カウカモマガジン7月号は、『夏のおでかけ』スポットをご紹介します。
1本目の今回のテーマは、ズバリお祭り!
夏といえば祭り! 勤勉な国民性で知られる日本ですが、意外にも「世界で一番お祭りが多い国」と言われていることをご存知ですか? 一説では全国の大小のお祭りを数えると約30万件もあり、毎日、日本のどこかでお祭りが行われているんだそう。
「実は東京でも、365日お祭りがあるんですよ!」とハイテンションで話してくれたのは「株式会社オマツリジャパン」の代表取締役、原瀬優子さん。かつて美大で油絵を専攻していたというのが意外なほど(?)、はっぴが似合う女性です。
自分も楽しみながら、祭りで地域を元気にしたい
ー「オマツリジャパン」とはなんともパンチのあるネーミングですが、本当に会社なんですか?
はい! 「オマツリジャパン」は祭り好きによる、祭りで日本を盛り上げる会社です。
祭りに参加すると、誰もが元気になるのはご存知の通り。そしてもう一つ重要なのが、祭りは地域活性の起爆剤になる存在ということなんです。
「全国に30万の祭りがある」と言いましたが、実はそのほとんどがマンネリ化していたり、少子高齢化で存続の危機を迎えていたりしているところも増えています。祭りを通じて地域と関わり、楽しみながら地域活性に貢献したい! と考えています。
ーなるほど。地域活性は大きなテーマですね。具体的にどんな仕事をしているんですか?
活動内容は主に3つです。まず1つ目が、時代に合った祭りのプロデュース。商店街や自治体と組んで、お祭りをプロデュースしています。
オマツリジャパン立ち上げのきっかけは、横浜のとある商店街のお祭りをお手伝いしたこと。3年連続でお手伝いさせてもらっているんですが、年々来場者が増えているんですよ。ハロウィンの仮装を日本の妖怪限定にしたり、商店街の端から端まで使う謎解きウォークラリーを取り入れたり。とにかく参加者に興味を持ってもらうために工夫をこらしています。
ーへ〜!
そして2つ目がお祭りツアーの企画です。主にFacebookで告知して希望者を募り、現地集合・現地解散する気軽なツアーを企画しています。
最近は海外からの旅行者をターゲットにしています。一緒に祭りに参加して、「盆踊りはどうやって踊るの?」「屋台ではどんなものを売っているの?」など、日本人ならなんとなく知っていることを一緒に体験して、「日本は粋な国だね」って思ってもらいたくて。
ーふむふむ、それは素敵ですね!
そして、3つ目がポータルサイトやFacebookを通した情報発信です。
全国のおすすめ祭り情報、祭りレポートなど、誰もが祭りを身近に感じられるような情報を発信しています。
ーなるほど! ちなみに現在、社員は何名いらっしゃるんですか?
私一人なんです(笑)。
2年前まで会社勤めをしながらオマツリジャパンの活動をしていたんですが、その時から関東近郊の「サポーター」のみなさんと一緒に活動しています。サポーターは現在約200人いて、面白い祭り情報を寄せてくれたり、ツアーを企画して祭りに参加したりしていますよ。
ーお1人とは・・・! でも、たくさんのサポーターさんの存在はとても力強いですね!
今の祭りのトレンドは「参加型」。
ー 活動内容にお祭り情報の発信とありましたが、一般の人は地元の祭りと有名な祭りしか知らないので、「実はこんな面白い祭りがあるんだよ」と教えてもらえるのは嬉しいです! 原瀬さんが注目している祭りは何ですか?
そうですね、今の祭りのトレンドは「参加型」なんです。盆踊りやお神輿で参加するのはもちろんですが、ちょっと変わった祭りもあるんですよ。
たとえば日本3大奇祭の一つ「悪態まつり」。夏ではなく12月に茨城県の笠間市で行われるんですが、山頂の神社に向かう天狗に見物客が悪態をつきまくるという珍祭です。
オマツリジャパンでツアーを組んで参加したんですが、遠くからも近くからも「さっさと歩けよこの野郎」とか「彼女できないぞバカ野郎」とか「給料あげろよこの野郎」とか(笑)、みんな言いたい放題。けっこうストレス解消になりますよ!」(この様子はレポートにまとめているのでぜひご覧ください)
ー悪態をつきまくる(笑)。それは楽しそうですね!
ーでは、これは聞いてみたかったことなんですが、たとえば都内在住の方が都内でお神輿を担いでみたい! と思った時に、どうしたら参加できるものなんですか?
祭りによって参加方法はさまざまです。たとえば吉祥寺の商店会の秋祭りは、商店街の飲食店で神輿の担ぎ手を募集しているので、気軽に参加したい人にはおすすめですよ! 吉祥寺以外に住んでいてもいいし、もちろん初心者もOK。吉祥寺の祭りは規模が大きいので、人手を確保するために広く公募しているみたいですね。
一般的に、郊外のお祭りに参加するにはやはり人の紹介が必要だったりするので、少々荒技ですが、地元の飲み屋で顔を売るなど・・・。
ーえっ! 飲み屋ですか!
そうです。飲み屋には祭りを牛耳っている地元の親父さん、もしくは祭りとつながっている人がかなりの確率でいるので、飲みながら「神輿担ぎたいんです!」と言えば、紹介してもらえる可能性が高いです。
そしてこれは祭り全般で言えることですが、祭りに参加すると、当日はお酒を振舞ってもらえることも(笑)
ーそうなんですね(笑)! とにかく見るだけでなく参加する! これで祭りは100倍楽しくなることがわかりました。
【オススメ1】まるで夏フェス! イケメン坊さんDJによるアゲアゲ盆踊り「み霊祭り盆踊り大会」(7/17~19)
だんだん祭りへのテンションが上がってきました。それでは、この7月-8月に東京近郊で開催されるお祭りで、おすすめのものを教えてください!
そうですね、まずはこちら! イケメン坊さんDJによるアゲアゲの盆踊り大会です。
横浜にある曹洞宗大本山總持寺という由緒あるお寺の「み霊祭り盆踊り大会」なのですが、とにかく盛り上がる。その中心が若い坊さんたちで、彼らは絶対毎年これを楽しみにしてるだろう! というぐらい、イキイキと踊っています。動画もぜひご覧ください。
ーこ、これは……! コール&レスポンスといい、派手な照明や花火といい、振り付けといい、ロックフェスかレイブに迷い込んだかのようですね。
キラーチューンは『一休さん』(笑)。イケメンぞろいの坊さんにも注目ですよ。
ーなんて衝撃的なお祭り・・・!
《データ》
「曹洞宗大本山總持寺 み霊祭り盆踊り大会」
2016年7月17~19日
神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-1
http://sojiji.jp/index.html
※最新情報は公式ウェブサイトで確認してください
【オススメ2】ここは日本!? バンドによる豪華生演奏でみんなで激しく踊り狂う「河内音頭大盆踊り」(8/24~25)
盆踊りの音楽は、CDやカセットテープなど録音されたものを流すことが多いんですが、なんとステージ上でバンドが生演奏する豪華な盆踊りがあるんですよ。
「すみだ錦糸町 河内音頭大会」です!
ーへ〜! 和太鼓や三味線だけでなく、エレキギターまで! ボーカル(?)もいるんですね。
歌っているのは「音頭取り」の方です。河内音頭は大阪の河内地方で有名な盆踊りなんですが、それを取り入れて1986年に始まった伝統ある大会。本場河内からも音頭取りの方を招いています。
生演奏はとにかく迫力があって盛り上げるんですよ。日本じゃないみたいにみんな激しく踊り狂っていて、私も「こんなに激しいとは!」と衝撃を受けました。
一般的な盆踊りは曲に合わせて何種類かの踊りを踊るのですが、河内音頭大会は2種類を延々と踊り続けます。
ー激しく踊り狂う盆踊りとは、斬新ですね・・・!
《データ》
「第35回すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」
2016年8月24~25日
東京都墨田区江東橋 竪川親水公園特設会場 首都高速7号線下
http://www.geocities.jp/iyakorase/fm_kinshicho.htm
※最新情報は公式ウェブサイトで確認してください
【オススメ3】さすが築地! 日本一おいしい屋台が並ぶ 「築地本願寺納涼盆踊り大会」(8/3~6)
続いて、祭りで欠かせないのが屋台ですよね。こちらは築地で行われる、「日本一おいしい」と言われる盆踊り大会です。
なんと地元築地の名店が屋台を出しているので、どれも安くておいしいんです。野外で飲んで食べて、ビアガーデン気分を味わえます!
ーおー! 屋台といえば、正直味よりも雰囲気で楽しむイメージですが、ここは本当においしいんですね。
はい。盆踊りも盛大で、とっても盛り上がりますよ! 場所柄、仕事帰りに立ち寄る人も多いです。
ーなるほど、屋台にきちんとおいしさを求めてみるのもありかも!
《データ》
「第69回築地本願寺納涼盆踊り大会」
2016年8月3~6日
東京都中央区築地3-15-1
http://tsukijihongwanji.jp/?fr=navi
※最新情報は公式ウェブサイトで確認してください
【オススメ4】これはデートにおすすめ♡ ロマンチックな “静” の祭り「縁むすび風鈴」(7/9~8/31)
そして、ガラリと変わって。こちらはロマンチックな風鈴のお祭りです。
氷川神社は縁結びの神様で、期間中は絵馬のように風鈴に願いを書いた短冊を結ぶ「風鈴回廊」が現れるのですが、目にも耳にも心地良いんです。
夜はとても幻想的。境内の神社を天の川に見立てたプロジェクションマッピングや竹で作られた鞠を幻想的に照らしたりといった演出も見どころです。
「おしゃ神社」です! デートにもオススメ!
ーこれは、涼しげでいいですね〜! 川越という街の雰囲気も相まって、より楽しめそうです。
《データ》
「川越氷川神社 縁むすび風鈴」
2016年7月9日~8月31日
埼玉県川越市宮下町2-11-3
http://www.hikawa-fuurin.jp
※最新情報は公式ウェブサイトで確認してください
【オススメ5】 “通” は路上にお茶の間を作って、花火を楽しむ! 「隅田川花火大会」(7/30)
ー隅田川花火大会ですか! これは有名ですね。
皆さんイメージするのは遠くの川の上で上がる花火を眺める、というものだと思うんですけども、打ち上げ場所の近くに行ってみてください! なんとこんな感じなんですよ。
ーおや? 道に・・・ちゃぶ台??
そうです。シュールな光景ですよね(笑)。私も行って驚きました。
地元の方はこのように道路にちゃぶ台を持ち出して、茶の間の延長のように過ごしながら花火を眺めるのが恒例なんだそうです。
この近所に住んでいるオマツリジャパンのサポーターが「すごく楽しいよ」って教えてくれたのがきっかけで参加したのですが、まさに下町の楽しみ方ですよね。
《データ》
「第39回隅田川花火大会」
2016年7月30日
東京都墨田区 / 桜橋下流~言問橋上流(第一会場)、駒形橋下流~厩橋上流(第二会場)
http://www.city.taito.lg.jp/index/event/kanko/hanabitaikai.html
※最新情報は公式ウェブサイトで確認してください
ーなるほど〜。まだまだ知らないお祭りは世の中にたくさんあるんですね! どれも行ってみたいです・・・!
青森のねぶた祭りに影響を受けて、祭りの仕事を究めることに・・・!
ーふと気になったのですが。原瀬さんが考える「祭り」の定義とはなんですか? たとえば夏フェスやビールイベントも広義では「祭り」ですよね。
そうですね。私が考える「祭り」とは、あくまでその地域で生まれて根付いているもの。たとえばイベント会社が企画して外から持ち込んだものは、祭りではなくイベントと考えています。
ーふむ。祭りと地域の関係に気付いたきっかけのようなものがあったんでしょうか?
はい、青森のねぶた祭りに影響を受けました。
祖母が青森に住んでいるので昔からよく行っていたんですが、私が大学生の時に東日本大震災があって。その年もねぶた祭りは開催されたんですが、やはり東北地方なので観光客は激減していたんです。
でも地元青森の人はいつもと変わらず、盛り上がっていたんですよ。その時に「この人たちにとって、祭りは生きがいなんだな」と思いました。つらいことがあっても、祭りのときは人は元気になるんだ、ということを実感したんです。祭りだから終わってしまうんだけど、終わったらもう冬眠する気持ちで瞬間を楽しむ、というか(笑)。
外から来る人にとっても、ねぶた祭りが青森に行くきっかけになりますよね。だから祭りには大きな力があるんです。みんな幸せになれる祭り、これを仕事にしたいなと、その時に初めて思いました。
ーなるほど〜。現在オマツリジャパンがプロデュースしている祭りも、地元の方と協力して作っているんですね。
そうですね。プロデュースといっても私たちがすべて仕切るのではなく、あくまで主体は地元の方々。地元のみなさんで構成する実行委員会に、私がコンサルタントのような位置付けで参加しています。だんだん地元でも知られてきて、歩いていると「ジャパンさん!」て声をかけられたりします。
ーへ〜! いい関係性ですね。よそ者だからと、はねつけられたりすることはないですか?
基本的にありません。むしろ「若い人が参加してくれて嬉しい!」とで喜んでもらうことが多いです。これまで祭りに関わってこなかった地元のおじさんが参加してくれるようになって、新たなつながりが生まれるといった波及効果もありますよ。
何より、年々どんどん盛り上げって楽しんでくれる人が増えて、私たちも楽しませてもらっています!
ーなるほど。祭りコンサルタント、全国各地でニーズがありそうです! これまでの経験や知識を体系化して共有するのも面白そうですね。
そうなんです。いろいろな祭りに関わってノウハウが蓄積できてきたので、今度マツリバ(オマツリジャパンの拠点であるイベントスペース)で「祭りの作り方」というセミナーを8月から予定しています。「祭りを作りたいけど作れない人」を対象に、地域への入り込み方や、どうすれば地元の共感を得られるかなど、ゲストスピーカーを招いて考えて行く予定です。
ーそれは、実践的な話がたくさん飛び出しそうで、楽しみですね!
【番外編】今ハマってます! 瞬時にその場を祭りに変えるグッズ
ーさて、祭り好きな原瀬さんが、今ハマっているものはなんですか?
よく聞いてくれました。こちらです!
ーおお。これは何ですか?
何度でも割れる「鏡割りセット」です! 頂き物なんですが、これがあればいつでも祭り気分を味わえるんですよ。
中身は日本酒じゃなくてもいいので氷とコーヒーを入れてアイスコーヒーとか(笑)、お菓子を入れてもいいし、子どもも大人もみんな楽しめます。
ーさすがオマツリジャパンさんです。ちなみにそのはっぴは?
前の会社を退職する時に、上司がプレゼントしてくれました!
ー理解のある温かい会社ですね!
日本人のDNAの奥底に眠る祭り魂、今年はぜひ火をつけてみてください。オマツリジャパンのウェブサイトやFacebookページでは関東地方の祭り情報を発信しているので、ぜひチェックして参加してみてくださいね!
■取材協力:オマツリジャパン
文:石井妙子/撮影:cowcamo編集部/写真提供:オマツリジャパン