと

「減価償却」とは、年月の経過によって生じる「価値の減少」を金額に換算して計上する、会計処理上の仕組みのことです。減価償却の対象となるのは、不動産や自動車、パソコンなどの固定資産で、マンションも対象に含まれます。

固定資産の取得にかかった費用を一定期間に分けて「減価償却費」として計上すると、適切な事業経営につながります。

ただし、マンションの場合、建物部分は減価償却の対象となるものの、土地の価値は経年劣化しないという考えがあるため、土地は減価償却の対象となりません。

減価償却の計算は何に必要?

所有するマンションを売却して利益が出た場合、売却した翌年に確定申告をしなければなりません。具体的には、取得にかかった費用よりも高くマンションが売れたときに、その利益は「譲渡所得」となり、確定申告によって納税する義務が生じます。

譲渡所得を求める際の計算式は、以下のとおりです。

譲渡所得の求め方

譲渡所得=売却額-(取得費+譲渡費用)

マンションは、取得から売却までの間に価値が減少していると見なされ、取得費から減価償却費を差し引くため、ここで減価償却費の計算が必要となります。

なお、取得費の詳細については後半で解説します。

マンション売却時の減価償却費の計算方法 


マンションを売却した際に必要となる、減価償却費の計算方法を詳しく解説します。

減価償却費の計算に使う3つの項目

減価償却費の計算で使用するのは、以下の3つの項目です。

建物購入代金

建物購入代金とは、その名のとおり、建物を購入した際にかかった費用のことです。

ただし、土地は減価償却の対象とならないため、建物購入代金に土地の購入代金を含めないよう注意しましょう。

償却率

償却率とは、1年ごとに減少する価値の指標で、建物の「法定耐用年数」によって決まります。法定耐用年数とは、建物の構造や用途などに応じて法律で定められた「その建物を使用できる期間」のことで、実際の建物の寿命とはイコールではありません。

あくまでも減価償却の計算に用いる基準として、画一的に定められています。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の居住用マンションの場合、法定耐用年数は47年です(※1)。

(※1)参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」

経過年数(h4)

経過年数とは、建物を購入してから売却するまでの期間のことです。6か月以上の端数は繰り上げて1年と考え、6か月未満の端数は切り捨てます。

例えば、マンションを購入してから売却するまで「20年と7か月」が経過していた場合、経過年数としては「21年」です。

マンションの使用方法によって異なる計算方法

減価償却費の計算式は、自分や家族が居住用に使っていたマンションか、事務所や店舗などの事業用に使っていたマンションかによって異なります。以下、マンションの用途別に、計算内容を確認していきましょう。

居住用マンション

居住用マンションの減価償却費を求める計算式は、次のとおりです。

減価償却費の求め方

減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数

居住用マンションの耐用年数     は、事業用マンションの耐用年数     を1.5倍して考え、     償却率は国税庁が公表しています。

鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の居住用マンションの場合、通常の     耐用年数が47年であることから70年が耐用年数とわかります。そして、耐用年数が70年の建物について確認すると、     償却率が0.015     であると読み取れます(※2)。

(※2)参考:国税庁「減価償却資産の償却率表」

事業用マンション

事業用マンションの減価償却費は、いつマンションを取得したかによって、計算式が異なります。それぞれの計算式は、以下のとおりです。

2007年3月31日以前に取得

減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×業務に供された累計月数÷12

2007年4月1日以後に取得

減価償却費=建物購入代金×償却率×業務に供された累計月数÷12

2007年3月31日以前にマンションを取得した場合は「旧定額法」、2007年4月1日以後にマンションを取得した場合は「新定額法」に基づいて計算します。

減価償却費の計算方法を使った「取得費」の出し方

減価償却費が計算できれば、建物の「取得費」を求めることが可能です。取得費には、建物本体の購入代金だけでなく、各種手数料や税金なども含まれます。一方で、引越し費用や管理費などは取得費に含まれません。

以下、取得費に含まれるもの・含まれないものの例を紹介し、あわせて取得費の計算方法を解説します。

取得費に含まれるもの・含まれないもの

取得費に含まれるもの・含まれないものの代表例は、以下のとおりです。

取得費に含まれるもの
  • 建物本体の購入代金
  • 仲介手数料
  • 購入手数料
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 登記費用
  • 住宅ローンの利子
  • 設備費
  • 改良費など
取得費に含まれないもの
  • 引越し費用
  • 管理費
  • 修繕積立金など

取得費の計算方法

所得費は、以下の計算式で算出できます。

取得費の計算方法

取得費=土地購入代金+建物購入代金+購入諸費用-減価償却費

取得費を算出するためには、最初に「購入諸費用」を調べましょう。先に紹介した「取得費に含まれるもの」が、ここでの購入諸費用に該当するものです。次に、土地や建物の購入代金と購入諸費用の合計額を求めます。

関連記事:マンション売却時の取得費を計算する方法!スムーズに売却を進めるコツも紹介

最後に、土地や建物の購入代金と購入諸費用の合計額から減価償却費を差し引けば、取得費が確定します。

マンションの「建物購入代金」を調べる方法


減価償却費や取得費を計算するうえで必要となる「建物購入代金」は、マンションの購入時に取り交わした売買契約書で確認できます。売買契約書には、土地や建物の売買価格と消費税が記載されているはずです。

しかし、土地の売買価格と建物の売買価格が明確に分かれておらず、消費税の記載もない場合は、以下ふたつの方法で建物購入代金を調べることができます。

標準建築単価から算出

1つ目の方法は、「標準建築単価」から算出する方法です。標準建築単価とは、1平方メートルあたりの工事費の平均額のことで、国土交通省が公表しています。

対象となるマンションが建築された年度・構造・延床面積を用いて、マンションの推定価格の計算が可能です。

標準建築単価から算出する計算式は、次のとおりです。

標準建築単価から算出する計算式

建物購入代金 = 建物の標準的な建築価額表で求めた建築単価 × 床面積(延べ床面積㎡)

計算の際には、国税庁が公表している「建物の標準的な建築価額表」を参照してください(※3)。

(※3)参考:国税庁「建物の標準的な建築価額表」

固定資産税評価額から算出

2つ目の方法は、固定資産税評価額から算出する方法です。

固定資産税は、土地と建物それぞれ別に課税されます。そのため、対象となるマンションを購入した際の、固定資産税評価額の「土地評価額」と「建物評価額」の比率を調べることで、建物購入代金を算出可能です。

ただし、この方法はとても複雑な計算が求められるため、税理士や不動産会社に依頼するとよいでしょう。

それでも建物購入代金がわからず取得費が算出できない場合は、建物の売却価格の5%相当額を概算の取得費と見なすという選択肢もあります。概算取得費を用いる際には、概算取得費よりも実際の建物購入代金のほうが高いケースだと、課される税金が増えて損してしまう点に注意しましょう。

関連記事:マンション売却で発生する固定資産税の仕組みや計算方法を解説
関連記事:不動産売却でかかる税金は?計算方法・税金対策を解説!

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関連記事:不動産売却の相談はどこにするべき?お悩み別に詳しく解説!

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マンション売却時には減価償却費に注意しましょう

所有するマンションを売却して利益が出た場合、売却した翌年の確定申告時に減価償却費の計算が必要となります。

減価償却費の計算で用いる建物購入代金は、マンション購入時に取り交わした売買契約書で確認しましょう。もし建物購入代金が明確にわからない場合は、標準建築単価から算出する、固定資産税評価額から算出する、さらには概算取得費を用いるという選択肢があります。

マンションを売却した際、最後の確定申告手続きまで滞りなく終えられるよう、ぜひこの記事を参考にしてください。

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