中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。

今回は、カウカモエージェント・小田切咲樹の自邸を訪れました。


玄関ドアが開くと、眩しい光を背負ったカウカモエージェント・小田切が笑顔で迎えてくれた。『お疲れさまです。どうぞ』

ここは、彼女がご主人とふたりで暮らしている住まい。築43年になるマンションの一室を購入し、分譲当時のままだった室内にスケルトンリノベーションを施した。

リノベーションの工期は約2ヶ月。多忙なエージェント業務をこなしながら、自分でデザインから現場監督まで務めたという。

左手の玄関側に人が集まるキッチン、右手の窓際にプライベート性の高いベッドスペースが位置する。

■眺望が “すごく抜けている” 物件を求めて

以前、小田切が住んでいたのは中目黒エリアにある木造賃貸アパート。陽当たりが悪く、植物もすぐ枯れてしまうような家だっという。

暮らしを提案する仕事をしているのに、自分がちゃんと暮らせていないということにすごくフラストレーションを感じていたんです。一刻も早く引っ越したくて……

支払える居住費の上限でも、賃貸では住みたい家には住めないし、同じ支払額だったら買ってしまったほうが全然いい生活ができることは、職業柄よくわかっていました。それに、絶対にフルリノベーションがやりたくて!

カウカモエージェントとして数千軒もの物件を見てきた中で、小田切が気づいたのは『私は眺望がすごく抜けている物件が好きだ』ということ。そこで、物件探しでは眺望のよさと未改装であることを絶対条件に広範囲を探したという。

そうして出会ったのは、品川区の “旗の台エリア” に建つマンションの、7階にある住戸。天気のいい日には、窓から富士山が見えるほどの眺望だった。

バルコニーからの眺め。空気が澄んだ日には、富士山に向かって沈む夕日が眺められる。

条件に合う物件はここだけだったので、一軒しか内見をせずに契約をしました。

物件探しを始めてから契約までの期間は、約2週間! 自分の譲れない条件をはっきりさせた上で候補を探し、迷わず決定する。まさにエージェントならではの買い方だ。

■主役は、人が集まるキッチン

専有面積は44㎡弱で、購入時は窓のないダイニングキッチンに個室が2部屋という時代を感じさせる間取りだったそう。それを壁から設備まで一切を解体し、ワンルームに変更した。

ベッドスペースは、寝覚めの良さそうな窓際に配置。リビングスペースでは、この住まいの “主役”である大きなⅡ型キッチンが存在感を放っている。

キッチン天板のサイズは1000mm×2430mm。ウェグナーの名作 “Yチェア” が4脚、余裕を持って並べられている。

主役は、このキッチンです。友人や同僚を自宅に招くのが好きなので、調理台とダイニングテーブルを兼ねる大きなキッチンを設けたかったんです。モルタル系左官材の「モールテックス」で職人さんが4日がかりで仕上げてくれました。

間取りをワンルームにしたのは、せっかく日当たりや眺望がいいお部屋なので、玄関を入ったらすぐに明るさを感じられるようにしたかったからです。

プランニングにあたっては、建築士の友人にアドバイスを貰いながら自ら3Dモデリングソフトでデザインの下地を作り、工事は知り合いの工務店や大工さんに依頼。

さらに施工現場にも足を運んで細かい寸法を決めるなど、デザイナーさながらの行動力で、思い描いた理想の住まいを実現していったという。

左・解体工事前の室内。個室は和室と洋室に分けられていた。/右・内装工事中の様子。キッチンは下地を組んだ上で、ひび割れしにくく水にも強い「モールテックス」で仕上げた。

職場ではエネルギッシュなキャラクターで通っている彼女だが、居住空間はなんともやさしい素材使いとカラーだ。

たおやかな光が隅々まで満ちて、てらりとした凹凸のキッチンタイルやリズミカルに張られたパーケットフローリング、家具やインテリアたちを表情豊かに映し出している。自然光が玄関にまで行き渡っているのは、元々の採光のよさに加えて、天井の窓側半分を躯体現しにして高さを出していることも奏功しているだろう。

キッチンのコンロ側壁面のタイル。単調にならないよう、一部パターンを変えて使用している。

珍しいパターンのパーケットフローリングは、調布市にある木材メーカー「ティンバークルー」の製品。向きを変えて貼ることで、様々なパターンにできる。

■立つ人と座る人の目線を揃える技

常日頃からリノベーションにアンテナを張っている小田切らしいアイデアもそこかしこに。たとえば調理台と食卓、そしてワークデスクをも兼ねるキッチンには「立つ・座る」を両立させる工夫がなされている。

シンク側の床面を他の部分より150mm下げて、座って食事をする人と立って調理をする人が同じ目線になるようにしました。戸建てをリノベした両親の友人の家で見て、ずっと憧れていた仕様なんです。

大きなキッチンはまた、豊富な収納スペースも生んだ。食器類はもちろん、大きな鍋や調理家電も下部にスマートに収められ、必要な時に出し入れをすることで、いつでも清楚な部屋が保たれる。

コンロ側の床は150mm下げられていて、キッチン天板の高さが900mmになる設計。

こちらは、着席した目線で撮影した一枚。自宅で仕事をする際に便利なよう、天板の下にはコンセントが取り付けられている。

小田切は『整理整頓が下手なんですよ』と笑うが、キッチン以外でもかなり計画的に “見せない収納” を実践している。キッチンの対面側には、7枚扉の大きなクローゼットが設けられているのだ。

そこには、日用品を初めふたり分の衣類や仕事の書類、ご主人のキャンプ用品などがまったく存在を気づかせることなく収められている。実は、小田切家にはこのクローゼット以外に、ウォークインクローゼット(WIC)や壁面収納などは存在しない。

WICは場合によって、面積の割に収納容量がそれほど多くなかったり、出し入れに難儀することもあるが、これなら容量と使い勝手のよさを両立できるというわけだ。

7枚扉の大きなクローゼットにすべての荷物を収納。奥行きも十分深く、かなりの大容量だ。上部が空いていることで、圧迫感も感じにくい。

■天井の照明器具を廃して、スッキリと

ここまでの写真で、天井にシーリングライトやブラケットライト、あるいはリノベーションでよく用いられるライティングレールが無いことにお気付きだろうか。

天井に照明を極力付けなかったのも、設計でこだわったポイントです。スポットライトなどの明るすぎる照明は好きじゃないので、キッチン側にはダウンライトを埋め込んで、ベッド側には棚の部分に間接照明を設置しています。

これは『天井に照明を付けないのが最新トレンド』という友人の設計士のアドバイスを受けてのことだそう。天井が “うるさくない” ことで、家具やグリーン、インテリアもよく映えている。

天井は躯体現しの白塗装仕上げ。視界上方に何も付いていないことでかなりスッキリとした印象。窓側はフリースペースで、場所を専有してしまうソファはあえて置かず、チェアを置いたりヨガマットを広げたりとフレキシブルに使っている。

知人の家具屋にイメージを伝え、“おまかせ” で造ってもらったテレビボード。上部に間接照明が取り付けられている。迫力ある一枚板を使用。

■大きなキッチンが生む幸せ

以前の住まいでは、平日は “寝に帰るだけ” で滞在時間が極端に短かったそうだが、ここに引っ越してからというもの、居心地がいいため『ちゃんと帰ってこよう』と思うようになったそう。

友人や同僚が大勢で遊びに来たときも、みんなちゃんと座って同じテーブルを囲めるのが嬉しいですね。彼も料理が好きなので、ふたりで一緒に作業もできるし。

上・ベッドスペースにはパーティションのような腰壁を立て、プライベートな空間が見えにくい造りに。/左・玄関からこの眩しさ。ごく短い廊下部分は、有効寸法を確保するため斜めにされている。その横にはご主人のワークデスクが。/右・洗面台にはちょっとビビッドな差し色を。ミラーはステンドグラス作家「VIVO」のハンドメイド品。

この家でのお気に入りの過ごし方は? と聞くと、小田切は『朝食』と答えた。

朝、目覚めたら焼きたてのパンとコーヒーが用意されているのはすごく幸せですね(笑)。ホント地味なことですけど。『私、ちゃんと生活しているな』って実感しています。

普段の朝食の一コマ。パン職人並みの腕前を持つご主人が、焼きたてのパンを用意してくれるそう。

ーーーーー物件概要ーーーーー 
〈所在地〉東京都大田区
〈居住者構成〉DINKS
〈間取り〉ワンルーム
〈面積〉43.76㎡
〈築年〉築43年

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