陰影豊かな部屋。あえて天井は低く抑え、左官仕上げの壁は洞窟のような雰囲気を作り出す。イメージはイタリアの「マテーラの洞窟」。さまざまな素材使いで細かに作り込まれた空間は、えも言われぬ心地よさをはらんでいる。
渋谷区西原(代々木上原駅徒歩6分)
1SLDK
/ 45.35㎡
/ 7,580万円
売主さまのご紹介
Mさまご夫婦
当住戸の設計をご自身で手がけた一級建築士の旦那さま。結婚を経て手狭に感じたことから住み替えを考え始めたそう。この度はお子さまを授かり、よい物件にも巡り会えたため、住み替えを決意されました。
引き込まれる 世界観
玄関はこちら。左官仕上げの壁に囲まれた廊下を抜け、奥の光に誘われるがままLDKへ。
白を使わない 内装
南西向きのLDK。曇りガラスの窓から柔らかく光が差し込みます。
広さは約12帖。木や珪藻土の素材使いで、本物ならではの風合いを楽しめる内装です。
cowcamo
モルタル調の左官材「モラート」で仕上げたテレビ台。空間に違和感なく溶け込んでいます。
木の壁に見えるのは、左手奥にある洋室の引き戸。スギ材の木目が美しい。
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気になる洋室のご紹介は後ほど。まずはキッチンを見てみましょう。
自宅で バー気分を
バー気分を味わえるカウンター付きの対面キッチン。カウンター下にスツールがすっきりと収まる設計です。
売主さま
キッチンは使いやすいように身長に合わせて造りました(900mm)。料理を楽しむようになったのも、このキッチンのおかげですね。
レンジフードや天板はステンレス製でスタイリッシュ。コンロは4口。チークの面材で温もりも感じられます。
遊び心ある 素材使い
左・窓を背にしてLDKを見たカット。/右・窓際の床は玉砂利洗い出し仕上げ。
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素材使いが面白いですね。細かなところまでつくり込まれています。
バルコニーへ
眺望は向かいのマンションと顔を合わせるかたち。通りを挟んでいるので視線は気になりません。
バルコニーはコンパクト。吊り金具が備わっています。
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それではお待ちかね、洋室を見ていきましょう。
洞窟にいるかのよう
窓は共用階段に面し、ほとんど日光が入らない約7帖の洋室。左官仕上げのざらりとした壁・天井の質感が、どこか洞窟のよう。
売主さま
イメージしたのは、イタリアにある「マテーラの洞窟」。土に囲まれたあの温かみや包まれる感覚を再現したいと思ったんです。
左・扉に布クロスを貼り、上品に仕立てたクローゼット。/右・地層のように異なる土を重ねる「版築」という工法を模した「塗り版築」で仕上げた壁。
売主さま
洋室の天井は、2,100mmとあえて低く抑えています。LDKの天井も2,350mmと一般的な2,400mmの天井高と比べると低いのですが、洋室との差を出すことによって、相対的にLDKの天井が高く感じるように設計しました。
砂利の粗さで 質感を変化
洋室(左)や玄関(右)の壁をよく見ると、珪藻土の質感が異なっています。
売主さま
場所によって珪藻土に混ぜている砂利の粗さを変えています。洋室は洞窟の雰囲気に近づけるために「1分(約3mm)」、廊下は壁に触れる機会が多いため「5厘(約1.5mm)」、リビングは躯体現しに質感が近い「7厘(約2.1mm)」を混ぜ合わせました。
水まわりの こだわり
左・キッチンと同じチーク材を使用した洗面台。/右・トイレと洗面は一体型。タンクレスですっきりとしたフォルムのトイレが設置されています。
ゆったりとくつろげる広々としたバスルーム。洗面室との仕切りであるスチールサッシはオリジナルで設えたもの。
売主さま
バスルームは元の間取りでは狭かったのですが、広々とくつろげる空間にしたくて。サービスルームの面積を小さくして、その分を浴室に充てました。
靴のまま入れる サービスルーム
玄関から靴を抜かずに入れるよう、床は玉砂利洗い出し仕上げに。広さは約3帖。
マンションの ご紹介
落ち着きのある住宅街に佇むマンション。1969年築、総戸数は69戸です。
cowcamo
こちらは自主管理体制のマンションですが、修繕積立金の貯蓄額は2025年1月時点で約1.1億円。2025年6月にはサッシ・玄関扉の改修工事が予定されています。
なお、以前にこちらの住戸から下の住戸へ漏水が発生しましたが、2024年12月に修復工事は完了しています。
オートロック付きのエントランス。スロープでアプローチ可能です。エレベーターには防犯カメラを完備。住戸は3階所在です。
街を巡る 楽しさ
cowcamo
最寄りは、東京メトロ千代田線、小田急線「代々木上原」駅(徒歩6分)。感度の高いお店が集まり、街歩きを楽しめるエリアです。周辺のスポットをいくつかピックアップしてみました。
左上・アイスクリームショップ「kasiki(カシキ)」。ジェラートとナチュラルワインという組み合わせを楽しめます。(徒歩3分)/右上・店の前を通ると出汁の香りが漂ってくる蕎麦店「朝日屋」。地元の方々から愛される老舗店です。(徒歩4分)/左下・カフェ「nadoya no katte(ナドヤノカッテ)」。木漏れ日が差す庭でくつろぎながら、香り高いコーヒーをいただけます。(徒歩7分)/右下・売主さま行きつけのインテリアショップ「AELU(アエル)」。器を中心とする作品の販売を行なっているほか、さまざまなアーティストによる企画展も毎月実施されています。(徒歩9分)
都心のオアシス「代々木公園」も徒歩圏内。緑に癒されながらふっと肩の力を抜ける居場所です。(徒歩14分)
カウカモ編集部より
白は使わず、素材の風合いや陰影を味わう暮らし。玄関に入った瞬間の世界観から引き込まれていたのですが、生活空間によって材質を変えていたり、天井の高さを変えることによって広さを演出していたり……見れば見るほど、ディテールまでつくり込まれているのがわかります。
特筆すべきは日光がほとんど入らない洋室の空間づくり。壁は荒めの左官材で仕上げ、まさしく洞窟のような雰囲気。包まれているような安心感を覚えます。一見短所にも思える日光の当たらなさを逆手に取った、心地よい空間でした。
住まいの素敵さもさることながら、立地も魅力的。感度の高いお店が集まるエリアで、街を歩いているとおしゃれな飲食店やインテリアショップに巡り合うこともしばしば。代々木公園も徒歩圏内にあり、自然を享受しやすいのがうれしいですね。
素材使いや空間の演出方法など、さまざまなつくり込みによって心地よさが生まれている住まい。洞窟にいるかのような静謐な居場所で、心落ち着く暮らしはいかがでしょうか?
白い壁がない内装……珍しいですね!陰影の豊かな空間で、心が落ち着きます。