欲しい機能を取り入れたデザイン
現在、INOUTがキャンプ用家具としてラインナップするのは3アイテム。小林さんや仲間たちがキャンプで実感した「こんな家具があったら」というアイデアが詰まっています。
例えば、天板と脚部を外して折り畳める「タートルテーブル」。木目が美しい無垢のタモの部材をつないだ天板は、すだれのようにくるくると丸めて収納できる仕組みで、存在感のある黒いスチール製脚部はロータイプ(高さ43㎝)とハイタイプ(高さ64㎝)の2種類から選べます。
このタートルテーブルには、天板のまわりにシェラカップ(アウトドアで食器や調理に使われる金属製カップ)を引っ掛けられるバーを作ったんです。キャンプ中って、こういう細々したものをよくなくしちゃうんですよね。
だから、自分の座る場所に掛けておければ便利だな、と思って。家で使うときは、ここにリモコンホルダーを引っ掛けておけば便利ですね。
このバーに引っ掛けられるオリジナル灰皿も作りました。家ではスタンドを付けてリビングやベランダに置けば、かっこいい喫煙コーナーになりますよ。
そして「ずっと座っていても快適なように」と作ったのが、折り畳める「ジャストライトチェア」。
楽な姿勢で座って飲んでいたいので(笑)、テーブルやチェアの高さにはこだわりました。
キャンプは基本的にロースタイルなので、立ち上がるときに「よいしょ」と辛くなりがち。特にご飯を食べて満腹になった時なんか、立ち上がるのが苦しいんですよ(笑)。だからこのチェアは、スムーズに立ち上がれる高さにこだわりました。
意外というかやっぱりというか、おじさんに喜ばれますよ。「この高さだよね!」って。もちろん、室内でも使いやすいですよ。
座ってみると、確かに普段の生活で使う椅子に近い高さなのでストンと腰を下ろせて、立ち上がるのも楽ちん。「インテリアとしても使えること」を考えてデザインされた設計は、キャンプでも快適です。
そしてもうひとつの家具が「スタックボックス」。インダストリアルな道具箱のようなデザインはスタッキング可能で、収納ボックスにも棚にもなるのです。
キャンプ道具って細々としていて、意外にかさばるんです。家に帰って毎回片付けるのも、正直なところ面倒ですよね。
このスタックボックスは、家では棚としてキャンプ道具を収納しておいて、キャンプに出掛ける時にそのまま箱として持って行ける。そしてキャンプでも、そのまま立てて棚として使えるんです。
フィールドとインテリアの垣根をなくす発想は新鮮! なんだかキャンプが身近に感じられてきました。
家具として長く愛せる素材を使う
自分たちがキャンプを楽しむために始めたINOUTですが、2014年、事務所として借りていたビルの1階に空きが出たことをきっかけに、設計事務所を兼ねたショップをオープンすることに。晴れてINOUTをブランドとして立ち上げました。さぞ好評で商品化したのかと思いきや・・・
最初の頃はまわりの人に大騒ぎされましたよ(笑)
「重い! キャンプに使う家具としてありえない!」って。
INOUTは、あくまで室内でも家具として愛用できるかどうかを重視しています。
美しさはもちろんですが、持ったときの「重み」は家具に絶対必要なものだと思うから、持ち運びは少々大変ですが、質感を重視して素材を選びました。
アウトドアでは敬遠されがちな木材も積極的に使っています。選ぶ木材は、木目が美しいタモやナラ。堅木だから丈夫ですよ。ちょっと重いけど(笑) 木の表情を生かすために、あえて節のある材料を選ぶこともあります。
アウトドア仕様の家具は、表面をコーティングして耐久性を高めるのが常識ですが、そうすると室内で使うときにテカテカして気になるので、INOUTはナチュラルなオイル塗装で仕上げています。
コットン生地もよく使いますね。ビニール系の素材よりも緑の中に馴染むし、柔らかい雰囲気になる。僕はキャンプではコットン素材のティピー(三角形のテント)を使うんですが、日差しの透け感が気持ちよくて、ビニール系にはないよさがあります。
もちろん重いし雨に濡れるとさらにずっしりして大変ですが、それにも代えがたい魅力があるんですよね。
自然の中で気持ちよく過ごすために素材を厳選し、経年変化を楽しみながらちょっとした不都合も受け入れる。効率や利便性にとらわれない非日常の時間は、きっと心も体も解放してくれるでしょう。
キャンプを快適にする道具を増やしたい
キャンプの楽しみのひとつが外で食べる食事です。「バーベキューは卒業しました」と笑う小林さんは、ダッチオーブンを主に使っていろいろなアウトドア料理を楽しんでいるそう。INOUTでは「スタックボックス」の上に載せると調理台になるステンレス素材を使った蓋や、持ち運べるボックス入りコーヒードリッパーなども取り揃えています。
これから作りたいのは、料理用の作業テーブル。キャンプでも料理は立って作業するので、立ち姿勢に合う高さのものを作りたいですね。
それと、「コット」というキャンプ用の折り畳みベッドもデザインしたい。家でもベンチとして使えるようなデザインにできたらいいですね。
キャンプという非日常の場所と日常を緩やかにつないでくれる、INOUTのアイテム。
キャンプ好きでなくてもインテリアとしてその魅力に惚れ込み、家具として使ううちに「じゃあキャンプに行ってみようかな」と思う人もいるそうです。
キャンプが好きな人はもちろん、そうでない人も、まずはカタチからキャンプを楽しんでみませんか?
【番外編】小林さんが、今ハマっている暮らしのアイテムとは?
ー最後に、皆さんに共通でお聞きしているのですが、小林さんの今ハマっている “暮らしのアイテム” を教えてください。
ハンドドリップコーヒーと、それにまつわる小物ですね。
コーヒーを淹れる時間も一緒に楽しみたいとの思いで、オリジナルのドリッパースタンドをつくったのですが、すっかりハマってしまいました(笑)
今後はそこから派生したオリジナルアイテムとコーヒーグッズをお店でも展開予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。
ー自分の欲しいものをつくって商品化できるって素敵なことですね・・・! 新商品も楽しみにしています!
■取材協力:INOUT
WEBサイト:https://inout.tokyo/
〒103-0004 東京都中央区東日本橋 3-11-10ユタカビル1F
TEL 03-6661-7227
営業時間 12:00~20:30(土・日・祝は18:00迄)
休業日 火・水
取材・文:石井妙子/撮影:cowcamo/写真提供:INOUT