cowcamoで紹介中の物件、「暗がり赤坂ダンディズム」と同じマンションの3階にある、こちらのお部屋。同じく40㎡弱の1LDKですが、隠れ家バー的な色気を感じさせるあちらのお部屋とは、また異なった雰囲気です。

手掛けたのは同じく、株式会社GLIPの北上賢太郎さん。

あちらの部屋が「バー」ならば、こちらは昼間の「カフェ」がコンセプトですね。隣の教会が2階までの高さなので、ここ3階はバルコニーの先に抜けがある分、かなり明るいんです。
でも、部屋全体を明るくまとめるのではなく、天井と床にはあえてダークな色をセレクトして、さらにリビングスペースには無骨なブリックタイルを張り、引き締まった感じにまとめています。

リビングの先のバルコニーは南西に位置。明るく、ガーデニングも楽しめそう。(家具は展示用)

日当たりはたしかにバッチリ! でも、たしかにひたすら明るいのではなく、窓外の光を眺めながらゆっくりお茶したくなるような、ほどよい落ち着きがあります。無骨な味わいのブリックタイルがピリリと効いていて、カフェはカフェでも、夜はお酒も楽しめるワイルドなカフェバーといった雰囲気。

同じく北上さんが手掛けた、笹塚の物件「新宿と夜景とバーボン」もお酒の似合う空間ですが、インテリアにほんのりと男くささが感じられるのが、北上さんディレクションならでは。

ラフなテクスチャにこだわったブリックタイルの前で語る、株式会社GLIPの北上賢太郎さん。

「ブリックタイルの目地は、ていねいに塗らないで荒々しく仕上げてください」と職人さんに頼みました。ブリックタイル自体、かなりでこぼこやざらつきがあるものを使ってるんですが、目地だけきれいにすっきりしていたら、このざっくりとした質感が半減しちゃう。それは面白くないと思ったんです。

キッチンと寝室の間に立つ壁には、アイアンフレームのフィックス窓がはめ込まれています。その先にある空間をのぞくように視線が続いていくので、圧迫感を感じません。

長いキッチンカウンターとパーテーションで仕切った居室が作り出す、直線の世界。きりっとシャープで、かつ広がりも感じさせます。

「暗がり赤坂ダンディズム」も「新宿と夜景とバーボン」も、男のひとり住まいがこの上なく似合いそうな空間ですが、こちらのお部屋は、男っぽさがありつつも、カップルのふたり暮らしもはまりそうな雰囲気。窓越しの光景を両方向から楽しむ、という発想が、お部屋に広がりと楽しさを生んでいます。

窓枠にアイアンフレームを使ったり、窓と壁の面を合わせず、壁を少しせり出して厚みを持たせているところもポイントです。仕上げのちょっとした工夫で、見え方がぐっとおしゃれになるんです。
ちなみにこの壁は、アメリカ映画に出てくるようなオフィスのイメージ。こんな感じのセミオープンのパーティションがよく使われていますよね。

インテリアや雑貨のスタイリング次第でさまざまな表情を見せてくれそうな室内。コーディネートの楽しみが広がります。(すべて展示用ディスプレイ)

ちなみにこのお部屋、居住用だけでなく、オフィスやSOHOとして使うことも可能なのだそう。

赤坂駅から徒歩4分という抜群の立地なだけに、全30戸のうち居宅として登記されているのは8〜9戸で、あとは事務所あるいはSOHO使用とのこと。
不特定多数が出入りする店舗やサロンとして使用するのはNGですが、少人数のスタッフが働くオフィスとして使っても、かなり使い勝手がよさそうです。

住まいとしてだけでなく、事務所使用としても使いやすい間取り。

住居として使う場合には、壁で仕切った居室は寝室になると思いますが、事務所として使う場合には、居室部分はデスクを並べてワークスペースに、外側のリビングは来客時の接客スペースに、といった使い方ができますよね。居室の奥のウォークインクローゼットは書類置き場としても使えます。

おお、なるほど。
そして、逆に、リビングスペースを作業場、居室部分をミーティングルームにするというのもアリですね。

程よく囲われたスペースは、開放感ある寝室として使っても居心地がよさそうですし、事務所使用ならワークスペースとしてもミーティングルームとしても、集中できそうです。

居室の奥には小振りなウォークインクローゼット。圧迫感を出さないよう、扉をつけずに開放していますが、気になる方はロールスクリーンやカーテンで目隠ししても。

また、事務所が多く入居する物件は、エントランスをはじめとした共用部に生活感がないので、逆にスタイリッシュに暮らしたいという方にもぴったりかもしれません。事務所ビル然としたエントランスを通るたび、「赤坂に暮らしている」という非日常感に浸れそうです。

左上・ファサードは築40年ながらモダンな印象。/右上・ちょっとレトロな字体がいい感じです。/左下・このそっけなさが生活感を消してくれます。/エントランスはオートロック。ちなみにエントランスの右側はテストキッチンとして使われており、時折いい匂いが漂ってくるそう。

使いやすさポイントは他にもあります。

サニタリーは、バルコニーに続く大きなガラスドア付きの広々トイレスペースと、ゆったりした造作の洗面台。(窓にはロールスクリーンが設置されることになっています)

洗面台にいっぱいに差し込む自然光は、女性にとってはお化粧をするときに明るくて便利なのではないでしょうか。

さすが北上さん、ダンディ部屋の仕掛人でありながら、女性の心理もよくおわかりでいらっしゃる!

自然光が入る洗面台はもちろん、女性だけでなく、男性もひげ剃りがしやすくて重宝することでしょう。サニタリーの居心地のよさについこもりすぎて、パートナーに「早く出て〜!」なんて言われないよう、長居はほどほどに。

左・木板にアイアンの留め具で造られた飾り棚が上部に取り付けられたサニタリー。読書スペースとしても居心地が良さそう。/右・玄関からLDKに延びる廊下は、クリアガラスの扉の先にLDKが見える仕組み。玄関の可動式のシューズクローゼットは、棚を外してゴルフバッグなども置けます。

もうひとつ、使いやすさポイントとして着目したいのは、廊下からLDKに入ってすぐ、冷蔵庫置き場のちょうど向かい側にある収納コーナー。
扉がなく、かつ奥行きがあって、パントリーとして使うのにとっても便利。たっぷりと食材をストックして、料理の腕を奮いたくなります。

40㎡に満たない部屋で、これだけの大きさのキッチンカウンターはそうないのでは。
キッチン上のタイル張りの棚や背面の収納は、扉を設けず、"見せる収納"にしました。扉をつけると、なんでもかんでもついそこに詰め込んでしまいがちですよね。そうではなく、必要なものを吟味して、飾るように置く、という暮らし方がこの部屋に合っていると思うんです。

艶やかなダークカラーの床と天井、そしてアイアンの窓枠とタイル張りのキッチンがオトナのカフェ空間をつくり出します。

シングルやDINKS、またはSOHOを想定したコンパクトな1LDKながら、これだけのこだわりのキッチンを備えていることには理由があります。

赤坂駅から徒歩4分という立地ながら、スーパーが近くて、しかも安い! 赤坂という都心のど真ん中で外食三昧のとがった暮らしをするのではなく、赤坂だからこそ、便利でリーズナブルに暮らせるというのは、なんともうれしい誤算です。

左上、右上・物件周辺には24時間営業のスーパーが3軒も! 言わずと知れたハナマサのほか、豊富な品揃えの吉池もおすすめ。他に、赤坂駅前にマルエツプチも。/左下・六本木一丁目駅にある高級スーパー、福島屋はこだわりの品が並びます。/右下・何かと便利なドン・キホーテもご近所。赤坂だけあって何となく高級感ある店構えです。

そして、周囲は驚くほど静か。物件のすぐ裏にある氷川神社は、お散歩がてらお参りに通えばご利益がありそうですし、早朝にミッドタウンや国会議事堂までちょっとジョギング、なんていうのもテンションがあがります。意外と緑が身近なのも、赤坂の隠れた魅力かも。

左上・最寄り駅の赤坂駅に出るとそこは、TBS放送センターにライブハウス、劇場、商業施設が点在する赤坂サカス。ここから徒歩4分で自宅というのは驚き。/右上・六本木一丁目駅からも徒歩7分。さらに六本木駅にも歩いて行けます。/左下・この地域は徳川家の由緒正しい土地。物件のすぐ裏手には静寂な雰囲気の氷川神社が建つ。ちなみにこの神社、縁結びのご利益もあるとか。/右下・赤坂駅から物件までの道の途中にある氷川公園。こんな静かな風景もあるんです。

カフェのような空間で料理を楽しむ暮らし。
カフェのような空間でこなす仕事。
どちらも似合うこのお部屋。さて、あなたならどう使いますか?


取材・文:吉田タカコ/撮影:cowcamo、吉田タカコ