家を購入するというのは、人生の中でも最大級の選択のひとつ。その際に気になるのは、やはり月々のローン返済ですよね。ところが、ローン返済額が実質ゼロになり、さらに家賃収入を得ながら暮らせる物件があると聞いたら、信じられるでしょうか? しかし、あったんです、そんな夢のような話が!

こちらの懐かしさあふれる木造住宅が夢の"家賃収入物件"。駅からは起伏がなく、建物の手前から、住宅街を見下ろすように公道階段が延びています。

東武東上線「上板橋」駅から徒歩11分。一見、いかにも昭和な風情の木造住宅が、今回ご紹介するミラクルな住まいです。プロデュースを手掛けたのは、建築家の進藤強さん。これまで数々のスタイリッシュな集合賃貸住宅を世に送り出している進藤さんは、賃貸併用型の住まいにおいても数多くプロデュースや設計監理を手掛けています。

ノリのいい気さくなアニキといった印象の進藤さん。手掛けられた個性的でスタイリッシュな賃貸住戸の数々は、いずれも募集を出すたび即完賃。空室を待つファンも多いと言います。

自宅と賃貸住宅がひとつになったこのような住まいは"賃貸併用住宅"と言われます。かつての下宿や貸し間がそうですが、近年、賃貸部分の家賃収入で自宅のローン返済をまかなうことができる住まいとして、ふたたび脚光を浴びています。この家ももともと、1階が大家さんの居住部分、2階が3戸の風呂無しアパート。今回、間取りはほとんど変えずに、アトリエ風の内装にフルリノベーションしました。

なるほど。自分はオーナーとして1階部分に住み、2階を賃貸して、家賃収入を得るというわけですね。

さっそく、その夢の家賃収入暮らしを実現する住まいを見学させていただきましょう。

まずはオーナー住戸から。

くすんだミントグリーンの塗装が施された木の扉が、1階の玄関。

明るいダイニングスペースとバスルーム。キッチンや照明、エアコンは備え付け、左のテーブルと椅子は展示用家具です。

玄関を入って左側にはダイニングとバスルーム。坂の中腹に建っているため、1階は半地下になっているのですが、窓が多く、かなり明るい印象です。室内とバスルームの間に設けられた正方形の窓がとってもキュート!

居室側にも窓があるバスルームって、珍しいでしょう? この窓、実はもとからあったらしいんですけど、前に大きな棚が置かれていて、リノベーション工事を始めた当初は窓の存在に気が付かなかったんです。きっと室内からお風呂が見えるのが恥ずかしくて、家具で目隠ししてたんでしょうね。

さらに無垢の足場板が張られた床も、ナチュラルな雰囲気で心地よさそうです。

左・キッチンは取り外し可能なIHクッキングヒーターが設置してありますが、ガス栓も通っているので、ガスコンロの設置も可能とのこと。/右・もとはバランス釜にステンレスの浴槽、壁と床はタイル張りという、典型的な昭和のお風呂場。今回新しくモルタル仕上げと白の浴槽に更新し、すっきりとまとめられています。

キッチンの反対側の角から、室内全体を見渡してみます。広さは46㎡強ながら、間仕切りをすべて無くしているので、かなり開放的。

もとの間取りは、ちょうどカーテンが設置されている部分と、奥のキッチンに繋がる部分がふすまで仕切られた2DKでした。今回、柱は残し、ふすまと垂れ壁をはずして空間をひと続きにしたので、壁そのものは減らしておらず、強度は変わっていません。とはいえ、築古の建物だと耐震強度を心配される方もいらっしゃると思います。ご希望があれば耐震補強のご相談ももちろん承りますよ。また、屋根と外壁の改修はしていませんが、それらを施せば、ほぼ新築と同じ水準の住宅になります。

先の東日本大震災でも問題がなかったことから強度は十分だと思われますが、さらに建築家が直接相談に応じてくれるとは、頼もしい限りです。

2面の窓は西と南に面していますが、明るすぎないのでおだやかに目覚められそう。住戸内にクローゼットはついていないので、お気に入りの収納家具を設置してくださいね。

仕切りがないワンルームのため、家具のレイアウトも自由自在ですが、ベッドはこのあたりに置くと、ダイニングから程よく目隠しされて収まりがよさそう。

窓にはめ込まれた型板ガラスの模様があちこちで異なるのも、この時代の住宅ならでは。

それにしても、この清潔感あふれるのびやかな空間、シンプルでありながら、いたるところに温かみのある小技が効いていて、とても統一感のあるテイストに仕上がっています。

実はこのインテリアデザイン、コーディネートを担当したのは、香川県高松市にあるひだまり不動産という設計会社なのだそう。

左・浴室とトイレの間には造作の洗面台。モルタルの床でつなげ、一体感がある仕上げに。/右・トイレのドアにご注目! 結び目を作ったロープの取っ手が可愛らしいアクセントになっています。

ひだまり不動産はハンドメイドテイストなリノベーションを得意とする不動産会社で、高松市内のカフェやヘアサロンなどのほか、首都圏の物件もたびたび手掛けています。ふだん僕が設計している住宅とは真逆の女性らしい繊細な内装が、今回のような古い木造住宅のリノベーションにすごくマッチしているんです。

賃貸住戸は15〜16㎡のワンルームなのにもかかわらず、不思議と狭苦しく感じません。それは、天井板を取り去って天高を確保してあることに加えて、この統一感のあるテイストのおかげなのでしょう。

カフェっぽくまとめられた空間は、女性受けするのではないかと思いましたが、聞けば現在入居しているのはすべて男性なのだとか。

ウッディな質感でコンパクトながら居心地抜群の賃貸住戸。白く塗られた現し天井が空間を広く見せています。写真:平井広行

賃貸併用住宅を購入しようと思ったときにまず不安に思うのが、空室にならないかということですよね。実はここは、周辺のもっと新しい鉄筋造のマンションよりも1万円以上高い家賃設定にしているんですが、ちゃんと満室になっています。それは他の物件ではまねできないオリジナリティがあるから。素敵な部屋に住みたいと思う人をターゲットにしているので、将来的にも家賃が下がる心配はほとんどないと考えます。
それに、こういった住まいに入居される方は、丁寧に住んでくれるし、家賃の滞納や騒音などのトラブルも起きにくい。貸し主としてそのようなトラブルを心配される方もいらっしゃるとは思いますが、僕がこれまで手がけてきた賃貸併用住宅で、そういった問題は少ないです。

おお、心強いおことば!

これなら安心して大家デビューできそうです。

ちなみに、3戸の賃貸住戸の月々の賃料収入は、202,000円。1階住戸のローン支払いは127,029円なので、ローンを支払っても月々74,971円のプラスとなる計算になります。家を買ったのに、ローンの支払いが実質0円になるだけでなく、毎月家賃収入が得られるとは、なんとおトクな話なのでしょう!!

16㎡と思えない開放感とユニークな間取り。むしろこちらの賃貸住戸に住みたくなってしまうかも!? 写真:平井広行

あと大切なのは、入居者との程よいコミュニケーションじゃないかな。僕は入居者と顔を合わせればよく挨拶をしているし、仲良くさせてもらっています。それから、僕はよく入居者さんが決まった時点でウェルカムパーティを開催するんです。賃貸併用住宅の場合は、自分も同じ屋根の下に入居するのだから、顔が見える関係のほうがお互いに気遣って付き合っていけるし、安心でしょう。こちらの購入を決められたら、ぜひ大家さんのウェルカムパーティをしたいですね。楽しいですよ(笑)。

入居者さんと知り合うきっかけまで作っていただけるとは! さすが進藤さん、賃貸併用住宅に住まうコツを知り尽くしていらっしゃいます。

左上・上板橋駅のすぐ目の前には大きなイトーヨーカドー。日常のお買い物はここで。/右上・駅前には、アパート下にさまざまな商店が入居している一角も。/左下・昭和の風情が残る駅近くの商店街。ゆったり広々しているのはこの街ならでは。/右下・駅から物件までの道のりの途中にある、区立にりんそう公園。春には区の花であるニリンソウが見頃を迎えます。

あ、でも、肝心の入居者募集はこれからどんなふうにやっていけばいいんでしょう?

おしゃれ賃貸物件の紹介サイトがいくつかあるので、そういったところで募集をかけるのが効果的ですね。デザイナーズ賃貸やリノベーション賃貸に住みたい人が熱心にチェックしていますよ。募集方法に関しても気軽に相談してください。

いかがでしたか? 夢の持ち家+家賃収入ライフは、もはや夢ではありません。

さらにこちらの住宅、家族が増えたら1階と2階を内階段でつなげて広く住むことも、建て替えることも可能だそう。

頼れる建築家の強力バックアップのもと、ぜひ大家デビューを飾ってください!


取材・文:吉田タカコ/撮影:cowcamo(一部提供:株式会社ビーフンデザイン)