
石膏ボードは、現代の建築現場に欠かせない建築材料です。新築やリフォームの現場で幅広く採用されています。その理由は、コストパフォーマンスの高さ、優れた防火性・遮音性、そして軽量で施工がしやすいという特徴にあります。さらに、防水性や耐震性、除湿性など、特殊な加工を施した多様な種類が存在するため、使用する場所や用途に合わせて使い分けられる点も魅力です。
この記事では、石膏ボードとプラスターボードの違いや種類、そして石膏ボードを壁や天井に使用するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
石膏ボードとは?

石膏ボードは、建築物の内装仕上げ材として最も一般的に使用される建材のひとつです。石膏を主原料とする芯材を、表裏から特殊な原紙で挟み込んで板状に成形して作られています。優れた防火性能を持ち、建築基準法でも内装制限に適合する材料として認められています。
比較的安価で施工が容易なことから、主に壁や天井の下地材として利用されており、住宅やオフィスビル、商業施設など、さまざまな建築現場で活用されています。
「プラスターボード」との違い
「プラスターボード」という呼び方は、英語の「Plaster Board」に由来する和製英語です。一般的には「石膏ボード」と呼ばれることが多いものの、実際には同じ建材を指すケースがほとんどです。建築業界では、設計図面上で「PB」と略記されることが一般的で、建築基準法では「せっこうボード」という表記が使用されています。
同じ建材に対して複数の呼び方が存在していますが、それぞれの呼称による性能や品質の違いは特にありません。建築現場や一般的な会話では「石膏ボード」という呼び方が最も定着していると言えるでしょう。
石膏ボードの種類と用途

石膏ボードにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。そのため、使用する場所や用途に合わせて、適切な種類を選ぶ必要があります。
強化石膏ボード
強化石膏ボードは、通常の石膏ボードよりも密度を高め、芯材にガラス繊維を混入することで強度を向上させた製品です。主に耐衝撃性や耐久性が求められる場所、特に学校や病院、商業施設など、人の往来が多い公共施設の壁面に適しています。
また、防火性能も一般的な石膏ボードより優れているため、建築基準法で定められた準耐火構造や耐火構造の構成材としても使用されます。表面の硬度が高いため、傷つきにくく、メンテナンス性に優れている点も特徴です。
構造用石膏ボード
構造用石膏ボードは、強化石膏ボードの性能を持ちながら、建物の構造的な強度を向上させるために設計された建材です。一般的な石膏ボードより高い耐力を持ち、建物の耐震性や剛性を高める効果があるため、主に木造建築物の壁や天井の下地材として使用されます。地震時の変形を抑制する効果も期待できます。
また、防火性能も備えているため、耐火構造の要素としても重要な役割を果たします。施工性が良好で、木造住宅の品質向上に貢献する建材として広く認知されています。
化粧石膏ボード
化粧石膏ボードは、表面に化粧紙や塩化ビニル樹脂シートなどを貼り付けた装飾性のある石膏ボードです。施工後の仕上げ作業が不要で、設置するだけで美しい壁面を実現できます。
デザインや色柄が豊富で、人気がある内装材のひとつです。特にマンションのリフォームなどで多く使用されています。
メンテナンス性も良好で、表面の汚れも簡単に拭き取ることができます。また、防火性能も確保されているため、意匠性と機能性を両立した建材としても優秀です。
シージング石膏ボード
シージング石膏ボードは、外壁の下地材として開発された耐水性に優れた石膏ボードです。特殊な防水処理が施されており、雨や湿気に強い特性を持っています。主に木造住宅の外壁下地材として使用され、建物の気密性や断熱性の向上に役立ちます。
また、防火性能も備えているため、外壁の防火構造としても効果を発揮する石膏ボードです。近年では、環境配慮型の製品も開発され、持続可能な建築材料としても注目されています。
不燃積層石膏ボード
不燃積層石膏ボードは、複数の石膏ボードを積層することで、より高い防火性能を実現した製品です。主に高層ビルや商業施設など、特に高い耐火性能が要求される建築物で使用されます。
また、遮音性能も優れているため、防音対策が必要な場所にも適しています。施工方法は一般的な石膏ボードと同様で、特殊な技術を必要としないことも特徴です。
石膏ラスボード
石膏ラスボードは、表面に特殊な凹凸加工を施し、モルタルやプラスターなどの左官材料との密着性を高めた石膏ボードです。主に壁面の下地材として使用され、塗り壁仕上げの際の基材として優れた性能を発揮します。
通常の石膏ボードと比べて表面の凹凸が大きいため、仕上げ材との接着力が強く、長期的な耐久性も確保できます。また、防火性能や遮音性能も備えているため、多様な建築用途に対応できる汎用性がある建材としても評価が高いです。
吸放湿石膏ボード
吸放湿石膏ボードは、室内の湿度を調整する機能を持つ建材です。湿度が高いときは水分を吸収し、低いときは放出する性質を持っているため、室内の湿度を一定に保つことが可能です。そのため、主に湿度変化の大きい空間や、結露が懸念される住宅の寝室や収納スペース、オフィスなどで使用されています。
また、通常の石膏ボードと同様の防火性能も備えており、機能性と安全性を両立した製品として注目されています。
吸音用穴あき石膏ボード
吸音用穴あき石膏ボードは、表面に多数の小さな穴を設けることで、高い吸音性能を実現した特殊な石膏ボードです。主にホールや会議室、スタジオなど、音響性能が重視される空間で使用されます。
穴の大きさや配置パターンを工夫することで、特定の周波数帯の音を効果的に吸収できます。デザイン性も高く、意匠性と機能性を兼ね備えた建材として評価されています。防火性能も確保されているため、安全性にも配慮した環境づくりが可能です。
石膏ボードのメリット

建築現場で欠かせない石膏ボードの主なメリットは、以下の3つです。
- コストパフォーマンスが高い
- 耐火性・防火性に優れている
- 遮音性に優れている
それぞれについて詳しく説明します。
メリット①コストパフォーマンスが高い
石膏ボードの大きなメリットのひとつに、コストパフォーマンスの高さが挙げられます。建築材料の中でも比較的安価なため、建築全体やリフォームなどの工事にかかるコストを軽減できるのです。
また、軽量で扱いやすく施工が容易なため、作業員の負担も抑えられます。傷んだ部分のみの部分補修が可能なので、長期的なコスト面でもメリットがあると言えるでしょう。
メリット②耐火性・防火性に優れている
石膏ボードは、主成分である石膏の特性により、優れた耐火性および防火性を備えています。石膏には結晶水が含まれており、火災時にはこの水分が蒸発する際に熱を吸収し、火災の延焼を防ぐ効果があるのです。
この特性から、建築基準法でも防火材料として認められており、特に集合住宅や商業施設などでは不燃材料として重要な役割を果たしています。火災時に有毒ガスを発生させないため、避難時の安全性確保も期待できます。
メリット③遮音性に優れている
石膏ボードは、その密度と構造により、優れた遮音性能を有します。特に空気中を伝わる音(会話や音楽、テレビの音など)への遮断性が高く、日常生活で発生する音を効果的に抑制できる点が魅力です。二重構造にすることでさらに高い遮音性能を得ることができ、マンションや集合住宅での階間音や隣室からの音を軽減できるでしょう。
また、石膏ボード自体が持つ制振性能によって、壁や天井からの反射音が抑制されるだけでなく、室内の音環境の改善にも役立ちます。近年では、特殊な遮音性能を持つ製品も開発されており、用途に応じた選択が可能になっています。
石膏ボードのデメリット
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石膏ボードにはメリットがある一方、主に以下のデメリットもあります。
それぞれについて詳しく解説しましょう。
デメリット①:点の衝撃に弱い
石膏ボードは、面に対する力には強い耐性を持っていますが、点の衝撃に対しては弱いという特性があります。
例えば、家具の角が当たったり、ドアノブが強く当たったりすると、簡単に凹んだり穴があいたりしてしまうケースも少なくありません。特に、廊下や子供部屋など、物が当たりやすい場所では注意が必要です。
また、一度ダメージを受けると、その部分から劣化が進行しやすく、補修が必要になることもあります。そのため、人の往来が多い場所や衝撃を受けやすい場所では、強化石膏ボードの使用や適切な保護材の設置を検討する必要があるでしょう。
デメリット②:釘やねじを打って固定することができない
石膏ボードは、直接重いものを固定するための強度を持ち合わせていません。通常の釘やネジでは十分な保持力が得られず、重量物を取り付けると抜け落ちてしまう危険性があります。壁に絵画や棚などを取り付ける際には、専用のアンカーや石膏ボード専用のピンやフックを使用するとよいでしょう。
デメリット③:水分や湿気に弱い
石膏ボードは、水分や湿気に対する耐性が低く、長期間水に触れると強度が著しく低下するという特徴があります。特に浴室や洗面所など、水を使用する場所での使用には適していません。
また、結露や雨漏りによって水分を含むと、内部が膨潤したり、カビが発生したりする恐れがあります。さらに、一度水分を含んだ石膏ボードは乾燥後も強度が回復しないため、交換が必要になることがほとんどです。
そのため、水回りの施工には防水処理された特殊な石膏ボードを使用するか、別の建材を選択する必要があります。
デメリット④:一般ごみとして廃棄できない
石膏ボードは産業廃棄物に分類されるため、一般ゴミとして処分することができません。解体工事や改修工事で発生した石膏ボードは、専門の処理業者に依頼して適切に処分する必要があります。また、リサイクル可能な材料ではあるものの、処理施設が限られているため、処分にはコストがかかってしまいます。
【セルフチェック】壁か石膏ボードかどうかを見極める方法

実際に壁が石膏ボードかどうかは見ただけでは判断が難しいでしょう。そこで、石膏ボードが使用されているかどうか見極める簡単なセルフチェックとして、以下の3つの方法が挙げられます。
それぞれについて詳しく解説します。
方法①:壁に画鋲を刺してみる
壁が石膏ボードかどうかを判断する最も簡単な方法は、画鋲を刺してみることです。石膏ボードの場合、画鋲は比較的簡単に刺さり、芯材の柔らかさを感じることができます。一方、コンクリートやモルタル壁の場合は、画鋲を刺すことはほぼ不可能です。
ただし、この方法は壁に穴を開けることになるため、賃貸住宅などでは避けたほうが無難でしょう。また、クロスの種類によっては画鋲が刺さりにくい場合もあるため、他の方法と組み合わせて判断することをおすすめします。
方法②:壁を叩いてみる
壁を手で軽く叩いてみると、その音で素材を判断することができます。石膏ボードの場合、指の関節で叩くと、「コンコン」という比較的軽い空洞音が返ってくるのが特徴的です。一方、コンクリートやモルタル壁の場合は、重く鈍い音がします。
ただし、石膏ボードの裏側に断熱材が入っている場合には、音が異なって聞こえる場合があるほか、壁の構造や仕上げ材の種類によっても音が変わることがあるため、参考程度の判断にとどめましょう。
方法③:壁のコンセントの口を外してみる
確実な判断方法として、コンセントカバーを外して壁の内部構造を確認するというものもあります。石膏ボードの場合、コンセントボックスの周囲に白い石膏の断面を確認することができます。(カバーを外す際は必ず電源を切り、感電に注意しましょう)
ただ、コンセントの周りには補強材が入っているケースもあり、その部分だけでは正確な判断ができない場合があることも注意が必要です。
まとめ

石膏ボードは建築物の内装に広く使用される板状の建築素材のことで、プラスターボードと同じものを指します。石膏を主成分とした建築建材で、耐火性・防火性、遮音性に優れており、何よりコストパフォーマンスが高いことが魅力です。
石膏ボードには特性の異なるさまざまな種類があり、それぞれの特徴を理解しうまく活用することで、用途に応じた使用が可能です。ただし、使用する際は、ネジや釘がそのまま打てない、水分や湿気に弱い、一般ごみとして手軽に廃棄できないなどの点に注意しましょう。
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琉球大学大学院理工学部卒。環境建設工学を専攻し、大学院卒業書、建築設計事務所に勤務し、住宅や公共施設など様々な建物の設計に携わる。現在は建築デザイナーとして不動産開発の企画・設計から運営まで行うコンサル会社にて、オフィス設計やリノベーションなどを中心に手がける。趣味は街歩きと珈琲焙煎。空き家を活用して設計事務所と珈琲屋さんを開くことが目標。