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『全部壊して、全部新しく』。そんなリノベーションへのアンチテーゼ。この物件に詰まったストーリー、内装、素材を継承するように、丁寧に削ぎ落とし、活かし、造り替える。職人の手によってひとつひとつ試行錯誤を重ねたら、あら不思議。原点回帰が新しさへとつながった。

豊島区雑司が谷(雑司が谷駅徒歩1分)
2LDK / 56.05㎡ / 4,780万円

メゾネットの3方角住戸

<b>左・</b>玄関扉を開けると、いきなり躯体コンクリート剥き出しの階段が現れました。/<b>右・</b>上った先から振り返ったところ。元の内装を一部カットしたような天井や壁が美しい(右撮影:中村晃)。

左・玄関扉を開けると、いきなり躯体コンクリート剥き出しの階段が現れました。/右・上った先から振り返ったところ。元の内装を一部カットしたような天井や壁が美しい(右撮影:中村晃)。

cowcamo

いやいやこれは……めちゃくちゃテンション上がります。先を見るのが楽しみ!

土間+縁側

階段を上がったところには土足のまま入れる空間が。縁側は解体時に出た荒板を再利用したもの。壁は既存の壁紙を剥がした時に出てきたパテの跡を残しています。

階段を上がったところには土足のまま入れる空間が。縁側は解体時に出た荒板を再利用したもの。壁は既存の壁紙を剥がした時に出てきたパテの跡を残しています。

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大きなデスクを置いてワークスペースにするのはいかがでしょう?靴を履く動作を挟むことで “出勤モード” に切り替えられるかもしれませんよ。

階段を上った先のスペース、なんと元は押し入れだった場所。残った天袋収納が痕跡を物語っています。オープン棚は下足入れやディスプレイ収納として活用できそう(撮影:中村晃)。

階段を上った先のスペース、なんと元は押し入れだった場所。残った天袋収納が痕跡を物語っています。オープン棚は下足入れやディスプレイ収納として活用できそう(撮影:中村晃)。

開口をくぐってLDKへ

白を基調とした空間に木の素材感が活きています(撮影:中村晃)。

白を基調とした空間に木の素材感が活きています(撮影:中村晃)。

切断して再結合した L字のキッチン

壁付けだったI型のシンプルなキッチンをシンク部分と作業台+コンロ部分で切断し、間に収納カウンターを継ぎ足してリメイク。元々壁が立っていたと思われる箇所はコンクリート躯体現しのままで、新旧の見事な融合に鳥肌(撮影:中村晃) 。

壁付けだったI型のシンプルなキッチンをシンク部分と作業台+コンロ部分で切断し、間に収納カウンターを継ぎ足してリメイク。元々壁が立っていたと思われる箇所はコンクリート躯体現しのままで、新旧の見事な融合に鳥肌(撮影:中村晃) 。

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ちょっともう、かっこよすぎます。足された部分の天板は、シンクのまわりまでぐるっとセメント系左官材で仕上げられています。職人さんの技を感じますね。

スコンと抜ける

シンクの前に立つと、視線は遥か彼方まで。正面の窓は東向き、右手の窓は南向きです。

シンクの前に立つと、視線は遥か彼方まで。正面の窓は東向き、右手の窓は南向きです。

惚れるディテール

土間とリビングダイニング(LD)の間にあった壁を一部解体し、間柱と横胴縁(よこどうぶち)を現しにすることで視線や空気が抜ける開口に。棚受けを設置することでディスプレイ棚としての役割も。

土間とリビングダイニング(LD)の間にあった壁を一部解体し、間柱と横胴縁(よこどうぶち)を現しにすることで視線や空気が抜ける開口に。棚受けを設置することでディスプレイ棚としての役割も。

元のフローリングを活かし、タイル状に溝を彫って、摩耗に強い塗料で白にペイント。掃き出し窓の前にはベンチも(撮影:中村晃)。

元のフローリングを活かし、タイル状に溝を彫って、摩耗に強い塗料で白にペイント。掃き出し窓の前にはベンチも(撮影:中村晃)。

バルコニーへ

目の前の建物よりも高い位置に所在し、視線の先には「東京スカイツリー」まで。

目の前の建物よりも高い位置に所在し、視線の先には「東京スカイツリー」まで。

バルコニーの柵は近代的なデザインのものに刷新済み。緑と青空で構成された、実に気持ちのいいビューですね。

バルコニーの柵は近代的なデザインのものに刷新済み。緑と青空で構成された、実に気持ちのいいビューですね。

cowcamo

マンション自体は明治通り沿いに建っていますが、建物がL字型をしており、こちらのバルコニーは通りから最も離れた位置かつ反対向き。走行音や排気ガスが気にならないのもうれしいポイントです。

室内全景

キッチンには化粧板を造作して囲んでいます。よく見るとLD側は引き戸の収納になっていますね(撮影:中村晃) 。

キッチンには化粧板を造作して囲んでいます。よく見るとLD側は引き戸の収納になっていますね(撮影:中村晃) 。

cowcamo

奥へと進みましょう。

記憶

お気づきになったでしょうか? 写真中央が元々階段がつながっていた部分。その痕跡を残すように、現在は手すりを貫通させたベンチになっています。横にはデスクスペースも造設。

お気づきになったでしょうか? 写真中央が元々階段がつながっていた部分。その痕跡を残すように、現在は手すりを貫通させたベンチになっています。横にはデスクスペースも造設。

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こういうギミック、たまらなく好きです。土間の方(元押し入れ)へ出られるよう、階段は3段ほど追加したそうですよ。

奥の間

畳、障子と和の素材が使われつつも、壁の一部には木材が張られています。ヘッドボードに見立て、前にベッドを置くとよさそうですね。

畳、障子と和の素材が使われつつも、壁の一部には木材が張られています。ヘッドボードに見立て、前にベッドを置くとよさそうですね。

こちらにもまた緑

窓は西向き。眼下に見えているのは、お隣のお屋敷の大きな木々。

窓は西向き。眼下に見えているのは、お隣のお屋敷の大きな木々。

天井が一部くり抜かれ、躯体が現しになっています。斬新な折り上げ天井の完成(撮影:中村晃)。

天井が一部くり抜かれ、躯体が現しになっています。斬新な折り上げ天井の完成(撮影:中村晃)。

cowcamo

くり抜かれた部分は土間空間の天井に再利用されています。写真を見返して探してみてくださいね。

<b>左・</b>元々土間部分にあった障子を再利用。開けると中はたっぷりの収納になっています。/<b>右・</b>縦長窓から階段と土間がチラリ……う〜ん、エロい。

左・元々土間部分にあった障子を再利用。開けると中はたっぷりの収納になっています。/右・縦長窓から階段と土間がチラリ……う〜ん、エロい。

無骨で美しい 水まわり

洗面台、洗濯機置き場、シャワーブース、トイレが一体となった空間です(撮影:中村晃)。

洗面台、洗濯機置き場、シャワーブース、トイレが一体となった空間です(撮影:中村晃)。

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チャレンジングな場ではありますが、ありきたりなユニットバス、もう飽きましたよね? 湯気が立ち込めても大丈夫。ふたつの小窓で換気できます。

ブロック壁を必要な分だけ壊し、奥の居室側に飛び出すように洗面ブースを設置。断面の荒々しさがクールです(撮影:中村晃)。

ブロック壁を必要な分だけ壊し、奥の居室側に飛び出すように洗面ブースを設置。断面の荒々しさがクールです(撮影:中村晃)。

<b>左・</b>オーバーヘッドシャワーが付いたシャワーブース。/<b>右・</b>タンクレスのトイレが空間にポンと置かれています。

左・オーバーヘッドシャワーが付いたシャワーブース。/右・タンクレスのトイレが空間にポンと置かれています。

渋かっこいい ヴィンテージマンション

1967年竣工と長い年月を経てきた建物。まるで燻銀です。総戸数127戸と大規模で「雑司ヶ谷」駅から徒歩1分の場所に建っています。

1967年竣工と長い年月を経てきた建物。まるで燻銀です。総戸数127戸と大規模で「雑司ヶ谷」駅から徒歩1分の場所に建っています。

cowcamo

古い。確かに古い。でも美しく刷新された共用部をどうぞご覧ください!

<b>左上・</b>立派な庇(ひさし)が付いたエントランス。車寄せまでありますよ。/<b>右上・</b>2層吹き抜けの共用ロビー。管理人さんは平日9:00-17:30、土曜日9:00-12:00と長時間勤務されています。/<b>左下・</b>共用ロビーを反対側から。車寄せのシンメトリーなデザインがたまりません。/<b>右下・</b>玄関がある6階の共用廊下。渡り廊下を歩いて一番奥の住戸まで。

左上・立派な庇(ひさし)が付いたエントランス。車寄せまでありますよ。/右上・2層吹き抜けの共用ロビー。管理人さんは平日9:00-17:30、土曜日9:00-12:00と長時間勤務されています。/左下・共用ロビーを反対側から。車寄せのシンメトリーなデザインがたまりません。/右下・玄関がある6階の共用廊下。渡り廊下を歩いて一番奥の住戸まで。

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今回の物件に相応しい、痺れるかっこよさのマンションです。これだけきれいに維持管理されているのに、毎月の共益費が控えめなのもうれしいですね。

ノスタルジーに浸る 「雑司ヶ谷」

<b>左上・</b>東京さくらトラム(都電荒川線)が走る街。/<b>右上・</b>「鬼子母神」周辺も昭和にタイムスリップしたような風景がたくさん残っています。(徒歩2分)/<b>左下・</b>「おにぎり・とん汁 山太郎」は行列のできる繁盛店。テイクアウトして家でゆっくりいただきましょう。(徒歩3分)/<b>右下・</b>歴史ある建築物を改装して営業している「キアズマ珈琲」。(徒歩3分)

左上・東京さくらトラム(都電荒川線)が走る街。/右上・「鬼子母神」周辺も昭和にタイムスリップしたような風景がたくさん残っています。(徒歩2分)/左下・「おにぎり・とん汁 山太郎」は行列のできる繁盛店。テイクアウトして家でゆっくりいただきましょう。(徒歩3分)/右下・歴史ある建築物を改装して営業している「キアズマ珈琲」。(徒歩3分)

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副都心線が乗り入れる「雑司ヶ谷」は「新宿三丁目」や「北参道」「池袋」にも1本。行動範囲が広がりそうです。

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カウカモ編集部より

街の雰囲気と駅の近さ、マンションから溢れ出る貫禄と “住まう人々に大切にされてきた感”、そしてまるで実験住宅のような職人さんの手仕事の連続に、完全に心奪われてしまいました。好きです。大好きです、この物件!


手入れのしやすさや使い勝手のよさにこだわって造られた既製品が、家中のすべてを覆い尽くすリノベーション物件もいいと思います。なにしろ住みやすいですし、メンテナンスも楽ですもの。だけどその物件に積み重なった歴史とか記憶とか、そういう “捨てられてしまうもの” にフォーカスを当てて、大切にリメイクするリノベーション物件がもっともっと存在してもいいと思うんです。そこに造り手の想いまで乗ったなら、なおのこと素敵。

解体屋さん、左官職人、大工さん、さまざまなプロフェッショナルが知恵を出し合って、楽しみながら造ったに違いない、まさに『一点もの』の住まい。建築好きな方がお住まいになればきっと住むごとに発見の連続で、ニヤニヤが止まらない暮らしになるに違いありません。

ああここに住める人が羨ましい。みんなの想いが乗っているからこそ、住んだ後の幸福感は格別だと思います。ぜひぜひ、この愛を受け止めてくださいね!

writer:伊勢谷 亜耶子/editor:本多 隼人

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