カウカモではこの夏、世界最大の音楽ストリーミングサービスSpotifyの協力により、新しい「東京」との出会いを提供する新感覚な “音楽写真展”  TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamoを開催します。今回は、参加クリエイターを代表して、ラブリさんに「東京」の街について、また日常を切り取った写真や音楽についてお話しを伺いました。


モデルやタレント活動のかたわら、詩や写真などの創作活動も行なっているラブリさん。あなたの知らない「東京」に出会う “音楽写真展”  TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamoのために、日常の風景を写ルンですで撮影、Spotifyでオリジナルプレイリストを作成していただきました。

イベント本番では、気鋭の若手クリエイター12組の切り取る「東京」を視て・聴いていただけますが、今回は特別に、参加クリエイターを代表して、ラブリさんのお写真の一部とプレイリストを先行でご紹介します。彼女は「東京」のどんなシーンを切り取ったのでしょうか。

6月某日、都内にて、カウカモ編集長・伊勢谷(いせたに)がインタビューを行いました。


取材の前日、ラブリさんが作成したSpotifyのプレイリストを聴きながら、すでに何だか親近感が湧いていた。インターネットで彼女のことを調べるよりも、彼女が撮影した写真を眺めている方が、彼女がセレクトした音楽を聴いている方が、よっぽど彼女のことを知れるような気がした。ふだん同じ曲を聴き、街を歩き、見て、同じ「東京」で生きていることを知った。

それでもやっぱり有名な方だから、当日は緊張しながら、彼女の到着を待った。すると時間通りに、ふんわりと柔らかな空気をまとって、ラブリさんがやってきた。「よろしくお願いします」と笑顔で挨拶を交わし、いよいよインタビューのはじまり。

ラブリさんと「東京」の関係

―ラブリさんは17歳で上京したと伺いました。当時「東京」に対してどのようなイメージを持たれていましたか?

“みんな歩くのが早いなぁ” って。とにかく時間がすごいスピードで動いてる、という感じがしました。当時は “自分は東京の人じゃない” っていう感覚があって、まだ自分がこれから誰と過ごしていくかも分かっていないし、どう生きていくかも分かっていない、まっさらな状態だったんです。だから早く馴染もうと思って、時間があればいろいろな街を歩いてましたね。美味しいベーグル屋さんがあるって聞きつけて白金の方に行ってみたり、品川の水族館に行ってみたり、下町の浅草や上野に行ってみたり・・・。

―そこから「自分はいまこの街で生きてるんだ」っていう感覚に推移していったのは何歳くらいの時だったんですか?

24歳くらい。上京してから5、6年かかりましたね。そのころようやく自分の仕事ができるようになってきたかなっていう感覚があって。そこでようやく「仕事してない時間をどう過ごすか」とか、ライフスタイルの方に目がいくようになったんだと思います。きっと精神的なこととリンクしてますよね。だんだんとこの街に視界が慣れていったような感覚がありました。

―自分の居場所を見つけて、街が自分の肌に馴染んで、混ざり合っていく。そしていまは無理なく、しっかりと呼吸している感覚になったということですね。都内で引っ越しは頻繁にされますか?

めちゃくちゃ多いですね。最初は白山!

―(一同)白山!?

はい、神社が好きで、不動産屋さんが「この街は神社に囲まれてるんだよ」って教えてくれて。次に湾岸エリアに行ったんですけど・・・その頃はまだ東京を知らないから、なんとなくの感覚で行っちゃってたんです(笑)。東京が自分の街だなって思うようになったのは渋谷区に越してからで、それがちょうど24歳くらいのときでした。

―どういうタイミングで引っ越しをすることが多いですか?

自分の中のライフステージの変化や、次のチャレンジをしようっていうタイミングで引っ越ししてる感覚がありますね

実は今度世田谷区に引っ越すんですよ。渋谷区・港区周辺で息を吸ってきたから、「行けるか?」「行けます!」って自問自答した感じです(笑)。本当はリラックスしすぎたくないんですね、常にアクティブに動いていたいので。だから世田谷区に引っ越すのはチャレンジだけど、周辺に年上の知り合いが多く住んでて。そこでまた新しい関係性が生まれるんじゃないかと期待してます。

・・・でも100%、絶対またこっちに戻ってくると思いますけど(笑)。渋谷区・港区周辺が好きすぎて。仲の良い友達がたくさん住んでて、きっと引っ越してもまたすぐに会いたくなっちゃうから。

撮影した写真について

―今回「写ルンです」で撮り下ろした写真について少しお話しをうかがわせてください。撮影地はどちらですか?

青山・表参道から渋谷橋を下って、恵比寿のあたりまでです。(写真を見ながら)・・・あ、これUBER EATSの人! このおじちゃんも、このおばちゃんも仲良し。ここは行きつけの喫茶店。スーパーのカゴの中とか、領収書の束とか、全部わたしのリアルです

―撮影にあたって気をつけたことなどありましたか?

日常をおさめたかったですね。“撮ろうとする” と日常じゃなくなっちゃうから、今回の企画のためにどこかに出かけたりするのは違うかなって。ちょうど撮影した時期は本を書いていて、外に出かける時間が全然なかったんです。だから身近な風景ばっかりなんだけど、でもそれでいいんじゃないかなって。家に一日中いたことがその時のわたしのリアルだし、それをおさめてあげようって。わたしが東京で生きてて、いまを過ごしてることが形として残せてよかったです

―写真ってシャッターを切るのが一瞬だからこそ、見てる景色をそのまま残せるのがいいですよね。

この瞬間何をしてたのか思い出せるし、この人がわたしに言った言葉とか、表情とか、そこに焼きつくのがいいですよね。

次に発売する本(※)で「1日1写真」っていう企画があって。わたしたちは明日を迎えるけれど、写真は明日を迎えない。写真は絶対明日になっても今日のまま。だから1日1枚でいいから写真を残してあげることによって、その写真は今日の中で生き続けると思うんです。意思を残したり、そのときの日常の一瞬を残してあげることは、自分にとって優しい行為なんじゃないかなって。

※ 珠玉のメッセージブック「私が私のことを明日少しだけ、好きになれる101のこと」。明日あなた自身を「好きになるために」を考えた101の知恵とエッセー。2018年8月1日発売予定。予約受付中。

プレイリストについて

―ラブリさんは普段どんな時に音楽を聴きますか?

音楽は1日中絶対身近にあって、朝テンションを上げる時、移動中、喫茶店で作業してる時、歩きながらとか・・・常にそばにありますね。今回のプレイリストはリアルに朝聴いてる曲→昼→夜って順番通りにつくったんです!

―それはうれしい! ありがとうございます。朝は心地よく一日を滑り出せそうな曲や、ポジティブな曲を聴くことが多いですか?

そうですね。でも切ないときは全開で切ない曲を聴きますよ。もう無理しないっていう。自分のムードに合わせて聴く曲を変えますね。前向きな曲なのか、後ろ向きな曲なのか、頼ってしまいたいような曲なのか・・・。音楽ってその時の自分の気分に寄り添って、記憶に残りますもんね

―曲は感覚に訴えますよね。この中で特に思い出に残ってる曲はありますか?

CHARAさんの「Violet Blue」は、当時長く一緒にいた人が初めてレコードで聴かせてくれて、わたしがCHARAさんを好きになったきっかけの曲ですね。

―個人的に吉田美奈子さんの「愛は思うまま」、めちゃくちゃ好きです!

あー!! 実はこれ一番最初か最後にしようか迷ったんですけど、真ん中の盛り上がりのラストに指定した感じです。友達がやってる「レインボーディスコクラブ」ってイベントのアフターパーティーで外国人の方が全開で流してて、みんな踊ってる最中にかかってめっちゃテンション上がった思い出の曲です(笑)大好きです。次に東京事変の「落日」で落ち着かせて、チルなモードに突入する感じですね。

表現者として

―ラブリさんは詩を書いたり、写真を撮ったり、表現者としての一面もお持ちですね。自分自身を表現するとき、どういうところを一番大切にしていますか?

わたしはまず自分に肩書きというのがないと思ってるんですね。世の中にはモデルやタレントと言われてるけど、それって本当に自分の中のほんの、ごく一部だと思ってるんです。

―なんだか、今回撮影していただいた写真を見ても、プレイリストを聴いても、すごい「生」っぽいというか・・・あ、この人「人間」なんだなって・・・

人ですよ!生々しいです!!(笑) わたし、本当に普通なんですよ

モデルさんですよね? って言われて、いやモデルさんじゃないです、ただ、いまこの瞬間その仕事をしてるだけって。もちろんモデルをしている時も表現者ではあるんですけど、その時は相手が欲しているものを読み取って、一瞬一瞬を大切に、一緒につくり上げていくような感覚を持ってるんですよね。

一方で詩にしても、写真にしても、音楽にしても、自分が何かを発する時は、形が違うだけですべて自分自身だし、わたしが中から見てるものだなって思います

―アウトプットの形が違うだけで、自分の中で脈々と流れてるものが形となって現れたときに今回の写真になったし、今回のプレイリストになったということですね。

物書きの仕事にしても、私が感じたこと・出したものが誰かにとって選択肢がひとつ増えるきっかけになったらいいなって思ってるだけなんですよね。

完成系を出してるつもりはなくて、途中経過のものを・未完成のものを提供したときに、ある人にパチッとハマってくれたらいいというか。詩を書くときも “みんなの言葉になってほしい、みんなのものにして” って思ってるんです。なので、わたしの役割は “通過点” なんだと思います。そこにいる人たちが、わたしから何かを引っ張ってくれたらいいなって。そういうのがわたしの生き方なんだなって。

―ラブリさんはご自身を “媒介役” のように捉えているということですね。​今回の企画とも重なる部分があって、すごくよく分かります。同じものでもラブリさんや他のクリエイターの方々の視点を通すことで、新たな発見があって、新しい発想のチャンネルになればいいなというか。

わたしの役割はそこかなって。だっていつかきっと忘れてしまうし、いずれわたしたちは消えていくし・・・だったら “いま” っていう瞬間を感じあえるだけでよくない? って。あなたの “いま” と、わたしの “いま” を重ねるというか・・・。

―・・・感動する・・・

(笑)。リアリストな感じですよね。

―だから等身大の自分で表現をする。写真を撮ったり詩を書いたり、いろんな形で表現をして、でもそれっていうのは「私はこうだから」と完成した自分を誇示するのではなくて、変わり続ける自分を受け入れた上で、素の状態を出し続けているというか・・・

すごく受け入れる感じです、いつも、常に。自分の変化も、感じたことも、そのまま。

改めて、ラブリさんにとって「東京」とは?

―東京の街に住んでいて、自分は表現者としてここにいて、東京がそれに対して与えている影響ってあると思いますか?

やっぱり「人」ですかね。いま周りにいる人と引き合わせてくれた場所だし。なんだかすごく合うんです、出会う人みんな。東京の狭いところで生きているはずなのに、まだまだいろんな人に出会うような気がしてて。わたしって特定のグループの中にいる感覚がないし、なになに系という感じもないんです。周りにいる人たちは、職業も年齢層も本当に幅広くって。どこにも所属していないからこそ、いろんな人と知り合えてる気がしていますね

―最後に改めて、ラブリさんにとって「東京」とはどんな存在かを教えてください。

自分が思ってることが可能になる場所ですね。形にしようと思ってることがあって、それに対して行動すれば、本当に形になる。だからわたしは躊躇なく周りの人にこういうことがしたい、こういうものが見たいって言うようにしてるんです。そうすると周りがまたつないでくれたりして。これって本当に東京だからこそ成り立つことなのかなって思います。だから、私は東京に生かされてる感覚がありますね。地元でも生きられるんだけど、東京だから生かされてる自分のよさがあるのかなって。

(インタビュー・完)


写真は、その人の目を通して見ている景色。音楽は、その人の頭の中でその瞬間と重なり、記憶に焼きつくもの。どちらもすごくパーソナルだ。

どんなに会話をしても、深く知り合っても、人間はお互いの心を手に取るように感じることはできない。けれど、今回ラブリさんの撮影した写真を眺め、プレイリストを聴くと、やっぱりどこか深い深いところで、彼女とつながれた気がした。

ラブリさんの中に脈々と流れているもの。それが滲んでいる。その感覚を共有できるって、すごいことだ。

“追伸” 的に、なぜプレイリストのタイトルを「ブラッドオレンジジュース」にしたのか聞いてみた。すると、毎朝欠かさず飲んでいるのがブラッドオレンジジュースなのだと言う。彼女の1日と重ねるようにプレイリストを作成してくれたから、朝、1日の始まりに、必ずそこにあるものをタイトルに付けてくれたのだ。

文字数制限があって、Spotifyのプレイリストでも、イベントの会場でも彼女が綴った詩を全文お見せすることができないので、ご本人に了承を得て、最後にここに貼らせてもらう。

今日は天気が悪い。
曇り空、それは白い空。
均一なその白さは今日という1日の選択肢を1つ減らしてくれた。
変わらない朝の散歩道、犬には白い空だとか青い空だとか、
人間の判断とは無関係だということを引っ張られながら、思う。
なんでもないブラッドオレンジジュース、
このオレンジジュースに栄養素は特にない。
だけれどこのオレンジジュースが私の生活の一部だった。
午後、毎週恒例のカレーを食べてはすでに観光地となったこの場所で
人間達の週末を眺める。そんな私も人間達の週末の一人なわけで
みんな同じようにこのカレーを楽しみに白い空の下、生きている。
殻付きアーモンドだけを買って家に帰る。15時。
これがなんでもない私の東京の土曜日。
東京という街に住み始めて10年以上が経つ。
初め東京人はみんな早口で早歩きで軽快な嘘つきだと思っていた。
だけど東京人だとか場所がどうだとかなんてものは笑っちゃうほどにも関係なく、
誰と過ごすか、誰と生きているかでしかないことを今日も実感している。
隣にいる人が笑ってくれて、笑わせてくれて
明日になったら仕事をして。そんなもんだ。
東京がなんだ、場所はどこでもいい。
私はあなたと居たいだけなんだ。
それがたまたまこの東京という場所なだけだ。
だけれど東京は美味しいピザがあるから、私はすごく好き。東京。

この詩以外にも、ぜひ彼女の本を手にとって、感じてみてほしい。きっとこのイベントに来て、彼女の視点を通じ「東京」を見て、「東京」を聴けば、ずっと彼女の言葉を身近に感じるはずだから。


ラブリ、窪塚洋介、SALUなど気鋭のクリエイター12組が「東京」を表現した写真とオリジナルプレイリストを同時体験できる!
クリエイターの視点を通じて東京の新たな一面と出会える音楽写真展「TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamo」を7月24日〜7月29日に開催します。


■参加クリエイター
角舘 健悟 (Yogee New Waves)、窪塚 洋介、小見山 峻、 SALU、 高山 都、フルカワミキ、松坂 生麻 (Name./urself )、モーガン茉愛羅、山田 健人、横田 真悠、yoppy (little sunny bite)、ラブリ ※五十音順

【イベント概要】
TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamo
日時:7/24(火)-7/29(日)11:30~20:30 ※最終日のみ17:00まで
会場:CLASKA 東京都目黒区中央町1丁目3−18
入場料:FREE

■「あなたにとって東京とは?」ラブリ × yoppy スペシャルトークイベントに抽選でご招待!
抽選で5組10名様を7/23 20:00~22:00に開催されるシークレットレセプションパーティーにご招待させていただきます。
参加するには、カウカモマガジンの公式SNSアカウントのInstagramTwitterをフォローの上、「#東京音風景」と「#カウカモ」を付けて写真・動画を投稿してください。
詳しくは:https://tokyosoundscape.cowcamo.jp/ をチェック!


ラブリが綴る、珠玉のメッセージブック「私が私のことを明日少しだけ、好きになれる101のこと」。
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