気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第30弾は「大岡山」です。
大岡山といえば東工大。そもそも大岡山の街が発展し始めたのも大正12年に目蒲線が開通し、その翌年に東京高等工業学校(現在の東京工業大学)が蔵前から移転してきてからということなので、歴史的に見ても東工大とともにある街です。
しかし街は学生街のイメージとは裏腹に落ち着いた雰囲気の住宅街です。大岡山北本通り商店街は昔ながらの商店街で、八百屋さんや居酒屋、カフェなどがそれほど密集せずに並んでいます。この商店街を5分ほど歩いた先にあるのが、100%植物性の材料から作られたヴィーガンアイスのお店「ミハネアイス」です。100%植物性のヴィーガンアイスとは。そしてなぜ大岡山を選んだのでしょうか?
(※編集部注:2018年夏で閉店されたそうです。)
■地に足の着いた街でオーガニックな暮らしを
自由が丘とかと比べると、大岡山は地に足がついた感じの街だと思います。
そう話す北川哲也さんがミハネアイスをオープンさせたのは2011年、その前年からインターネットでの販売を開始し、実店舗の出店場所として選んだのが大岡山だったのです。
それまで来たことがなくて、大井町線というとちょっと洒落てるイメージがあったんですけど、実際来てみると温かいというか落ち着いた街で気に入りました。実際に店を始めてみると、商店街の人達も長くお店をやられている方が多くて、地域の人達のために子ども向けのイベントなんかもしょっちゅうやっていて、東京にもこういう地域でみんなが仲良くしてる街があるんだと驚きましたね。
地域のつながりが強く、地に足のついた人たちが暮らす街なので、お客さんもやはり地元の方が多いそうです。
どんなお店でも常連さんっていうのは地元の人だと思うので、まず地元の人に親しんでもらうことが大切だと思っています。美容や健康に気を使っている若い女性もいますが、このあたりは子どもも多いので、子連れのお母さんやご家族が多いですね。東工大の先生なのか外国人の方も来られます。
■楽しくて体にもいいもので喜んでもらいたい
お店を始めてみてわかったこともあったと北川さんは言います。
始めてみてわかったのは、今アレルギーの子どもがすごく多くて、そういう子ども持つ方々はわざわざ遠くから来てくださるということです。人生で初めてアイスを食べたっていうお子さんも結構いて、そういうときにはすごく嬉しいですね。
美容、健康からアレルギー対策まで様々な人のニーズに応えることになったヴィーガンアイスですが、そもそもなぜヴィーガンのアイスを作ろうと思ったのでしょうか。
ずっと飲食で働いてきたんですが、その中で、一般に流通している野菜などの食べ物が、自然じゃないというか、環境にも人体にも負担をかけるものが多いということを思うようになったんです。それで自然な食材を使って自分ができることは何かって考えたときに、ただ体にいいだけじゃなくて、まず楽しくて、それが実は体にもいいみたいなものをイメージしました。アイスってすごくワクワクする楽しいものじゃないですか。だからアイスで体に良くていい素材のものができたら最高じゃないかと考えたんです。
開店当初は恵比寿ガーデンプレイスの三越の地下にもお店を出していたという北川さんですが「いいお客さんはいたんですけど、あまり多くはなかった」ため2年ほどで閉めてしまったといいます。
あまり街中にあると競争も激しいし、経営していくだけで大変なので、大岡山で本当に良かったです。場所としても、他より高い場所にあるせいか空気が淀んでいないというか、スッキリしていて気持ちがいいですし、東工大の桜や洗足池みたいな自然があるのもいいところだと思います。
■豊かな自然と爽やかな空気が生活を豊かにする
大岡山駅の目の前にある東工大は地元の人には桜の名所として知られています。桜の季節だけでなく普段から開放されているので、地元の人達が散歩をしたり、子どもを連れて遊びに来ていたりと憩いの場所になっています。大学のキャンパスということで自然も多いので散歩していても気持ちが良く、学生と近所の人達が一緒に過ごしているのはなかなか面白い風景ですが、大岡山では当たり前の日常なのです。
駅から南東方向にも商店街があり、パン屋さんやピザ屋さんなどおしゃれなお店が目につきます。
そのまま下っていくと、住宅街が広がり、10分ほど歩くと洗足池があります。こちらも桜の名所として知られ、花見のシーズンは人でごった返しますが、普段は池沿いの保育園や公園からこどもの遊んでいる声が聴こえるのどかな場所です。
この洗足池公園を超えると中原街道と東急池上線の洗足池駅がありますが、ここまで来て大岡山は大きな道路がないというのも特徴のひとつだと気づきました。北口側でも商店街を超えてしばらく行くと環七にぶつかりますが、駅からはかなり離れていて、この幹線道路が遠いというのも、高い場所に有ることと合わせて落ち着いた雰囲気を生み出しているのかもしれません。
あまり高い建物もなく、本当に空気の流れも良くて気持ちが良いので、ヴィーガンアイスを片手に散歩するとすごく気持ちがいいです。私もアイスをいただいてみましたが、乳製品も卵も使っていないとは信じられない滑らかさで、でも優しい味で、地に足の着いた街にピッタリだと感じました。
<ミハネアイス>(※編集部注:2018年夏で閉店されたそうです。)
住所:目黒区大岡山1-4-5 1F
電話番号:03-6459-5572
営業時間:平日 11:00~19:00、土日祝 11:00~18:00
定休日:水曜日
ウェブサイト:http://mihane.jp/
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取材・文:石村研二/撮影:石村研二・cowcamo編集部/編集:THE EAST TIMES・cowcamo編集部