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駐車場の片隅に佇むドアを開けると、そこには秘密基地のような空間が。三軒茶屋駅から徒歩10分、何の変哲もないマンションの外観からは想像もできないほど、大人のムードがどっぷりと漂う、お洒落な1LDKのお部屋です。

明石祐史さん。リノベーション住宅のほかオフィスや飲食店も手掛けています。

奥から現れたのは、この部屋をリノベーションした、明光テックの代表取締役・明石祐史さん。無骨で無口。朴訥とした「職人」的な印象の方です。

僕らは自分たちが手掛けた物件を紹介する時、あえて多くを説明しすぎないようにしています。お客様が部屋を見た時に感じたインスピレーションがすべてですから。

ラフに塗られた木の風合いが、一気に空間の「大人」度を上げています。

明石さんのそんな言葉を受け、まずはいち訪問者の目線で物件をじっくり拝見してみました。まず、玄関を入った途端に目に飛び込んでくる、モールディングが施された重厚な木製ドア。少々ぶっきらぼうな印象の玄関ドアからは想像できないほど落ち着いた印象。この外観と中身のギャップはパンチ大。

玄関土間と廊下の仕切りは花ブロック。空間に抜けが生まれ、開放的です。

広い土間スペースは自転車が2〜3台は置けそう。三軒茶屋は自転車ユーザーの多い街。これはポイント高いですね。

もともとは倉庫として使われていた部屋だったんです。コンクリートの躯体が見えるまで解体して、フルリノベーションしました。こてこてに作り込むことはせずに、もともとの空間の素養を活かすことを一番に考えて空間をつくりました。

広々とした洗面台。女性のメイクスペースとしても便利です。

モルタル塗りのシンプルで美しい洗面台は、間仕切りに使った古材が目立ちます。もともとこの部屋の梁だったものを転用したのだそう。洗面台がある通路に面したトイレの扉は白。空間に軽さが出ています。これぞ「大人の男の隠れ家」といった演出が随所に散りばめられています。

左上・脱衣室には、外壁と同じタイル貼りの既存壁を残してドキッとする演出に。/右上・遊び心を感じさせる、古材を使った天井の装飾。/左下・クラシカルな洗面器と水栓がおさまる洗面台。/右下・モールディングが施された木製ドアには真鍮のドアノブ。


古材やメカのようなスイッチが醸すラフで無骨な印象と、モルタルのカウンターや陶器質のタイルなどのキレイどころとのギャップが堪りません。まるでカフェのような非住居感が漂う空間は、ありきたりの空間では得難い刺激を日常に与えてくれそうです。

コンクリートの無骨さとのコントラストが効いている、天井の木製の梁。部屋に表情を生みだしています。


LDKはパーティーもできる約30㎡の広さ。10人から15人は余裕で呼べます。天井には、古材を梁風に設置。もともとは中学校の校舎で使われていた木材だったそう。長く使われて古びた風情そのままの木材が、朴訥で温かみのある雰囲気を出しています。

シンプルなキッチンは洗面所と同じ、美しいモルタル塗りカウンター。


あえて木目が不揃いなものを選んだフローリングは、ラフな色味が気取りすぎず、表情が豊かな床に。天井を見上げると、梁の間ごとにライティングレールが。好みで照明アレンジができて良いですね。水まわりの壁は、細身で長い2丁掛けタイルで仕上げられ、スタイリッシュな印象です。

入口が他の住戸と離れているため、プライベート感が非常に高く、気兼ねなく休日をくつろげそう。


他の住戸とは違い、この住戸だけ建物の共用エントランスからアクセスするのではなく、駐車場に面して入口があるのですが、これが簡単には見つけ難い。住戸までの道のりのサプライズ感も含めて、初めて訪れた人へのインパクトは十分。独身目線で妄想すると、たとえば初めて呼ばれた彼の家がここだったら、一発でメロメロになりそうです。

弱点は半地下状ゆえの日当たりのなさですが、夜に働き日中は寝る、というライフスタイルの方や、逆に日中はほとんど家にいないという方には向いているかも。マンションはメインの通りから少し入った住宅地にあるため、周辺はとても静かです。

アイデアが随所にちりばめられた、暮らしながら発見のある家。


トガった雰囲気のリノベーションが得意そうな明光テックさんですが、お客さんも個性的な方が多いのでしょうか?

20代〜30代の、普通の方が購入されますよ。公務員の方もいます。

ちょっと意外でしたが、エッジが効いているように見えて、しっかり暮らしやすい空間ということの裏付けと言えるかもしれません。明光テックさんのリノベーションへのこだわりも聞いてみました。

アメリカン風とかヨーロッパ風とか、わかりやすいテイストで統一してしまうのではなく、あえてそのテイストから「外した」素材を使ってみたり、ひと手間を加えたりして、意外性を持たせるようにしています。

たしかに、今回の物件も「◯◯風」とはひとくくりできない、独特の世界観を持っています。各所に想いと工夫が詰まった空間づくりをなされていますが、明光テックさんが家をつくる際に大事にしているポイントは何なのでしょう?

住んでいる人にとってインスピレーションの湧く家をつくりたいと思っています。居住空間からアイデアが湧くことって、あると思うんですよ。なので、アイデアが湧いて、それをすぐに実行に移せるような、アクティブな人が僕らが手掛ける物件には向いているかも。そういった驚きを住む人に持ってもらうためにも、買ってからも発見のある家づくりを目指しています。「ああ、ここはこういう意図でこうなっているんだな」という風に、さまざまな工夫の理由を、住む人に暮らしながら発見していってほしいと思っています。

左上・共用のエントランス。住戸の入口は別ルートですが、郵便物はこちらに届きます。/右上・外観はシンプル。周辺は住宅地で静かです。/左下・物件は世田谷警察署のそばにあります。/右下・飲食店も生活施設も充実している三軒茶屋。


三軒茶屋は大人の落ち着いた街。家からぶらっと飲みに行ける距離に、夜遅くまでやっているカフェバーや、雑誌でたびたび紹介される名店が軒を連ねています。渋谷や代官山、中目黒に自転車で行ける距離なのも◎。

まさに街の雰囲気とマッチした、オトナの生活を楽しむための物件。静けさの中の隠れ家では、昼も夜も、インスピレーションが湧いてきそうですね。


取材・文:小野美由紀/撮影:cowcamo