中古マンションを購入するとき、家族の望む暮らしが実現できる物件を探すのは大切なこと。でも、同時に気に掛けておきたいのが、物件の資産価値です。

資産価値が下がりにくい物件であれば、何年か住んだ後にも、購入時と同様の価格で売却したり、有利な価格で賃貸として運用することができます。若いうちや子どもが小さいうちは都心のコンパクトな物件に住んで、将来的に広い家に住み替え、というビジョンも描きやすくなります。また、思いもよらない転勤や転職などの人生の変化が突然生じたとしても、住まいの処遇で悩まずに住みそうです。

では、資産価値が下がりにくい中古マンションには、どんな条件があるのでしょうか?


築年数と資産価値の変化の関係

出典:「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」中古マンションの築年帯別平均価格(公益財団法人 東日本不動産流通機構)

中古マンションの築年別の(平均)価格の推移を見てみると、新築は完成直後から築15年まで価格がどんどん下落しますが、築16年以降は安定していることが読み取れます。この下落の幅はすべて同様ではなく、物件によっても違いが出てきます。


利便性、快適性、人気の高い「立地」が資産価値を維持

スーパーや金融機関、病院など生活に必要な施設が至近距離にある立地は、資産価値が下がりにくいと言えます。

価格の下がりにくいマンションの条件は、まず、「立地」。居住中の生活の快適性や利便性を大きく左右するとともに、その立地のもつ特徴は長らく変化しにくいため、後に建物の売却価格や貸すときの家賃にも影響するからです。では、その条件を具体的に見ていきましょう。

①首都圏であれば都心に近いこと。家賃相場は都心に近付くにつれて高くなるため、賃貸として運用するときに賃料を高く設定できます。関連して、都心へのアクセスのよさや複数の路線を使えることも、有利に働きます。

②最寄り駅から距離が近いこと。周辺環境などにもよって多少異なりますが、一般的には駅から近い物件ほど評価が高くなります。

③日常生活が便利なこと。スーパーや商店街、金融機関、病院などの生活に必要な施設が至近距離に揃っていて、会社への行き帰りに気軽に立ち寄れる範囲にあるとよりベター。

④オフに楽しめる施設や環境があること。人気の飲食店のほかファッションやインテリアのお店、美術館のような文化施設、緑豊かな公園などが一例。

⑤ブランド力のあること。たとえば人気の商業エリアや、高級住宅街、新たな開発地区、その周辺のもつ歴史などが魅力となり、テレビや雑誌などでよく紹介されるような知名度の高い街。

ちなみに、中古マンションが購入時と比べて同じくらい、あるいは、それよりも高く売れる街は山手線の内側に集中しています。最寄り駅で言えば、表参道や品川、目黒、原宿、六本木など。

cowcamoの「case study」で紹介したM邸の位置する麻布十番も常に上位にある街のひとつ。これらの街は、先に紹介した条件を複数兼ね備えています。


ポイントは「管理体制」「大規模修繕」「住戸の可変性」

玄関周辺など共用スペースの修繕や清掃が行き届いているマンションは管理体制がよく、価値の維持が期待できます。

もうひとつ、資産価値が下がりにくい物件の条件、それは、建物を良好な状態に保ちやすい条件ともいえます。これは、大きく分けて4つあります。

①管理体制がよく、定期的にメンテナンスを行っていること。清掃や植栽の手入れなどのほか、「大規模修繕」がポイントです。

②①にある「大規模修繕」がきちんと計画され、適切な時期に実行されていること。「大規模修繕」の工事は建物を良好な状態に維持するために、非常に重要です。購入時に、仲介会社を通して、管理組合から大規模修繕の計画が記された「長期修繕計画」を見せてもらいましょう。

③建物はラーメン構造が理想的。ラーメン構造とは、柱と梁、つまり鉄筋コンクリートでできた「線」を接合して躯体を構成する構造で、大きな空間がとれることが特徴。住戸はその空間につくられるので、間仕切り壁の変更が比較的容易で、間取り変更や設備機器の交換がしやすいのです。

④二重天井、二重床であること。二重天井は自室の天井仕上げ材と上階との間に空間があり、そこに配線を通すことができるため、照明の取り付け位置を自由に変えられます。二重床は床仕上げ材と下階との間に空間があり、給排水管、ガス管などを通せるため、キッチンやトイレなどの水まわりの位置を変更できます。

築年数の古いマンションで見られる直天井、直床では、配線、配管などがコンクリートの躯体に埋め込まれているので、照明の位置、水まわりの位置の変更が難しい場合があります。


永住派は周辺環境、住戸の可変性を重視

永住するつもりなら、住み始めてから変更できない日当たりや通風、音、眺望などの条件を妥協せずしっかりチェック。

ここまで、一般的な資産価値の下がりにくいポイントを紹介してきました。ただし、これらの条件は永住を予定している人と、すでに住み替えを予定している人では多少違いがあります。ここからは、それぞれの異なる点についてご説明しましょう。

永住を希望している人は都心を意識しすぎず、現在の家族の通勤、通学しやすさや行動範囲を優先して物件を探すエリアを絞り込むとよいでしょう。当面、引っ越しの予定がないので、周辺の環境や住戸の日当たりや通風、管理体制など、入居後に変えられない条件を念入りに確認しましょう。

しかしながら、たとえ永住志向でも、万が一の転勤や住み替え、後々の子どもへの相続などの考慮は必要。売却や賃貸に出すことも念頭に置き、そのエリアの中でも駅近などの人気の高い場所を探すのが賢い方法です。

また、家族構成やライフスタイルが変わったときに間取り変更が簡単にできるよう、リノベーションしやすい造りの物件を選びましょう。

先程述べたように、建物の躯体はラーメン構造が理想的です。中古マンションでは、建物の躯体がラーメン構造ではなく壁式構造の物件があります。この構造は壁が建物全体を支える仕組みになっていて、壊したり場所を移動することができないため、リノベーションでの間取り変更に制限が出てきます。


住み替え派は人気エリアの駅近を狙って

資産価値が下がりにくいマンションなら売却も賃貸への運用がスムーズになり、そのときの暮らしに合った物件への住み替えも可能になります。

購入する時点ですでに住み替えを予定している人は、先に紹介した立地や建物の条件を参考に、有利に売却したり、賃貸として貸し出せるかどうかを最優先して探しましょう。

特に、「人気エリア」「駅近」は重視したい条件です。とはいえ、しばらくの間は自分や家族が暮らす住まい。退去予定の時期まで、心地よく住める環境と建物かどうかもしっかり摺合せてください。

注意したいのは、間取りやデザインです。

退去後は間を置かずに、売却や賃貸に移行できれば余計な出費はありません。ところが、自分や家族の趣味に合わせて個性の強いデザインの物件を選んでしまうと、その趣味に合う人が現れるまで、売却や賃貸に結び付かない可能性があります。

早く希望者が見つかるようにするには、なるべく幅広い人たちの好みに合うような、比較的シンプルな間取りやデザインを選ぶのもひとつの方法。

壁や収納の位置を変えられるなど、カスタマイズしやすい可変性の高い造りを選んでもよいでしょう。また、ひとり暮らしやDINKS、ファミリーなど、そのエリアでの居住者の傾向が分かっているなら、あらかじめそれを考慮した物件を選ぶ方法も考えられます。

中古をターゲットにすると、価格が目減りしにくいことから、新築よりも資産価値の下がりにくい物件を見つけられる可能性が高まります。理想の条件を持つ物件を手頃な価格で購入できるなどのメリットもあります。

分かりやすい例は、いわゆるヴィンテージマンション。つくられた時代ならではの優れたデザイン性や醸成した環境が評価を得、周辺の同様の築年数の物件と比べて高値で取引きされるケースもあります。

資産価値の下がりにくい立地や建物、家族の暮らしたいまちや建物・・・。その双方の条件をかなえるのは簡単、とは言えません。でも、資産価値の下がりにくい物件を選ぶことは、生涯を通じても有利な資産形成のスタートライン。条件を慎重に吟味して物件を選び、豊かな将来を手に入れましょう。