賃貸か、購入か。

住まいを選ぶ時の永遠の課題と言えそうなこのテーマ。将来的には自分の住まいを手に入れたいと思うものの、特に独身のうちは、『家を購入する』という選択はかなりハードルが高く感じられるのではないでしょうか。

24歳でこの部屋を購入し、5年間住んだ、売り主の中村昌弘さん。

買う、借りる、どちらにしても、住まいにお金を払い続けなければならないのなら、これだという物件に出会ったら、若いうちでも購入するのを断然おすすめしますね。

と明快に答えてくれたのは、24歳の時にこのお部屋を購入した、会社員の中村昌弘さん。この部屋を見た瞬間に惚れ込んだ、という自慢のお部屋を案内していただきました。

晴海運河を渡る歩道橋の先にある、左手のマンションが晴海テラス。勝どき駅からは徒歩10分。目の前に運河が広がった瞬間、テンションが上がります。

運河に面して建つモノトーンの洗練された外観が目を引く、晴海テラス。現在は別業界に転職した中村さんですが、この部屋を購入した当時はマンションデベロッパーにお勤めだったそう。

広々としたエントランスホールは、運河に向けて大きく取られた開口が開放的。

実はこの部屋はモデルルームとしてつくられたもので、ここだけ他の住戸とまったく仕様が違ったんです。広さは40㎡と、決して広くはないんですが、普通、40㎡でこういうプランにはしないだろうな、という造りをしています。初めてこの部屋の玄関を開けた瞬間、その一風変わった光景に惚れ込みました。

目の前に広がる晴海運河や、周囲に点在するタワーマンションのランドスケープ、そして東京タワーを仰ぐ抜群の眺望は、まるでドラマから抜け出てきたかのよう。中村さんは、もちろんそれらも十分魅力的だけれども、それよりも、この部屋の個性的な間取りのほうに心を奪われたと言います。

左・玄関扉を開くと、正面には木製のオブジェが。左側は大型のシューズインクローゼット。/右・風格ある長い廊下は圧巻! 左側はサニタリーのドアがどこにあるかわからないのも、騙し絵のような面白さがあります

通常、マンションって、玄関ドアを開けると中が見通せるプランが多いですよね。だいたい縦に長くて、間取りも似たり寄ったり。でもこの部屋は、玄関ドアを開けると空間がクランクしていて、長い廊下が続く。スペースの無駄という考え方もあるのかもしれないけれど、この普通じゃないところ、非日常感が面白いなと思いましたね。

コテ跡を大胆に残した左官仕上げの壁と板壁、そしてタイル張りの床に囲まれて奥へと延びる廊下は、天井の間接照明で浮かび上がり、まるで邸宅のような風格。板張り仕上げの左側の壁には水まわりが収まっていますが、取っ手が出っ張っていないため、どこが扉なのかわからないというのも、遊び心に溢れています。

LDKのドアを開けた光景。キッチンが視界に入ってこないため、生活感を感じさせないところがポイント。

もうひとつ気に入ったポイントは、LDKのドアを開けた時にキッチンが見えないということ。部屋に入った時にキッチンが丸見えだと、生活感も丸出しな感じで好きじゃないんです。
ここは扉を開けるとリビングの先にフィックスガラスがどーんとあって、ベッドがさりげなく目隠しされている。そしてその先にバルコニーの光景が広がる。この生活感のない感じがよかったんです。

左・ざらっとした質感のタイル壁が大人っぽいダイニング。ビルトイン浄水器にガス2口コンロ、ビルトインオーブンと、キッチン設備も充実。/右・キッチンカウンターとスツール、デザイン照明ももちろん備え付け。

スタイリッシュに暮らすことを極めたプランは、さすがモデルルーム、といった感ですが、実際暮らしてみると、収納スペースが多く、暮らしやすさは抜群だったそう。

5年間暮らしてみて、使いづらいと思ったところはまったくなかったですね。ちょっと変わっているけれど、決して奇抜ではない。だから使い勝手はすごくよかったんですね。キッチンの反対側にカウンターがあるのも便利だし、バスルームは洗い場が広いし、洗面スペースにはリネン庫まである。ソファやベッド、TVボードも備え付けで、サイズ感もぴったりでした。

左・大きな2面鏡がある洗面スペースはミーレの洗濯乾燥機付き。/右・浴室乾燥機付きのバスルームはバスタブも洗い場も広々。

それにしても、若くしてマンションを購入する、ということに不安や迷いはなかったのでしょうか?

購入したのは24歳の誕生日だった気がします。マンションを購入する場合、将来的に資産価値が下がらないだろうか、と不安に思う方は多いと思います。その点、この晴海エリアは交通利便性が高いので、今後も資産価値が下がる要素は少ないと考えられます。デベロッパー時代の同期も何人か購入していますし、マンションをつくる側の人が購入しているというのが、この物件の将来性の証明なのではないかと(笑)。
また、ベイエリアは地盤が安定していないのでは、と思う方もいるかもしれませんが、東日本大震災が発生した際も、液状化などが起こることはありませんでした。なのでそこは安心していいと思います。

左上・物件から徒歩15分ほどの距離にある晴海ふ頭公園。ジョギングや犬の散歩で足を運ぶ住人が多いのだとか。レインボーブリッジを正面から眺められる夜景は圧巻。/右上・マンションから運河を挟んだ反対側にある豊海運動公園。BBQ場などもあります。/左下・勝どき駅前。交差点に建つ勝どきビュータワーのふもとでは、週末になると「太陽のマルシェ」が度々催されます。/右下・物件近くにある晴海アイランドトリトンスクエアにも飲食店などが入っており便利。

デベロッパーとしてもいち購入者としても太鼓判を押すこの家を、今回手放すことにしたのはなぜなんでしょう??

現在勤めている会社により近い場所に住みたいと思ったのがいちばんの理由です。
僕は住まい選びの条件として、交通利便性を第一優先に考えているのですが、ここは間取りの魅力がその条件に勝ったので購入を決めました。現在はここから徒歩5分ほどのところにあるバス停からバス通勤していますが、本当は電車で2駅以内のところに住みたくて。
ここには5年間住みましたが、今後も勤務先の場所が変わることはなさそうなので、思い切って住み替えを決意しました。

平日は仕事帰りに同僚と会社周辺で飲むことが多いものの、休日は家でのんびり過ごす派だという中村さん。特に夜景の美しさと夜の静けさは折り紙付きとのこと。

奥行きのあるバルコニーの真下には、ゆったりと流れる晴海運河。向かい側に見える建物がTHE TOKYO TOWERS(TTT)。

実はかなりのインドア派なんですが、1日中家にいても閉塞感を感じることはないですね。 ちょうど向かいに、超高層複合マンションの"THE TOKYO TOWERS"(TTT)が建ってるんですが、バルコニーから見えるTTTの夜景も素晴らしいんです。この部屋のちょっと変わった間取りは、日常から切り離してくれる感じがします。帰ってくる度にいい気持ちになれる、そんな住まいを探している人にぜひ暮らしてほしいですね。

中村さんは売り手として、そして住まい手として、ふたつの立場から物件の魅力を語ってくれました。

まずはあなたもこの部屋の玄関ドアを開けてみてください。

長い廊下にはっと心が動いたら、この豊かなキャナルビューと美しい夜景は、きっとあなたのものになるはず!

取材・文:吉田タカコ/撮影:cowcamo