西武新宿線の始発、西武新宿駅から急行で20分強の田無駅。都心に通勤する人たちのベッドタウンです。郊外的な閑散とした駅前の風景をイメージしていたところ、意外にも、バスやタクシーが行き交う広いロータリーがあり、そこから延びるメインストリートには商業ビルが立ち並ぶ、賑やかな街並みが展開していました。

駅ビル内の商業施設に加え、北口は専門店街のあるASTAや、食料品から衣料品まで揃う百貨店・LIVINに直結。仕事帰りに、ひと通りの買い物は済ませられます。駅から物件までのルートにも、食料品、生活用品の買い物ができる大型スーパーやドラッグストアが点在しています。

左上・田無駅。駅ビルにはカフェやパン屋が入る。/右上・北口からすぐのASTAとLIVIN。/左下・北口側のメインストリート。飲食店、本屋、レンタルビデオ屋などが並びます。/右下・物件から徒歩10分の場所にあるイオンタウン。

今回ご紹介する物件の企画・販売を手掛けた株式会社ライフスタイルクリエイトの本田学さんは、子どものころから田無市付近にお住まい。この地のよさは、車やバス便、自転車などで少し足を伸ばせば、家族で楽しめる場所が複数あることだと言います。

たとえば、西東京市にある多摩六都科学館。ここではプラネタリウムや無重力体験などが人気です。また、小金井市など数市にまたがり約80㏊もの広さを誇る小金井公園も魅力的。BBQやサイクリング、バードウォッチングが楽しめたり、春には1800本の桜が咲き誇り、お花見で賑わいます。バス1本で吉祥寺に行くこともできるんですよ。(本田さん)

左から、ライフスタイルクリエイトの代表取締役である鈴木靖久さん、本田学さん、インテリアコーディネーターの萩生田夏帆さん。


賑やかな駅前から歩いて15分、周囲は閑静な住宅街へと変わります。低層の集合住宅と戸建てがゆったりと並ぶその一角に、田無パールハイツはあります。築35年の時を経た、3階建ての低層マンションです。コテむらを残した外壁、カーブを描いたバルコニー、アクセントに使ったモスグリーンのタイルなど、レトロマンション好きにはぐっとくる80年代的デザイン。今回のお部屋は、ここの2階です。

田無パールハイツの外観。中庭を囲むように建物が配置されています。住戸には、中庭と敷地外側の双方から光と風が入ってきます。


レリーフのついた重厚感のある玄関ドアを開けると、一転、白をベースにしたシンプルな空間が広がります。バルコニーからリビング、ダイニングキッチンを通じて、玄関付近まで光が届いて、室内全体が明るくさわやか。専有面積は約40㎡と広くないのですが、そのこじんまり感が、かえって心地よさを増しています。

当社は若い年代に向けた物件を得意としています。この物件もそのラインナップのうちのひとつ。DINKSや小さなお子さんのいる3人家族を想定して、できるだけ価格を抑えながら、住み心地のいい空間をつくり上げました。
利便性や住環境、管理体制が確保された物件を仕入れ、リノベーションを行いました。あくまでもお客様の住み心地を重視しつつ、こだわりどころにメリハリをつけて、低価格を実現しました。(本田さん)

寝室からリビング方向を見たところ。2階ですが燦々と日差しが入ります。スタイリングしてある家具は購入者の方にプレゼントする予定だそう。


リノベーションのデザインは、同社のインテリアコーディネーター、萩生田夏帆さんが担当。リノベーション後の価格を抑えるために、間取りは以前の2DKのままにしましたが、寝室とリビング、ダイニングキッチンの間をそれぞれ引き戸にしたので、開け放せば大きなワンルームとして使うことができます。床、壁などの内装、水まわりなどの設備機器はすべて刷新。床の遮音性能を高めたり、専有部分の給排水管を交換するなど、快適に生活していくための基本的な性能も見直しています。

マンションの管理規約には住戸の遮音については定められていませんでした。でも、入居したご家族の子どもが走り回るようなシーンもイメージして、床下にほとんど音の聞こえないLL45というレベルの遮音性能をかなえました。(萩生田さん)

キッチン本体はシンプルなシステムキッチンですが、レンジフードや取っ手部分はオプションパーツを選び、グレードアップさせたそう。


萩生田さんは、約40㎡という限られた空間を心地よく演出する工夫を随所に凝らしています。室内全体は、白い壁と天井、柔らかい色調の木目の組み合わせをベースに。ただし、ドアの取っ手や蝶番、棚のブラケットなどのパーツに黒を取り入れてアクセントとするなど、ナチュラル一辺倒にならないようにデザインしたといいます。

また、一般に、古いマンションは天井高が高くありません。そこで、萩生田さんは通常よりも細い幅木を使い、天井高を高く感じられるようにしました。これは、部屋をすっきりと広く見せる効果もあるそう。

左上・キッチンの壁はタイル仕上げ。オープンな棚はディスプレイが楽しめます。/右上・引き戸の取っ手など、各所に黒を取り入れてアクセントに。/左下・リビングの壁面の一部はベージュ色の壁紙を施工。この部分は絵などを掛けられるように下地を作ってあるそう。/右下・床はナチュラルなカラーのフローリング。見た目のよさだけでなく遮音性能も確保されてます。


リビングは白い壁紙をベースにししていますが、1面だけ、梁から下に淡いベージュの壁紙が貼られています。これには、単に空間を彩るだけでなく、視覚的な変化や空間の奥行きを演出する狙いがありました。シルバーのスポットライト照明がアクセントウォールを照らし、さりげなく主張のあるリビングに仕上がっています。

奥の4.5畳の部屋はベッドを置いて、寝室として使っていただくイメージです。中には洋服を掛けるバーのほか、可動式の棚を取り付け、小さめの生活用品から薄手の布団などもしまえるようにしています。複数の生活用品をしまえるようにしているので、このクローゼットの内部には消臭機能を持つ壁紙を採用しました。(萩生田さん)

寝室。書斎を兼ねるなどさまざまな使い方ができるようにシンプルに仕上げています。引き戸を開けてリビングとつなげて使う手も。

クローゼットの中は、上部と左右に棚が設置されています。内部には消臭機能付きの壁紙を施工。


洗面台は置き型の洗面ボウルと木の板のカウンター、棚板を組み合わせて造作。壁付けしてあるユニークな形の照明器具は、実はエクステリア用なのだとか。

エクステリア用の照明器具は、防湿加工なので洗面所にも使えるんですよ。当初は似た形状の船舶用の照明器具を考えていましたが、意外にも防湿されていなくて、急遽変更になりました。(萩生田さん)

左・ユニットバス。水栓はデザイン性を重視して、標準仕様よりもグレードアップされています。/右・洗面脱衣室。カウンター下の棚はカゴを組み合わせて収納しても絵になります。


物件を見学していて感じたのは、仕上げが細部までとても丁寧なこと。聞くと、同社ではリノベーションの工事を、依頼した大工さんや職人さんたちに丸投げにするのではなく、設計者がほぼ毎日工事現場に通って、2人3脚で工事にあたっているそう。

数十年前につくられた既存の躯体をベースに工事を行うリノベーションでは、設計をしたものの、施工が予定通りにいかないケースも出てきます。そういった時にも、パートナーの大工さんや職人さんと設計者とで相談し合い、解決しているのだといいます。

大工さんが「こうしたほうがいいよ」とアドバイスしてくれるときもありますし、ダメ出しされるときもありますね(笑)。普段から綿密なコミュニケーションを取っているからこそ、そうした会話のキャッチボールもできるのだと思います。(萩生田さん)

左・ブラインドの奥は洗濯機置き場。キッチンの横にあるので家事がしやすそうです。/右・トイレも新設。棚が備え付けられているのがうれしい。


一定の基準をクリアした優良リフォーム会社のみが加盟できる、紹介サイトに登録しているというライフスタイルクリエイト。そのサイトでは、依頼したお客様からデザイン性、アフターメンテナンス、工事価格、施工のよし悪しなどの項目について、5点満点で評価を受けるという厳しいルールが。同社は今年度、すべての項目で平均点数4.75以上の優秀な評価を得ています。

弊社の店舗は田無の隣駅、西武柳沢にあるのですが、近日に2店舗目となる表参道店をオープンします。西東京や武蔵野エリアだけでなく、都心でもどんどんリノベーション済み物件を企画していく予定ですのでご期待ください。(本田さん)

リビングとダイニングキッチンを仕切る引き戸はスモークガラス入り。ほんのり奥の部屋の気配が伝わります。


ちなみに、マンション選びには管理状態の見極めも大切。たいていの分譲マンションでは、住民が組織している管理組合が、外部の専門の会社にマンションの清掃や修理・修繕、住民からの集金などを含む管理業務を委託します。

一方、この田無パールハイツでは、そういった管理業務を住民が自ら担う「自主管理」というやり方をしています。毎日の掃除などは当番制で行われ、これまで修理・修繕も住民のみなさんで話し合い実践してきたとのこと。マンションの要所の修繕が済み、掃除が行き届いている様子からは、自主管理がスムーズに行われていることがうかがえました。

周辺の同じくらいの広さの賃貸物件の賃料と比較して、この物件の価格なら、月々のローン返済額のほうが断然オトク? 都心へのアクセスのよさ、生活や子育てがしやすい環境、機能性まで見直したリノベーション、そして現実味のある価格設定・・・とくれば、購入物件の候補として一見の価値あり。これからの季節、小金井公園のお花見も兼ねて、見学に行ってみてはいかがでしょうか?


取材・文:介川亜紀/撮影:cowcamo