リノベーションや注文住宅で内装を検討するときに、リノリウムという床材を目にすることがあります。リノリウムは、1863年にイギリスで発明され、すでに100年以上世界中で使用されている歴史を持つ床の仕上げ材です。近年、環境や人体に優しい天然素材で作られている建材として再注目されています。
この記事では、リノリウムが持つ特性やその魅力、リノリウムを床材として使用する場合に適している場所や、ほかの床材との違い、扱い方などの注意点を解説します。リノリウムの床を検討している方はぜひ参考にしてくださいね。
リノリウムとは?
リノリウムは、亜麻仁油の酸化物に石灰石、松ヤニ、コルク粉、木粉などの天然素材を麻布に塗りつけ、乾燥させた建材です。主に床材や壁材、インテリア材として利用されてきました。SDGsやエシカルに対する世界的な意識の高まりから、天然素材を使用して製造されたサステナブルな建材として、再注目されています。
石油化学製品の建材と比較すると、高価だったり、手入れに注意が必要で扱いにくかったりといった面はあるのですが、リノリウムが持つ特性や魅力から、学校や病院など施設や住宅で使用されています。
ちなみに、日本で使用されているリノリウム床材は、オランダにあるフォルボ社のリノリウムブランド「マーモリウム」が主流です。
リノリウムが持つ特性と3つの魅力
リノリウムは天然素材を主原料としており、さまざまな特性を持っています。ここでは、リノリウムが持つ特性とその魅力を解説します。
天然素材で環境や人体に優しい
リノリウムは、亜麻仁油の酸化物に石灰石、松ヤニ、コルク粉、木粉といった天然素材を混ぜ、布に塗って作られているため、シックハウス症候群の原因のひとつである化学物質が発生せず、人体に優しいとされています。
また、製造から廃棄までの過程で有害物質を発生させないだけでなく、土に埋めると生分解されるため、環境にも優しい素材です。
抗菌・抗ウイルス性能や脱臭作用を持つ
抗菌、脱臭作用を持つのも、リノリウムの魅力のひとつです。リノリウムの主原料である亜麻仁油は、酸化する過程で抗菌性や抗ウイルス性を発揮することが認められています。さらに、亜麻仁油が酸化しているため、アルカリ性の臭いに対して脱臭効果も期待できます。
耐久性・耐火性に優れ長持ちしやすい
リノリウムは傷がつきにくく、耐久性に優れており、製品寿命は30~40年程度とされています。一般的には複合フローリングは15年程度、クッションフロアやビニル床タイルは10年程度で傷みが気になってくることを考えると、リノリウムの耐久性は魅力的です。
また、重たい家具を置いても重さでへこみにくく、お部屋の模様替えを頻繁に行いたい方でも安心です。次に床を張り替えるまでの期間が長くなるというメリットもあります。
また、発火温度が高く耐火性に優れているのもリノリウムの特徴です。万が一、火災が発生しても、リノリウムの部分は延焼しにくいとされています。
リノリウムの見分け方とほかの床材との違い
一般的な住宅に使用される床材には、クッションフロアやビニル床タイルなどがあり、それぞれ特徴が異なります。主な床材の特徴をまとめてみました。
- リノリウム:天然素材で作られ、抗菌・抗ウイルス性能や、耐久性・耐火性に優れており、傷つきにくい。施工に技術が必要となり、価格はやや高め。
- クッションフロア:耐水性は抜群だが、耐久性は劣り、傷つきやすく劣化しやすい。ハサミやカッターでカットできるほど施工性が高い。リノリウムと比較すると低価格で導入できる。
- ビニル床タイル:デザインも豊富で施工性も高い。耐久性にも優れているため、商業施設などでも使用されるなど普及率も高い。しかし、施工時にタイルを張り合わせていくため、目地ができ、汚れがたまりやすい。リノリウムと比べれば安価。
リノリウムの床は住宅や施設のどのような場所で使用されている?
リノリウムは、その特性や魅力により、さまざまな場所で床材として使用されています。使用が適している場所を、住宅と施設に分けてそれぞれ紹介しましょう。
【住宅】キッチン・洗面所・トイレなどの床
リノリウムは、抗菌・抗ウイルス作用や、優れた耐久性、耐火性を持つことから、住宅においてはキッチンや洗面所などの床に使用されることが多いです。空気中のアンモニア臭を数時間で脱臭する効果があることが実証されており、トイレの床にも適しています。
また、有害物質が発生しない点や、滑りにくさ、傷つきにくさを持つといった点から、子ども部屋の床としてもおすすめです。
【施設】病院・介護施設・学校・バレエ教室などの床
リノリウムは、その特性から、住宅以外では病院や介護施設、学校、保育園や幼稚園といった、安全性や清潔を保ちたい場所でも使用されています。弾力性があり滑りにくいため、バレエ教室の床やヨガ教室などにも適しているとされています。
自宅でバレエを練習するスペースやヨガスペースを作りたい場合には、そのスペースの床材だけリノリウムを使用するといった使い方もおすすめです。
【その他】テーブルやデスクの天板
リノリウムは、傷がつきにくいという特性があるため、テーブルやデスクの天板など家具に使用されることもあります。
床材をリノリウムにする際の注意点
さまざまな魅力があるリノリウムですが、天然素材であるがゆえ、床材に使用する際にはいくつか注意しておきたい点があります。施工する前に、以下の4つの点をよく理解しておきましょう。
注意点1.紫外線の当たる場所は避けるか対策が必要
リノリウムは、紫外線によって変色する場合があるため、窓の近くや直射日光が当たる場所への施工は避けた方がよいとされています。ただし、以下のような紫外線対策を行って室内に入る紫外線の量を抑えることができるなら、リノリウムの床を諦めなくてもすみます。
■紫外線対策の例
- 窓ガラスにUVカット効果のあるフィルムを貼る
- UVカット機能のあるレースカーテンを取り付ける
- 部屋をリノベーションして、窓ガラスをUVカット効果が高いものに交換する
注意点2.掃除の際は使用する洗剤に注意
リノリウムの床のお手入れは、乾拭きで十分です。ただし、洗剤を使った掃除をしたい場合には注意が必要となります。
リノリウムの材料である木粉やコルクなどは、アルカリ性のものに弱い素材です。そのため、一般的に使われるアルカリ性の床用洗剤を使用すると、傷んだり変色したりするなど、劣化が進む恐れがあります。アルカリ性の床用洗剤での掃除は避けるようにしましょう。
どうしてもリノリウムの床材を洗剤を用いて掃除したい場合は、中性洗剤を薄めて使用し、すぐに拭き取ります。
注意点3.ワックスをかける際は種類に注意する
経年劣化でリノリウムの表面が摩耗すると、水分を吸収しやすくなり、さらなる劣化の原因になります。それを防ぐためには、定期的なワックスがけが有効です。
ただし、前述の通り、リノリウムはアルカリ性に弱い素材です。掃除用洗剤と同じようにワックスもアルカリ性のものは避け、中性のものを使用するようにしましょう。
注意点4.はじめはにおいが気になる場合がある
リノリウムの主原料である亜麻仁油には特有の匂いがあります。リノリウムとなっても亜麻仁油の匂いが残っていることがあり、人によっては苦手だと感じることもあるかもしれません。
通気性のよい場所ならほとんど気にならない程度の匂いですが、密閉された場所ではその匂いをより感じやすくなるので、リノリウムの床を張ったあとは定期的に換気を行うのもおすすめです。特に床に張り付けた直後はその匂いを感じる場合がありますが、時間が経つにつれて薄れていくという特性もあるため、一時的なものだと考えておくとよいでしょう。
なお、亜麻仁油特有の匂いを感じても、人体に害はありませんので安心してください。
まとめ
天然素材で作られているリノリウムは、環境や人体に優しいサステナブルな建材です。抗菌・抗ウイルス作用を持ち、耐火性や耐久性にも優れているため、病院や学校で多く用いられています。もちろん、一般住宅においても、キッチンや洗面所、トイレ、子ども部屋など、さまざまな場所で性能を発揮する優れた床材です。
ただし、リノリウムの場合、お手入れ方法や紫外線への配慮など注意すべき点があります。いい状態をできるだけ長く保つために、リノリウムの特性をきちんと理解しておくことが大切です。
また、自宅の床をリノリウムにして理想の部屋を作りたいなら、今住んでいる家をリノベーションする以外に、中古物件を買ってリノベーションをする方法も考えられます。しかし、いろいろ考え検討する時間が足りない方もいらっしゃるでしょう。そんな方には、リノベーション会社で物件を購入する方法がおすすめです。購入時に理想のリノベーションを発注しておけば、自身で床の張り替えの手配を行う手間が省けます。
不動産サイト「カウカモ」では「一点もの」の住まいを求める人に向けて、厳選した中古・リノベーション物件を紹介しています。理想の部屋に住みたいと考えている方は、ぜひ一度、見てみてくださいね。
中古・リノベーションマンションの流通プラットフォームに関する知識をわかりやすく提供するため、カウカモ(cowcamo)で日々勉強中。築古マンションの魅力とリノベーションのメリット・デメリットについて深く学び、読者の皆様が最適な選択をできるようサポートしたいと考えています。最新の住宅トレンドや資産価値の維持に関する情報も発信していくので、ご期待ください。
琉球大学大学院理工学部卒。環境建設工学を専攻し、大学院卒業書、建築設計事務所に勤務し、住宅や公共施設など様々な建物の設計に携わる。現在は建築デザイナーとして不動産開発の企画・設計から運営まで行うコンサル会社にて、オフィス設計やリノベーションなどを中心に手がける。趣味は街歩きと珈琲焙煎。空き家を活用して設計事務所と珈琲屋さんを開くことが目標。