気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第46弾は「北参道」です。


新宿と原宿の間に位置する北参道。2008年副都心線の開通を機にその存在は知られつつありますが、そこは別名 “裏参道”。人が集まる街から街を結ぶ裏道こそが、この街のメインストリート。

アパレル関係の事務所や、個性が光るお店、カフェ、バーが点在し、コーヒースタンドの脇では、オシャレさんがタバコをくゆらし少し気怠げに空を見る・・・そんな光景が似合います。 “ゆるいのにキマってる” こなれた雰囲気から新しいトレンドが生まれるこの街で、アンティーク家具を扱う「CEROTE ANTIQUES(セローテ アンティークス)千駄ヶ谷店」を訪ねました。

■“あえて、外したかったんです”・・・空白地帯のツウなお店

若い人でも手に入るアンティーク』をコンセプトに、大阪に本店を置いたのが10年前。コンテナ船による大量仕入れと、独自の買い付けルートで、低価格で幅広いラインナップを実現し、インテリア好きの間でCEROTE ANTIQUESが名を広めるのにはそう時間は要さなかったと、同店マネージャーの杉本竜巳さんは開店当時を振り返ります。

CEROTE ANTIQUESはこちらの建物の1階が入り口。エントランスの色鮮やかなタイルがとても印象的。

東京都内では、どうしてもスペースが限られるので、一点物を多く扱うことにしました。そのため、人がたくさん集まる場所はあえて外したかったんです。ちょっと感度の高い人達が立ち寄りやすいような穴場を探していて・・・ちょうど、この場所を見つけたのが、8年前でした。

元はアパレル関係ご出身の杉本さん。中でも古着が好きだそうで、大事にされたものの良さはアンティーク家具に通じるものがあるのだとか。

今や「ダガヤサンドウ」として、個性的で本物志向のお店が集まる場所として話題の千駄ヶ谷、北参道ですが、それはもっぱら最近の話。

新宿、渋谷、原宿に隣接していながら、どの街のカルチャーにも染まることのなかったこのエリア。空白地帯とも言える時期を長く過ごし、いつしかクリエイティブな仕事を生業とする人や、トレンドを発信するギョーカイ人が普段着で集う穴場、まさにツウが知ってる裏道のようなスポットになっていたようです。

上:街中では若い女性の姿が目立つ。/左下:スーパー不毛地帯だったが、2014年にOKストア千駄ヶ谷店ができて生活は便利に。/右下:インスタグラマー御用達のロンハーマンカフェ周辺は間違いなく、フォトジェニック。この日もファッション誌の撮影クルーの姿が。

■大量生産できない空間づくりを

店内には、所狭しと並べられた趣のあるアイテムの数々。これら全てが売り物だと言うのですから、気分はもう宝探し! 迷い込んだら、しばし時間を忘れてしまいそうです。といっても、店内はごちゃごちゃと言うよりは、フィルム映画のセットに入り込むような、不思議な世界観でまとまっています。

迷宮のような独特の雰囲気で、ロケにもよく使われるそう。

インテリアの置き方で、空間はガラリと大きく変わるんですよ。椅子ひとつ変えるだけでも部屋全体の見え方が変わる。ちょっと、ひとクセつけてあげると印象が変わるので、割と綺麗にまとめる時もあれば、空間に個性、人間味、面白みをつけることもあります。するとちょっと他の人が真似しないような、それで真似できないような、一点もの自分だけの自分らしいの空間ができあがります。

地下3階まで続く店内は、穴場感100%。大人の冒険心を刺激する。

大量生産できない空間づくり」というのがコーディネートのテーマ。そんなお店の個性と、小規模でこなれた雰囲気のある北参道という街は、ぴったり合っているといいます。

■ミックス&マッチの楽しさを生活に

CEROTE ANTIQUESでは店舗の内装も手掛けており、まとまった数が必要になるアイテムはアンティークにこだわらず、新品を組み合わせているそうです。時代や国を超えたさまざまな個性を持つ商品を組み合わせる「ミックス&マッチ」の手法は、アンティークを使ったインテリアの面白さだといいます。

新品やリプロダクトを上手にミックスをすると、経済的に味わいのある空間を作ることができるのもアンティークの面白いところです。

例えばこちらの空間は、全体的には、フレンチにちょっとアート要素のある70年代の絵を差し込んでいます。中央のデスクは50年代のドイツ製で、チェアは北欧系のリプロダクトの新品。上の大きな照明は洒落た空間作りに役立ちます、こう見えて新品のものなんですよ。左のシルバーのフロアライトは60年代のヴィンテージになります。

最近では店舗以外にも、2020年のオリンピックに向け民泊事業の需要が増え、部屋をトータルコディネートしてほしいとの依頼も多いとか。SNSで「写真映え」する空間づくりが重視されるこの時代、アンティーク家具の持つ落ち着いた雰囲気や個性は、フォトジェニック(写真映えする)で話題性もあると、ショップやホテルでも注目を集めているようです。

■一点ものに出会える街

ちなみに、100年以上古いものをアンティーク、それよりも若いものをヴィンテージと呼ぶそうなのですが、1950年代のものに限ってはアインティークと呼ぶ人もいるそうで・・・ハマりだすと奥が深いこの世界。時代背景や個性の異なるものが組み合わさることで、新たに生まれる色味、形、質感そしてストーリー。それこそが、大量生産では真似できない一点ものの魅力だと、杉本さんは話します。

アンティークって若いうちは手が出ないと言う印象があるかもしれませんが、20代でも、30代でも、自分の好きなものへのこだわりはあると思うんです。洋服を買う感覚とまではいかなくても、生活を彩る気持ちでアンティークを手にしてもらえたら、その場所は自分らしい心地よい空間に変えることができると思うんです。

この街で目にする “こなれた装い” は、なにも人に限ったものではありません。神様を祀る場所は緑と季節感に包まれて、人が住む建物は蔦を纏うこの一帯。街を歩けば、1964年の東京オリンピックを契機に建てられたヴィンテージマンションもちらほらと目に入ります。

この街にとっての東京オリンピックは、遡ること50年近く昔の “ヴィンテージの記憶”。今は、新国立競技場の建設も進み、間もなく新たな歴史の入荷待ちといったフェーズでしょうか。

上:このエリアの守神「鳩森八幡神社」には、2020年の東京オリンピックまでのカウントダウンボードが。/左下:蔦に覆われたマンション。/右下:国立競技場へと続く千駄ヶ谷トンネルも蔦に覆われている。

今日も裏道のアパレルのデザイン事務所の軒先で、サンプルセールの一点ものが、風に揺れてゆらゆら~、着こなす誰かを待っています。この街だからできる時代を超えたミックス&マッチ。一点物との出会いにワクワクする街、色と個性に溢れた空白地帯に期待が膨らむ、北参道です。

CEROTE ANTIQUES TOKYO(セローテ アンティークス トーキョー)
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2の10の2 グランコート千駄ヶ谷 1F~B3F
電話番号:03-5786-3115
営業時間:12:00-20:00
定休日:年中無休
ウェブサイト:http://sharkattack.jp/

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