ペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦やパートナーがそれぞれ契約者となって住宅ローンを組み、合算した借入額で物件を購入する方法です。通常の住宅ローンと異なり、ふたりがそれぞれにローン契約を結ぶため、単独で借りるよりも高額な物件を購入できる可能性があります。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が400万円の場合、単独では500万円または400万円分の借入しかできないところ、ペアローンを利用すれば合算した900万円の年収に基づく借入が可能になります。
これにより、より広い物件や希望エリアのマンションが手の届く範囲に入ることが多くなります。ペアローンは、共働き世帯にとって非常に魅力的な選択肢ですが、その一方で注意すべき点も多く存在します。
ペアローンのメリット
1.借入可能額が増える
ペアローンの最大のメリットは、収入を合算することで借入可能額が増え、より多くの選択肢から物件を選べるようになる点です。希望エリアでマンションを探している場合でも、より条件にマッチした物件を購入することができます。
2.夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられる
ペアローンを利用する場合、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けることができるため、税制上のメリットが大きくなります。住宅ローン控除とは、一定の条件を満たすことで、住宅ローンの年末残高に応じた税金が控除される制度です。
両者が住宅ローン控除の適用を受けることで、家計全体の税負担が軽減され、実質的なローン返済額が抑えられるというメリットがあります。特に共働きで所得税を多く支払っている家庭にとっては、ペアローンを利用することで大きな節税効果が期待できるでしょう。
3.夫婦で返済を分担することで、経済的負担を軽減
ペアローンは、夫婦がそれぞれローンを組むため、返済負担を分散できる点が大きなメリットです。これにより、どちらか一方が突然の収入減少や失業に見舞われた場合でも、残ったもう一方が返済を継続できるため、家計全体の安定性が高まります。
また、共働きの場合、ボーナスや臨時収入を利用して早期返済を行うことも可能であり、ペアローンをうまく活用することで、将来的な経済的な安定を図ることができます。
4.中古マンション購入+リノベーションの選択肢が広がる
ペアローンで予算が増えることにより、単に中古マンションを購入するだけでなく、追加でリノベーション工事を実施する選択肢も生まれてきます。これにより、築年数が経過した物件を購入し、自分たちのライフスタイルに合ったリノベーションを施すことで、理想の住まいを実現することが可能になります。
ペアローンのデメリット
1.返済リスクの増大
夫婦それぞれがローンを組むため、どちらか一方の収入が減少したり、仕事を失った場合でも、ふたり分のローン返済が必要となります。この状況が長引くと、家計に大きな負担がかかり、ローン返済が滞るリスクもあります。
例えば、妻が出産を機に一時的に仕事を辞めた場合、夫ひとりの収入で二人分のローンを返済しなければならなくなります。そのため、ペアローンを利用する際には、将来のライフイベントを見据えた返済計画を立てることが重要です。
2.手続きが複雑
ペアローンを利用する際には、夫婦それぞれが個別にローン審査を受ける必要があるため、手続きが複雑で時間がかかるというデメリットがあります。ふたり分の収入証明や勤続年数、信用情報などが審査対象となり、さらに契約書の作成や署名も個別に行わなければなりません。
例えば、どちらか一方の収入が不安定な場合、審査に時間がかかる可能性があります。また、審査基準が異なるため、一方が審査に通過しても、もう一方が不承認となるリスクもあります。このように、ペアローンの手続きは一般的なローンに比べて複雑であり、時間と手間がかかることを理解しておく必要があります。
3.離婚時のリスク
ペアローンの最大のデメリットの一つは、離婚時に物件の所有権やローン返済が複雑になる点です。夫婦でローンを組んでいる場合、離婚時にはどちらが物件を所有し、ローンを返済するのかを整理する必要がありますが、その過程でトラブルが発生する可能性があります。
離婚後に夫が物件を所有し、ローンを引き継ぐ場合でも、妻のローンが残っている場合は、妻の名義を外す手続きが必要となります。この手続きが複雑であるため、金融機関との交渉が難航することがあります。
また、売却を選択する場合でも、ローンの残高が物件の売却価格を上回る場合は、追加で返済しなければならない可能性があります。このように、離婚時のリスクをしっかりと理解し、万が一に備えた契約内容を確認しておくことは重要です。
ペアローンを選ぶ際のポイント
結婚、出産、転職などのライフイベントを見据えた計画を立てておく
ペアローンを選ぶ際には、将来のライフプランをしっかりと考慮していきましょう。結婚や出産、転職などのライフイベントは、収入や家計に大きな影響を与えるため、これらを見据えた計画を立てることが、無理のない返済を続けるための鍵となります。
出産を予定している場合には一時的に妻の収入が減少することを想定し、その間のローン返済をどうするかを事前に考えておくことが重要です。転職を考えている場合には、新しい職場での収入が安定するまでの期間を考慮して、ローン返済に余裕を持たせたプランを選ぶのがよいでしょう。
収入変動に備えた返済シミュレーションを実施する
ペアローンを利用する際には、無理のない返済計画を立てることが非常に重要です。収入が安定している時期だけでなく、将来の収入変動に備えたシミュレーションを行い、万が一のリスクに備えることが求められます。
共働きで収入が安定している夫婦の場合でも、将来的に一方が退職や収入減少に見舞われる可能性を考慮し、余裕のある返済計画を立てることが重要です。
具体的には、収入の減少を見越して毎月の返済額を設定し、ボーナス時の繰上げ返済などを計画に組み込むことで、無理のない返済を続けることができます。また、シミュレーションを行うことで、リスクに対する備えをしっかりと確認でき、安心してペアローンを利用することができます。
ペアローンで後悔しないために知っておくべきこと
ペアローンは、共働き夫婦にとって非常に有効なローン選択肢であり、借入可能額の増加や税制優遇などのメリットがあります。しかし、返済リスクや手続きの複雑さ、離婚時のリスクなど、デメリットも存在します。
ペアローンを利用する際には、これらのメリットとデメリットをしっかりと理解し、自分たちのライフスタイルや将来の計画に合った選択をすることが重要です。将来のライフプランを考慮した上でペアローンを上手に活用してみましょう。
中古・リノベーションマンションの流通プラットフォームに関する知識をわかりやすく提供するため、カウカモ(cowcamo)で日々勉強中。築古マンションの魅力とリノベーションのメリット・デメリットについて深く学び、読者の皆様が最適な選択をできるようサポートしたいと考えています。最新の住宅トレンドや資産価値の維持に関する情報も発信していくので、ご期待ください。
日本大学理工学部建築学科卒。大手住宅メーカー勤務を経て、外資系生命保険会社に転職。住宅購入に特化したファイナンシャルプランナーとして、多くのセミナーや個別相談依頼を受ける。2021年にはファイナンシャルプランナーの育成研修・派遣を行う会社を起業し、代表就任。住宅購入に関するセミナー年間50件、個別相談は年間150~200件、累計相談件数が2000件以上の実績がある。