
ミッドセンチュリーは、シンプルで機能的なデザインと1950年代前後のアメリカのレトロ感が調和したインテリアスタイルです。個性的でありながら、落ち着いた空間をつくり出すことができるスタイルとして人気が高いデザインです。
本記事ではミッドセンチュリーの基本的な知識や代表的なメーカー・デザイナー、取り入れる際のポイントを解説します。
ミッドセンチュリーとは

ミッドセンチュリーの歴史
ミッドセンチュリーを直訳すると「1世紀の中間」という意味です。一般的には20世紀半ば、特に1940年代から1960年代にかけてアメリカで流行した家具や建築のデザインスタイルを指します。
アメリカで生まれましたが、その影響は世界中に広がりました。そのため、アメリカンミッドセンチュリー、ヨーロピアンミッドセンチュリー、さらには日本独自の解釈であるジャパニーズミッドセンチュリー(ジャパニーズ・モダンとも呼ばれる)など、国や地域によって異なる特徴を持つようになりました。
第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカは、自国が戦場とならなかったため産業の復興が早く、製造業が急速に発展しました。これに伴い、成形合板やFRPなどが家具づくりに活用され始め、それまで困難だった曲線的なデザインの表現が可能になったのです。
ミッドセンチュリーの特徴
ミッドセンチュリーの主な特徴は、余計な装飾を排したシンプルでモダンなデザインです。この時代に登場した家具には、成形合板やFRP(繊維強化プラスチック)、アルミニウムなどの新素材を用いた曲線的なフォルムが多く見られます。ミッドセンチュリーの登場により、従来の直線的なデザインが一新され、より自由で動きのある形状が生み出されました。
また、大胆なコントラストもミッドセンチュリーの魅力のひとつです。モノクロや木目などの中間色をベースにし、ビビッドカラーをアクセントとして用いることで、空間に活気を与えつつも調和の取れた印象を演出します。装飾を最小限に抑えたデザインは現代のライフスタイルにもマッチしやすく、シンプルながらも洗練された雰囲気を醸し出します。
日本でのミッドセンチュリー
日本でもミッドセンチュリースタイルは非常に人気があります。その理由として、シンプルでありながら機能的なデザインが日本の美意識と調和しやすかったことが挙げられます。
現在でも、ミッドセンチュリーは一時的な流行ではなく、時代を超えて愛される定番のデザインスタイルとして確立しています。
北欧テイストとの違い

ミッドセンチュリーと似たデザインを持つインテリアスタイルとして「北欧テイスト」が挙げられます。どちらもシンプルかつ機能的ですが、以下のような違いがあります。
ミッドセンチュリー | 北欧テイスト | |
発祥 | 1940年代~1960年代のアメリカ | 20世紀中頃の北欧諸国 |
印象 | モダンで近未来的 | ナチュラルで温かみがある |
配色 | ビビッドカラーをアクセン トに使用 | 明るく自然な色調 |
素材 | FRP、アルミニウムなどの新素材 | 木材などの自然な素材 |
デザイン | 曲線的で大胆なフォルム | シンプルで機能的 |
家具の特徴 | アート的な雰囲気 | 普段の生活に馴染むもの |
北欧テイストは、厳しく長い冬の生活を快適にすることを目的としており、実用的ながらも温かみの感じられるデザインが特徴です。ミッドセンチュリーが大胆でモダンなのに対し、北欧デザインは自然で落ち着いた印象を与えてくれるインテリアスタイルです。
使用する色や素材が異なることから、ミッドセンチュリーと北欧テイストでは与える印象が異なります。どちらのテイストを選ぶか悩んだ場合は、配色やデザインなどの特徴を比較した上で判断するとよいでしょう。
ただし、両スタイルの特徴を兼ね備えたデザインも多く存在するため、自分のニーズや部屋に合ったスタイルを選びながら空間をつくりあげることが大切です。
ミッドセンチュリーの代表的なメーカー

ここでは、ミッドセンチュリーの代表的なメーカーを2つ紹介します。
ハーマンミラー社(Herman Miller)
ハーマンミラー社は、ミッドセンチュリーデザインを代表するアメリカの家具メーカーです。1923年に創業し、ジョージ・ネルソンやチャールズ&レイ・イームズなどの著名デザイナーと協力して、革新的な家具を生み出しました。
イームズのシェルチェアやネルソンのココナッツチェアなど、多くのアイコニックなつく品を世に送り出し、現代でも高機能オフィスチェアなどを手掛けています。
ノル社(KNOLL)
ノル社もまた、ハーマン・ミラー社とともに人気のあるアメリカの家具メーカーです。1938年にハンス・G・ノルが設立し、「アメリカの近代デザイン運動の歴史」と言われるほど、現在も世界中で愛されるブランドとなっています。ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエやエーロ・サーリネンなどの代表作であり、革新的なデザインの家具を製作し続けています。
ミッドセンチュリーの代表的なデザイナー

ミッドセンチュリーというインテリアスタイルを象徴する代表的なデザイナーも紹介します。
チャールズ&レイ・イームズ夫妻
チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、ミッドセンチュリーの象徴とも言える存在です。成形合板やFRPなどの新素材を活用し、革新的な家具デザインを生み出しました。代表作には「イームズラウンジチェア」や「シェルチェア」があります。機能性と美しさを兼ね備えているのが特徴であり、家具だけではなく建築や映画制作など幅広い分野で活躍しています。
ジョージ・ネルソン
ジョージ・ネルソンは、ハーマンミラー社のデザインディレクターとして活躍したデザイナーです。「マシュマロソファ」や「ココナッツチェア」など、ミッドセンチュリーを象徴する作品を多数生み出しました。また、イームズ夫妻やイサム・ノグチなど、優れたデザイナーを発掘し、ハーマンミラー社を世界的な家具ブランドへと成長させた功績も高く評価されています。
ミッドセンチュリーな部屋をつくる6つのポイント

ミッドセンチュリーな部屋をつくるためには、以下の6つのポイントを意識することが大切です。
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
1.落ち着いた色の床材を選ぶ
ミッドセンチュリーな部屋づくりの基礎となるのが、落ち着いた色の床材です。ナチュラルな木目調や、ダークブラウン、グレーなどの落ち着いたトーンを選びましょう。これらの色は、空間に安定感と温かみを与えると同時に、他の家具や装飾品を引き立てる役割を果たします。フローリングやタイル、カーペットなどは、光沢を抑えたマットなものを選ぶと良いでしょう。
2.モダンデザインの家具を取り入れる
ミッドセンチュリーの特徴的な家具を取り入れることが重要です。個性的で機能性の高いデザイナーズ家具や、曲線的で遊び心のあるデザインの家具を取り入れることをおすすめします。
木や成形合板、金属、ガラスなど、さまざまな素材を組み合わせた家具に注目することもポイントです。全体的に軽やかで浮遊感のあるデザインを選ぶことで、空間に開放感をもたらすでしょう。
3.レトロな印象のある装飾品を飾る
ミッドセンチュリーな空間に深みと個性を加えるのが、レトロな印象の装飾品です。1950年代から60年代にかけて流行したデザインの時計、花瓶、アートポスターなどを取り入れるのもおすすめです。また、カラフルなプラスチックやブリキを使った雑貨や食器、ビンテージ感のある置物なども効果的です。
4.アクセントカラーを加える
ミッドセンチュリーデザインの特徴のひとつは、大胆なアクセントカラーの使用です。落ち着いたトーンの中に、ビビッドな色を効果的に取り入れることで、空間に活気と個性を与えます。アクセントカラーに赤やオレンジ、黄色など明るく目を惹くような色を選び、これらの色をクッション、アートワーク、花瓶、ラグなどに取り入れましょう。ただし、使いすぎると落ち着きがなくなってしまうことから、1~2色程度に抑え、空間の10~20%程度の割合で使用するのがおすすめです。アクセントカラーの配置バランスに気を付けることで、洗練された空間に仕上がります。
5.ナチュラルな素材と無機質素材を調和させる
ミッドセンチュリーは、軍事産業で生まれた技術を活用したインテリアであるため、ナチュラル素材と無機質素材のバランスが重要です。木材やレザーなどの自然素材と、プラスチックやスチールなどの人工素材を組み合わせることで、素材のコントラストを楽しみながら、洗練された中に温かみのあるデザインを実現できます。
6. ミッドセンチュリー風の照明器具を選ぶ
照明は部屋の雰囲気を大きく左右するため、選ぶ際にはいくつかのポイントに注意が必要です。ミッドセンチュリーデザインの照明器具として、ペンダントライトやアームライトなど、曲線的なものを選ぶようにしましょう。
また、実用的な照明とは別に、家具や雑貨を照らす間接照明を配置することもおすすめです。照明器具を選ぶ際は、機能性だけでなく、それ自体がアート作品のような存在感を持ち、空間を特徴づけるものを選ぶと良いでしょう。
内装をミッドセンチュリーテイストにする方法

部屋の内装をミッドセンチュリーテイストにする方法として、DIYとリノベーションがあります。どちらを選ぶかは、予算、技術力、希望する改装の規模によって判断すると良いでしょう。
DIY
DIYはコストを抑えながら、自分のペースで少しずつミッドセンチュリーの内装を取り入れたい方におすすめの方法です。
主なDIYとしては、壁紙の張り替えや家具の塗装、小物の配置などが挙げられます。その際に必要となるリメイクシートやクッションフロアは、100円ショップやホームセンターなどで手軽に調達できるため、気軽に始めやすいのも魅力です。
DIYで全てを一度に変えようとせず、徐々に空間を自分の理想に近づけていく意識を持つことで、より自分らしいミッドセンチュリースタイルの部屋を作れるでしょう。
リノベーション
リノベーションは、本格的なミッドセンチュリーテイストの部屋を作りたい方におすすめの方法です。専門業者による技術と経験を活かした高品質な仕上がりが期待でき、構造的な変更もできます。
より自分好みの仕上がりを実現させるためには、言葉だけで完成後のイメージを伝えるのではなく、イラストや写真を使って具体的に伝えることが大切です。ただし、DIYと比べるとコストが高くなることや、居住中の部屋に工事する場合は、生活に支障が出る可能性がある点に注意が必要です。
まとめ

ミッドセンチュリーとは、1940~1960年代のアメリカを中心にブームとなったインテリアデザインです。モダンなデザインの家具を取り入れたり、アクセントカラーを意識したりすることが、部屋づくりのポイントとして挙げられます。その際、予算や技術力などを考慮して、DIYかリノベーションを選択すると良いでしょう。
昨今では、ミッドセンチュリーを始めとする人気のインテリアスタイルを反映して、おしゃれなリノベーション物件も数多く見られるようになりました。「カウカモ」では「一点もの」の住まいを求める人に向け、厳選した中古・リノベーション物件を紹介しています。理想の部屋に住みたいと考えている方は、ぜひこの機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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琉球大学大学院理工学部卒。環境建設工学を専攻し、大学院卒業書、建築設計事務所に勤務し、住宅や公共施設など様々な建物の設計に携わる。現在は建築デザイナーとして不動産開発の企画・設計から運営まで行うコンサル会社にて、オフィス設計やリノベーションなどを中心に手がける。趣味は街歩きと珈琲焙煎。空き家を活用して設計事務所と珈琲屋さんを開くことが目標。