湾岸、芝浦、ベイエリア。

ああ、なんてぐっとくる響きなのでしょう。

特にバブルを謳歌した世代には、格別な思いがあるに違いありません。

往年の刑事ドラマ「西部警察」で、立ち並ぶ倉庫を走り抜ける派手なカーアクションシーンが繰り広げられた芝浦運河。ワンレン、ボディコンのお姉様たちが田町駅から列をなして向かっていた、芝浦の伝説のディスコ「ジュリアナ東京」。バブルの終わり、しがない地方学生だった筆者も、"ワンガン""シバウラ"という響きに大都会トーキョーの妖しいかっこよさを感じ、それはそれは憧れたものでした(しみじみ)。

"なにそれ? 湾岸といえば「踊る大走査線」でしょ!"という若い世代でも、レインボーブリッジを臨む、都会的なベイエリアは、やっぱり憧れの場所ですよね。

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは、そんな芝浦の築古マンションです。

前の入居者が退去してから、まだまったくリノベーションの手が入っていないこのお部屋。正直、びっくりするほど"施工前"状態です。でも、リビングいっぱいに広がる景色は、恐らくこのエリアでベストビュー間違いなしの素晴らしさ!

この抜群のロケーションに惚れ込み、いち早く物件を入手したのが、不動産売買や賃貸を扱っている株式会社プロスパーの小栁憲一さん。

小栁さんは今回、住まい手が建築家と一緒になって、本当に住みたい理想の家づくりをしてもらいたい、と、若手建築家集団"HandiHouse project"とのコラボレーションを思いついたと言います。


左・株式会社プロスパー 営業部の小栁憲一さん。単に不動産売買にとどまらず、個々のお客様の資金計画の相談に細やかに応じてくれる、希有な存在です/右・HandiHouse projectメンバーのひとり、加藤渓一さん。八王子に自らの建築事務所「スタジオ ピース」を構えるほか、2011年から3人の仲間とともにHandiHouse projectを始動。

2012年に雑誌「Casa BRUTUS」の部屋づくり特集でHandiHouse projectのことが紹介されていたんですね。住まい手が建築家と一緒にデザインや工事にかかわって、お気に入りの家を一緒につくる、という集団だと。なんか面白いやつらがいるなあ、と気になっていたんです。(小栁さん)

最初は特に具体的な仕事のお話をいただいたわけではなくて、"ちょっと会いたい"と連絡してきてくださって。で、一度飲んで、"何か面白いことを一緒にできたらいいね"と話していました。(加藤さん)

ちなみに、彼らのサイトもめちゃくちゃかっこいいのです。→ サイトはこちらでチェック!
確かに「むむむっ。何か素敵なことを一緒に仕掛けてくれそうな兄ちゃんたちだ!」という期待が膨らみますね(笑)。

この辺りの新築マンションを取引した際、周辺の中古マンションが活発に取引されているのが気になっていたという小栁さん。このエリアの新築や築浅の物件は相当な高額ですが、新しいマンションが林立しているため、運河沿いの心地よい景色が楽しめる物件はそう多くはないと話します。

見てください、この目の前のカナルビュー! 春にはリビングの窓いっぱいに桜が広がるという、たぐいまれなロケーションです!!

この部屋の最大の魅力はロケーションだと思いました。物件そのものも、管理人さんが日勤していますし、管理状態がよいので、共用部も綺麗ですよ。この辺りの新築や築浅のマンションは高くてなかなか手が出ないし、自分好みに手を加えるという楽しみ方も、新築ではなかなかできないですよね。(小栁さん)

こちらのマンションは全65戸ですが、その中でも窓いっぱいの桜越しに運河を眺められるのはこのお部屋だけ! しかも2階で水面に近いので、夏はひんやりとした風が入り、涼しく過ごせそうです。

もちろん、お客さま自身でリノベーション会社を探してもよいですが、Handiさんとなら、建築家と一緒に理想の住まいを作る楽しみを味わえる。作り手とすごく距離が近いんです。それに、物件そのものの価格だけでローンを組み、リノベーション費用を別に用立てるとなると、月々の負担が予定より重くなった、というケースがよくあるんですね。今回、Handiさんと請負契約を交わす、という手続きを取ることで、リノベーション費用も含めてローンを組むことができますので、無理のない購入ができると思います。(小栁さん)

HandiHouse projectがお施主さんとともに作り上げたリノベーション施工例。左上・玉川上水の家 広々LDKに据えられたⅡ型キッチンは、食卓を囲むひとときをいっそう楽しくさせてくれそうです。/右上・佐野の家 HandiHouse Projectメンバーのひとり、中田裕一さんのご実家を家族総出で改修。薪ストーブのあるあたたかな空間に。/右下・情熱リノベーション お施主さんのこだわりで、コストのかかる解体や廃棄物をなるべく減らし、既存の間取りを生かした改修に。引っ越し後もお施主さんは自力で家づくりを楽しんでいるとのこと。/左下・宮崎台のビンテージマンション 見違えるように明るくなったリビングに、幅広の無垢フローリングが映えます。

それにしても、現状を見ただけではとてもリノベーション後が想像できないこのお部屋。一体どんなふうに生まれ変わらせることができるのでしょうか。

そして、想定されているフルリノベーションプランでは、どこまでリノベーションが可能なの? 気になるリノベーション例を加藤さんに指南していただきました。

おおっと、相当に年季が入った状態に一瞬ひるみますが、一度スケルトン状態にして全面リノベーションしますのでご安心を。

まず、この部屋に入って最初に思ったのは、天井が高いと言うこと。恐らくこの年代に建てられた多くのマンションよりも1.2倍ぐらい高いと思う。これは魅力ですよね。この窓の外の景色を楽しむためにも、あまり細かく区切るよりも、空間を広く取るのがいいんじゃないかな。恐らくひとりか、ふたり暮らしになるでしょうし、左の部屋と右の和室の間の壁も撤去可能なので、思い切ってがばっとシンプルな間取りにするのがおすすめですね。真ん中の壁を取るだけで通気性もとてもよくなって、雰囲気がまったく変わります。(加藤さん)

眼下に広がるのはゆったりと水を湛えた芝浦運河。でも現状は2室を仕切る壁がじゃまして、開放感も通風もいまひとつ残念な状態。この壁を取り去るだけで一気に素敵な空間になりそう!

和室は洋室とつなげて、ゆるやかなベッドスペースにしたい。押入れは空間を生かしてクローゼットにするもよし、全部取り去って広さを確保するもよし。

和室は天井板を外して、洋室側と同じ天高にすると広がりが出ますね。

床は無垢材を張るとぐっと雰囲気がよくなります。

決して広くはない部屋だから、全体をなんとなくいい感じの仕上げにするのもいいですけれど、徹底的にこだわるポイントを1カ所設けるのもおすすめします。一点豪華主義ですね。たとえばキッチン。システムキッチンではなく、デザインや素材にこだわったオリジナルを造る。カウンターキッチンにして、バルコニー側の部屋までをリビングダイニングにするのもいいですね。(加藤さん)

この部屋がどんなふうに生まれ変われるか、リノベーションプランを次々に説明してくれる加藤さん。頭の中で施工後を想像するだけでわくわくしてきます。

なるほどなるほど。現在の状態を見ただけでは、素人にはまったく想像がつかないのですが、それでも一生懸命想像してみると、なんとな〜く見えてきました、ラフな味わいの無垢材が敷き詰められた床に、モザイクタイルで仕上げられた無骨なキッチンが! 私が思い描いたのは、ちょっとオールドアメリカンで男っぽい仕上がりのお部屋でしたが、人によってラブリーなフレンチテイストだったり、シャビーシックだったり、ナチュラルカントリーだったり、いろんなお部屋が考えられそう。そしてそのイメージを建築家に伝え、一緒に考えて、想像を形にしていく作業に自らも関われるとは。うーん、これは楽しい!

続いて、水まわりはどうでしょう?

廊下の片側にすっきりとまとまって収まっている水まわり。設備を一新するだけで劇的に印象が変わるとのこと。

水まわりはもともとコンパクトにまとまっているので、配置はほぼこのままが使いやすいでしょうね。中の設備を全部入れ替えれば見違えるようにきれいになりますよ。
あと、玄関からダイニングに続く廊下の幅がすごく広いんです。ここも床、壁、天井をきれいにすれば、すごく気持ちのいい空間になると思いますよ。(加藤さん)

玄関からLDKにつながる廊下はゆったりと広め。床や水まわりの扉を変えれば、ぐっと素敵になりそう。廊下のつきあたりには、電気温水器が。こちらはこのままでも使用できます。

そしてそして、住まい手はどんな作業に参加できるんでしょうか。

基本的にいちばん入りやすいのは壁の塗装ですね。やってみたいという人が多いのは床張りです。さらに本気でやりたい人は、壁の下地から一緒に取り組めます。石膏ボードを張って、パテをして、と言うところから関わると、かなり本格的な作業になりますね。たとえばこの壁は自分たちで最初から最後までやると決めてもいい。
基本的には工事が始まる前にお施主さんが行う工事の項目や範囲を決めておきます。それに対しては工事費をいただきません。責任を持ってやり終えてもらうためです。つまりは自分が動かないと工事が終わらないのです。(笑)もちろん、作業前にレクチャーや作業中のサポートは行いますのでご安心を。ぼくらはほぼ毎日現場にいるので一緒に作業する感じですね。(加藤さん)

プロの作業を見て、プロに教わりながら、自分でも家づくりに参加できるんですね。自分でも内装を手掛けられたら、愛着もひとしおですし、長く住むうちに、今度は自分で手を加えてみようかな、とセルフリノベーションにチャレンジすることもできる。

でも、買い手とはいえ、作業現場に素人が出入りして、かえってじゃまになったり、作業がしづらいということはないのでしょうか? 正直、建築現場の職人さんって、ちょっと怖いイメージもあったりしますが・・・。

いやいや、現場を積極的に開いて、お施主さんと一緒につくることで、家そのものにも、作り手に対しても愛着を持ってもらえるんです。僕らは、顔合わせのときからずっと最後までひとりの担当者が担当するので、お施主さんも現場にも来やすいし希望を言いやすいと思うんです。閉じた現場で作業して、汚い状態から一気にきれいになった状態を見せると、お施主さんはちょっとした傷が気になるし、顔が見えないとついあら探ししたくなるもの。よく、"お客さんが現場にいて面倒くさくないの?"って言われることもあるんですけど、お客さんを排除して、最後にクレームを言われるほうがよほど面倒ですよ(笑)。(加藤さん)

今まではリフォームというか、きれいにオーソドックスな形にして供給するというのがスタンダードだったですよね。リノベーションという言葉も数年前は浸透していなかった。でも、自分たちで理想の住まいを考えて、自分たちで作ってみたい、でもやり方が分からないという人たちはいっぱいいるんです。だから、リノベーション前の状態で購入して、一から建築家と一緒に作り上げるという形は、新たなスタイルになるんじゃないかなと。リノベーション会社の中には、実際の施工は外注するところが少なくないけれど、彼らは自分たちで施工するから、お施主さんとの距離がとても近い。そこは本当に魅力だし信頼できる点だと思いますね。(小栁さん)

次々にタワーマンションが建つ中で、これだけ運河に近くて眺めのいい部屋は貴重。今後もこのエリアは値崩れする心配はないので、かなりお買い得な物件です、と小栁さん。

最初は、抜群の運河ビューに惹き付けられたものの、その古さに思わずひるんでしまったこちらのお部屋。でもお話を聞くにつれ、この状態から、自分が夢見ていた空間に生まれ変わらせる感動や、そしてそのプロセスに自らも関われる面白さを想像し、どんどん心が引き込まれてしまいました。いや、これはアツイ!!!

想定されているリノベーション費用には、解体と配管設備の改修から、リビングダイニング、バス、トイレ、キッチン、玄関まわりすべてのリノベーションが含まれるとのこと。安心して好みの空間に改造することができそうです。

価格、立地、眺望、つくる楽しさ。すべてが魅力的なこちらのお部屋。

どうぞ心ゆくまで自分色に染め上げちゃってください!

左上・最寄り駅はJR山手線上の田町駅。庶民的な店が点在しビジネスマンが行き交う駅前は、バブル当時、ジュリアナに向かうお姉様方で溢れていたのだとか/右上・田町駅周辺は再開発の真っ最中。未来的な街へと変貌していく様子を見ながら暮らすのはなかなか楽しそう。/左下・マンション外観。本当に運河のすぐ目の前に建っています! 運河とマンションの間には区が管理する遊歩道があり、散歩に最適。/右下・マンションのエントランス付近。築35年と思えないほどきれいで、管理が行き届いているのがよくわかります。

左上・物件に向かう田町駅芝浦口(東口)とは逆側の三田口(西口)にあるスーパー、「maruetsu petit」。/右上・駅から物件までの道のりには22時までオープンしている「港区スポーツセンター」があり、仕事帰りに利用することが可能。プールやトレーニングルームが充実しており、区営で安いのも魅力的。/左下・物件から徒歩11分のゆりかもめ「日の出駅」のそばにあるクリエイティブスポット「TABLOID」。1階にはカフェとフレンチバルが融合したBABBITT LOUNGEが入居しています。/右下・「日の出駅」の1駅先の「竹芝駅」と直結している竹芝客船ターミナルは、都立竹芝ふ頭公園としても親しまれています。ジョギングがてら足を延ばしたり、休日に東京駅を眺めてゆったり過ごすのにぴったり。