川崎市麻生区高石(百合ヶ丘駅)
設計夫婦の幸福な自邸
東急ドエルアルス百合ヶ丘
新宿から小田急線で約30分。新百合ヶ丘駅の1駅手前にある百合ヶ丘駅は、大型商業施設が林立する新百合ヶ丘駅とは異なり、緑ゆたかな住宅地が広がる閑静な街。今回ご紹介する住まいは、そんな百合ヶ丘の丘の上に建つマンションの1室です。
現在ご紹介可能な物件は、中古・リノベーション住宅のオンラインマーケット「cowcamo(カウカモ) 」よりご覧いただけます。
新宿から小田急線で約30分。新百合ヶ丘駅の1駅手前にある百合ヶ丘駅は、大型商業施設が林立する新百合ヶ丘駅とは異なり、緑ゆたかな住宅地が広がる閑静な街。今回ご紹介する住まいは、そんな百合ヶ丘の丘の上に建つマンションの1室です。
駅の北口から徒歩8分。丘の上に佇むマンションの2階を訪ねました。
玄関ドアを開けると、土間とたっぷりサイズのシューズクローゼット、正面は大きなガラスの引き戸の先に、縦に延びるキッチンカウンター。目の前に開けた奥行きのある空間に、思わず「わあーーー、広〜い!」と歓声を上げる取材チーム。
「実際の床面積はそんなに広くないんです。でも広く見えるでしょう?」と我々を迎えてくれたのは、売り主の幸福さん。大手建設会社にお勤めの設計士さんです。
結婚してしばらくは賃貸マンションに住んでいたんですが、実は妻もフリーランスの設計士でして、家を購入するなら、中古物件を暮らしやすい住まいに自分たちでリノベーションしようと話していたんですね。それで、妻の実家に近く、私も通勤しやすいエリアということで、このあたりにしぼってネットで物件を探し始めました。
ここを購入したのは8年前。新耐震基準の住まいであることと、広さ、価格が探していた条件と一致したので、即決しました。リノベーション設計はふたりで共同で考えたんです。お互い、設計士としてここだけは譲れない、と主張し合って、妥協点を探すのに大変なこともありましたけどね(笑)。
なんと、ご夫婦共同でリノベーション設計をされたとは!
設計士が住みたい家を設計する、しかも、おふたりで。それはまさに究極の "住みたい住まい" の実現ではないでしょうか。いったいどんな理想を盛り込んだのでしょう、興味津々です! さっそく室内を案内していただきました。
まずは玄関横の土間。玄関と同じタイルでつなげられたスペースは、もともとサービスルームだったそう。壁を取り払ってひと続きにしたことで、玄関が広く、明るくなっています。雨の日に濡れた雨具を置いたり、生協の宅配ボックスを置いたり、お子さんが生まれてからはベビーカー置き場としても重宝したとのこと。
続いては、長いカウンターが印象的なキッチンです。
もとの間取りは田の字型に区切られた2LDKで、キッチンは三方を壁に囲われていたんです。購入した8年前は夫婦ふたり暮らしで、将来的に子どもが生まれても1人だろうと考えていたので、思い切って空間をつなげて、広々と暮らしたいと思いました。
コンロの反対側にカウンターがありますが、もとはカウンター側にコンロが付いていました。カウンター自体をオープンスペースとして広々と使いたかったので、キッチン設備はすべて壁側にまとめました。それと、ふつうはキッチンの上に吊り棚を設置しますが、特に女性はなかなか手が届かないんですよね。妻が154cmと小柄なので、手が届かない吊り棚はやめて、代わりにカウンター下に収納をたっぷりと確保するようにしました。
そうそう! 世の中にあるキッチンって、ちっとも女性に優しくないのです。ものを出し入れするたびに、椅子に上らないといけないので、背の小さい女性には本当に不便なんですよね。さらにこちらのキッチン、高さも少し低めにしてあります。ふつうは850mmの高さが標準だそうですが、こちらは830mm。実際に立ってみると、2cmの高さの違いでこんなにラクになるのかと思うぐらい向かいやすい! なんとも女性にうれしい設計です。
そして、キッチンの床に、玄関の土間と同じタイルが使われているのもユニーク。大きめのタイルなので、よりスケール感が出ている気がします。
リノベーションするにあたってこだわったのは、使う素材の種類を極限まで少なくするということ。少ない素材で統一感を出すことで、空間がひと続きに見える。それが、玄関から入ってきたときに広く見えた理由のひとつではないでしょうか。僕は以前リノベーションを得意とする設計会社のブルースタジオに勤めていまして、このようなテクニックはブルースタジオ時代によく取り入れていましたね。
おお、あのブルースタジオに在籍されていたんですね!! 素材の質感を大切にしたシンプルな設計は、なるほどどことなくブルースタジオらしいテイストも感じられます。
ところでこのお住まい、キッチンとカウンターの間に大型の床下収納が付いています。その広さ、約2坪弱。しかも高さもあります。
あれ、でもここ、2階のはず。どうしてこんなに大きな床下収納があるのでしょう?
このマンションのなかで床下収納があるのは、2階の一部住戸だけです。というのも、斜面に沿って建っているので、この住戸の下は地面で、下階に住戸がないんです。床下収納はかなりの広さがあるので、子どもの遊具や仕事上、どんどん増えていく紙資料、書籍なども収納できて、とても便利でしたね。
なるほど。下に住戸がないということは、小さいお子さんが走り回っても、足音がうるさくて下の住人に迷惑をかけてしまう、という心配もないですね。これは子育て中のファミリーには特にうれしいポイントではないでしょうか。
キッチンの向かい側には主寝室があります。
天井まである大きな引き戸は、開け放つとLDKとひと続きになり、玄関側の窓とテラス側の窓を開ければ、心地よく風が吹き抜けます。
クローゼットは建具ではなくカーテンで仕切ってあるので、圧迫感がなく、軽やかな印象。もちろん好みで建具を入れることも可能です。
さて、奥のLDKへと進みましょう。
見てください、このひと続きの空間のなんと気持ちいいこと!
全面に敷かれた無垢のフローリングと、白でまとめられた壁と天井。シンプルだからこその心地よさです。
リノベーションにあたっては、空間をなるべく区切らずに大きく使うことを心掛けました。リビングのクローゼットがある側は、もともとは和室でしたが、壁を取り去ってリビングとつなげました。妻が在宅で仕事をしていましたので、ひと続きにしたほうが、狭苦しさを感じずに気持ちよく仕事ができる、と考えたのです。一応、仕切れるようにカーテンレールを取り付けてありますが、壁を設ければ、子ども部屋にもなります。
いろんな色や質感が混在しない空間の中で、造作棚は少し濃いめの色を持ってきました。使った素材は、ゼブラウッドという、美しい縞模様のある木材にブラウンの塗装を施したもの。そして、ちょっと高い位置にあるあの棚、下にグラスホルダーが付いているでしょう? 妻も私もお酒が好きなので、お酒のボトルを置くために造ったものです(笑)。
造作棚は、どことなく北欧家具のような、ミッドセンチュリーのようなデザインと色が、シンプルな空間によく映えています。
幸福さんの「少ない素材で広がりある空間に見せる」というテクニックは、水まわりにも生かされています。
サニタリーの床は、 LDKと同じナラ(オーク)、洗面台と収納棚はゼブラウッド。そして洗面コーナーとバスルームの淡い色のタイルがさりげない差し色になっています。
バスルームは、もともとユニットバスだったものを、在来工法で刷新。マンションではなかなか在来工法のバスルームは導入しにくいものですが、下階がないので実現できたとのこと。バスルームがガラス張りになっているのも、サニタリースペースをより広く見せていますね。
そしてこちらのお住まいの魅力は、LDKの先にもありました。なんと、2階なのに専用庭があるではないですか。
これも斜面に沿って建てられてるがゆえの、うれしいボーナスポイント。現在は退去されてしばらく経っているため雑草に覆われていますが、幸福さんご一家がお住まいになられていたときには、芝生を張り、ちょっとした家庭菜園も楽しんでいたそう。
庭につながる大きな掃き出し窓も、モダンな印象です。
数多くの物件を手掛けてきた経験とノウハウをもとに、設計士みずからが手掛けた自身の住まい。さりげないしつらえにこだわりがたくさんつまった素敵なお住まいですが、ふたりめのお子さんが生まれて手狭になったため、住み替えを決意されたとのこと。
最後に、どんな方に住んでいただきたいかを幸福さんにお尋ねしました。
ひと続きの広い空間なので、やはりその広さを満喫していただけるおふたり住まいやご夫婦+お子さん1人ぐらいがちょうどいいのではないでしょうか。
もちろんひとり暮らしでも、相当ゆったり暮らせますよね。SOHOにも向いていると思います。
また、風通しがとてもよいので、エアコンは1基だけで十分。夏もいちばん暑いときに1、2週間つけただけで過ごせました。ガスファンヒーターの取り付け口もあるので、夏冬とも快適に暮らせると思いますよ。
設計を知り尽くしたご夫妻が手掛けた、自分たちのための住まい。その快適さは、住むほどに実感するに違いありません。そして、将来間取りを変更したくなったら、ぜひ幸福さんに相談してみてはいかがでしょう? きっと頼れるアドバイザーになってくれるはず!
取材・文:吉田タカコ/撮影:cowcamo