家を建てたい時、あるいはリノベーションしたい時のパートナー選びに参考してほしい記事です。「SuMiKa(スミカ)」が仕掛ける、建築家や工務店の新しい探し方。ネットを介したマッチングサービスで、自分の要望に合った建築家や工務店を見つけられる!家づくりにまつわる悩みや質問を投稿すると、建築家や工務店の回答が得られるという「みんなの家づくり相談」というコンテンツもかなり嬉しいポイントです。「小屋フェス」の主催者でもあるSuMiKaの「暮らしを豊かにする」仕掛けに注目
家を建てたい時、あるいはリノベーションしたい時、何よりも重要なのはパートナー選びだろう。思い描く理想の住まい、それをカタチにしてくれるのは誰なのか? 良縁を求め、我々は雑誌やネットで情報を集め、住宅展示場や住まい関連のイベントに足を運ぶ。いずれにせよ、基本的には施主が自らアクションを起こし、建築家や工務店を探すのが一般的な流れだ。・・・いや、"これまでは" そうだった。
最近は、もっと効率的な出会い方があるらしい。そのひとつが、ネットを介したマッチングサービス。家を「建てたい人」と「建てる人」をウェブやSNSでつなげるビジネスが今、活況を呈しているという。
しかし、FacebookもLINEもやらないSNSビギナーのおじさん(筆者のことです)は、そもそもインターネット上で出会うことに対して懐疑的である。
そこで、2014年4月より家づくりのためのマッチングサービスを開始した「SuMiKa」に、その実態についてお話を伺うことにした。
棚ひとつから新築まで、
1000人以上の専門家からパートナーを募集
「おばあちゃんから小さな子どもまでくつろげる家を、4000万円でつくってください。」
上記は、先日「SuMiKa」のサイト上に掲載された、40代女性からの "依頼" だ。その募集に対し「我こそは」とエントリーしたのは、建築家や工務店など21人の専門家(2015年7月26日現在)。依頼者は募集締切日までに集まったエントリーの中から、望む家づくりを叶えてくれそうな専門家を吟味し、最適なパートナーを選ぶことができる。
依頼者は、エントリーした専門家のプロフィールや過去に手掛けた施工事例の写真などを見ながら比較検討することができます。新築住宅などの大掛かりな案件だけでなく、『棚ひとつ』を作りたいといった依頼も可能で、予算や場所、工期なども細かく指定して募集できるのが特徴ですね。(阿部さん)
なお、現在SuMiKaに参加している建築家や工務店の数は1000人を超えるという。デザインのテイストや工法の違いなど、それぞれ得意領域が異なるため、多種多様なオーダーに応えることができるというわけだ。
なるほどこれはいい仕組みだ。筆者の実家のリフォームもここでお願いしてみよう。
ちなみに、これまで募集が掛けられたプロジェクトには、例えばこんなものがあった。
「【予算2000万円】鉄道が好きなので、鉄道や駅舎をイメージした家をつくってください。」
「【予算30万円】リビングの壁にぴったりはまるテレビボードを造ってください。」
「【予算7億円】高齢化に配慮した分譲マンションを建設してください。」
予算は30万円から7億円(!)まで、確かにかなり幅広い。また、「鉄道や駅舎みたいな家」なんていう、嗜好性の高いオーダーがあるのも面白い。そんな家建ててくれる工務店なんて、正攻法ではなかなか見つからないのかもしれない。
サービス開始から1年。今や利用者は1万2000人を超えるという。募集中のプロジェクトは常に20前後に上り、サイトのトップページには「累計公募総額(※)70億5400万円」(2015年7月26日現在)なんていう、景気のいい数字も踊っている。ちなみに、そのすべてが成約したわけではないので、SuMiKaが70億円儲かっているわけではないのであしからず(そんなに儲かっていたら、もっと悪い顔をしているはずだ)。
70億円はあくまで参考値にすぎないが、サービスが活発に利用されている様子は伝わってくる。
※SuMiKaで募集されたプロジェクトの予算の合計
熱い問答の応酬。家づくり版「知恵袋」
さて、ここから話は大いに脱線する。実はSuMiKaではマッチングサービス以外にもさまざまな試みを展開しており、それが実に面白かったのでいくつか紹介したい。
例えば、「そうそう、これもSuMiKaの自慢のコンテンツなんですよ。」と、佐藤氏がぐっと腰を入れて説明してきたのがコチラ。
「みんなの家づくり相談」は、ユーザーが家づくりにまつわる様々な悩みや質問を投稿し、建築家や工務店が回答する、いわば住宅版の知恵袋だ。
投稿内容は土地の購入からリフォームの相談まで多岐に渡るが、なんせ質問に答えるのは家づくりのプロフェッショナルだから、ひとつひとつの回答がとにかく的確かつ重厚。みんな、泣けるほど親切なのである。
例えば、2014年11月29日の投稿に対し展開された、こんなやりとり。
相談者「良い土地を見つけたのですが、20年前に火災に遭った場所ということで不安を感じています。また、現地を下見したところ、端のほうに井戸らしきものがありました。火事跡や井戸がある土地は(家相的に)よくないのでしょうか?」(一部改編)
それに対し、寄せられた専門家の回答は、
「お家を建てるのに何ら問題は無いですよ。神主さんにお祓いをしてもらいましょう。この様な土地は比較的に安く手に入るものです。過去を払拭し割り切り、新しい楽しい生活を構築してください。」
「敷地内の場所にもよりますが、井戸がある事は悪い事でないと思います。うまく利用する事も考えられますし、新たに井戸を設置する事も多く、もし井戸も埋めるなら地鎮祭の際に宮司にお祓いをして適切に埋め戻せば心配ごとはありません。」
「過去に火災があった敷地との事ですが、確かに『家相』から判断するとよい土地とはいえません。ただ、戦時中は東京でも多くのところで空襲などで大きな火災にあっており、その上に現在の『街』が存在しています。その事を考えると、『事故物件』でないかぎりあまり気にされなくてもよろしいのではないでしょうか。それより地鎮祭の際に地縛霊などのお祓いをしっかりしていただければよいと思われます。」
このように、もう全部がベストアンサー。特に3つ目は、日本の住宅史まで持ち出した懇切丁寧な解説付きである。さらに、地縛霊への対処まで抜かりない。傍から見ていても勉強になるこうした熱い問答の応酬が、連日SuMiKaのサイト上で繰り広げられているのである。
「暮らしを豊かにする」リフォームアイデアを専門家から募集
また、SuMiKaでは今年に入り、マッチングに続く新たな事業展開がスタートしているという。例えば、3月からは専門家にリフォームのアイデアを募り、サイト上で販売する「暮らしのカスタマイズマーケット」をオープンさせた。
経験豊富な建築家さんや工務店さんは、それぞれが『暮らしを豊かにする』ためのアイデアをお持ちでいらっしゃいます。例えば、家族が増えて家が手狭になった場合でも、空間を有効活用するリフォームのワザで解決できるかもしれない。それならわざわざ高いお金を掛けて引っ越さなくたっていいですよね。(阿部さん)
サービスの根底にあるのは『楽しい暮らしを広めたい』という思いです。最初はたまたまマッチングからスタートしましたが、別にそれだけにこだわっているわけでもない。極端な話、ネットを使ったサービスでなくたっていい。ひとつのやり方にとらわれず、誰もが家づくりをポジティブに楽しむためのアイデアを提供していきたいと思っています(佐藤さん)
次なる仕掛けは・・・「小屋」?
なるほど。では、佐藤さん、その「楽しい暮らしを広めるため」の次なる一手を教えてください。
スバリ、小屋です!(佐藤さん)
へ? 小屋っすか。へ~小屋かー、ふんふん。
こちらの微妙なリアクションを察してか、佐藤さんはトークのギアをひとつ上げる。
小屋はいいですよ。小屋と言うと別宅や離れなど、外に建てるものというイメージが強いと思いますが、『家の中に建てる』ことだってできる。家の中に小屋を置くことで、キッチンに子ども部屋をつくったり、リビングに書斎をつくったりと、暮らしの拡張ツールになります。これも、暮らしを豊かに楽しくするためのアイデアですね。(佐藤さん)
あ、そうそう今度イベントもやるんですよ。小屋フェスです。(阿部さん)
たたみかける小屋推し。こ、小屋フェス・・・??? なんなんだそれは?
長野県茅野市の草原に色んな小屋を集めて、来場者のみなさんに小屋の暮らしを体験していただくお祭りです。小屋で遊びながら、地元のアーティストのライブやグルメ、お酒を楽しむことができます。(阿部さん)
「フェスに関しては、7割くらい悪ふざけ」と佐藤さんは言うが、小屋に対する熱意は本物だ。その裏には、したたかな戦略もある。
インターネットで検索する時、『リノベーション』とか『リフォーム』っていうキーワードはもう大手の独壇場で、我々が入り込む余地はありません。上位表示させるには莫大なコストも掛かりますし。しかし、『小屋』はまだ注目されていませんので、今のうちから仕掛けを打っておけば検索表示の上位を独占することができる。小屋といえばSuMiKaというブランドイメージも構築しやすくなります。…って、こんなこと言っていいのかな。(佐藤さん)
なお、今後は「家の中の小屋」を本格的に売り出していくと言う。専門家と組んで家具としての小屋を開発し、安価なリフォームだけで建てられる仕組みを作っていくとのことだ。
SuMiKaのこうした試みは、事業というより「日本の暮らしを面白くするための実験」のようにも思えるが、出資元が面白法人カヤック(※常識外の発想を武器に、面白いサービスを次々と生み出す会社)と聞いてそれも合点がいった。
「家の中に小屋つくっちゃおうぜ~」なんてぶっ飛んだアイデアが生まれるその根底には、くだらないことに全力で取り組むカヤックイズムがあったわけか。
SuMiKaの「暮らしを豊かにする」次なる仕掛けに注目していきたい。
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取材・文:榎並紀行(やじろべえ)/写真提供:株式会社SuMiKa/撮影:cowcamo