「和室が今のライフスタイルに合わない」「押入れは奥行きが深いため使いにくい」といった理由で、押入れをクローゼットにリフォームしたいと考える人もいるのではないでしょうか。これまで使いにくいと感じていた押入れスペースをクローゼットにすると、より有効活用できるようになるのがリフォームするメリットです。
本記事では、押入れをリフォームする際に、どのようなクローゼットの種類にリフォームできるのか、について解説します。また、押入れをリフォームするときのポイントについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
押入れはクローゼットにリフォームできる?
押入れのサイズは、一般的に一間(約182cm、内寸168cm)で、高さは230cm、奥行きは75~80cmとされています。2段構造になっていて上部に天袋がついているのも特徴です。
押入れは布団や座布団を収納することを想定して造られているため、奥行きが深く、奥に収納したものを出し入れしにくいというデメリットがあります。また、押入れは2段構造で高さ70cm程度のところに中板があるため、丈の長い洋服が掛けられないというのもネックのひとつです。
一方で、クローゼットの奥行きは50~60cmが一般的です。上部には洋服がかけられるようにハンガーパイプが付いています。
押入れとクローゼットは奥行きや構造に違いはあるものの、仕切りを外したり、ハンガーパイプを取り付けたりすることで、押入れをクローゼットにリフォームすることが可能です。
まず、押入れをクローゼットにリフォームする際には、中板を取り外す工事が必要です。枕棚(まくらだな)にハンガーパイプを取り付けるといった工程もあります。押入れ上部に天袋がある場合は、鴨居(引き戸の建具を開閉するために上部に取り付けられた横木)を取り外さなければなりません。
また、クローゼット用の収納ケースの多くは55cmのものが多数を占めますので、クローゼットの使い勝手をよくするためには奥行きを60cmに設計するのが理想です。
押入れのリフォームで造れるクローゼットの種類
押入れのリフォームでできるクローゼットの種類は下記の通りです。
- 簡易クローゼット
- 一般的なクローゼット
- ウォークインクローゼット(WIC)
どのクローゼットを選ぶかによって、工期や費用が変わります。ここでは、上記3つのクローゼットの種類を詳しく解説していきます。
簡易クローゼット
簡易クローゼットとは、クローゼットの上部にハンガーパイプが設置されているシンプルなクローゼットのことをいいます。
簡易クローゼットの場合、押入れをクローゼットにリフォームする際の工程は、中板を取り外して、ハンガーパイプを設置するだけです。扉を変更せずにふすまをそのまま活用したり、ふすまを取り外してオープンタイプのクローゼットとして使用したりするので、予算が抑えられるでしょう。ふすまを取り外してカーテンやロールスクリーンを設置して、扉の代わりに使うことで予算を抑える方法もあります。
工期が短く、低予算でできるため、手軽に押入れをリフォームしたい方におすすめです。
一般的なクローゼット
一般的なクローゼットとは、扉付きでハンガーパイプが取り付けられているタイプをいいます。特に和室を洋室にリフォームする際に、押入れを一般的なクローゼットに変更するケースが多いです。
押入れを一般的なクローゼットにリフォームする工程は下記のとおりです。
- 中板を取り外す
- (必要に応じて)床の補強や内壁の補強・補修をおこなう
- ハンガーパイプを設置する
- 内側の壁に壁紙を貼る
- 扉を取り付ける
収納するものに合わせて仕切りや可動棚などをオプションで追加すると、さらに使い勝手がよくなるでしょう。
簡易クローゼットよりも工期や費用はかかりますが、クローゼットとしての利便性やデザイン性が高くなるのがメリットです。
ウォークインクローゼット(WIC)
ウォークインクローゼット(WIC)とは、人が中に入って歩ける広さのクローゼットのことをいいます。
広さは3~4畳で、通路の幅は60cm以上が一般的なウォークインクローゼットのサイズです。ただし、ウォークインクローゼットの中で着替えをしたり、下部に引き出し式の収納ケースを置いたりしたい場合は100cm以上の通路幅が必要になります。
押入れをウォークインクローゼットにリフォームする場合は「押入れを拡張する」あるいは「押入れのある部屋全体をウォークインクローゼットにする」のどちらかのパターンを選ぶことが多いです。
大きめの押入れであれば、既存の押入れスペースを流用してウォークインクローゼットにリフォームが可能ですが、かなりコンパクトになるため使い勝手はあまりよくないかもしれません。押入れスペースしかリフォームできないのであれば、無理にウォークインクローゼットにするよりも、一般的なクローゼットにリフォームしたほうが使いやすいでしょう。
また、押入れがリビングと隣接している場合は、リビング側にも扉をつけて部屋全体をウォークスルークローゼットにリフォームすると、家族で使える「ファミリークローゼット」として使えます。着替える場所を1か所に集約して、家事動線や生活動線を短縮したい場合におすすめです。
押入れをウォークインクローゼットにリフォームする場合は、大がかりな工事になるため工期も費用も高くなりますが、収納力が大幅にアップして使いやすくなるのがメリットです。
押入れをクローゼットにリフォームする際にかかる費用
押入れをクローゼットにリフォームする際にかかる費用は、どのようなクローゼットの種類を選ぶか、どのようなオプションを追加するかによって大きく異なります。
ここでは「簡易クローゼット」「一般的なクローゼット」「ウォークインクローゼット」の3種類それぞれにかかる費用を紹介します。
簡易クローゼットにリフォームする場合
簡易クローゼットへのリフォームは、押入れの中板を取り外してハンガーパイプを設置するという工程となります。工期は半日から1日で、費用は2~3万円が目安です。
扉を取り替えずにふすまをそのまま使うか取り外して使用する場合は、それ以上の費用はかかりません。ふすまの代わりにカーテンやロールスクリーンを設置するのであれば、その費用が必要になります。
また、扉を取り替える場合は、工期が1~2日かかります。費用は10~15万円が目安です。扉の種類によって費用に開きがありますので、その点は注意してください。
押入れの大きさや造りによってかかる費用が変わりますので、リフォームする際は見積を出してもらって検討するようにしましょう。
一般的なクローゼットにリフォームする場合
一般的なクローゼットへのリフォームは、中板の取り外しとハンガーパイプの設置のほかに、床の補強や張り替え・壁の補強・壁紙の貼り替え・扉の取り替えなどの工程があります。
工期は2日程度で、費用は10~20万円が目安です。
押入れの状態や収納棚の設置、扉や壁紙の種類などによって費用が変わります。予算と使い勝手の良さなどをあわせて検討しながら、理想のクローゼットを目指しましょう。
ウォークインクローゼットにリフォームする場合
ウォークインクローゼットへのリフォームは、押入れの拡張や部屋全体のリフォームが必要となります。
一般的なクローゼットにリフォームする際の工程に加えて、クローゼットの中を明るくするために照明の取り付けも行わなければなりません。必要に応じてコンセントの工事や窓の設置なども行うため、費用は簡易クローゼットや一般的なクローゼットよりもかかります。
工期は7日程度で、費用は20~55万円が目安です。
また、押入れを拡張するタイプで造るのか、部屋全体をウォークインクローゼットとしてリフォームするかによっても費用が大きく変わります。タイプ別に見積もりを出してもらい、どういったウォークインクローゼットにしていくのかを検討するとよいでしょう。
押入れをクローゼットにリフォームする際のポイント
押入れをクローゼットにリフォームする際のおもなポイントは、以下の3つです。
- 部屋に合った扉を設置する
- 収納するものによっては床の補強が必要となる
- 必要であれば結露対策をする
それぞれのポイントを詳しく解説します。
部屋に合った扉を設置する
クローゼットの扉の種類には「折れ戸」「引き戸」「開き戸」の3つがあります。
折れ戸は、扉を折りたたんで左右に開きます。フルオープンが可能なため、クローゼット全体を見渡せ、スペースに死角がほとんどありません。クローゼットの前面に扉を開けるだけのスペースが必要になります。
引き戸は、扉を左右にスライドさせて片面だけ開きます。クローゼットの真ん中が少し出し入れしにくく、収納ケースを下部に置きたい場合はサイズに注意しなければなりません。クローゼットの前面にスペースが必要ないため、狭い場所だったり手前に置きたい家具があったりした場合におすすめです。
開き戸は、扉を左右に開くタイプで、フルオープンできます。クローゼット全体を見渡せて、収納ケースを並べやすいのがメリットです。折れ戸よりも、クローゼット前面に広いスペースが必要になります。押入れを2分割して、クローゼットを2つ造る場合は扉のサイズが小さくなるので開き戸でもよいでしょう。
どのタイプの扉にするか決まったら、扉のデザインやオプションを検討してみてください。
インテリアや部屋の雰囲気に合わせた扉を選ぶことで、部屋に統一感が生まれてオシャレ度がアップします。扉に鏡を取り付ければ、洋服のコーディネートや全身のチェックがしやすくなって便利です。
また、扉を設置せずにオープンタイプのクローゼットにするという選択肢もあります。どうしても扉を設置するのが難しい場合や、見せる収納にこだわりたい場合などは検討してみるのもひとつの手です。
収納するものによっては床の補強が必要となる
押入れをクローゼットにリフォームする際は、あらかじめ何を収納するかを決めておく必要があります。というのも、収納するものによっては床を補強しなければならないからです。
押入れには床をベニヤ板だけで仕上げているものもあります。押入れの床は、クローゼットや部屋の床に比べて下地が弱いため、床の補強をしなければ重い収納棚や重い荷物を入れたときに床が抜けてしまうかもしれません。
リフォーム後に収納するものを想定し、床の耐久性に不安を感じた場合は床の補強をしましょう。
必要であれば結露と湿気対策をする
押入れに収納していたものにカビが発生して使えなくなってしまったり、押入れの壁面や床にカビが生えたりといった経験がある人も多いかもしれません。
押入れは、奥行きが深いうえに換気設備もないため、結露しやすい構造になっています。結露や湿気はカビの原因となり、体調不良やアレルギーを引き起こす可能性があるだけでなく、収納している衣類にカビが発生してしまう恐れもあります。
そのため、押入れをクローゼットにリフォームする際は、必要に応じて結露と湿気の対策をすることが重要です。壁の内側に断熱材を入れたり、防カビ効果のある壁紙を貼ったりして、結露やカビを防ぎましょう。ルーバータイプの扉を選ぶと換気ができるので有効です。
ウォークインクローゼットにリフォームする場合は、窓を設置して換気を促す方法もあるので、あわせて検討してみるのもおすすめです。
まとめ
押入れは布団を収納できるように設計されているため、奥行きが深く、布団以外のものが収納しにくい設計になっています。
その点、押入れをクローゼットにリフォームすれば、スペースを有効活用できるようになり、押入れの使いにくさを解消できるでしょう。
クローゼットにはいくつか種類があり、扉のタイプもさまざまです。そのため、押入れをクローゼットにリフォームする際にかかる費用にも大きな開きがあります。家族の人数や収納するものの量、ライフスタイル、クローゼットの位置、そして予算に合わせて、理想に近いクローゼットを選ぶことが重要です。
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琉球大学大学院理工学部卒。環境建設工学を専攻し、大学院卒業書、建築設計事務所に勤務し、住宅や公共施設など様々な建物の設計に携わる。現在は建築デザイナーとして不動産開発の企画・設計から運営まで行うコンサル会社にて、オフィス設計やリノベーションなどを中心に手がける。趣味は街歩きと珈琲焙煎。空き家を活用して設計事務所と珈琲屋さんを開くことが目標。