中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。
今回は、東京都目黒区にお住まいの井澤卓さん(会社経営・レタリングアーティスト / 30代前半)のご自宅を訪ねました。


ドアを開ければ、グリーンと木の色、ネイティブアメリカンの鮮やかなテキスタイル、そして壁一 面に描かれたレタリングアートが迎えてくれる井澤卓さん(@takuizawa)の住まい。住み手の好きなものが伝わってくる空間には、リラックスした空気が流れています。

ネイティブアメリカンのナバホ族伝統の柄が好きで、クッションやブランケット、ラグなどを見つけると旅先でも買い集めているそう。

築20年のマンションが位置するのは目黒区の静かな住宅街。田園都市線の最寄り駅から徒歩6分、その気になれば渋谷駅からも歩ける便利な場所です。

■夢は「デザインに自分らしさがあるホテル」を作ること

以前は祐天寺の賃貸マンションを友人とシェアしていた井澤さん。その時から、自分の好きなア イテムを取り入れながら「人を招くこと」を意識したインテリアを実践していたのだそう。そのルーツは、「デザインがよくて居心地のいいホテルを作りたい」という自身の夢でした。

海外を旅した時、有名でなくてもオーナーの好きなものや思いが伝わってくるホテルに出会って、 いつか自分でもこんな空間を作れたらと思うようになりました。ここ数年は、旅先は「泊まりたいホテルがある街」を基準に選ぶくらいで。

ホテルは衣食住のデザインの究極体だしブランディングの究極体でもあると思うから、ビジネスとしても興味があります。

壁に自らブラッシュレタリングでメッセージを描いた寝室スペースの床は、一段高い小上がりに。「階段部分がデッドスペースになってしまうんですが、高さが変わると気持ちも変わってリラックスできます」。友人が訪れた時のベンチ代わりにも。

「生花や植物は、少し取り入れるだけで空間が特別になるからインテリアとしてコスパがいい」と井澤さん。床はヘリンボーン張りに変更し、天井と壁はシンプルに白く塗装。

もっとデザインにこだわった空間を作りたいと、4年ぐらい前から、買うなら中古でリノベーションをしようと意識し始めました。

お金をただ貯めておくより新しいことにトライしたい! と、ふと思い立ってすぐに購入しました。まだ30歳でまわりに家を買ったことがある人も少なかったけれど、『この歳で家を買ってリノベを経験できたらおもしろいな』という思いが強かった。貯金よりも、人に語れる経験を得られるから。不動産業者や施工業者とのやり取りだとか、なかなか経験できないじゃないですか。もちろん、自分のイメージを形にした空間で過ごせるのも楽しい。

だからお金の面でリスクはあったけど、僕にとってはポジティブな要因が大きかったですね。同じ値段で賃貸に住み続けるならリノベーションの経験を買う方が楽しいと思うし、他の人にもおすすめしたいです。

左:玄関を入ると、壁を使ったミニギャラリーが迎えてくれる。多くが友人や自分の作品で、思い入れのあるものばかり。/右:造作棚で靴を見せながら収納。さりげなく飾ったドライフラワーがかわいい。

物件の条件で譲れなかったのが、「都内とは思えないほど広いバルコニーがあること」。出会っ た1LDKのこの物件は、室内の床面積約43㎡に対してバルコニーなんと約25㎡(=約7.5畳)! こんな物件は二度と出会えないと、購入を即決しました。

向かいのマンションからの視線を防ぐため、周囲に柵を作って。夏はタープをかけて気持ちのいいセカンドリビングにしているそう。

■自分でデザインを試行錯誤。だから心地いい空間に

実現したいインテリアのイメージが明確だった井澤さんは、デザインをプロに依頼せず自分でディ レクションすることに。担当の不動産会社が自社でリノベ再販物件も手がけていたためデザインに詳しく、施工業者も手配してくれたことが功を奏し、思い通りの空間を実現することができま した。

ワンルームの空間に変化をもたらす、奥の小上がり風寝室スペース。右奥には小さなバルコニーも。

元の間取りは小さな寝室のある1LDKでしたが、間仕切り壁を撤去し約43㎡の限られたスペースをおおらかなワンルームに。二面に窓がある間取りを生かして、ルーフバルコニー側にリビング、キッチン脇にダイニングをしつらえました。素材は木と白をベースに、黒のポイント使いで引き締めて。 植物のグリーン、ナバホ柄のラグやクッションを散りばめて楽しい雰囲気に仕上げています。

寝室エリアの床を小上がりのように高くするデザインは、Pinterestで見つけた写真をイメージソースに。ワンルームにメリハリが生まれ、既存の袖壁の存在も相まって、少しこもるような落ち着きある空間になりました。

ワンルームであっても、おこもり感が味わえる寝室スペース。

コンパクトなキッチンは、空間に合わせてサンワカンパニーの「MUJI+KITCHEN」のステンレスタイプに交換し、壁もタイル貼りに変更。

収納が少ない物件だったため、友人の木工作家にクローゼットをオーダーし造作してもらった。

不動産会社の担当の方は僕が明確なイメージを持っていることを分かってくれて、細かいことも逐一確認してくれたので助かりました。僕もイメージはあっても建材には詳しくないから写真や言葉で伝えて、それに合う建材のサンプルを提案してもらって。

職人さんも腕がよくて、例えば床のヘリンボーンも「施工が大変だよ」と言いながらきれいに仕上げてくれましたね。友人の木工職人も、でき上がりを見て感心していました。

洗面室は海外のホテルをイメージ。不動産会社に写真でイメージを伝え、壁の下半分のグレーの塗装色や、造作カウンターの素材を提案してもらった。

暮らし始めて実感しているのは、『過ごす空間で気分が変わる』ということ。前までは家で仕事をすることはなかったんですが、ダイニングに座ると目の前に景色が開けて気持ちがいい。家でも集中して仕事ができるようになりました。

■手の跡を感じるアートが、住み手の個性を伝える

この部屋を特別な空間にしているのが、イラストやレタリングアート、写真などのポップなアートたち。実はそのほとんどが、井澤さん自身や友人の作品です。シンプルな空間が彩られ、ギャラリーのような楽しさがあります。

玄関をミニギャラリーに。中央の小さな正方形のフレームが井澤さんの作品。「自信がなくても、フレームに入れればなんとなく締まってサマになります(笑)」とのこと。

訪れた人に『これは友達の〇〇のアートなんだよ』と話せるような、住み手の好きなものが詰まった空間にしたかったんです。ホテルでも、オーナーの顔が見える個人的要素があると楽しいから。アーティストへの刺激にもなりますしね。

こちらは写真とレタリングを組み合わせた作品。「写真を撮られたときの言葉を想像して組み合わせています」

4年前から趣味でチョークアートを始め、最近はレタリングアートも楽しんでいる井澤さん。「セオリーがあるから、見た目ほど難しくはないんですよ。でも僕のは超下手です」と笑いますが、 その場で素早くダイナミックに書き上げる作品はさすが! 数年前からレタリングアートのプロジェクトを立ち上げ、「GREENROOM FESTIVAL」などのフェスやライブ会場、企業のオフィス、ショップなどに壁画を提案してマーケットを開拓しているのだそう。

キッチン横に飾られているのも、写真とレタリングを組み合わせた作品。

僕はもともと本業がデジタルマーケティングで、ウェブ広告などを扱うことが多かったんです。もちろん大好きだしおもしろい世界ですが、その反動もあってアナログなアートに惹かれているのかもしれない。誰が見てくれているか分からないデジタルの世界にもいるからこそ、アートにしろホテルにしろ、 手の届く範囲でローカルな人が喜んでくれることをやりたいんです。

ブラッシュレタリング中。「レタリングアートは、デザインのかっこよさでなく言葉から発想することを大切にしています」と井澤さん。強いメッセージ性を生かし、企業コンセプトの表現ツールとしてオフィスの壁にも提案している。

リノベーションもアートも、「おもしろそう」と思ったことはフットワーク軽く実践してみる。自分で手を動かしたからこそ分かる喜びが、井澤さんの毎日を豊かにしていることが伝わってきました。たとえばアートや花を飾ることでもデコレーションでも、「失敗してもいいからやってみる」ことが、暮らしを楽しむヒントなのかもしれません。

ーーーーー物件概要ーーーーー

〈所在地〉東京都目黒区
〈居住者構成〉ご本人
〈間取り〉ワンルーム
〈面積〉43㎡+ルーフバルコニー25㎡
〈築年〉築20年
〈設計〉居住者本人

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