カウカモでは7/24(火)より、世界最大の音楽ストリーミングサービスSpotifyの協力により、新しい「東京」との出会いを提供する新感覚な “音楽写真展”  TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamoを開催します。今回は、参加クリエイターを代表して、山田健人さんに「東京」の街について、また日常を切り取った写真や音楽についてお話を伺いました。


映像作家として、Suchmosや米津玄師、水曜日のカンパネラ、嵐、宇多田ヒカルなどのMVを制作する傍ら、ご自身が所属するバンドyahyelではVJとしても活躍している山田健人さん。あなたの知らない「東京」に出会う “音楽写真展”  TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamoのために、日常の風景を写ルンですで撮影、Spotifyでオリジナルプレイリストを作成していただきました。

イベント本番では、気鋭の若手クリエイター12組の切り取る「東京」を視て・聴いていただけますが、今回は特別に、参加クリエイターを代表して、山田健人さんのお写真の一部とプレイリストを先行でご紹介します。彼は「東京」のどんなシーンを切り取ったのでしょうか。

6月某日、都内にて、カウカモ編集部・國保(こくほ)がインタビューを行いました。


Suchmos、米津玄師、水曜日のカンパネラ、嵐、宇多田ヒカル、けやき坂46、GLAY、ゲスの極み乙女。・・・。そんな名だたるアーティストのMVを手掛ける、映像作家・山田健人さん。dutch_tokyoの名前でも活動する彼は、1992年生まれのなんと26歳だ。

昔から音楽や映像一色なのかと思いきや、実は大学時代は4年間アメフト部所属の体育会系。クールな印象が強いけれど、公式サイトを覗いてみれば、え本人? と驚く女装写真を使った作品が載っていたり、なんだか気になる「LOVE」という項目をクリックしてみると、wikipediaにリンク、と “なるほどな” という今っぽさとちょっとした遊び心を感じたり。

見れば見るほど引き込まれてしまうMVに、彼のスタイルの一貫性を感じつつも、でもどこかで人間臭さも感じるような・・・。一体彼はどんな人なんだろう。彼が撮影した写真をじっくりと眺め、彼が選んだ音楽を聴きあれこれ思いを巡らせながら、取材へと向かった。

山田健人さんと「東京」の関係

―山田さんは東京生まれとお聞きしましたが、幼い頃から今まで、どんな場所で過ごしていましたか?

実家が(目黒区)洗足なんです。幼稚園は学芸大学にあって、小学校までは大岡山や自由が丘周辺がゆかりのある場所でしたね。思春期はずっと渋谷周辺にいました。

ーお住まいはずっと洗足ですか?

大学に入る時に実家から出て、北千束に住んでいました。それから1年前に渋谷に引っ越しました。

ー今は渋谷が活動の中心ですか?

そうですね。便利だし、生活リズムにあっているので。LIQUIDROOMとかWWWとかも近いし。でも、渋谷が一番いい、東京が一番偉いって思っている訳でもないです。

―なるほど。では、「渋谷」や「東京」という場所で過ごしてきたことが、自分に与えた影響って何かあると思いますか?

東京生まれ東京育ちって、外の人はラベリングするけど、自分としては東京生まれだからどうこうっていうのはないですね。生まれ育った場所がそこだっただけ、くらいの感じです。

ただ、割と今に繋がってきているものは、渋谷を通してっていうのはあります。具体的に言うなら、高校3年の時に映像を始めて、ライブハウスとかもよく行くようになったんですけど、その頃に渋谷で出会った仲間と今でも一緒に何かやってたりする。そういう繋がりは得たと思います。僕らが10代の頃、センター街を歩くと、20人ぐらい知り合いがいたんです。マックとかバーガーキングの前とか。

ーMVを制作されているSuchmosさんも学生時代からの繋がりとお聞きしましたが、やはり渋谷で出会ったんですか?

▲Suchmosの「PINKVIBES」をはじめ、Suchmosの何本かの楽曲のMV制作を手掛けている。

渋谷も含めた、ライブハウスですね。大岡山に「ピークワン」っていうライブハウスがあって、ボーカルのYONCEとは高校生の時にそこで会いました。ネバヤン(never young beach)とかD.A.N.とかも。みんな今とは違うバンドでしたが。高校生でオリジナル楽曲やってる人にとって、登竜門的なところだったんです。

あとはライブハウスは、学大の「メイプルハウス」とか、下北沢のとかも行ってましたね。

ーやっぱりカルチャーの強いところに身を置いてたんですね。

そうですかね。でも、自分がやってるバンドyahyelのうち4人は大学が一緒だったり、メンバーの杉本に関しては、元を辿れば、小学校の時に同じテニススクールだったり(笑)。コムアイ(水曜日のカンパネラ)も中高大一緒だし。

地元も仲良くて。DYGL(デイグロー)っていうバンドのボーカルの秋山は、去年FUJI ROCK、今年サマソニも一緒なんですけど、同い年で小学校一緒なんです。

SuchmosのYONCEと出会ったピークワンも、大岡山で家が近くだから行っただけだったし、結構偶然ですよね。偶然が積み重なっている感があります。

撮影した写真について

―今回「写ルンです」で撮り下ろした写真について少しお話を伺わせてください。撮影地はどちらですか?

渋谷がほとんどですね。自分の家兼作業場の周りと、スタジオと、あとは、撮影で行った場所とか。基本的には普段通る道を撮ってます。生活の中で、遊びってそんなになくて、映像作ってるか、音楽作ってるかしかないので。

ちょうど撮影の時期がライブでフランスに行ってた時と被ってるんですけど、東京じゃない企画だったら、ヤバい写真が多かったと思います(笑)

―(笑)。撮影にあたって意識したことなどありましたか?

普段あまり写真はやらないので、ハードルが高くて。明るさに気をつけて、フラッシュを全部たいて撮ったのと、・・・あとは人を盗撮してるのが多いです(笑)

ー“人” に惹かれたんですか?

撮ったろか、みたいな(笑)。東京にいて、渋谷に住んでいるので、改まるとどこを切り取っていいのかわからなくて。人がいるシーンを撮りました。

渋谷って色んな人がいるんですよ。キャットストリートに行けばわいわいしてる若い人が多いし、TRUNK HOTELとか最近できたけどイベントやってて音漏れしてたり。と思えば、急に住宅街があって、高齢者の方もいるし、二世帯住宅とかも多いし、混沌としてますよね。すぐにスクランブル交差点に行けて、24時間365日なんでも食べられる、手に入る街

でも、逆に、家から出なくなりました。自炊するようになりましたね。制作している時はこもりがちだし、インドアで、家好きなので。

プレイリストについて

―今回は「東京」をテーマに曲選びをお願いしましたが、どんな曲を選んでいただきましたか?

東京という目線で曲を選ぶの難しかったので、純粋に好きな曲を並べました。好きな曲を東京で聴いているからいいかなと。4つ打ちですね。テクノなどです。

ー昔からそのジャンルが好きだったんですか?

音楽的なルーツでいうと、最初はUKロックとかでした。中学の時にOasisとかから入っていって。その辺は今でも懐かしいなって思いながら聴いたりするんですけど、最近の音楽的な嗜好は徐々にエレクトロ寄りになってきました。ロックミュージックも好きだけど、自分がやっている音楽バンドyahyelもエレクトロ寄りだし。ここ2-3年の変化かもしれないです。

―どんな時に音楽は聴くんですか?

移動中は基本的に聴いてます。好きな曲を聴いているパターンもあれば、・・・ダンスミュージックってBPM120-130くらいだから歩くのに適してるんです。ランニングとか、たまに代々木公園を走るんですけど、その時に聴いたりもしますね。ボーカルはあまりなくて、1曲7分とかなので、3曲分ぐらいで、20分間走になったり。あと4つ打ちって、波があるんですよ。ゆったりとした波。それがランニングにはすごく適してるんです。メンタル的にも。

それと仕事柄、MVを撮ることが多いので、次に撮る作品をひたすら聴いてることも多いですね。2ヶ月の間に4本撮ってたら、その4本しか聴かない時とかあります。

▲最近、2ヶ月で4本撮っていたというMVのうち1本はこちら。水曜日のカンパネラ「かぐや姫」。

ーお聞きしてみたかったんですが、MVって、曲からどういうふうに映像をイメージして作っていくんですか?

MVは音像と歌詞の世界観が第一なので、ひたすら聴かないとわからないんです。ラフに聴くのと、しっかりとしたヘッドホンで聴くので聴こえが全然違うので、色んな聴き方にトライします。もちろん、ユーザーへの届いていき方も意識しますし。

あとは、そのアーティストさんがどう見られるか? に映像作家は責任を持つべきだと思うんです。今の時代、あえてMVを作る意味とは。曲だけで完結しているものに、なぜビジュアル的イメージをつけるのか、その意味を問います。

その上で、考えてたアイディアとその音楽がぴったりと合ったらすぐに出せるし、そうでなければ、ひたすら考えます。だから制作中は、3-4日家から出なかったりしますよ。お風呂も2日に1回。ご飯は全部UBERとか(笑)

―(笑)。ちなみに、このプレイリストの中で特に思い入れのある曲はありますか?

そうなると思って、わかりやすい曲を1番頭と最後に入れておきました(笑)。No Reason (feat.Nick Murphy) / Bonoboと、Gold / Chet Fakerです。Chet Fakerの別名がNick Murphyなので、feat.Nick Murphy=feat.Chet Faker で同じ人です。

BonoboとChet Faker、ふたりとも好きなんですけど、Bonoboは、去年FUJI ROCKで見ていいライブだなと思って。VJがついてたんで、自分の領域としても刺激を受けたんです。MVもOscar Hudsonが撮ってるんですけど、注目している方だったりもするし。Gold / Chet FakerのMVもいいし、普通に好きです。

あと、Future Classicっていうレーベルがオーストラリアにあって、yahyelと割と関連性があるアーティストがいるんですけど、そこにChet Fakerがいたり、もうちょっとパーティーっぽいけどFlumeとかがいて、影響を受けてます。

プレイリストの他の曲は、ストイックに4つ打ちが多いですね。とにかく、東京がどうではなく(笑)、好きな音楽です!

映像作家として

― 山田さんは “映像作家” や“ VJ” として活動されていらっしゃいますが、普段どんなことを意識して制作をされていらっしゃいますか?

そうですね。日本はちょっと特殊で、コンテンツ、特に映像が「消費」されていると思うんです。

音楽だったら、経験にこびりつく力みたいなところがある。例えば曲を聴くと、東京のあの場所のあの雨の日を思い出すなとか、試合の前に聴いたなと、フラれた時に聴いたなとか。そういう経験にこびりつく匂いみたいな力を持っている。

でも、映像って消費されていきがちなんですよね。技術先行だったり、歴史の浅さも関係しているかもしれないけれど。例えば、渋谷のスクランブル交差点には5画面とかモニターがあるけど、情報の一部として流れてるだけだったり。

そんな、音楽の持つ、匂いというか、経験にこびりつく力、心を動かす力を、映像でも作れるのでは? と思ってます。

で、もっと映像を豊かにしていきたいです。心に残っていくようなものを残していきたいと常々思ってます。死ぬまでに1本、100年残る作品を作りたいし、みんなに見てもらう前提でものを作りたい。

一瞬で忘れ去られちゃうような、1週間しか残らないような、そんなディレクションにならないように気をつけてます。

ー前に、映像という媒体へのこだわりはないというお話をお聞きしたのですが、それは今も変わらずですか?

そうですね。表現に適したものをチョイスしていきたいと思っています。ツールに縛られるのは、表現のやり方としてはナンセンスだと思っています。ただ、今もっとも自分の思想が表現できるのは、写真ではなく「映像」なんです。

もちろん変わっていく可能性もあります。時代的な側面もあるし、例えば小説家になる可能性もある。言葉の方がいいって思うかもしれないし。でも、凝り性なので(笑)、今は映像のことしか考えられないですね。後は音楽。

ーなるほど。社会を豊かにするために、今は、映像がご自身の武器だから、映像作家という道を選んでいるという感じなんですね。

まさにそうですね。

社会を突き動かすためにはカルチャーが最低限必要だと思ってて。ムーブメントと言うか。作品と作家がある時に、作家が力を持つことがカルチャーの1個の形だと思ってるんです。

例えば、村上春樹がいい例で、新刊が出るだけでニュースになる。どんな内容なのかわからないのに。それって、1個の小説と言う次元を超えて文化ですよね。そういうことが映像でもっと起きていくべきだと思っていて。MVとか広告とか、映像の分野で、名前と顔と思想が一致してわかる人って、映画監督ぐらいですよね。しかもほぼいない。

だから、映像作家としての力を持ちたくて、去年は意図的に色んなアーティストのMVを作りました。D.A.N.、yahyel、Suchmos・・・みたいなコアなものから、GLAY、宇多田ヒカル、嵐、けやき坂46といったメジャーどころまで。それにイエモン(THE YELLOW MONKEY)のライブ演出をしたりもしました。

音楽的な側面でいうと、マスとコアってそれぞれの魅力があると思うんですけど、それぞれの魅力をお互いのファンは知らなかったりする。でも、ひとりの人間が映像監督したことで、例えばGLAYのファンがyahyelを聴くようになったり、両極端なものをひとつなぎにしていくことができる

そうすることで、入り口を作ることはできるかなと。作家を通して、作品を知っていく。それって、カルチャーになると思うんです。それが、社会を豊かにすること。大きな目標の第一歩、土壌として必要なんじゃないかと。

■改めて、山田健人さんにとって「東京」とは?

―東京の街で生まれ育ったということ。自分にとって当たり前のことで、特別意識していることではないなんてお話もありましたが・・・、実際、東京の存在が自分のアウトプットに与えている影響って何かあると思いますか?

脳みそで考えていることはたぶんないんですけど、いいなと思うことの方が多いです。例えば、渋谷が嫌いって人多いけど、僕は混沌としている感じが好き。社会の縮図だし、あらゆる情報網が巡っていていて、日本っぽさの象徴だと思う。

でも、ど直球で東京タワーの前で撮る、渋谷スクランブルで撮る作品を出さないのは、自分にとって普通すぎて、切り取る魅力がないから。海外のミュージシャンがど直球で撮るのは、逆にわかります。

そういう意味では、影響を受けていないとも言えるし、影響をすごく受けているからこそ撮っていないとも言えるのかもです。

―最後に改めて、山田健人さんにとって「東京」とはどんな存在かを教えてください。

2020年ってあるじゃないですか。やれ2020年って言ってるのは好きじゃないんですけど、少なくとも東京生まれ東京育ちで、そこで世界で最大級のお祭り騒ぎが起きることを意識しない理由はないと思うんです。

それは、オリンピックの映像に直接的に関わるってことではなくて、世界的に、自分が育ってきた街が注目される瞬間が来るわけだから、その時一番イケてるやつって、世界で一番イケてるやつになれる可能性が高いと思うんです。だから2年後は意識してます。

逆に、その先のことも考えていて。2020年に向けて建設中のものがあったり、カルチャーが動いているからこそ、それが終わると、経済が停滞すると思うし、本物しか生き残れなくなると思うんです。全てのジャンルで。だから、その時が来るまでになんの準備ができるかってことは考えてます。終わった途端にシビアになると思うんで。

(インタビュー・完)


彼が何に突き動かされて生きているのかが知りたくて、ここには書ききれないほど、たくさんの質問をぶつけてしまった。

映像を制作する上でのインスピレーションの源の話、高校・大学時代のアメフトの経験と今の仕事との関連性、海外での活動が多い彼だからこその、海外に出て行く時のスタンスについて・・・。

そんな、どんな質問にも誠実に真っ直ぐに答えてくれた彼の、“東京“ への目線はすごくリアルでとてもクールで。確かに彼にとって東京の存在は、日常過ぎて、どうってことないのかもしれないけれど、だからこそ逆に、この東京を舞台に何かをなし遂げてくれそうな、そんな力を感じた。

彼が「視る・聴く・東京」をぜひ会場で体感して欲しいし、26歳の彼がこれからどんな世界を作っていくのか、とても楽しみだ。


ラブリ、窪塚洋介、SALUなど気鋭のクリエイター12組が「東京」を表現した写真とオリジナルプレイリストを同時体験できる!
クリエイターの視点を通じて東京の新たな一面と出会える音楽写真展「TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamo」を7月24日〜7月29日に開催します。

■参加クリエイター

角舘 健悟 (Yogee New Waves)、窪塚 洋介、小見山 峻、 SALU、 高山 都、フルカワミキ、松坂 生麻 (Name./urself )、モーガン茉愛羅、山田 健人、横田 真悠、yoppy (little sunny bite)、ラブリ ※五十音順

【イベント概要】
TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamo
日時:7/24(火)-7/29(日)11:30~20:30 ※最終日のみ17:00まで
会場:CLASKA 東京都目黒区中央町1丁目3−18
入場料:FREE
参加するには、カウカモマガジンの公式SNSアカウントのInstagram・Twitterをフォローの上、「#東京音風景」と「#カウカモ」を付けて写真・動画を投稿してください。
詳しくは:https://tokyosoundscape.cowcamo.jp/ をチェック!

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