秋から冬にかけてのこの季節、「食欲の秋」に従って皆さんの食欲も増していることと思います。

秋刀魚にかぼちゃ、栗にぎんなん、柿に梨。

旬な時期に食べとかないと、またしばらく食べられなくなっちゃう! と思うと、ますます食欲に拍車がかかります。

そして、いまでは一年中店頭に並ぶ、“きのこ" もまさに今が旬ですね。その “きのこ" が、自宅で手軽に栽培できるキットがあるのをご存知ですか・・・?

わたし自身、「え!? 自宅で栽培!?? きのこって、じめじめした土地の地面とか、木の幹とかから生えるんじゃないの??」と思っていたのですが・・・、あったんです!!

きのこの栽培キットを販売する、森産業株式会社(以下、森産業)の松井さんにお話をうかがい、きのこ栽培の “手軽さと楽しさ" を実証すべく、栽培してみました!

しいたけの人工栽培に
世界で初めて成功した会社

今回お話をうかがった森産業株式会社グリーンビジネス課の松井佳之さん。大振りなしいたけとの3ショットです。

群馬県桐生市に本社・工場を構える森産業は、今年で創業72年を迎えた老舗企業です。

1942年(昭和17年)に、創立者の農学博士・森喜作氏が世界で初めてしいたけの人工栽培に成功し、その翌年に森産業の前身となる会社を設立。

現在はきのこに特化した企業として、その生産から消費までの事業分野にまたがり従来の市場を深耕し、新しい領域を模索しながら一歩一歩着実に進んでいると言います。

"新しい領域の模索" から生まれた家庭用の栽培キットは10年程前から販売されていて、購入者はだんだんと増えているそう。

栽培キットは、もっとキノコのよさを多くの人に知ってもらいたいという所から始まりました。きのこは生きものなので、品質の安定をさせるのが大変な上にとにかく新商品の開発が難しく、昔も今も試行錯誤の連続です。野生の菌を取ってきて、品種改良の研究を重ねに重ねて、どんな環境でも育てられるような品種にして発売をしています。(松井さん)

なるほど。森産業さんの研究の成果があるからこそ、私たちが家庭できのこを育てられるんですね。

ー森産業さんでは、たくさんの種類のきのこの栽培キットを販売されていますが、それぞれのきのこの菌の特徴や特性などあるのでしょうか。

きのこはその種類によって栽培に最適な温度や湿度が全く異なるので、最適な時期を見計らって販売をしております。しいたけは一年中栽培できますが、きくらげは夏場、他のしめじやなめこ、エリンギなどは10月〜4,5月が栽培に適していますね。

ーまさに今が絶好のタイミングですね! 今回、しいたけ、エリンギ、ひらたけを育ててみたいと思っているんですが、育て方や、気の掛け方など、なにかアドバイスがあればいただけますか?

しいたけは一番簡単で、霧吹きで水を与えていれば1週間くらいで食べれる状態になります。エリンギとヒラタケは発生までに3週間から1ヶ月かかりますが、基本的には湿った状態で、1日一回空気の入れ替えを行っていれば自然に発生しますよ!
キノコって意外と生命力が強くてほっといても発生します。

「ほっといても発生します。」のお言葉に、すっかり安心したわたし。

よし、ではさっそく注文してみましょう!

用意するものは何もなし!
届いたその日に栽培開始

きれいに箱詰めされた状態で届いたきのこの栽培キットは、楽天やamazonなどのショッピングサイトで購入できます。今回は、しいたけとひらたけ、エリンギの3種類。しいたけは、きのこ栽培専用の栽培容器のセットを購入しました。

栽培キットのお値段はと言うと、しいたけの栽培容器セットが1,980円(栽培容器なしだと1,250円)、ひらたけとエリンギがそれぞれ1,250円です。(※サイトによってお値段は多少異なるようです。)

3つの箱を開けると、各々の栽培ブロックと栽培説明書のほかに、しいたけには栽培容器、ひらたけとエリンギには栽培袋と覆土用赤玉土が入っていました。

栽培ブロックはずっしりとした重さがありました。左から、ひらたけ、エリンギ、しいたけ。うーん。なかなかのインパクト!

さてさて、準備を進めていきましょう。

まずはひらたけとエリンギから、説明書を読みながら作業開始!

左上・袋を開けると、ぷ〜〜んときのこのにおいが! ブロックの上面のふわふわとした白い膜は、スプーンなどでかき取ります。/右上・白い膜をかき取ると、茶色の部分が見えてきました。/左下・ブロックの袋に水を貯めて、30分ほど放置します。/右下・30分後に水を捨てたら、付属の覆土用赤玉土に水分を含ませて、ブロック上面にまんべんなく被せます。そして、土面から2〜3cm上くらいを目安に袋をカットしたら、栽培袋に入れてこちらは準備完了です!

次は、しいたけの準備です。

左上・しいたけは、袋から出して軽く手でなでるようにして水洗いをします。ブロック表面は、なんだか焼いたチョコを触ったようなパリパリとした感触がありました。/右上・バケツや大きめの容器に入れて浸水させます。わたしは栽培容器をそのまま使いました。/左下・そのままだとぷかぷか浮いてきてしまうので、重しをして30分ほど放置。/右下・30分後、水から引き上げ、容器にセットします。ブロック表面を霧吹きでまんべんなく濡らしたら準備完了!

説明書を見ながらの作業でしたが、難しいことは何も無かったので、あっさりと準備は完了。

栽培場所は、洗面所の一画に決定。窓は北向きで、日中もひんやりとした場所です。

めまぐるしく生長を遂げる
しいたけと暮らす

きのこの栽培を始めて、わたしの生活は一変しました・・・。

朝起きたらきのこの観察。仕事から帰ってきたらきのこの観察。布団に入る直前にはきのこの観察。そしてお休みの日には、事あるごとに洗面所に行ってはきのこの観察。もう、きのこ中心の毎日。

観察が多過ぎやしないかと思うでしょうが、でもそんな頻繁に眺めていても飽きない程に、しいたけの生長には目を見張るものがありました。

栽培開始2日目朝のしいたけの様子。早くも芽が出てきました。ころんとした丸い形が何とも可愛く、これからの生長を楽しみにしていると・・・、

3日目朝にはこの育ちっぷり! 瞬く間にとでも言えそうな勢いで身を大きくするしいたけに、感動しながらもゾワッとしました。

4日目夜にはもう傘も開き、すっかり “きのこ" の姿に。所狭しと芽がついたため、25個の小さい芽を根元から慎重に間引きしました。

今回わたしが育てたブロックのようにたくさん芽がついた場合、そのままの状態で放置しておくだけでは、それぞれが大きなしいたけには生長しないのだそうです。小さい、弱い芽を間引きすることで、残った芽は大きくなると言います。

収穫はハサミもしくはカッターで、ブロックを傷つけないように気を付けて。

6日目朝から始まった収穫祭りは、7日目夜には終了。

12個、17個、62個と、3回に渡り92個の収穫。間引きの分も含めると優に100個を超えるしいたけが芽を出したことになります。すごい!

100個を超えるしいたけを収穫した後の栽培ブロックは、水分が抜けてかなり軽くなりました。2〜3週間、ブロックに休養期間を与えて再度水を吸わせると、また発芽が見込めるそう。

うまくいけば3,4回は繰り返せるとのことなので、次のタイミングまで、一旦は十分休ませてあげようと思います。

個性的な姿で登場
衝撃的なひらたけとエリンギ

しいたけのお世話の傍らで、ひらたけとエリンギにも愛情を持って観察し、松井さんのお言葉通りに湿った状態を保ち、空気の入れ替えもしていたのですが、一向に姿を現さないお二方。

発芽には3週間〜1ヶ月掛かるとは聞いてはいたものの、あまりにも変化がなく、何かお世話の方法が間違っていたのかなぁと不安になっていたところ、ある日突然その時が来ました。

栽培開始から13日目。土が白んできてカビが生えたのかなぁと思っていたら、なんとひらたけの芽でした! 海の中の生きもののようにも見えます。

14日目。わーそれっぽい! と喜んでいたのもつかの間。

15日目。面白きのこへと変貌を遂げました・・・。

一方、エリンギはと言うと、

栽培開始22日目。少し目を離していた隙に、ついに発芽。しいたけともひらたけとも違った、ずんぐりとした形がこれまた可愛い!!こんなに真ん中が空いているのに、端っこでせめぎあっています。

翌々日にはもう収穫できる大きさに。どのきのこも、芽が出てからの生長は本当に早かったです。

自宅で育てて食べる
最高に贅沢な食卓

育てた後は、お待ちかねの実食!

しいたけは100個以上採れたので、バター炒めや、アヒージョ、傘をひっくり返してマヨネーズを乗せたマヨ焼きや、お鍋の具材としてなど、いろいろな調理法でいただいたのですが、味が濃くて香りもよくて、本当に美味しかったです。

そして、ひらたけやエリンギを食べて驚いたのは、歯触りのよさ! 市販のきのこでは味わったことのない、さくっさくっとした小気味いい音がするほどで、初めてのきのこ体験でした。

ある日の食卓。しいたけのバター炒めとエリンギの入った親子丼。どちらも素材の味が感じられて美味しい!

自分の手でつくった秋の味覚を楽しみながら、またこれから芽を出すであろう栽培ブロックのお世話をする。心踊る循環が自宅のなかに生まれました。あまりの手軽さに味を占めたわたしは、次は何のきのこ栽培に挑戦しようか考え中です。

土や日光が当たる場所も必要なければ、特別な道具もいりません。そして森産業さんは、いま現在も、とにかく新しいキノコを開発中とのこと。わたしたちがこれまで目にしたことの無いきのこに出会える日も遠くないかもしれません。

ぜひ皆さんも、自宅できのこ栽培始めてみてはいかがでしょうか?


■『森産業株式会社』HPは こちらから