中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。
今回は、東京都八王子市にお住まいの加藤渓一さん(一級建築士/30代前半)のご自宅(通称ハチオウジハウス)を訪ねました。
『HandiHouse project(ハンディハウスプロジェクト)』をご存知ですか? HandiHouse projectとは、「妄想から打ち上げまで」を合言葉に、施主を巻き込みながらデザインから工事までのすべての家づくりを自分たちの「手」で行う若手建築家集団のこと。そのメンバーのひとりである加藤渓一さんが、自宅をリノベーションしたと聞き、早速お邪魔してきました。
加藤さんは生まれも育ちも八王子。ずっと実家に住んでいたそうですが、京王八王子駅のすぐ近くに、中古マンションを購入しました。
■ちょうどいい街、八王子。離れるなんて考えられない
都会ではないけど、田舎過ぎない、八王子のちょうどいい感じが好きなんです。仕事でいろいろなところへ行くけど、八王子に帰ってくると「あー、やっぱり八王子がいい」って思っちゃう。だから、八王子以外で家を買うという選択肢はなかったですね。
加藤さんはマンション購入に特別なきっかけがあったという訳ではなく、常々、条件のいい物件を探していました。仕事柄、試してみたいデザインや工法、住まい方などがいろいろとあるようで、実験台としても使える自宅が欲しかったのだそうです。
実家と駅から近くて便利、日当たりと眺望が良い、それからあとは予算(笑)。その条件をクリアしたのがココでした。このマンションは1974年築なんですが、耐震面ではなんの問題もなく、管理状態も良かった。これは後から親に聞いた話なんですが、この辺りで初めてできた高い建物ということで、新築当時はそれなりに話題になったらしいです。
■4年かけて、すべて自分の「手」でフルリノベーション
実はマンションを購入したのは2012年。そこからコツコツとセルフリノベーションし、すべての工事が完了したのは2016年の年末でした。
ずっと実家に住んでいたし、特に急いでいた訳でもなかったので、時間があるときを見計らって一歩一歩、模索しながら前に進んでいくような感じで(笑)。水道・電気・ガス工事以外はデザインも大工仕事もぜーんぶ自分でやるわけですから、やっぱり時間はかかりましたよね。
木材などの材料は、業者さんもマンションの1階までしか持ってきてくれないわけですよ。それを自分の家まで1個1個運ばないといけない。床を貼るためだけでも、1階と家の間をひとりで何往復したかわかりません(笑)。
和室が2間あった2LDKを、広々とした1LDKに変更。主に和室部分がリビングと寝室になっています。水回りの位置はほとんど変わっていませんが、壁を壊して、つくり直し、床を貼っていくというのは、いかに相当な作業だったかがわかります。
壁は床と同じ幅広の板を組み合わせて貼り、一部は収納棚を兼ねた造りにしました。縦軸の板を交互にしているので、両方から物を置けるので便利ですよ。
光も通る収納棚にすることで、空間をゆるくつなぐ役目も担っています。縦と横に板を組み合わせていくだけなので、これはわりと簡単にDIYできると思いますよ。
■ユニークなアイデアと思い入れの数々
壁が少ないぶん、68㎡という大きさよりもかなり広く、スッキリと見えるハチオウジハウス。壁を取っ払ったことによって困ったことはないのでしょうか?
壁がないということは、配線を隠しておける場所がないんです。電気屋さんにお願いして配線工事をしてもらえば済むことなんですが、そこまでやらなくてもいいかなって。それで、こんなふうに電気スイッチがむき出しになっているところもあります。最初に見たときはみんなちょっと驚きますけど、面白いでしょう? もちろん、安全面は問題ないから大丈夫ですよ(笑)。
コンセントも減ってしまったので、ダイニング&ワークスペースの天井の電気ソケットをコンセント付きのものに変えました。そこから延長コードで電気を引っ張ってきて使っています。この黄色の延長コードは工業用のものなんですが、色がビビットでカワイイので気に入っているんです。
どの場所もユニークなアイデアと思い入れが見て取れますね。そんな中でも加藤さんの一番のお気に入りはキッチンだそう。
間違いなく、我が家で一番お金がかかった場所です(笑)。仕事で出会って、この人にお願いしたい! と思える、左官、鉄工、キッチン家具屋の3組の職人さんに協力してもらったんです。
この壁の色、カッコイイでしょう? ココは左官さんがレザーのような風合いに仕上げてくれて。ステンレスのカウンターは一切の無駄がない、とても美しいデザイン。キッチンの大きさに合わせて特注でつくってもらいました。カウンターや棚板を支えている鉄柱も特注品で、錆びさせて仕上げてい ます。一週間ほど外に置いておいたそうです。
どの職人さんも本当に腕と心意気がすばらしい。なかなか贅沢なキッチンだと思います。
もともと料理は好きなほうだったんですが、家が完成してよく料理をするようになりましたね。キッチンが広くて使いやすいので、「なにかつくろうかな」って気になるんです。ココはスーパーマーケットもすごく近くにあるから、材料もすぐに買いに行けるし。以前に比べるとメニューのレパートリーが増えました。
■DIYは終わりがないから面白い
最後に、DIYのプロである加藤さんに、DIYの魅力や今後この家をどのようにしていきたいのかを改めて聞きました。
家づくりは最初から完璧を目指すのではなくて、はじめは50%くらいで止めておくといい。長い時間をかけて、ちょっとずつちょっとずつつくっていくという感じで。
DIYは終わりがないから面白い。暮らし方やそのときの気分に合わせて、自分流にカスタマイズできるから楽しいんです。
僕は古く味わいのあるものが好きなので、よく福生や益子などにも行って古道具屋さんやアンティークショップ巡りをします。とても気になる商品を見つけたら想像力を働かせて、自分の家での使いこなし方を一生懸命考える。
逆に家でも、「ココにこんなモノがあったらいいなー」と思いを巡らせて自分の中にストックしておく。「コレだ!」という出会いがあるまで焦らないでじっと待つんです。これからもそうやって、少しずつ少しずつこの家を育てていきたいと思っています。
リノベーションで家づくりを終わりにするのではなく、その後もずっと継続して楽しんでいけたら素敵ですね。DIYができれば、家づくりも終わらない。あなたも簡単なDIYから、はじめてみませんか。
ーーーーー物件概要ーーーーー
〈所在地〉東京都八王子市
〈居住者構成〉本人
〈面積〉67.13㎡
〈築年〉築44年
〈設計・施工〉studioPEACEsign
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取材・文:福田 彩/撮影・編集:國保まなみ