こだわって造り上げた住まいだから、大切に住み継がれていって欲しい。「住み継ぎの先輩に聞く!」では、そんな想いのこもったバトンパスの物語をご紹介。カウカモの「売却サポート」で住まいを売却した方、購入された方の双方にインタビューを行い、新しい住人の元でどのように活かされているかをレポートします。
今回は、建築家によるフルリノベーションがなされた住まいが住み継がれるストーリーをご紹介。
【売却時の住まい】
建築家とつくりあげた、こだわりのリノベーション
前オーナー:Kさん / 5人家族
現オーナー:ひろやさん / みきさん
場所:等々力
間取り:2LDK
面積:58.95㎡
築年数:築44年(取材時)
内装:Kさん=未改装状態からフルリノベーション
ひろやさん / みきさん=購入後そのまま居住
ここは「等々力」に建つ築44年(取材時)のマンションの一室。前オーナーのKさんは、 2011年に第一子が生まれるタイミングでこの物件を購入。入居時にはリノベーションを施さず、そのままの間取りでしばらくお住まいだったそう。
Kさん(前オーナー):敷地いっぱいに緑溢れる環境が気に入ってここに住み始めました。春は桜がとても見事なんですよ。
当時は、家に入るとまず廊下の両脇に和室がある昔ながらの団地みたいな間取りで、今のリビングもふたつに分けられていたので、全然広々とした感じじゃなかったんです。
そのまま数年暮らしていたんですが、三人目の子どもが生まれたら手狭になるなと感じていて。
第三子の誕生を迎えた2017年当時、引越しも視野に入れたそうだが予算の問題やこの住まいの環境のよさが捨て難く、フルリノベーションで間取りを改善することに。はじめはハウスメーカー系の業者に設計を依頼するも、なかなかKさんの感覚にフィットするような提案に巡り合えなかったそう。そんな中、近所で建築設計事務所を営む「須川ラボ」との出会いがあった。
Kさん:建築家に依頼する手があると知ってはいたんですが、インターネットで検索してみると選択肢が多すぎて、誰に頼めばいいのか分からなくなって(笑)
そこで近所ならば打ち合わせなんかもしやすいだろうと思い、見つけたのが須川ラボさん。ホームページに載っている事例を見るとどれも素敵で惹かれました。
実際にお話を伺ってみると、お子さんのいるご夫婦で設計をやられている事務所とのことで、自分たちと近い感覚で設計していただけるんじゃないかなと感じたんです。
須川ラボの設計は、週末の過ごし方や家族の体格まで、Kさん一家のライフスタイルを詳しくヒアリングすることからはじまったそう。ドアの取手やコンセントの位置まで、ひとつひとつの設計に細かな心遣いを感じ、安心して設計を任せられたのだとか。
Kさん:『3人の子どもがいても住み続けられるように』と依頼したところ、間取りをガラッと変えて無駄なスペースがないような設計をしていただけました。区切られているけど視線が抜けてつながっているような感覚がなんともよかったですね。
Kさん:見た目だけじゃなくて家自体の性能もあがってるんですよ!前は使っていない部屋がすごく暑かったり寒かったりで……リノベーション後はどの部屋も温度が均一で本当に過ごしやすくなりました。
そうKさんが語る通り、壁内部に断熱材を追加した上、窓は全て二重サッシに。熱環境も考慮した設計がなされたため、エアコンの効きも段違いになったそうだ。
Kさん:とにかく気に入っていた家で、帰ってくるのが毎日楽しみでした。早朝、子どもたちが起きてくる前にリビングでコーヒーを淹れて静かに過ごす、そんな時間が至福で(笑)
【売却について】
時代は移り変わって
さて、Kさんがこのお気に入りの住まいを売却した理由とは?
Kさん:仕事が在宅勤務に切り替わって、もはや都内に住む必要がなくなったのが理由として大きいですね。
それにリノベーションのおかげでとても住みやすくはなったんですが、子ども3人が大きくなったら、60㎡に満たないこの家はやはり狭いんじゃないか、というのが正直なところで。
現在、Kさんは東京を離れて海辺の街で新しい暮らしを満喫中。引越しを検討してすぐに、条件に合う中古の戸建て住宅を見つけて購入を決意したそう。
この住まいを売り出すにあたって、当初は大手仲介業者3社に依頼したが、思ったように反響を得られなかったと話すKさん。
Kさん:最初にお願いした業者さんには、価格設定が高すぎると言われてしまいました。内見も一度しか入らず、本当に鳴かず飛ばずで……こんなにこだわりの詰まったリノベーションも一般的な査定では評価されないし、お客さんには見向きもされないのかと弱気になってしまいました。
それから『リノベ物件を専門に扱っているところなら違うのでは?』と見つけたのがカウカモだった。
Kさん:担当してくれた杉田さんには『この家ならすぐに買い手が見つかりますよ!』と勇気づけていただけました。
その言葉通り、物件記事を公開してから続々と内見依頼が入って、一週間も経たないうちに現オーナーさんとのお話がまとまったんです。これには最初に依頼していた大手の業者さんも驚いていましたよ。
売却時に大変だったことを伺うと、Kさんは楽しげに当時を振り返ってくれた。
Kさん:やっぱりリノベ好きな方々が内見にきてくれるので、須川ラボさんこだわりのポイントを紹介すると、みなさん楽しそうに聞いてくださって。
もはや私も売りこむのが大変という感覚はなくて、純粋にこの家のよさを話すのを楽しんでいました。正直またやりたいくらいです(笑)
【現在の住まい】
新しい住まい手のもとで
では、新しい住人へと受け継がれたこの住まいは、今どんな姿なのだろうか。現オーナーのひろやさん・みきさん夫妻のもとを訪ねた。
おふたりは当時カウカモエージェントとして働いていた坂上と気心の知れた間柄(坂上は現在編集部に異動)。この物件が売り出された頃、具体的に引越しは検討していなかったそうだが、坂上のすすめもあり『リノベ物件を一度みてみよう』と内見に訪れた。
ひろやさん:家探しをするつもりはなくて、本当になんとなく内見に行ったんです。
強いて言えば、前住んでいた家が賃貸だったので、更新のタイミングでいいところがあったら引っ越そうかなって感覚でした。
みきさん:そうそう、見るだけでも楽しいって聞いて。近場だったここを一番はじめに紹介してもらったんです。
でも、いざ内見してみると『すごい良い!』って一目惚れしてしまって。
もともと近隣のエリアにお住まいだったおふたり。落ち着いた雰囲気のある街自体にも愛着があり、以前の家は収納が少し足りないくらいで、暮らしに対して不満はほとんどなかったとのこと。しかし、この物件があまりに理想的ということで引越しを決意することに。
みきさん:全部が完璧だったんですよね。大きなリビングがバーンと広がって、寝室や物置に出来そうな部屋も確保されている、まさに理想の間取りで。
ひろやさん:白い壁でさらっとした “ザ・きれいにしました” って内装ではなくて、手のかかった感じっていうんですかね。そんな雰囲気も魅力的だったんです。
『マンションの管理がよくて、リノベーションの内容もふたりの好みにマッチしてる。そんな物件は今後出てくるかわからないと思って、自信を持っておすすめしました』と坂上。先ほど述べたとおり、内見依頼が殺到する人気物件であったが、おふたりは平日の日中に訪れたため、Kさんのお話も伺いつつじっくりと部屋を見られたのだとか。
ひろやさん:『確かにこんないい物件もう出会えない』と感じて、スピード感を持って話を進めました。
もともと近所に住んでいたので土地勘はありますし、気に入っていた生活環境を変えずに引っ越せるということが安心材料として大きかったですね。
みきさん:ここだけみて決めるのはさすがに、ということで他の物件を4軒回ったら『やっぱりここだ!』と決心が固くなりました。
しょうこちゃん(坂上)がここをぐいぐいおすすめしてくれたのも納得でしたね(笑)
みきさん:インテリアはこの家に引っ越してきてこだわり始めました。この部屋に合うものを探すのが楽しくって。
と語る通り、おふたりのセンスで彩られたインテリアが印象的だった。リビングに飾られたドライフラワーは、フラワーアーティストのご友人にこの部屋のイメージに合わせて作ってもらったものだそう。最後にそんなインテリアの一部をご紹介しよう。
前オーナーであるKさんに今の住まいの様子をお伝えすると『素敵に住み継いでもらって私たちも嬉しいですし、きっと家自身も喜んでますよね』と朗らかに答えてくれた。
こだわって造った住まいに、次の住人によって新たな彩りが添えられていく。そんな素敵なストーリーがまたひとつ、ここに生まれていた。
担当エージェント:杉田 有加・坂上 翔子/撮影:沢崎 友希 / 取材・文:本多 隼人