カウカモでまさに “一点もの” の住まいに出会い、新生活を始められた皆さまを撮影させていただく「カウカモグラフ」。

今回は、ソフトウェアエンジニアとして働きながら、弓道という静謐な趣味を持つTossyさんのご自宅を訪ねました。そこは、気に入った古材や建具といったパーツを活かした、Tossyさんのこだわりと実験精神が詰まった空間でした。

《プロフィール》
名前: Tossyさん
年齢: 30代後半
職業: 会社員(ソフトウェアエンジニア)
趣味: 弓道、旅行、日記

《この住まいについて》
場所:大島
間取り:1LDK
面積:54.81㎡
築年数:築55年(取材時)
追加リノベ:フルリノベーション
支払額(以前と比べて):以前より15平米広くなり、支払額は5万円アップ

家を探し始めたきっかけ: 札幌から上京後、賃貸の家賃相場への違和感から。「この家賃を払うなら、買った方がいい」という決断。
家探し期間: 半年くらい
内見数:5件くらい

Q1:以前の住まいは?

上京してきて、最初は新小岩の賃貸に住んでいました。職場へのアクセスを考慮して城東エリアが便利だなと感じていたので、物件の購入を決めた際もそのまま同じエリアで探し始めました。

長さ4m超のワイドな造作キッチン。ラワンの塗装仕上げにステンレス天板を組み合わせ、正面にはスパイスニッチを設けた。

Q2:家探しのきっかけは?

上京した際、東京の賃貸相場の高さに驚きました。「このクオリティでこの家賃を払い続けるのはもったいない」という違和感を抱いたのがきっかけでした。年齢的にも早めにローンを組んだほうが将来的な選択肢も広がりますし、資産として所有するという意味でも購入することを決めました。

Q3:この街《大島》にした理由は?

物件自体のポテンシャルも大きかったのですが、実際に住んでみて、この街が持つコミュニティの豊かさに気づきました。

近くにインターナショナルスクールがあるため、広場で野球をしていると思えばクリケットに興じる多国籍な子供たちがいたり、他方でマンションの掲示板に『長寿のお祝い』が貼ってあったりと、独特の温かみがあります。都心へのアクセスと、ローカルな温度感のバランスが絶妙で、とても気に入っています。

Q4:この家に決めた理由は?

一番の決め手は、この部屋がリノベーションの途中で放棄された、完全なスケルトン状態だったことです。

前の持ち主の方が工事を途中で止めて売却された物件で、何もない廃墟のような姿でした。ですが、私にはそれが『自分の理想をゼロから描き出せる真っ白なキャンバス』に見えたんです。解体の手間も省けますし、最初から自分仕様の実験場がつくれるな、とワクワクしましたね。

窓の目隠しには雪見障子を採用した。季節に応じて、陽の光の入り方をコントロールできることも魅力。

 Q5:リノベーションでこだわったポイントは?

なるべく古い建具や天然の素材を取り入れることにこだわりました。
まだ十分に使えるものが捨てられてしまうのは、もったいない。良いものであれば長く使い継いでいきたい、という想いが根底にありました。

そのため、家づくりのプロセスも独特なものになりました。通常、設計は間取りから考えることが多いですが、今回は自ら選び抜いた素材をどこで生かすべきかを探ることから始まりました。
古民家から回収された建具を扱う古道具屋さんに何度も通い、一点ずつ選んだ建具や欄間(らんま)などを、職人さんに調整してもらいながら丁寧に組み上げていきました。

古材ならではの風合いを感じさせる、建具に残された文字。前の住まいの記憶を大切に受け継いでいる。

日本家屋風の内装ではありますが、最初から意図していたわけではないんです。
ただ、日本に住んでいると、自然と日本の古道具や素材が手に入りますよね。そうして素材を選んでいくうちに、結果として自然とこの内装に辿り着きました。

玄関には、弓を立てかけるための『S字の木』を置いています。いかにもな弓立てではなく、弓を置いていない時でもオブジェとして美しい自然の造形を求め、古道具屋さんで偶然見つけたものです。

玄関は土間を広く設けた。窓に目隠しのためにカーテンのかわりに障子を設置した。

樹脂製品は劣化が早く、次の世代に引き継げません。そのため、古建具以外も、私より長生きできる素材を使うようにしました。
例えば、壁は全面珪藻土、床はナラの挽板に着色を施しました。スイッチプレートも樹脂ではなく真鍮やステンレスのトグルスイッチを選びました。これなら、時を経るごとに劣化するのではなく、味わいとして愛でることができるはずです。

フローリングの色は、壁面の珪藻土との色味のバランスを考慮して選定した。巾木もフローリングの色に合わせて着色している。

樹脂製とは異なり、古くなっても経年変化を楽しめる素材のスイッチプレートを採用。

生活感が出る白物家電は家の中で浮いてしまうので、エアコンは古い欄間で隠し、冷蔵庫も建具のなかに収めています。ノイズを減らすことで、選び抜いた素材の質感がより際立つんです。

エアコンカバーには古い欄間を使用し、開閉できるようにヒンジを設けた。欄間の左右も、開閉可能な収納になっている。

水回りは駆体の壁に囲まれており、壊すことができなかったので、配置に苦労しました。
限られた面積のなかで、あえて浴槽をなくし、トイレと洗面、シャワールームを一つの大きな空間にまとめました。その代わり、洗面台はゆったりと確保しました。手洗い洗濯もしやすい大きなボウルを選び、人工大理石の質感にもこだわって仕上げています。

トイレにはドアを設けずにルーバーで仕切ることで、狭くならないように工夫した。

Q6:カウカモで家を買ってみてどうだった?

私の上京とちょうど同じ時期に地元の友人も東京に引っ越してきて、一緒に食事に行った際、たまたま「家を買おうと思っている」という話をしまして。その場でカウカモのアプリを開いて見せたら、なんとその友人がカウカモで働いていたんです(笑)。
これも何かの縁だなと感じましたね。

他の不動産屋では、独身男性の購入に対して「投資目的ですか?」と先入観で聞かれることも多かったのですが、カウカモのスタッフは私の『暮らし』に対するこだわりを一緒に面白がってくれました。家が完成した際も、担当さんと集まってカレーを食べたり。家を買って終わりではなく、そこから始まる人間関係を築けたのが嬉しかったですね。

先日、別の友人が購入を検討していると言っていたので、カウカモをおすすめしました。

天板の高さは、Tossyさんの背丈に合わせて930mmと高くした。

Q7:この家のお気に入りの場所は?

寝室とリビングを、透け感のある夏戸(なつど)で仕切っています。一見、一続きの大きな空間ですが、戸を閉めれば緩やかに仕切られる。閉塞感のない視線の抜けが、この家で一番落ち着くポイントかもしれません。

LDKと寝室をあえて壁などで完全に仕切らず、光や風が通り抜ける開放的な構成に。吊り棚は梁の高さにジャストサイズで合わせ、空間のノイズを抑えている。

横になった際に光が直接目に入らないよう、主照明のシーリングライトは避け、壁面をやさしく照らすブラケットライトを採用した。

Q8:これから家探しをする人にアドバイスがあれば

スピード感と決断力がすべてだと思います。

実はこの物件、申し込み段階で一度は別の買主さんが契約を進めることになってしまったんです。気落ちしたまま2ヶ月が過ぎた頃、契約直前でキャンセルが出たと連絡があり、その場で即決しました。リノベーション前提で条件の良い物件を探すなら、迷わずその場で決める覚悟がないと手に入らないのだと、身をもって学びました。

その場で即決できるためにも、どのような暮らしをしたいか、完成イメージを持っていることが大切だと思います。

変わりゆく『未完成』を楽しむ

実は、この家にはまだ伸び代があるんです。例えば、ハンガーパイプとして使っている木。最近、乾燥のせいか木が少したわんできて、受けから外れそうになっているんです(笑)。

普通なら不具合と捉えるかもしれませんが、私はそれすらも面白いなと思っていて。工務店の担当さんと「受けの幅を増やすことで解決しようか」なんて相談する時間も、この家を育てている実感があって楽しい。最初から完璧な完成品を求めるのではなく、住みながら微調整していく。その『未完成さ』こそが、私にとっての居心地の良さなんです。