お部屋の表情がガラッと変わる壁紙(クロス)は今やおしゃれなお部屋づくりには欠かせません。そんな壁紙について、世界の輸入壁紙/ボーダー壁紙/輸入ファブリックを扱うTECIDO(テシード)さんにお話を伺いました。今回の取材では壁紙を使った空間演出のテクニックや、DIYにぴったりの壁紙の種類、そして人気の壁紙も教えてもらいました。多種多様の色と柄で、お部屋の演出を楽しみましょう。
住まいに、「今どき感を取り入れたい」「インテリアに新しさが欲しい」。そんなとき、壁紙でお部屋をカスタマイズする方法は、持ち家の人や家づくりを考える人だけでなく、賃貸住まいの人にも幅広く浸透しています。
今や、インテリアを装飾するアイテムとして欠かせない壁紙も、TECIDO(以下、テシード)の歴史を辿ると、私たちの日常にどのように広く楽しまれるようになったのかわかってきます。
テシードで見つける、暮らしを豊かにする壁紙
豊島区目白に本社オフィスとショールームを構えるテシードの始まりは、およそ50年前。そのルーツと壁紙の普及について、テシードの山形俊之さんはこう話します。
当初は日本製の天然素材の壁紙を中心に海外に輸出してきましたが、時代が過ぎる中で海外の壁紙を国内に輸入する事業も始め、徐々に比重が輸入業へと移っていきました。
ちなみに、これはあまり知られていませんが、「TECIDO」とはポルトガル語で「織物」を表す言葉。インテリアを扱う会社に適していると思い、社名にしたそうです。(山形さん)
山形さんによれば、ここ3〜4年の間で、一般の人たちの壁紙への意識がぐっと高まったと言います。
私たちが事業を始めてから今日まで、日本の住宅は国産の白い壁紙が主流で、輸入壁紙が選ばれることは、全体の1%程度に過ぎませんでした。
でも今は、若い世代が"自分だったらこうしよう"といった、幅広い選択肢を持って暮らしを楽しめる時代になった。家具や雑貨などに好みを反映する感覚の延長で、壁紙にも自由に選ぶ楽しみを求めるようになってきていると思います。(山形さん)
思い切って大胆に! 色や柄を積極的に楽しむのが◎
ショールームにご来店されるお客様はどんな壁紙を選んでいるのか、接客を担当されている春名恭仁子さんに伺いました。
「こんなデザインの壁紙がいい」と、ご自身ですでに決めて来られるお客様が意外に多いんです。好みをお教えいただければ、それに見合ったデザインや、コーディネートしやすい色や柄の壁紙をご提案することもできます。(春名さん)
テシードでは、そういったお客様の"好き"や"自由"といった視点を、何よりも大切なこととしてとらえているそうです。
自分らしい生活スタイルを思い切り表現するような感覚で、壁紙を取り入れていただけたらと思っています。好きな場所に、好きなデザインを。気負わずに自由な発想で選んで、壁紙を楽しんでいただきたいんです。ショールームでは、そのお手伝いができればと思っています。
色や柄のある壁紙を選ぶことに抵抗がある人もいるかもしれませんが、ぜひ大胆なデザインにチャレンジしてほしい、春名さんは話します。
大胆な色や柄の壁紙を、トイレなどの狭い場所に貼ってアクセントにするのも素敵ですし、リビングや寝室の壁に大きく貼っていただくのも、より一層、壁紙の魅力を感じていだだけると思います。
無難なデザインのものを選んで、あとから物足りなさを感じる方もいらっしゃるので、思い切って主張がある色や柄の壁紙を選ばれた方が、満足感を得ていただけると思います。
(春名さん)
壁紙のプロであるおふたりによると、実際に空間に貼ると、カタログや見本で見ている時よりも落ち着いて見えるのだそう。照明の色や照らし方でも印象が随分変わるそうです。
まずは家具に貼ってみるなど、小さな部分から取り入れて、家の雰囲気の変化を楽しんでいってもらうのもいいと思います。(山形さん)
小さなものでは収納棚やチェストなどをアレンジしても楽しそうですね。
そんな風に、DIYで取り入れられるレベルから壁紙を楽しんでいくと、"貼って変わる"発見を通して、空間そのものを壁紙で変えていくイメージも湧きやすくなりそうです。
部屋を広く見せることも!? 壁紙を使った空間演出テクニック
思い切って、大胆な色や柄の壁紙を選んだほうが、空間の変化を楽しめるということはわかりました。でも、日本の狭いおうち事情、お部屋に圧迫感を感じてしまったりはしないのでしょうか?
トイレなどの狭い空間では、大きな柄の壁紙を貼ることを冒険に感じる方もいらっしゃると思います。そんなときは、使う柄よりも発色のいい無地の壁紙をもう一面に取り入れてみるといいかもしれません。
また、デザインものの壁紙を選ぶ場合には、黒系よりも明るい色の方が使いやすいと思いますね。鮮やかな色柄のものであれば、壁一面に使っても印象が重くなりません。(春名さん)
壁紙の組み合わせで、空間を広く見せるコツもあるそう。
色合いでアクセントを付けてあげることがポイントです。同系色でまとめるコーディネートもいいのですが、例えば一方の壁にオレンジ色、もう一方の壁には青色というように、反対色を組み合わせて使うと、空間にメリハリと奥行きが生まれます。(春名さん)
なるほど! そんなテクニックもあるんですね。
逆に、似た色味の壁紙で空間をまとめたい場合には、ストライプ柄と花柄といったように、異なるデザインのものを組み合わせると、奥行き感を演出しやすいのだそう。
また、壁紙を貼る場所は「壁」に限りません。「天井」に貼っても、異なる印象を与えてくれます。
DIY向きは不織布壁紙。「種類」を知って壁紙選びの参考に
そして壁紙を取り入れる際に、知っておきたいのが壁紙の「材質」。大きくは「ビニール壁紙」と「紙壁紙」、「不織布(フリース)壁紙」の3種があります。DIYで取り入れる場合やどんな空間に使うのかを考える際に、それぞれの特徴を把握しておくと、壁紙選びがスムーズになります。
「ビニール壁紙」は一般的に、価格の安さとメンテナンス性の高さなどが特徴で、日本でよく使われている壁紙です。「紙壁紙」は発色がよく、デザインの表現力が高いのが特徴だそう。両方とも、壁紙にのりを塗り、のりをなじませる時間を置いて壁に貼り付けます。
「不織布(フリース)壁紙」は、ポリエステルやパルプなどの化学繊維で作られた壁紙。壁に直にのりを塗って貼ることができるため、DIYでも施工が簡単です。最近、登場した「貼ってはがせるのり」を使えば、貼った壁紙をきれいにはがすことができ、初心者や、現状復帰が必要な賃貸住宅にも向いています。テシードが扱う輸入壁紙は「紙壁紙」と「不織布壁紙」が多いそう。
壁紙のサイズにも違いがあって、国産の「ビニール壁紙」は92cm幅のものが主流で、幅が広いため継ぎ合わせ部分が少なく済みますが、専門の職人でないと施工が難しい面もあります。
輸入壁紙の場合、52〜70cm幅のものが多数。継ぎ合わせ部分は多くなりますが、幅が狭いため、女性でもDIYで施工がしやすいというメリットがあります。(山形さん)
欧米では「不織布壁紙」が主流ですが、模様替え感覚で壁紙を貼り替えるあちらの習慣が影響しているのかもしれませんね。
種類によって特性はありますが、それにとらわれ過ぎず、まずは「こんな色や柄を使いたい」といった、好みをきっかけに自由に壁紙を選んでほしいですね。(春名さん)
とはいえ、「我が家に合う壁紙を教えて欲しい」といった要望や、「自分で貼る方法を教えて欲しい」「やっぱりプロに施工をお願いしたい」という要望などもあるはず。
そんな方のためにテシードでは、テシードの壁紙を扱うお近くのお店を紹介しています。壁紙を実際に見て選ぶことができるだけではなく、コーディネートのアドバイスや、施工をしてくれるお店もあるので、参考にしたいですね。
みんなはどんな壁紙を選んでる? 人気の壁紙を聞きました
ところで、壁紙のトレンドには、ファッションのトレンドが影響していると聞きますが、実際のところどうなのでしょうか?
今年はファッションの流行とともに、壁紙も「黄色」が旬ですね。壁紙業界は、ファッションを追いかける形でトレンドができていく傾向があります。
トレンドにかかわらず一貫して人気なのは、古典的な「ダマスク柄」。草花をモチーフにしたエレガントな柄も人気です。(春名さん)
「壁紙のトレンドをつくっているのはファッション」と聞くと、壁紙も、衣服のコーディネートのように楽しめそうな気がしてきます。
ちなみに国内では今、どんな壁紙が人気なのかを聞いてみました。
●定番人気は「ダマスク柄」
定番中の定番は、エレガントな「ダマスク」といわれるこちらの柄。特に、ブルー系は人気が高いそう。ラメ感のあるゴージャスな柄物でも、主張しすぎない色合いを選べば使いやすそうです。
●ドラマの部屋に採用で人気上昇中「鳥モチーフ」
自然に明るい色の家具と合わせたくなる、大人かわいいポップな「鳥モチーフ」は、いま流行のデザイン。ドラマに登場したことで、女性を中心に購入される方が増えたんだとか。
●男の空間にも遊び心を。「だまし絵」デザイン
こちらの「だまし絵」のようなデザイン壁紙はスケール感があり、お部屋に個性を出してくれます。こうした直線的なデザインのものは、特に男性に人気が高いそうです。
●ユーモア、フェミニン、モダン ・・・あなた好みのトレンドは?
ほかにも、「だまし絵」デザインの「カーテン柄」壁紙や、今季のファッショントレンドでもある「水彩画タッチの花柄」、定番柄の「ストライプ」は意外にもブラック&ホワイトが女性に人気だそう。
デザイナーで今、人気が高まっているのは、マリスカ・メイヤー。どこかオリエンタルな花柄や幾何学模様が、空間に個性を与えてくれます。
目移り必至の多彩なデザインの壁紙たち。今回ご紹介したものだけでも、それひとつでお部屋全体の印象が随分と変わることがわかりますね。トレンドを参考にしつつ、自分らしさも映した空間づくりにトライしてみたいですね。
欧米では "失恋すると壁紙を張り替える" というくらい、気分を一新するためにお部屋の壁紙を変えることは一般的なのだそう。日本でもそんな風に気軽に壁紙での空間アレンジを楽しんでもらえたら、住まいはずっと豊かになるはず、と山形さんと春名さんは口を揃えます。
家具をすべて取り替える模様替えは大変ですが、壁の一面だけ、壁紙を変えるならどうでしょう? お気に入りの壁紙で、あなたの家も "旬顔" にイメチェンしてみませんか?
【取材協力】株式会社テシード
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取材・文:本田里奈子/撮影:cowcamo