インテリアのカスタマイズは、住まいをお気に入りの空間へと導く方法のひとつ。少しの変化が暮らしを彩ります。例えば、美しいタイル貼りの洗面台や浴室、キッチンの壁やカウンターなども素敵です。

陶磁器、コンクリート、プラスチック、大理石など、タイルにはさまざまな材質のものがありますが、焼き物のタイルが持つ独特の色合いや絵柄には、思わず見とれてしまう魅力がありますよね。そんな憧れのタイルに、好きな柄やデザインをプリントできるとしたら・・・、さらに夢が広がります。

「タイルなんて、作れるの?」と思われるかもしれませんが、優しくサポートしてくれるサービスがあるんです! プリントタイルをオーダーできる「CRIOS(クリオス)」です。

サービスを展開するのは、創業90周年を迎えた印刷会社・金羊社。CRIOSでどんなことができるのか、サービス内容や魅力について伺いました。

左から株式会社金羊社 メディア事業部の伊藤健太朗さん、浅野晋作さん、アートディレクターの関直宏さん。


世界にひとつの、オリジナルタイルがつくれちゃう!?

“空間をプリントする” をテーマに掲げるCRIOSは、昨年9月に「プリントタイル」の提案をスタートしました。

プリントタイルとは、絵柄をプリントして、表面に特殊なコーティングを施したタイルのこと。 独自の印刷技術を活かして、焼き物のタイルが持つ風合いや色彩をリアルに再現するなど、新しい発想で “タイル” を開発しています。

「印刷会社だからこそ、実現できたことがたくさんあります」と伊藤さんは話します。  

入稿していただいたデザインをタイルにプリントをすることで、「今まで焼き物で出来なかったこと」を実現しました。

今まで、一番難しいとされてきたのは色の表現。焼き物は釉薬を使って色味を出しますよね。焼き物で出せる色味には限界がありました。しかし、CRIOSはインクジェットのプリンタによって印刷を行うため、写真印刷と同じ感覚で、 どんな色味やグラデーションも再現可能になりました。

あえて釉薬っぽさをデザインして表現するなど、デザイン面での工夫を重ねているため、表現は無限に広がっています。洋風だけでなく、和風の焼き物のような雰囲気も出すことができます。(伊藤さん)

これまで、焼き物タイルではコストや納期などの面で実現できなかった多彩な表現ができることで、「世界にひとつの特注タイル」も製作可能になったのだそう。

プリントタイルだからこそ、自分好みのデザインで空間を演出することができそうですね。

CRIOSでつくられているプリントタイルの一例。色味が美しく多様なデザイン表現が可能です。


選べる、オリジナルタイルと特注タイル

プリントタイルの製作は、世界にひとつだけのタイルをオーダーできる「特注タイル」と、CRIOSが用意する豊富なオリジナルデザインの中から好きなものを選べる「オリジナルタイル」の2つのサービスから行うことができます。

ウェブサイトでは、特注タイルやオリジナルタイルについての見積もりや、カタログ・サンプルの取り寄せも受け付けています。

オリジナルタイルは、ベースとなるタイル資材とサイズ、プリントするデザイン、表面のコーテイングをそれぞれ選べる楽しみがあると思います。デザインのラインナップは今後も随時アップデートしていく予定で、別紙カタログやウェブサイトからご覧いただけます。

また、特注のタイルの場合は、タイル資材の持ち込みも可能ですし、CRIOSで用意しているベースタイルをご利用いただくこともできます。印刷するタイルの形状には規定はなく、真四角でなくても大丈夫です。資材やデザインに制約はないため、どんなタイルでも製作ができます。

タイルの加工は昔からある技術ですが、そこに印刷技術も加えることで可能性が広がっています。

特注タイルのデザインデータは、規定のフォーマットに沿ったものであれば、写真などの画像データでも、Illustratorで制作したデータでも入稿可能です。グラフィックデザインとの親和性が高く、印刷の入稿と同じ感覚でご注文いただけますよ。(伊藤さん)

これまで、実際に焼き物のタイルを作るとなると、職人さんに一枚一枚イメージを伝えてお願いしたり、コスト面でも大量生産が必要だったり、納期までに2〜3ヶ月掛かるなどのハードルがありました。でもCRIOSなら5㎡以上であれば、ご注文いただいてから約2週間でお届け可能です。

必要に応じて作るという選択肢が増えることで、手仕事ならではのよさとは異なる、今までにない変化が起きそうです。


今あるものから選ぶだけでなく、自分でつくる楽しさ。

オリジナルタイルは、アンティークタイル調、メキシカンタイル調などから、モダンデザインまで、色味・絵柄の豊かなデザインが揃っていて目移りしてしまうほど。今後のラインナップにも期待が高まりますが、どのようにデザインされているのでしょうか?

デザイナーの関さんは、「デザインするにあたり、最初にタイルの歴史をすべて洗い出すところから始めました」と話します。 

全網羅的に世の中のタイルのデザインの可能性をつくって提案していけたらと考えています。既にあるものから選ぶだけでなく、自分のアイデアを盛り込める要素があるといいですよね。

DIYが広まる中で、そう思っている人が増えているのを感じていますし、その思いにマッチしていく仕組みをつくれたらと思います。

長期的な視点ですけど、「家の中のタイルも自分の好みに出来たらいいな」という思いがあったとしたら、そこに応えたいと考えています。(関さん)

個人邸のトイレでの施行例。タイル貼りの壁面が美しい装いです。内装にこだわりのある方から、 オーダーがあるそう。

実際にプリントタイルを見てみると、“プリント” している感じがなく、焼き物のタイルと変わらない印象を持ちました。そうした品質を高めるには技術力も必要だと思います。どんな工夫を重ねてきたのでしょうか。

デザイン性はもちろんなのですが、技術面で言うと2つあります。1つは、印刷会社独自の技術として、狙った色を出す「色合わせ」の技術です。そして2つ目は、コーティングの技術です。この2つが、焼き物のタイルと限りなく近いところまで再現できたポイントだと思います。

例えば、ただ単純にインクジェットでプリントしても、触っただけで色が取れてしまいますが、表面にコーティングを施すことで、品質面でも本物に近付けています。

オリジナルで開発を進めてきたものですが、物の品質に関わるさまざまな物性の試験をクリアしてきました。印刷会社を背景とする僕たちならではの技術力だと思います。(伊藤さん)


タイルの開発を始めてから約8年を経て、サービス開始

そもそもどうしてプリントタイルを開発しようと思ったのでしょうか。

きっかけは、お客さまからの声です。金羊社が印刷できる機械を持っているということで、「タイルに印刷できませんか?」と最初は路面のサインタイル製作の相談を受けました。僕たち自らプリントタイルを作ろうとしたわけではなかったんですね。

最初は、タイルへのコーティング技術はなかったため、共同開発というかたちで専門家の方にも入っていただいて、試行錯誤しながら研究開発を重ねてきました。

実はタイルの開発を始めてから約8年経っているのですが、この開発ができたことでCRIOSが誕生しました。(伊藤さん)

サインタイルの需要から始まったとは!

視点を変えてインテリアとしてのデザイン性に注目し、違ったアプローチができるのではないかと考えたことから、CRIOSのサービス化に至ったそうです。

現在は、店舗・内装などで活用いただくことが多いそう。空間のアクセントにタイルを加えたいという思いを持ってくださった方から支持を受けています。 

自転車と歩行者のサインタイル。ここからCRIOSは生まれました。

こちらは、南米タイルや南イタリアタイル、スペインタイルなどをイメージした、手書きの植物柄の配色・デザインをプリントしたタイルです。プリントタイルならではの鮮やかな緑が特徴のタイルです。


メモリアルなど、特別な記念にもオススメ。

小ロットで自分好みのタイルを作れるプリントタイルだからこそできる、オススメの活用法についてもお伺いしました。

そうですね・・・、例えば、アンティーク屋さんで出会った1枚しかないタイルを、必要な数だけ量産することもできます。(関さん)

なるほど、稀少なタイルに出会ったときの喜びを活かせますね!

気になるイメージがあったら、写真を撮っておいていただきイメージを伝えていただければ再現可能です。

また、写真撮影が好きな方は 、現像して額縁に入れるの代わりに、タイルにプリントするのもオススメです。

ただ、先ほどのアンティーク屋さんの例もそうですが、何かを再現したい際には、著作権にはもちろん注意をお願いします。(伊藤さん)

あらゆるタイルに絵柄をプリントすることが可能というだけあって、お部屋やお店のイメージに合わせてタイルを特注製作することができます。

写真やイラストもプリントできるので、記念日などのメモリアルとして、大切な瞬間をインテリアとして残すのも素敵ですね。

JR東日本上野駅そばUENO3153(上野西郷さん)ビルの様子。こんな風にイラストをタイルにすることが可能です。お気に入りのイラストや写真をタイルにできるなんて、とても素敵ですね。


垣根を越えて、新しい印刷会社のかたちへ

ほかにもCRIOSでは、さまざまな試みを行っています。  

例えば、歌手の倉木麻衣さんが中心となった「みんなでカンボジアに寺子屋を建てようプロジェクト」という 、リユースプロジェクトに参加してきました。これは、リユースで夢や未来をつなぐ、新しい社会的な取り組みです。

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の皆さんと共に、カンボジアに寺子屋を建てに行ってきました。その中で、倉木麻衣さんが描いたオリジナルイラストを24枚のタイルで構成し、1枚の壁画を作りました。

想いが込められた作品をプリントタイルにして、現地に施行できたことはうれしかったですね。(浅野さん)

カンボジアで施行した倉木麻衣さん原画のタイルアート。

このようにCRIOSのサービスを生かした、コラボレーションが続々と実現しているそう。印刷会社の領域は、紙だけではなく人や住空間ともつながっていることを感じました。  

僕たちは総合印刷会社です。最終的には「空間を丸ごとプリントする」という夢を持っています。

強みを活かして印刷の可能性を広げつつも、インテリア空間にも通用するものを作りたいです。

単純に印刷物を考えたときに、印刷の領域は狭い。しかし、宣伝や広告だけでなく、もっと人間の生活の中に近付いていけたら、新しい印刷会社のかたちになると思います。(伊藤さん)

いろんな建材に印刷を施すことで、みんなが過ごす日常生活の中にも、溶け込んでいく。

今後も、印刷をベースにしながらもコミュニケーション手段にもなるような、新しい展開が広がっていきそうで楽しみですね!

みなさんも、自分にとって居心地のいい「空間をプリントする」機会に触れてみてはいかがでしょうか?


■取材協力:「CRIOS」(運営:株式会社金羊社)
WEBサイト:http://crios.jp/
株式会社金羊社 WEBサイト:http://www.kinyosha.co.jp/