こだわって造った住まいだから、大切に住み継いで欲しい。「住み継ぎの先輩に聞く!」では、そんな想いのこもったバトンパスの物語をご紹介。カウカモの「売却サポート」で住まいを売却した方、購入された方の双方にインタビューを行い、新しい住人の元でどのように活かされているかをレポートします。
今回は、目黒区に建つ築58年になるヴィンテージマンションの一室を取材しました。
【売却時の住まい】
ヴィンテージらしく、私たちらしく
《住まいについて》
前オーナー:Wさん / 3人ファミリー(売却時。現在は4人ファミリー)
現オーナー:Nさん / ご夫婦+猫1匹
場所 :目黒区
間取り:1LDK+DEN+WIC
面積:約69.6㎡
築年数:築58年(1963年10月築)
内装:Wさん=未改装状態からフルリノベーション
Nさん=購入後そのまま居住
このマンションが産声を上げたのは、いまから58年前(2021年4月現在)のこと。千駄ヶ谷に「国立競技場」が完成し、目前に迫った東京五輪に、街も人も熱気を帯びていた頃だ。
梁を屋外に突き出させたようなバルコニーと雁行構造(※)が織りなす動的なデザインは、竣工から半世紀以上が経過した今も人々を魅了し続ける。この部屋をフルリノベーションした前オーナーのWさんも、そんなひとりだ。
※雁行=マンションにおける住宅配置の一種。各住戸を斜めに配置することで採光性や通気性が向上する
Wさん:新築のマンションは画一的で面白くないなぁって。エッジの効いた建物だったので、室内もヴィンテージらしさを活かしながら、こだわって造ろうと思ったんです。
取り壊すことのできない躯体壁を活かして、広々としたLDKやミニマルな寝室、ほどよい “籠もり感” のあるワークスペースを配置。扉によって各部屋を閉じることはせずに、それぞれの空間がつながった風通しのいい間取りとした。
Wさん:既存の内装を解体したらストイックな躯体が出てきたので、天井は現し仕上げにしました。その雰囲気に合うステンレスのキッチンを選ぶなど、全体的に “色” は加えずにラフなパーツで引き締めています。
もうひとつの大きな特徴が、豊富な収納だ。“物持ち” であったWさんは、LDKには移動できる小上がり、廊下にはカーテンで仕切る大きなクローゼットを設けた。
Wさん:服とシューズをめちゃくちゃ持っていたんです。玄関土間の靴収納は100足入る仕様なんですが、それでもすべての靴は収まりませんでしたね(笑)
【売却について】
リノベーションを、“ちゃんと” 評価してほしくて
ふたり暮らしのために計画した住まいだが、3年半過ごす中で第一子が誕生。そしてふたり目のお子さまができたことをきっかけに、売却を決意した。
Wさん:当初は子育てのことを考えていなかったので、仕切られていない間取りは声が響いてちょっと大変でしたね。でも、物はたくさんしまえるし、リビングはゆったりと使えて、とても住み心地のいい家でした。ワークスペースも、コロナ禍で自宅勤務になってからより活躍しました。
以前からカウカモアプリで販売物件の記事を読んでいたというWさん。ご自宅の売却を依頼した理由を聞くと、『リノベーション内容を評価してくれそうだったから』だという。
Wさん:大手の不動産仲介会社だと、駅からの徒歩分数や築年数、間取りや方角など決められた項目に点数をつけて査定されるので、せっかくこだわってリノベーションした室内が評価されなさそうで……
カウカモの物件記事は内装の良さをしっかりとアピールしているし、この内装を気に入ってくれる人ともマッチングしやすそうだと思いました。
販売開始後に開催したオープンルームには大勢の希望者が参加したため『ちょっと大変だった』そうだが、その甲斐あってすぐに購入希望者が見つかったという。
Wさん:売却手続きなどはエージェントさんにおまかせでスムーズに進んだので、そんなに苦労はしませんでした。私たちの “想い” の分も乗せた評価で売却できたことには、ほんとうに感謝しています。
『次の住まいは?』とWさんに尋ねると、『実は、フルリノベ工事が始まったところなんです』とのこと。今度は、もっと広く、子育てにも適した住まいになるそうだ。
【現在の住まい】
“いい巡り逢い” が物件とオーナーを結んだ
この住戸の新しい住人となったのは、現在愛猫のオズワルドくんとともに暮らしているNさんご夫婦。購入の動機は、「猫と居住費のランニングコスト」だったという。
ご主人:在宅勤務で家にいる時間が増えて、彼女が『猫を飼いたい』と言ったのがきっかけでした。賃貸は更新手数料が結構かかるし、若いうちに購入したほうが費用を抑えられるかな、と思って購入を視野に入れ始めたんです。
そんな “緩い” 動機だったので、2〜3年かかってでもホントに気に入る家を探すつもりでした。でも、幸運にも半年でこの物件と出会えたんです。
実は、物件が販売される直前に、おふたりは偶然このヴィンテージマンションと出会っていたという。
奥さま:以前も近くに住んでいて、ある日散歩の最中にこの建物を見つけて『カッコいい!』と思っていたんです。一週間後に、そのマンションの住戸が売り出されいるのをカウカモで見つけて驚きました。
ご主人:間取りや内装も、特に大きく変更したいと思う部分はありませんでした。以前のオーナーさんとは価値観や趣味が近いのだと思います。照明のスイッチひとつに至るまでこだわって造られたものを、わざわざ僕たちがゼロからリノベし直す必要はないなって思いました。
”いいめぐり逢い” があったことが、購入のいちばんの理由かもしれませんね。
在宅勤務になり、ほぼ電車には乗らなくなったというNさん。中古リノベーション住宅の購入を検討する人に向けてのアドバイスを尋ねると、『これまでとは違う目線で物件を探しても良いかも』とのこと。
ご主人:「駅から徒歩何分」みたいなスペックの意味は、どんどん薄れていくと思います。それよりも街の雰囲気とか、近所にどんなお店があるかとか、その住まいでどんな生活を送れるかが重要になってくるんじゃないでしょうか。
長い年月を経ても、褪せることのない魅力を放つヴィンテージマンション。その土台は、変容する価値観やライフスタイルに合わせて形を柔軟に変え、大切に受け継がれてきた住戸の存在に他ならない。
これからも、素敵な巡り合いがたくさんありますように。
撮影:沢崎 友希 / 取材・文:中山 宇宴