オンとオフの切り替えがうまく、どちらもマックスで手を抜かないライフスタイルを謳歌している、とある夫妻の元を訪ねました。結婚後の新居として購入した、海の近くのニュータウンに建つ団地の中古マンション。仕事と趣味の両方を満喫できる理由はその住まいにありました。晴れの日はアウトドアを、晴れの日はお部屋のDIYを楽しんでいるそうです。アウトドアグッズを収納する棚も自分たちで作ったから使い勝手抜群!また、団地ならではの楽しみも魅力的です。


平日はガッツリ仕事をして、週末は山へ、海へ。

オンとオフの切り替えが上手にできる人ほど、仕事もミスなく集中できて常にリラックスしている状態を保てるといいます。

結婚後の新居として、海の近くのニュータウンに建つ中古マンションを購入した大谷具史さん・祥子さんご夫妻。オンとオフの切り替えがうまく、かつどちらもマックスで手を抜かないライフスタイルを謳歌しています。

その理由は、ご夫妻が愛しているこの住まいにもあるようです。

都心のすぐそばで、郊外的のんびりライフを楽しむ

具史さんは広告代理店勤務。祥子さんは音楽配信会社にお勤め。お二人とも都心にある勤務先に通っています。

交際して約5年。震災をきっかけに、彼女の実家からの物資などの支援もあり、お互いの家族が仲良くなりました。そろそろかなーと、ふたりで結婚を決め、同時に家を探し始めました。ふたりとも勤務先が都心にあり、それまでは都心に住んでいたのですが、趣味のアウトドアが楽しめる郊外に住み替えしたいと思っていました。(具史さん)

私は四国の徳島の出身なので、人混みがちょっと苦手です。結婚後もずっと都心に住むよりは、家族が増える可能性も考えたら、緑豊かなあたたかい雰囲気の土地に暮らたいと思いました。ここは主人の実家が近いこともあって、より安心感がありました。(祥子さん)

大谷さんご夫妻が購入した住まいは、千葉県浦安市にある、1979年に建てられた団地のメゾネット住戸。すぐそばに具史さんのご実家があり、以前からこの団地のことは知っていたそう。

直線的なフォルムをした建物。デッサウのマイスターハウスやベルリンのジードルングに雰囲気が似ています。たくさんの木々に囲まれ、公園の中に建っているようです。

昔からこのあたりでは有名だった団地で、駅ができるずっと前から建っていました。敷地内にはテニスコートや駐車場もあって、ゆったりとしたスペースの使い方をしています。駅前の高層マンションから見下ろすと、鬱蒼とした森の中に、白いキュービックな建物が迷路のような配置で並んでいるんです。敷地内に緑地があるというより、まるで緑地公園の中に建物が埋もれているという感じでした。
調べてみると、1戸だけ空きが出ていたので、すぐに電話をして内見。試しに別のマンションも1戸だけ見ましたが、絶対ここに住みたいと決めていました。(具史さん)

大谷さんご夫妻のお住まいはメゾネット式になっている3層の建物。1階住戸には専用庭もあり、見た目にはテラスハウスのよう。白くミニマムな形をした建物は、バウハウスの創設者であるヴァルター・グロピウスが設計したマイスターハウスを彷彿とさせました。一般道に直に面していないので、夜間の騒音などを気にすることなく、平穏な生活を送れそうな団地です。

ここまで豊かな外部環境を備えた物件は、今日日、新築ではなかなか得がたいでしょう。築30年を超える団地内の木々は、その年月の分だけ枝葉を伸ばし、木々の葉擦れの音が心地よく聞こえていました。

晴れた日はアウトドア、雨の日はDIYで部屋づくり

建物の2階、3階に位置するメゾネット住戸が、大谷さんご夫妻の住まい。間取りは3LDKで、面積は約75㎡あります。

2階にあるエントランスを入ると、正面に3階LDKへの階段があり、両サイドに個室が。一方の個室には卓球台とサーフボードが置かれています。

2階の個室。卓球台がでーんと据えられています。なんとも贅沢な部屋の使い方ですね。ふたりのサーフボードもここに置かれています。

もう一方の個室は将来的に子ども部屋として使う予定だそうですが、現在はおふたりの共通の趣味であるアウトドアグッズを収納する部屋として使われています。

もともとは畳敷きの和室でしたが、2×4材を敷いてフローリングにしたり、壁に珪藻土を塗ったり、障子をアクリル板に替えるなど、DIYでカスタマイズしています。アウトドアグッズの壁面収納もお手製。とても機能的な"見せる収納"は、アウトドア好きの人から見たら、"魅せられる収納"と言えるかもしれません。

DIYしたアウトドアグッズの収納棚。ジャンル別に綺麗に整頓されています。将来的にはここを子ども部屋に。収納もフレキシブルに変化できます。

この住戸は、前に住んでいた方によって間取りも内装もリフォームされていたんですが、自分たち好みに変えたくて、少しずつDIYしています。自分でやった方が安いし、好みも映し出しやすい。つくっていく過程も楽しめますしね。ネットで調べたり、ショップやホームセンターの人にアドバイスをもらいながらなんとかやっています。(具史さん)

左上・階段にはピンクのカーペットが敷かれていたので、DIYで杉板に変更。/右上・アウトドア部屋の壁にはDIYで珪藻土を塗装。/左下・障子紙を取ってアクリル板を貼った建具。下の襖もいずれカスタマイズする予定だとか。/右下・2×4材をカットしてフローリングに。もともとは畳敷きの和室でした。

アウトドア部屋の収納は、2×4材と「PILLAR BRACKET」という金具と有孔ボードで作りました。好きなところに棚受けを付けられるのがいいですね。P.F.S.パーツセンターなどのディスプレイを参考にしました。
アウトドアやスポーツの用途に合わせて、ジャンル別に分けて収納しています。常にスタンバイOKな状態にしているので、思い立ったらすぐに山や海へ出掛けることができるんです。(具史さん)

パッキングが億劫で、2泊3日の小旅行でさえ腰が重い筆者。道具別にカテゴライズされた機能的な収納があるのはうらやましい限り。お天気がよい日に気分がノッたら、思い立つがままに山や海へと出掛けるのでしょう。

右・玄関を入ると正面に3階への階段、左右に個室があります。/左・玄関はもともとのままですが、コート掛けをDIYで取り付けています。

高校時代から山が好きで、最初に登ったのは富士山。その後は近場の山に。一昨年から、登山を本格的に始めました。カヤックとサーフィン、スケートボードもやります。妻の影響で、ダイビングも始めました。カヤックは、家からすぐ近くに川があるので、そのまま東京湾から江戸川を約40km。8時間の旅を楽しんだりしています。ふたりでキャンプにもよく行きますね。
天気が悪い休日は出掛けずに、家でDIYをするのが定番の過ごし方になっています。(具史さん)

3階のLDK。バルコニーに面したダイニングがおふたりのお気に入りスペース。もともとあった収納と新たにDIYで作った収納がいい感じに調和しています。

こうしてDIYが気軽に楽しめるのは、中古物件ならではの魅力だと話す大谷さんご夫妻。

実家は新築マンションに引っ越し、自分がひとり暮らしを始めた家も新築だったんですが、なんだかピカピカした空間は味気がなくて、中古を自分たちの好きな雰囲気につくり変えたら面白いだろうなと思っていました。
古い空間や古いものには味があるし、雰囲気もあって落ち着きます。経年変化も楽しめますし、その当時の建設した人たち、職人たちの思いがこもっている感じがするんです。そんな風景を思い浮かべながら、空間をつくっていくのが好きなんです。(具史さん)

新築のマンションは買った時点から価値がどんどん下がっていくけど、中古物件はそれほど価値が下がらないとも聞きました。より豊かになるよう、住まいに手を入れれば手を入れるほど、自分たちが享受する価値は増しますよね。(祥子さん)

左・フィカス・ウィルデマニアーナの枝ぶりがユニークです。枝にアクセントでエアープランツを掛けるのは真似したいアイデアです。/右・クマの大きなクッションは香港からお取り寄せ。

古いものの中でも、特にインダストリアルなものが好きで、家具やパーツ類は福生のデコデモデや目黒のアクメファニチャー、恵比寿のパシフィック・ファニチャー・サービスでセレクトしたそう。

父がアメリカに単身赴任していたことがあって、夏休みや冬休みに遊び行き、モーテルに泊まったりしていたんです。そんな思い出もあって、アメリカの工業製品は好きですね。
パームスプリングスのテイストやデスバレーの雰囲気をモチーフにして、家具や観葉植物を選んでいます。(具史さん)

工業製品の持つメンズライクなテイストは、長く使っていても飽きがこないし、リラックスできる雰囲気があります。(祥子さん)

3階のベッドルームはもとは和室だったのを、入居後に工務店にお願いしてフローリングに張り替えたそう。ベッドはjournal standard Furnitureのもの。

ふたりともソファに座るよりも、ダイニングテーブルのチェアに座り、バルコニーを眺めるのが好きだそう。自分たちで貼ったというウッドデッキには、さまざまなグリーンが置かれています。

具史さんのお祖父さんが庭いじりが好きで、その影響か、具史さんはお祭りでお菓子よりも観葉植物を買ってくるような子どもだったそうです。

ダイニングからは約5畳のバルコニーに出ることができます。ウッドデッキは自分たちで貼ったそう。

具史さんお気に入りだというアガベ・アテナータのほか、リュウゼツラン、ユッカ・ロストラータやオリーブなどなど・・・。カラッとしたカリフォルニアの雰囲気が漂うコーディネートです。

本を読んだり、ガーデニングや会話を楽しんだりとバルコニーで過ごす時間も気に入っています。ここで朝食を摂ることもあるそう。

ソファとウェーバーのバーベキューグリルが置かれたバルコニーは、アウトドアリビングとして活用。友人たちを招いてここでパーティーをすることも。広いベランダがあると便利ですね。ご友人には2階の卓球台も人気だとか。

左上・P.F.C.パーツセンター」で部材を集めて作った収納。ちょっとした小物類を収納するのに便利。/右上・ガレージなどで使われる収納ユニットで小物を整理整頓。/左下・キッチン横の壁は黒板塗料を塗っています。ここに卓球大会のトーナメント表などを書くそうです。/右下・ダイニングの壁の上に板を渡して飾り棚に。各所でさりげなく見せる収納を楽しんでます。

左・味のあるガラスが入ったトイレのドアはもともとのもの。後から取り付けたアンティークなサインがマッチしています。/右・1940年代のメディスン・キャビネットはDIYで設置。重いので壁に補強材を注入して固定したそう。グレーの壁も大谷さん夫妻が塗装したもの。

アウトドアライフを謳歌する合間に、マイホームのDIYカスタマイズも引き続き進行中の大谷邸。アウドドアグッズ部屋の襖を変えたり、キッチンにサブウェイタイルを貼ったり、LDKの床をヘリンボーンにしたい・・・などなど、DIY計画を話し合っている大谷さんご夫妻の様子はとっても楽しそうでした。

団地ならではのコミュニティがある暮らしが心地よい

購入から3年が経った現在の住まいですが、最近はDIY以外にも楽しみが生まれたそうです。

昔からこの団地に暮らしている方とのふれあいがとても心地よいんです。自治会の回覧板がよく回ってくるんですが、近隣の方との結びつきがあるというだけでも、暮らしに安心感があります。大先輩主婦の方からいろいろ教わることもしばしば。
朝は元気な鳥の合唱で仕事に送り出されて、夜帰ってきてこの団地の敷地に入るとホッとするんです。(祥子さん)

僕は大学の卒論のテーマが、ニュータウンを舞台にした「モンスターペアレントと地域の希薄化」だったんです。新築の大規模マンションではなかなか得られない、密なふれあいがあるコミュニティを感じますね。
月に一回、グリーンデイというのがあって、住人総出で落ち葉の掃除をしたり、芝を刈ったり・・・。みんなでこの団地を、コミュニティをよくしようとしているのがとてもいい感じです。親ぐらいの世代の方々とのコミュニケーションを通して、たくさんの気づきをもらうことができるんです。(具史さん)

3階建てのメゾネット棟のほかに2階建てのテラスハウス棟もあります。1階住戸のお庭はどれも緑豊かで、住人たちがこの団地の環境を愛している様子が伝わってきます。

団地で出会ったコミュニティのある暮らしは、大谷さんご夫妻に新たな夢も抱かせたようです。

気軽に行けるカフェやレストランはたくさんありますが、日本のホテルは未だに80年代的ゴージャス路線のインテリアで、落ち着けないところばかり。自宅のリビングのように等身大でリラックスできる、"たまり場"みたいなホテルがあったらいいのにと常々思っていました。
旅行で訪れたポートランドやNYのエースホテルのような、さまざまなカルチャーの人を受け入れることができるスタイルのホテルにしたいですね。プラットホームのようなホテルを舞台に、誰もが楽しみながら参加できるコミュニティをつくりたい。
今は広告会社で働いていますが、広告の仕事も人と人をつなぐ仕事。ホテルも人と人をつなぐ場だと思うんです。古いビルをリノベーションしてやってみたいですね。今の住まいでの経験を少しでも活かせれば。(具史さん)

郊外の古い団地を舞台に、DIYな暮らしづくりを楽しんでいる大谷さんご夫妻。そんなおふたりがつくるホテル、ぜひとも行ってみたいですね。

住まいをきっかけに、暮らし方も夢も広がっていく。

郊外的なのんびりとした環境と中古ならではの大らかな雰囲気は、若い夫婦の可能性をこれからも広げていきそうです。

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