中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。

今回ご紹介するのは、42.12㎡という限られた空間を広々と活用する工夫の詰まった一室です。


行き交う船を眺めながら、ホテルライクな空間で日々を過ごす。そんな暮らしを送るおふたりのもとを訪れました。

ベッドを中心としたワンルーム空間。

住まい手は、建築家のタジマさんとホテルの運営会社にお勤めのコジャさん。設計はおふたり自身が手掛けた。

コジャさん:自邸の設計に挑戦したいと思っていたところ、ちょうど学生時代の友人がカウカモマガジンで取材されていたので、彼から不動産やマンションリノベのノウハウを教えてもらって、実行に至ったんです。

左からコジャさん、タジマさん。

そこでおふたりが “リノベの箱” に選んだのは、「築地」に建つ築 48年(取材時)のマンションの一室。「人を呼びやすく、自分たちもアクティブに出かけやすい立地」という条件のもと、カウカモを使って物件を探したそうだ。

タジマさん:部屋に入った瞬間にいいなって思えたんですよ。角部屋の二面採光でビューが本当によくって。共用部も綺麗でしたし、建物自体は古いけど味があって気に入りました。想定していたより狭いけど、そこは設計で工夫しようと!

窓辺のカウンターから隅田川を見下ろす。『いい感じの船がスーッと通るんです!』とコジャさん。

■インスピレーションはホテルから

専有面積は42.12㎡。この限られた空間をいかに広く感じられるかが今回のリノベーションのテーマとなった。

・水回りはコンパクトに

そのための工夫のひとつが、水回りを最小限に抑えたことだ。脱衣所は造らず、洗面は玄関横に配置。トイレ、浴室、洗濯機置き場はコンパクトにまとめてプランニングした。

玄関・洗面を見る。写真左手のパネルは、ハンガーやブラシ、靴べら、姿見などを備えたホテル仕様。

今回の設計にあたって、様々なホテルを視察しに行ったと話すおふたり。

タジマさん:ホテルには省スペースの工夫がたくさん詰まっているんですよ。たとえば洗面を外に出すっていうのはよく見られる部屋のつくり方ですよね。

特に小さな客室だと脱衣所をつくらないケースが多いので、その辺りは最小限に設計してみました。

実は姿見が扉になっており、中にあるトイレの左右に浴室、洗濯機置き場が配されている。

洗濯機の搬入は姿見の扉からでは不可能なので、裏側に別途で搬入口を設けた。

リノベーション前の室内。間取りは1LDK、廊下と水回りが大きなスペースを占めていた。

・視点は低く

広い空間をつくる工夫は水回りの配置だけに留まらない。

コジャさん:訪れたホテルの中で参考にした例を挙げるなら、広島にある「Azumi Setoda(アズミセトダ)」さんですね。

そこの客室はここよりずっと広いんですが、家具の高さが抑えられているから実際の面積以上に広さを感じられたんです。視点を低くすることがポイントで、その考え方をなんとかこの家にも落とし込めないかと思いまして。

家具は背の低いものをチョイス。中には既製品の足を短く切って使っているものも。ベッドは高さを抑えて造作し、壁に倒し込めばくぼみの中にすっぽり収納できる設計だ。

そこでたどり着いた答えは、リビングを全面カーペットにして生活空間自体の高さを下げることだった。

椅子ではなく床中心の生活にすることで、天井が相対的に高くなり、空間を広く体感できる。

タジマさん:なかなかマンションでカーペットって使われないと思うんですけど、普通のフローリングだと、ソファや椅子がないと居場所がつくりにくいなって。

カーペットにしてしまえば、どこでもくつげて広々と空間を使いこなせると考えたんです。

壁面には作業台にもベンチにもなる収納が。

実際に座ってみると、クッション性が高く居心地がいい。気になるのはメンテナンス性だが、毛の密度が高く質のいいウール製のものならば、清掃もしやすく長く使えるのだとか。

なんでもこの家へ見学に来たタジマさんのお客さんも、設計中の建物の仕様をフローリングからカーペットに変更したほど気に入られたそう。

コジャさん:カーペットの質にはこだわりたくて、「堀田カーペット」という会社の大阪工場まで実際に製品を見に行って選んだんですよ。

■いくつもの顔を持つワンルーム

タジマさん:あとは写真がたくさん撮れるような家にしたいねって話もしていました。

コジャさん:もちろん一体的で広い空間はつくりたいんだけど、全部一様に見えちゃったらつまらないなと。

そう語る通り、ワンルームの中にさまざまなシーンをつくったこともポイント。

・赤茶が映える窓辺

中でも目を引くのが窓辺のカウンターだ。赤茶色の天板が室内のアクセントになっている。

コジャさん:この物件を選ぶ決め手になった、船の行き交う景色を楽しめる場所がほしかったんです。

さらに“出窓っぽさ” を強調するためにあえて低くつくった天井には、あるギミックが隠されている。

タジマさん:日本建築の蔀戸(※しとみど)と同じ造りになっていて、吊っている板を下ろせば完全に遮光できるんです。

こういう風に気分に合わせて変化をつけられる場所があると、部屋が生き生きしてくるんじゃないかと思って、色々な仕掛けを散りばめました。

※採光を得たいときには跳ね上げて金具で止める扉。平安貴族が住んでいた寝殿造りの建物に見られる。

カーテンは西日を防ぐため、遮熱性の高いものを採用。外の風景を可能な限り残すため、透けやすい黒色に。

・“緑見” 障子

ベランダ側の窓辺は二重サッシに。こちらは植物が主役になった癒しのスペースだ。掃き出し窓が隠れたことで “マンション然” とした印象が薄れ、ホテルライクさを際立たせてくれる。

タジマさん:こっちの景色はあまり綺麗じゃなかったので、光を取り入れる窓だと割り切ってポリカーボネート(※)の戸を新たに入れました。植物たちの居場所になりましたし、断熱性も良くなって快適に過ごせていますよ。

※プラスチックの一種。強度が高く、熱や紫外線に強い。

サッシの間には植物たちが。戸の緑色のフレームは上下にスライドできる。『雪見障子ならぬ “緑見” 障子なんです(笑)』とコジャさん。

・白の一角

続いて注目したいのが玄関横のコーナーだ。白を基調とした空間で、リビングとは異なる雰囲気が漂う。雑然としがちなキッチンには目隠しとなるカーテンを設えた。

上・カーテンはグラデーショナルに染色されたこだわりの一品。/左下・引き戸でワンルーム空間を仕切ることもできる。床はモールテックス仕上げに切り替えた。/右下・キッチンは既存のものを残したが、取手を冷蔵庫と近いデザインのものに取り替えて周囲に馴染ませた。

さらにカーテンを洗面まで閉めれば、一気に抽象度の高い空間に様変わりする。

コジャさん:ちょっと異質な場所になるので、家の中だけど “離れ” に行くような感覚で使えるんです。リモート会議の背景としてもちょうどよくて。

■飽きの来ないこの場所で

最後に今の暮らしについてご感想を伺ってみると……

コジャさん:『飽きない場所がつくれたな』と満足です。家の中になさそうな非日常的なものを散りばめたので、ずっと籠っていても退屈しませんね。

タジマさん:人を呼べるようになったら、ここでちょっとしたイベントをやりたいです。ベッドを隠したら、10人くらい来ても大丈夫かな。

タジマさん:長く楽しめるように拡張できる余地は残しているので、生活の変化にあわせて家具をつくったり、徐々に色んなことができたらと思っています。

コジャさん:とんでもなく大きい木を入れてもいいよね。どうやって搬入するかだけど(笑)

そんなおふたりの暮らしぶりは、こちらのインスタグラムアカウントで発信中とのこと。これからどんな進化を遂げていくか要チェックだ。

―――――物件概要―――――
〈所在地〉築地
〈居住形態〉ふたり暮らし
〈間取り〉ワンルーム
〈面積〉42.12㎡
〈築年〉築48年(取材時)
――――――設計――――――
〈会社名〉田島理奈設計事務所
〈特設ページ〉ジマルーム

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