リノベーション済み住宅を購入されたご家族に、中古物件の住み心地と購入に至るまでのお話を伺いました。当初は新築の相談や建売住宅の内覧をしていてた今回のご主人は、オープンハウスでこのお家を気に入ったそう。リノベーション事業を手掛ける「リビタ」がフルリノベーションを施した物件で、通風と採光などを考えた工夫が凝らされています。ナチュラルながら個性的な空間は、ゆったりした空気感が漂っていてまるで別荘にいるかのよう。また新築マーケットではなかなか入手できない広さが購入のポイントだそうです。耐震性や断熱性能など安全面のお話も伺いました。


僕は「いい!」と直感したものはすぐに買ってしまうタイプなんですよ(笑)。この家もそうでした。(大西さん)

そう笑って、大西太一郎さん(48歳)は話し始めました。

大西さんがこの物件に出会ったのは、2年前の夏のこと。さまざまなリノベーション事業を手掛けるリビタが中古戸建てを買い取り、フルリノベーションを施して販売していた、リノベーション済み住宅です。大西さんは当時、近所の賃貸マンションに奥様のさち子さん(42歳)、長女の優茉さん(18歳)と家族3人でお住まいになっており、契約更新の時期を間近に控えて引っ越し先を探していました。

犬3匹、亀3匹、トカゲ1匹を飼っていたので、動物たちとともに余裕を持って暮らせて、また、彼らのたてる物音が近隣に響くのを気にせずに済むように、庭付きの戸建てを希望していました。(大西さん)

大西邸の外観。外装の一部にも、内装のナチュラル感を予見させる木材を採用。

なるべく近隣で住み替えしたかった大西さんは、ハウスメーカーに新築を相談したり、建売住宅を内覧するなど、幅広いジャンルを検討したと言います。

そんなある日、ポストに入っていたこの物件のチラシを見つけた大西さんは、Tシャツにショートパンツというラフな出で立ちのまま、ふらりとオープンハウスへ。室内をひと巡りしてすぐにこの家が気に入り、数日後には売買契約や住宅ローンの手続きに入っていたそう。

この広さだと、周辺の新築の相場は8000万円ほどではないでしょうか?この家は6000万円台ですから、割安感がありました。(大西さん)

2階のリビングスペースからダイニングキッチンを見る。

1990年に建てられた2階建ての木造住宅で、敷地面積は約140㎡、建物の延床面積は約107㎡。周辺の新築マーケットではなかなか入手できない広さも大きな特長でした。この物件のリノベーション企画と建築ディレクションを担当したリビタの黒田大志さんは話します。

この豊かな空間を活かし、建物の前にはパーゴラ付きの中庭をつくりました。室内は、2階全体をLDKに割き、1階には土間つきのフリースペースと個室2部屋という間取りに。近隣の家とは比較的密接しているのですが、2階にLDKを設けることで、通風と採光を得ています。また、2階の床の一部には透過性のある素材を使って、光が1階まで届くように工夫しています。(黒田さん)

リビタの戸建てリノベーションプロジェクトを担当している黒田大志さん。

大西さんがこの家を気に入ったポイントは、大きく分けて3つありました。

ひとつめは、延床面積約140㎡という広さ。これなら、家族3人とペットたちがともに、伸び伸びと過ごすことができます。愛犬3頭が室内を走り回っても問題ありません。

ふたつめは、間取りが希望にマッチしていたこと。以前の住まいは70㎡ほどでしたが、小さい部屋に分かれた間取りだったため、広々としたLDKがある新居を望んでいた大西さん。この家は、もともとあった間仕切り壁がリノベーションで取り除かれ、2階は広々としたLDKに変更されていました。

土間付近のフリースペース。壁面の棚の制作・取付けを担当したのは、建築設計事務所アラキ+ササキアーキテクツ。

また、1階の土間とフリースペースもマッチしたポイントだったそう。

僕は以前、フォーミュラ・ニッポンのカー・レーサーでした。今も時折、レース場を走ります。この土間は、自動車のパーツなどをいじって遊ぶスペースにちょうどよかったんです。(大西さん)

3つめは、天井仕上げや間仕切り壁を撤去し、構造躯体である梁や柱を現しにした、ナチュラルながら個性的な空間デザイン。2階のリビング上部に見える梁は別荘のようで、特に気にいっているのだそう。

僕のオフィスは、人が常に行きかう賑やかな東京・表参道にあって、毎日けっこう慌ただしいんです。一転、帰宅すると、我が家のLDKにはリゾート地にある別荘のようなゆったりした空気感が漂っていて、気分が落ち着きます。こんな風にメリハリが生まれたことがうれしいですね。(大西さん)

2階のリビングスペース。梁にはブランコやグリーンが吊り下げられています。

ところで、新築との比較検討もしていた大西さんは、「中古」であることは気にならなかったのでしょうか?

家を決めるのに、新築、中古は関係ありません。その時その時にベストな住まい方ができればいいと思っていますから。それに、この家はフルリノベーション済みだったので、以前住んでいた人の雰囲気のようなものはまったく感じませんでした。いわゆるネガティブな「中古」という感じはなかった。(大西さん)

また、大西さんにとっては、中古であること自体も魅力だったそう。家族やペットたちがつける傷が味わいとなって、住まいが趣を増していくからです。「新築と違って、傷に頓着することもなく気楽なんですよ」と微笑みます。

ダイニングからキッチン付近。大工さんが造作したオリジナルのキッチンです。「料理をするにも食事を出すにも便利で気に入ってます」とさち子さん。

中古住宅を購入する際、多くの人は耐震や断熱といった住宅性能に留意するもの。たとえリノベーションされていても、壁の内側に施された耐震補強や断熱材などは、工事の完了後では確かめにくいためです。大西さんも同様でした。

そこで、オープンハウス時にリビタの営業担当に率直に尋ねたところ、工事の際の耐震補強の方針や独自の検査基準などについて丁寧に説明してくれたことから、安心して購入を決意できたと言います。

断熱性能は心配していませんでした。というのも、最初にこの家を訪れたオープンハウスの日は真夏で、とても暑かったにもかかわらず、各階エアコン1台で家中が涼しく保たれていましたから。この冬も暖かく過ごすことができ、この家の断熱性能の高さを一層、確信できました。(大西さん)

浴室、洗面所、トイレをひとつの空間にまとめ、ゆったりと落ち着いた空間に。内壁は防水性が高く掃除しやすい、FRP(繊維強化プラスチック)で仕上げています。

大西邸は、それまでマンションや商業施設を中心に事業展開をしてきたリビタによる、戸建てリノベーション事業の第1弾プロジェクトでした。独自の建物調査のほか、耐震診断・検査機関の劣化調査をもとに、耐震補強・断熱改修などを含めた工事を行い、建物自体を再生するリノベーションを行っています。

住まい手が安全、快適に住み続けられる中古住宅を提供すること。それだけでなく、より長く使える住宅にすることで、複数の所有者が建物を住み継いでいくサイクルを世の中に生み出したいという想いがあります。(黒田さん)

使わない時は跳ね上げ式で収納できる棚とデスク(左)や角材と板で作った棚(右)など、DIY感溢れる造作家具も、住まい手の暮らしづくりを刺激してくれます。

また、ただ物件を販売するだけではなく、「住まい方の提案」もプロジェクトの目的だと言います。

住宅は長く使うものですから、今後の暮らしのすべてを見通してつくり込むのは難しく、つくり込んだとしても後々暮らしづらくなる可能性があります。リビタの戸建てリノベーションプロジェクトでは、ゆとりのある空間を基本に、暮らしに合わせて必要な時に住まいを変更していけるようなプランとすることに配慮しています。
それから、住まい手が愛着を持って暮らせるように、自分でアレンジやメンテナンスをしやすい仕上げにするようにしています。たとえば、室内の壁や造作家具などに木を使っているので、住まい手自身が棚を新たに造り付けたり、好みのワックスを塗ったりできます。(黒田さん)

右・長女の部屋。壁面にハーベストパネルという合板が使われており、棚などが増設しやすい造り。/左・玄関ホールから個室への廊下を見たところ。壁の仕上げに使われている素材は木なので、市販のワックスなどでメンテナンスができます。

この物件も、住まい手が自由に変えていけるようにと、余白を残したシンプルなデザインを心掛けたそう。仕上げには木や麦わらを使った合板などが使われており、住まい手が新たに棚を取り付けたり、好みの塗料を塗ったりしやすい空間になっています。

DIYなどでいろいろ手を加えていくのが楽しみなんです。ああしたい、こうしたい、というイメージだけは膨らんでいます(笑)。(大西さん)

以前は駐車場だったスペースを庭に。パーゴラが周囲の視線を適度に遮断してくれます。冬以外は中庭ではガーデニングを楽しみ、愛犬や亀を散歩させているそう。

家に対して、家に手を掛けることに手間ひまを惜しまない方、家に愛着を持って暮らしてくれる方に住んでほしいと思っていました。大西さんご家族のようなイメージ通りの方に住んでいただくことができて、非常にうれしく思っています。
入居後のお住まいを拝見すると、こまめに掃除やメンテナンスをしていらっしゃる様子がわかります。暖かい季節には、家のまわりやパーゴラのある中庭は、奥様が育てたグリーンでいっぱい。愛犬たちは家の中を自由に走り回っています。この家をみなさんで満喫してくださっているようで、それはもう、企画者冥利に尽きますね。(黒田さん)

この家に暮らし始めて、「家を住み継ぐ」という発想が生まれたと話す大西さん。

この家のデザインや住み心地などを通して、リノベーションによって中古住宅が魅力的に生まれ変わることを実感しているという大西さん。先々にはご自身の実家に移り住む予定だそうですが、この家は長女の優茉さんにぜひ譲りたいと言います。また、以前いつかは建て替える心づもりだったというご実家も、今はそのまま使い続けたいと考えるようになったそう。

僕の実家は、宮大工に建ててもらったこだわりの家なんです。自分が実際に中古住宅に住んで、築年数を経た家ならではの魅力に改めて気づくことができたし、リノベーションによって、オリジナルを活かしながら機能を向上できることもわかりました。実家もぜひ、リノベーションして住み継いでいきたいと思っています。(大西さん)

左・2階LDKはデッキ敷きのバルコニーに続いています。/室内のところどころにグリーンが。木を生かした内装に映えます。

【取材協力】株式会社リビタ

リノベーション済み戸建て・マンションの企画・販売のほか、中古マンションリノベーションのコンサルティングサービス「リノサポ」、「一棟丸ごとリノベーション」、シェア型賃貸住宅「シェアプレイス」、遊休不動産の活用提案・サブリース事業など、リノベーションを主軸に住宅・不動産事業を展開。戸建てリノベーションのノウハウや基礎知識、アイデアを提案するサイト『HOWS Renovation Lab.』公開中。

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