大空をひとり占めできちゃう43.2㎡のルーフバルコニーは、もうひとつの「部屋」。

高い建物に阻まれ小さく切り取られた空。もしあなたが「東京の空は狭いな」と窮屈さを感じているなら、おすすめしたい物件があります。部屋よりも広いルーフバルコニーがあり、180度の大空をひとりじめできる住まい。しかも、内装もとっても素敵なんです。

リノベーションを手掛けたのは、浅草に拠点を置き活動するリノベーション会社・ゆくい堂。今回の物件の内装ディレクションと現場監督を務めた本井大補さんに、物件を案内していただきました。

とっても気さくで話しやすい本井さん。お話の端々に家づくりへのこだわりが見えて、一気にゆくい堂のファンになってしまいました。

この物件の主役は、なんと言ってもルーフバルコニー。これに食いつく人はたくさんいると思います。きっと男性だろうな、と思って、ナチュラルだけどほっこりしすぎないユニセックスな雰囲気に仕上げました。

ゆくい堂は、社員みんながプランナーでみんなが職人のような、一風変わったリノベーション会社。現場でどんどんアイデアを出して実現していくから、ほかにはない面白い仕上がりになると評判です。この物件も随所にこだわりがあって、教えてもらう度に「わぁ〜!」とテンションが上がってしまいました。

左・この壁は、玄関から部屋が丸見えにならないようにと造作したそう。細やかな気遣いがうれしいですね。/右・玄関左のウォークスルークローゼット。帰ってきたらすぐにコートを掛けられます。

玄関のドアを開けてすぐに目に入るのは、微妙に高さが不揃いな板を貼り合わせた壁。ペンキはかすれ、ところどころにキズがついていて、絶妙なユーズド感が堪りません。フックを取り付けて鍵を飾るように収納してもいいし、サーフボードや自転車を掛けてもいいかも!

手前に大きめのベッドを、奥にはダイニングテープルやソファを置くのがよさそう。 ひとり暮らしには十分な広さです。

部屋は広々、14.4畳のワンルーム。窓は3カ所にあって燦々と光が入り、開放感があります。天井と壁は、少しざっくり感のある白のペイント。コンクリートの表情が残っていたりするのもいい感じ。床にはラフチェスナットというフローリングを使用。濃い色味が部屋を落ち着いた印象にしています。程よくざらっとしていて、裸足でも心地よさそう。

引き出しはソフトクローズ設計ですうっと閉まります。右下には油や料理酒を、右上には調味料を。主婦が考えたかのような造りですね。4口コンロなので、凝った料理にもチャレンジできそう。

注目すべきはキッチン! 床材としては反りすぎていて使えなかった木材を、大工さんがフラットになるよう一枚一枚スライスして作ったもの。手仕事感溢れる、ちょっとレトロな佇まいがグッと来ます。コーヒーを淹れるだけでも絵になりそう。きっと、使い込むうちにどんどん味が出てくると思います。

この木の質感にステンレスはシャープすぎるだろうと思って、天板にはアルミを使いました。キッチン部分の壁は水拭きしやすい塗料で塗装しています。だんだん機能が弱まっていってしまうかもしれませんが、そこは味わい重視で。だって、機能ばかりを優先したら、ピカピカのキッチンパネルを貼って、壁はクロスで・・・になっちゃう。それじゃあ面白くない。数は多くないかもしれないけど、こういう内装を面白がってくれる人は絶対いる。そういう人に住んでもらえたらと思います。

余った床板と鉄でつくられた棚。購入時にはこの棚もついてきます。

アルミの曲げ加工は大工さんの職人技。側面はあえて釘で止めています。本井さんと仲良しだというこの大工さん、かなり遊び心のある方のようで。鉄と木でできた棚やウォークスルークローゼットも、端材を駆使して製作してくれたそうです。

左・トイレはアメリカのKOHLER製。ぽてっとした形がキュート! 床の六角タイルとよく合います。/右・洗面台がこれまたお洒落。配管やダクトをためらいなく露出しているところもかっこいいですね。

室内のどこに目を向けても、これから住む人のことを考え、手間暇をかけてつくられたことが伝わってきます。ライフスタイルショップを開けてしまいそうな内装は女性にもウケそうですが、細部に至るまで物語がぎゅっと詰まったこのこだわりぶりは、男性のほうがよりグッとくるんだろうなぁ。

広々とした贅沢空間。朝陽を浴びながらヨガや体操をしてもいいかも・・・。妄想が止まりません!

・・・と、室内だけでも魅力は満載なのに、26.2畳のルーフバルコニーまであるんだからもう無敵! 外に出て上を見上げれば大きな青空と心地良い風。思わずごろんと寝そべりたくなります。

お気に入りのテーブルと椅子を置いて、晴れた日は外でお昼ごはん。夜はお酒を片手にまどろんで。友達を呼んで飲み会を開いたり、望遠鏡を置いて天体観測したり、小さなテントを張ってキャンプ気分を味わってみたり、思うまま。この部屋に住める人がうらやましい!

右手の窓からルーフバルコニーにアクセス。キッチン側の窓もバルコニー付きです。

本井さん、ここにはどんな人にどう暮らしてほしいですか?

好きな子にアタックしている途中の男性ですね。で、この家に連れてくるの。女の子はディテールを見て「可愛い!」ってはしゃぐんだけど、男のほうはうんちくを語るのでもなく、「ふーん」って素っ気なくしてる感じ。そのうち彼女が転がり込んできちゃったりしてね。

おぉ、かなり細かい設定が出てきました。でも、確かにわかります。キッチンで一緒に料理をして、ルーフバルコニーで夜空を見ながら語り合って・・・なんて時間を過ごしたら、「このまま一緒に暮らしたい・・・!」と胸が高鳴ってしまいそう。ふたりで暮らしても、十分な広さですし。そこまで計算しているとは、うーん、本井さん、策士だなぁ。

左上・無垢フローリングは一枚一枚表情が違うので、組み合わせを考えながら貼ったそう。/右上・ペイントも高さもあえて不均一に仕上げた板壁。/左下・コンクリートのラフ感が残る天井。/右下・ハンガーバーに使っているのはガス管。ディテールにいちいち萌えてしまいます。

ちなみに、最寄り駅は東急池上線の石川台駅。駅を出ると、家族連れ、おじいちゃん、おばあちゃん、若者、いろんな世代の人が歩いていました。どこからか「あら、お出掛け? いってらっしゃい!」なんて挨拶を交わす声も。

スーパーにドラッグストアはもちろん、商店街にはいい感じのお惣菜屋さん、お豆腐屋さんなどもあり、生活に必要なものはここでひと通り揃いそう。ふらっと散歩して買い物しながら家路につくのも楽しいのではないでしょうか。平和でのんびりした、ちょうどよいサイズ感の街、という印象です。

左上・のどかな雰囲気の駅前。/右上・商店街には昔ながらのお店がいっぱい。/左下・小さな川が流れる街って、風情がありますよね。/右下・6階建てマンションの5階。大通りに面していますが、音は気になりませんでした。

取材チーム一同、かなりグッときてしまったこの物件。唯一心配なのは、「すぐに売れてしまうかも!」ということ。だから、ほんとは急かすようなことは言いたくないけど、この物件については言わせてください。はやく、はやく!気になっているなら、すぐに内見をしてみることをおすすめします。だって、中々ありませんから、こんな素敵な物件は。


取材・文:飛田恵美子/撮影:cowcamo