気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました! 「街の先輩に聞く!」、 第88弾は「武蔵関」です。
今回降り立ったのは練馬区の「武蔵関」。西武新宿線の「上石神井」のとなりにあるローカル駅です。 このいかにも風格あふれる名前は、かつて石神井城の関所があったことに由来するんだとか(諸説あります)。
ところで皆さん、練馬区は23区の中で緑被率No.1(※)ってご存知でしたか?都内だけど、意外にも畑がたくさんあって、ゆたかな緑にあふれたエリアなんです!
※平成27年練馬区調べ。緑被率とは緑で覆われる土地の面積割合のこと。自然の多さを表す指標になっている。
そんな街の緑の一端を担っているとも言えるのが、今回取材にお伺いする「オザキフラワーパーク」。新青梅街道沿いの広〜い敷地と大きな建物の中に、あふれんばかりの緑と花が集い、さらにはカフェレストランまで併設している夢のような世界!まさに全国のガーデニング愛好者の聖地と言うべき場所なんです。
その歴史は長く、なんと今年で創業61年目なのだとか!こ、これはもう街の先輩というか “街のレジェンド” と言えるのではないでしょうか?
そしてお話を伺うのは、このレジェンド「オザキフラワーパーク」の代表取締役である、尾崎明弘さんです。この街で生まれ育ち、そして生業を営む尾崎さんだからこそ知る、お店と武蔵関の魅力についてたっぷりとお話しいただきましょう!
■はじまりは農家だった
代々「武蔵関」の地で農家を営んでいた尾崎一族。花に関わりを持ったのは尾崎さんの両親が戦後にシクラメンの栽培を始めたことがきっかけだったそう。
尾崎さん:当初は花の栽培がメインだったのですが、次第に近所の方から直接売ってくれないかという声をいただくようになったんです。
それを受けて、生産より商売がしたかった母が『園芸店にしたらたくさん人が来るんじゃない?』って父を説得したんですよ。
こうして園芸店としての道を歩み始めたのが47年前、1975年のことです。90年代にはガーデニングブームが巻き起こり、「オザキフラワーパーク」はどんどん拡大成長をしていきます。
時が変わり2000年間近、まだまだガーデニングブームが覚めやらぬときです。海外での花屋修行を終え、2代目として跡を継いだ尾崎さん。頭の中に描いていたのは 『1年中花と緑に囲まれる暮らしを日本でも当たり前にしたい』 という想いでした。
尾崎さん:僕が修行をしていたオランダでは、市役所や公共機関と同じようにガーデンセンターへ案内する標識が街に立っていました。市民にとって、花と緑の存在はもはやインフラのひとつなんですよね。
お庭があれば花をきれいに植えるし、窓辺があればグリーンを飾る。当時の日本でも、だんだんと園芸への関心が高まり始めていたけれど、まだそれが当たり前のものではなかった。
もっともっと園芸を広めて、オランダのように花と緑が人々にとって身近なものになればと思ったんです。
■ “ジャングル化” が始まったフラワーパーク
なるほど、花や緑が当たり前の世界……そういえば日本の園芸屋さんって昔は整然と鉢植えが並ぶホームセンターのような印象でしたけど、「オザキフラワーパーク」はまるで植物園に来ているみたいでワクワクします。
尾崎さん:そうなんです。それまで園芸店といえば花や野菜の苗木がメインで、冬場は閑散としていました。私はもっと1年中楽しめる園芸店にしたくて、大好きだった観葉植物を増やしていったんです。とはいえ当時はまだひとつひとつの植物の形がわかるような陳列の仕方でしたが……
あるとき発注した植物が一度にたくさん来てしまったことがあって、それが転機になりました。置き場に困った私は、思い切って店内の一角に鬱蒼と茂ったグリーンコーナーを作ってみたんです。もうスタッフたちはみんな顔面蒼白ですよ。『社長がまた何か始めた!あんなことしてどうするんだ!』って(笑)
ところが、そんな心配をよそにお客さんたちが『ジャングルみたい!』と面白がり始めたんです。
この空間の成り立ちにはそんなきっかけがあったんですね!確かに店内を歩いているとまるで探検してるみたいで楽しいんです。
尾崎さん:そうでしょう?私もどんどん楽しくなってきて、あれも置こう!これも置こう!って。どんどん勝手に買い付けるようになったら、店の2階一面がジャングルになったの(笑)。
今では訪れるお客さまがどんどん写真をインスタグラムにアップしてくれて、若い方にもたくさん来ていただけるようになりました。
わかります、だって至る所に可愛い住人が潜んでいて、私たちも映える写真をいっぱい撮りたくなりますもん!手に取るような距離感で体感できると、急に植物たちが愛おしい相棒のように感じてしまうのですから……植物の持つ力って不思議です。
もちろん、“ジャングル” だけではなく昔ながらの園芸商品も勢揃い。植物探しに疲れたらひとやすみできるカフェがあるのも嬉しいポイント。老若男女がそれぞれに楽しめる、お店づくりが魅力的です。
■「武蔵関」の魅力とは?
さてさて、この地で生まれ育ってきた大先輩の尾崎さんに質問します。この街の魅力とはどんなところでしょうか?
尾崎さん:うちもそうだけど、畑がたくさんあって緑豊かなことだよね。あとね、公園がとても豊富なこと。ここから4km圏内だけで、「武蔵関公園」、「井の頭公園」、「善福寺公園」、「石神井公園」とたくさんあるんですよ。この公園たちをぐるっと全て回るのが私のランニングコースです。
本当に思った以上に広い公園が多い印象です。散歩もピクニックも、四季折々の景色の変化を楽しむにも縦横無尽!無敵の癒しエリアですね。
あれ、「善福寺公園」や「井の頭公園」ってことはもしかして「吉祥寺」が近いんですか?お買い物とか便利そうな気がします。
尾崎さん:そうそう、「吉祥寺」が近いんですよ。自転車や車だとあっという間に着いてしまいます!それにバス便もとっても多いんです。
毎日の買い物はスーパーや駅前の商店街が便利だけど、大きな買い物やオシャレな買い物をしたいときはみんな「吉祥寺」に出ますよ。
ええ〜それは知りませんでした!これは一気に暮らしやすさが増す情報。便利さも兼ね備えて、のどかで豊かな景色が身近にあるって最高以外の言葉がないです!
尾崎さん:昔は今よりもっと畑がたくさんあったんですが、次第にマンションへと変わっていきました。この辺は牧歌的で住みやすいからか、越してくるファミリーが多い印象ですよ。
尾崎さん:とはいえ昔ながらの良さもたくさんあるんです。駅前には商店街がありますし、なんと言っても忘れてはならないのは年に一度の一大祭り「関のボロ市」。
子どもから大人までが一堂に集い、たくさんの出店の中を心躍らせながら歩いて買い物します。そして名物の山車が練り歩き、この街の情熱が一気に燃えあがる。ここにこの街の真髄があると思っていますね。
そんなに情熱的なお祭りがあるとは!知られざる「武蔵関」の一面ですね。残念ながらここ数年はコロナ禍で中止となっているようですが、街の心意気や熱く眠る “関っ子魂” に触れる時間として、きっと誰もが再開を多く待ち望んでいることでしょう。
■この街に彩を
最後に尾崎さんへ「オザキフラワーパーク」のこれからについてたずねました。
尾崎さん:このお店があることで、園芸が身近に、そしてこの街がもっと緑と花で豊かになるように、というのが私の夢です。
練馬区は緑を活かしたまちづくりに積極的ですから、同じビジョンを持つもの同士、これから何か一緒に取り組んでいきたいですね。
こんなにも街を想う大先輩がいるなんて本当に頼もしい!「オザキフラワーパーク」が掲げるスローガンは、“Feel the Power of Plants”(感じよう!植物の力!)。店舗に訪れると、そしてこの街を歩いていると、まさに植物たちが癒しを与えてくれるように感じます。
普段は緑豊かなこの街で英気を養い、思い立ったら「吉祥寺」にサクッとお出かけ。そんな暮らしについつい思いを馳せてしまいました。
【INFOMATION】
店名:オザキフラワーパーク
アクセス:東京都練馬区石神井台4-6-32 (google map)
営業時間:9:00〜19:00
定休日:1/1〜1/2