今回ご紹介するのは、田園都市での豊かな暮らし、それに似合う上質で洗練されたリノベーションが施された住まいです。

都心から田園都市エリアへ引っ越した友人に聞くと、上品でいい感じの暮らしぶりの若いファミリーが多く、生活にもゆとりが出てきた、と言います。

左上:宮崎台駅のエントランス。すぐ隣に東急ストアがあり、とても便利です。/右上:駅前ロータリー。駅隣の施設には「ミスタードーナツ」や「ケンタッキーフライドチキン」、「タリーズコーヒー」、ドラッグストアが入っています。/左下:物件から徒歩4分、生鮮食品が充実したスーパーマーケットもあります。/右下:「ドン・キホーテ」東名川崎店は物件から徒歩5分。朝4時まで営業しています。

この辺りは、最近ではファミリーにとても人気の高いエリアになっていますね。宮崎台は、半世紀前に豊かな自然と共存するきちんとした計画で街づくりが行われた「多摩田園都市」の玄関。閑静で美しい住宅街が緑に埋もれています。いくつもの公園や手入れされた街路樹、学校、有名な病院、スポーツクラブなどもありファミリーが安心して暮らせる施設が充実しています。渋谷や大手町へは乗り換えなしでアクセス可能という便利な立地で、しかも最近注目されている二子玉川へは電車でたったの7分ですね。(西川さん)

そう話すのは田中建設リノベーションスタジオの西川達郎さん。

田中建設リノベーションスタジオの西川達郎さん(右)と内装デザインを手掛けたduffleの阿相稜さん(左)。おふたりの綿密なキャッチボールによりこのノーブルな物件は誕生しました。

確かに二子玉川の盛況ぶりは目を見張るものがありますね。渋谷や吉祥寺と肩を並べるほどで、シネコンやホテルなど民間再開発としては都内最大級のスケールの「二子玉川ライズ」(総開発面積は約11.2ha)と定番の玉川高島屋S・Cがあれば、都心に出なくとも、なんでも買えてなんでもできるという安心感があります。

左上:物件から徒歩3分のところにある大きな公園。遊具もたくさんあってファミリーの憩いの場です。/右上:公園内には野球グラウンドも。まわりの大きな木の緑に癒されます。/左下:公園の一角にある「宮崎こども文化センター」。こういう施設が徒歩3分という距離にあるのはうれしいですね。/右下:宮崎台駅の隣にある「電車とバスの博物館」。東急線の旧型車両や電車・バスの運転および飛行機の操縦体験シミュレーターなどの展示や、パノラマ模型運転コーナーなど、大人から子どもまで楽しめる博物館です。

ちなみに、「多摩田園都市」とは、東京急行電鉄によって開発が行われた、東急田園都市線の梶が谷駅〜中央林間駅間のことを指します。開発のきっかけとなったのは、1898年にイギリスの社会学者エベネザー・ハワードが著書「明日の田園都市」(THE GARDEN CITY)で発表した新しい都市理論。それにインスパイアされた実業家、渋沢栄一親子が、大正時代から東京近郊で都市計画構想を始め、その後は東京急行電鉄が一括代行し1959年から川崎市の野川地区で開発をスタートしました。大規模で確固たる理念の基に壮大な計画で構築したので、宮崎台は単に自然豊かな街というだけでなく、電車や車の便もよい、緑に癒されながらファミリーが安心して長く暮らし続けられる、アカデミックで文化的な街と言えますね。

左上:堂々たる外観。ちょっと小高い丘に建っているので余計にかっこよく見えますよ。/右上:南欧風のファサード。アイボリー色のやわらかな風合いのタイルも素敵です。/左下:スッキリとシンプルなエントランススペース。エレベーターは最近更新されたばかり。/右下:入居者なら自由に使える屋上の洗濯物干し場。周囲に視線を遮るものがないので、ここからの景色はとても気持ちいいです。

そんな素晴らしい街の今回の物件。春になったら満開になる駅前の桜の街路樹のメインストリートから連なった、並木道の緩やかな坂を上った小さな丘の上、そこに堂々と建つ5階建てのアイボリーのタイル貼りのマンションです。秀和シリーズ特有のアイアンのバルコニーの柵が、アイボリーのタイルに映えスタイリッシュな印象です。

しっかりとした有名ゼネコンの建築で、管理がとても行き届いています。80㎡を超える専有部は、いろいろとリノベーションのやりがいがありました。この街だからこそ、この街に似合うステージのライフスタイルが叶えられる内装が完成しました。(西川さん)

左:玄関からリビングを見る。この気高さを感じるアプローチと、リビングまでの距離感。まるで海外のアパートメントのよう。/右:エントランスホールは決して広くはないのですが、壁面収納はたっぷりあります。

左:ファミリーでゆったり使えるバスルーム。掃除もしやすく長く使えそうです。/中:洗面台。キッチンで使用されているものと同じモザイクガラスタイルがアクセント。/右:トイレ。一番奥まったところにあるので、間接照明をつけて、ゆとり感を演出しています。

今回、内装デザインを担当したのは、duffleの阿相稜さん。ブルースタジオにて、店舗設計、住宅設計、リノベーションなど数多くの設計を数多く手掛け、独立。個性的で、住み手のスタイルを活かし今の気分を取り入れるのが巧みなデザイナーです。

広々としたクリーンなリビング。扉の奥は洋室1。マスターベッドルームに使えそうな個室。天然無垢アカシアのフローリングです。アイアンの柵越しに見える緑が心地いい。風通しもよくとてもさわやかな空間でした。


左:リビングとマスターベッドルーム側にあるベランダ。長スパンなので、ベランダ菜園などいろいろと計画できそうですね。ヴィンテージ感あるアイアンの意匠も愛らしい。/右:ベランダから見える景色。高層階ではないのですがある程度抜け感があり、人通りもそんなに多くなく落ち着けます。

既存の和室や小さなリビング、キッチンを壊し、天井を抜いて、ギャラリーのようなホワイトキューブの広々とした、ワンルームのスペースにしました。ダクトも出しっ放しにせずにすべて隠して、天井も丁寧にホワイトで塗装。できるだけシンプルでプレーンな空間にしています。床材は品もあり経年変化も楽しめるアカシアを使用しました。今回は、インダストリアルなテイストなどラフな部分を残さずに、綺麗目に仕上げています。(阿相さん)

全体的にとてもエレガントでノーブルなテイスト。上質なライフスタイル「本物の暮らし」を長く構築していけそうです。

玄関を開けたとたんに、リビングの大開口からのやわらかい光に包まれます。リビングの掃き出し窓からはかなりの距離があるのですが、アカシアのフロアのアプローチは気品を感じ高揚感を感じました。リビング&ダイニンングに入ると、エレガントな雰囲気でとても大人っぽい仕上げが見て取れます。

ご家族ができるだけ長く住んでいただけるように、流行に左右されないように飽きの来ないスタイルにしています。年数を経てライフスタイルの変化や、ライフステージがどんどん上がっていってもそれに対応できるように、いろいろな余白を残しています。(阿相さん)

左:洋室1。リビングからマスターベッドルームになる個室はフロアが続いていて、ベランダも横に広いです。/右:マスターベッドルームになる個室。棚の下には細いハンガーポールが仕込んであって、この幅すべてに洋服が掛けられます。間接照明も設置され夜は素敵な雰囲気です。

子どもが小さいうちはベッドルームで一緒に寝て、リビングが子どもの遊び場に。大きくなっていくと個室を使い、広々としたリビングにはアートを飾ったりヴィンテージ家具をコレクションしたりと、長いスパンでの暮らしの情景が思い浮かびます。それだけ、ポテンシャルのある余白が効いた空間とも言えます。

広いリビングから独立したクローゼットを見たところです。このクローゼットの奥に書斎スペースが隠されています。天井や壁の塗装やクロス貼りも丁寧に施されています。

リビングには、独立した形で約1.5畳のクローゼットを設置。建具と同じラワン材を使ったそのクローゼットのまわりをぐるりと歩けるというユニークなつくり。

クローゼットの奥には、家族で使える書斎が! リビングからはクローゼットの壁が目隠しも兼ねています。

左:独立したクローゼット。約1.5畳あり、かなりの収納力。と言うか部屋ですね。/右:廊下にも収納が。とにかくたくさんの隠せる収納が設けてあります。

ここが家族で楽しめる書斎スペース。こんな空間が欲しかったという声が取材時に全スタッフから出ました! リビングやキッチンからは見えないので、ここはどんなに散らかしても大丈夫なのがうれしい。

この書斎スペースは個人的にも気に入っています。ここのデスクでPCを置いたり、本を読んだり、遊んだり、お子さまが成長しても勉強したりといろいろ使えるようにしています。どうしてもデスクまわりはごちゃごちゃしてしまうので、リビングやキッチンからは見えないようにしました。でも、オープンスペースなので、キッチンやリビングにいる家族とのコミュニケーションは取れて安心です。(阿相さん)

デスクの壁面には造り付けのシェルフもたっぷりあるので、いろいろと家族全員のグッズを収納できそうです。完全個室になる独立したクローゼットもかなりの収納力です。食品ストック倉庫に使ったり、アウトドアグッズの大物を収納したり、なんでもがんがん入れられそうなので、リビング&ダイニングはスッキリしたまま使えそうです。

確かにデスクまわりの細々したもの、大物や季節のもの食品など生活感あるものを目隠しするだけで、空間が散らからず、スッキリと広く使え余裕が生まれますね。

左:少し奥まったところにある調理に集中できるキッチン。カウンターにスツールを置けば、忙しい朝の朝食も楽しめそうです。ラワン材の扉の中は収納に。/右:ふたつに分かれているので動かずに調理が進められるキッチン。キッチンはパナソニック製。両方にたっぷりと収納があり、かなり便利です。モザイクガラスタイルの色味も素敵!

キッチンは、1800cmのシンク台とコンロ台のカウンター2台を設置しました。前後に据えたレイアウトなので動き回る必要がなく、集中的に調理ができます。また、キッチンカウンターは、シンク台とコンロ台のトップよりもやや高さを出して、手元の目隠しにしたので、多少キッチングッズなどが散らかっていても平気です。(阿相さん)

1800cmのシンク台とコンロ台。つまり3m60cmのキッチンということですね。その長いスパンで調理すると左右に動くのが大変ですが、ふたつのカウンターに挟まれて立つと、何でも近くにあってとても便利なのが分かりました。そして、このキッチンではかなり集中して調理ができそうです。でも、閉ざされた空間でもないので、家族やホームパーティ時のゲストたちとのおしゃべりも楽しめます。こんな豊かで余裕のあるキッチン。本当に憧れてしまいます。

左:洋室2。約5.3畳の広さです。将来の子供部屋に。/右:観音開きのクローゼットにはたくさん収納できそうです。

洋室3。約4.8畳の広さです。おふたり目の子供部屋やゲストルームとして使えそうです。ここにもクローゼットがあります。

この物件の魅力は、シンプルでプレーンだけどポテンシャルある余白がたくさんあり、家族とともに各部屋が成長できること。そして、毎日都心で忙しく仕事しても、まるでリゾート地の別荘に帰るように、このたおやかで緑豊かな街に癒されリラックス&リチャージができること。さらに、片付けが楽なので、友人をいつでもたくさん招いても、大丈夫な包容力のある空間であること。

さまざまなシーンでこの住まいの矜持を感じることができるでしょう。

ここに住むファミリーはどんなストーリーをここで綴っていくのでしょうか?

どんなスタイルを楽しんでいるのか、例えば3年ごとに定期的に訪れてみたくなります。そんな物件です。


取材・文:近沢晋治/撮影:cowcamo