お話を伺ったのは、店長の小林尚史さん。DIYのことなら何でもござれの頼れるアニキといった存在です。
—まず、P.F.S.とはどんなお店なのでしょう?
P.F.S.はもともと、1988年に輸入アンティーク家具の修理工房からスタートしました。
当時は日本に輸入家具を修理できるところがなかったんですね。リペアの専門工房から始めて、米国駐留軍家具を復刻したり、商業施設のデザイン設計をしたり。さらにはオリジナル家具の製作、販売へと広がっていくんですが、オリジナル家具を作るためにはパーツが必要になります。ただ、当時国内ではイメージに合うパーツが売っていなかったために、ヨーロッパからの輸入やオリジナルの金物作りを始めたと聞いています。
実はデコレーション性の強いヨーロピアン調の家具やパーツを扱うことからスタートしたんです。そこから徐々に機能性があって無駄な装飾がないものへとシフトしていったという感じですね。
—P.F.S.というと完全にインダストリアル系やミリタリー調のオトコマエ家具というイメージなのですが、当初はデコラティブなヨーロピアン調の家具を扱っていたとは、驚きです。
目黒区東山にP.F.S.の直営店をオープンしたのが1989年、パーツセンターは2002年にオープンしました。3年前にはパーツセンターのフロアを拡張し、取り扱い点数もだいぶ増えています。
ご来店されるお客様は、内装デザインを手かげている業者さんなどプロフェッショナルな方が半分強、個人のお客様が半分弱といった感じです。
面白いのは、少し前までは、印象として25歳以下の個人のお客様はほぼいらっしゃらず、年齢層はけっこう高めで、アンティーク車を乗り回す白髪のダンディなおじさまなどがいらしていたんですが(笑)、最近は若い方がかなり増えましたね。
アパレルのセレクトショップなどでお使いいただいたり、雑誌で取り上げられたりもしているので、そういった影響もあると思うんですが。
まずは機能的であること。デザインはあとからついてくる
—オールドアメリカンな雰囲気満載の店内は、日本にいることを忘れてしまうほどかっこいいのですが、品揃えはどんなところにこだわっているのでしょう?
機能的に使えることをもっとも大切にしています。デザインはあとからついてくる、という考えですね。
例えばアメリカ製の昔ながらのスチールロッカー。わざわざ海外から仕入れなくても、日本にだってスチールロッカーはありますよね。だけど、日本のものは完全にオフィス仕様。機能性はあるかもしれないけれど、デザインがついてきていない。シンプルさという部分では同じなのに。
— "シンプルさ" と "味気なさ" って違うんですね。P.F.S.で取り扱われている商品は、どれも潔いほどシンプルなのに、なんとも言えない味があります。
どこのメーカーとか、どこの国の製品、というのはこだわらないというのがうちのポリシーなんです。
たまにお客様から「これはどこの国のものですか?」と聞かれることがあるんですが、日本製の商品でも、いいと思ったら店頭に並べています。アメリカのプロダクトは確かにとても合理的だとは思いますが、日本製も品質や細かな部分のクオリティはかなり優れているんですよね。
どこの国製、ということではなく、ひとつひとつの商品そのものを見て選んでいただきたいし、P.F.S.もそのようなセレクトを心掛けています。オリジナル家具も、機能性とシンプルさを考えに考え抜いて造るので、ひとつの商品が出るまでのスパンがものすごく長いですね。
大掛かりな大工仕事は不要! 交換するだけでたちまちかっこよくなる、ミラクルパーツたち
—ビギナーでも設置しやすくてお部屋がたちまちかっこよくなるような、おすすめのパーツを教えてください。
まず、イチオシなのが「PILLAR BRACKET(ピラーブラケット)」。コンクリエイトデザイン(PINK FLAG)さんという会社と共同販売した商品なんですが、ホームセンターなどで売っている2×4材にかぶせて突っ張ることで、好きな場所に柱が取り付けられるというものです。
釘が打てない賃貸住宅でも、これを使って柱を立てれば棚やパーテーションを造ることができますし、板を張れば壁を作れますし、また大きなミラーも安心して固定できますよ。2012年から販売していますが、とても人気が高いアイテムです。
ピラーブラケットで立てた柱に、シェルヴィングステイを組み合わせると、棚も設置することができます。90度に折れ曲がっていて水平を取りやすいので、ビギナーでも上手に棚が取り付けられますよ。
—賃貸はもちろんのこと、購入した住宅でも、壁や柱はなるべく傷つけたくないもの。新たに柱を取り付けることで、お部屋づくりの幅がぐんと広がりますね。
それから、ごく小さなパーツなのに、替えるとお部屋全体の雰囲気ががらりと変わるのが水栓ハンドルです。この部分は自分で簡単に取り替えられるんですよ。
ほかに、キッチン扉や引き出し、クローゼットの取っ手・つまみ類も、替えやすくて雰囲気がアップするアイテムです。2カ所で留めるものは、幅がうまく合うものでないと交換ができませんが、ねじ1本で留めてあるものならあっという間に替えられるので、気軽に取り替えてみてほしいですね。 他には、簡単DIYとしては定番のスイッチプレート。家庭用のドライバーさえあればすぐ付け替えられます。
そしてさらに小さなパーツになりますが、マイナスねじのバラ売りもしています。今、世の中で使われているのはほぼプラスねじで、マイナスねじはあまり見かけなくなりました。なぜかというと、やはりプラスねじの方が断然締めやすいから。
でもマイナスねじは頭の形はレトロで可愛いし、真鍮製は特に経年変化によって味わいが増していくので、おすすめですよ。
—おお、これは素敵です! 少し前までDIYというと、のこぎりやらカナヅチを持ってトンカチやる、といった大がかりな作業を思い浮かべていたのですが、こんなごく小さなアイテムを交換することからでも始められるのですね。
今あるものに自由な発想で手を加えて、無駄なく再利用する
DIYグッズとして模様や名前などを入れられる電動ペンや刻印セット、ステンシルなどもおすすめしていますが、うちでは扱っているDIYパーツの使用例はあまりディスプレイしないようにしているんです。「こんなふうに使えます」と出すことで逆にお客様に固定観念を持っていただきたくないからです。あえて部材だけを置いて、それぞれで自由な発想で使い方を考えていただきたいんですね。
例えば段ボールにただペイントしたりするだけでも立派なDIYだと思うんです。まるっきり新しいものを一から作るのではなく、今持っているものにちょっと手を加えて、無駄なく使うのがP.F.S.のポリシー。これからも、シンプルでスタンダードなライフスタイルを提案していきたいと思っています。
こんなに気負わずに取り組めるDIYがあったとは驚きでした。しかも手軽なのに仕上がりはしっかりかっこいい!
新年度の始まりとともにお部屋の模様替えをしたいなと思ったら、ぜひパーツセンターに足を運んでみてくださいね。
■取材協力:PACIFIC FURNITURE SERVICE PARTS CENTER
HP:http://pfservice.co.jp/
東京都渋谷区恵比寿南1-17-5
TEL:03-3719-8915
営業時間:11:00〜20:00
休日:火曜
アクセス:JR「恵比寿」駅 西口 徒歩5分
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取材・文:吉田タカコ/撮影:cowcamo