中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューをさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。
今回は、東京都世田谷区に中古マンションを購入した、Yさんご夫婦(ご主人:会社員/32才、奥さま:専業主婦/31才)と生後4カ月の愛猫が暮らす住まいを訪ねました。設計を担当した建築家、グリ設計の山川陸さんも交えて、購入からリノベーションまでのストーリーをお聞きしました。


トトトトトッと家中を縦横無尽に駆け回る子猫。彼の名は “おもちまる(通称おもち)”。今年5月、飼い主のYさん夫妻のリノベーションが終えたばかりのタイミングで、家族として迎えられました。

ここは東急田園都市線桜新町駅から徒歩10分ほどの閑静な住宅地に建つ築37年の中古マンションの1室。ワンフロアに2戸という構造で、各部屋に2か所の開口部があり、すべての部屋中に自然光が巡る明るい空間です。 

■猫と暮らせる家に住みたい!

結婚して5年。おふたりでの引越し経験はなんと6回に及ぶのだとか。九州出身のおふたりは、これまでご主人の仕事の関係で福岡3回、東京3回と約1年に一度のペースで賃貸の住まいを変えていたといいます。

ご主人:ここに引っ越してくる前に住んでいたのは、押上の賃貸マンション。下町情緒あふれる賑やかな土地で、故郷の福岡の街の雰囲気にも近くて、街自体はとても好きでした。ただ職場のある渋谷までが遠くて通勤時間が長いのが不便でした。

奥さま:街もマンションもとても気に入っていたんです。けれども、ペット飼育不可だったので、大好きな猫を飼うことができないのが悩みでした。

ご主人:「猫が飼いたい。猫が飼いたい」って毎日呪文のように言っていたね(笑)

お気に入りの和室で家探しの思い出を語るYさんご夫婦。

無類の猫好きの奥さまにとって、「ペット不可」というのは一番のネック。ご主人も犬や猫、動物全般が大好きで、いつか妻の願いを叶えてあげたいと考えていたそうで、ある時、新築マンションのモデルルームを内見したことをきっかけに、猫を飼えることを前提とした本格的な家探しをスタートさせることに。

元々インテリア雑誌や住宅の間取りを見るのが好きだったというご主人。ローンを組んで家を手に入れられる年代に差し掛かっていたこともあり、住まいへの夢を膨らませているうちに、これまでのような賃貸住宅ではなく、住まいを購入する流れに自然となったそうです。

ご主人: 僕の最優先事項は、渋谷にある仕事場に通いやすいこと。家探しの最初から、買うなら「中古マンション、+リノベーション」で一択でしたね。新築で渋谷に通いやすい物件となるとものすごく高額な買い物になってしまうのであまり現実的でないなと。それに雑誌やウェブマガジンでたくさんのリノベーション物件を目にしていたので、中古マンションを購入して手を加えることで、自分たちらしい住まいを作れると確信していました。

奥さま:私も沿線や駅の雰囲気にこだわりはなくて。それよりもペットが飼えることを前提に探したのですが、条件が合致する物件がとっても少なくて。改めて、マンションでペットを飼うことのハードルの高さを感じましたね。

本格的な家探しをスタートさせるにあたり、ご主人が目をつけたのが以前からずっとチェックしていた「カウカモ」でした。売り主の思いが感じられる記事が好きだったこともあり、カウカモで家を本格的に探すべく、まずは個別相談に参加してみることに。2017年の10月末に初めて相談し、翌月から内見をスタートしました。

ご主人:11月にまず2物件を見に行って。その後、忙しくてなかなか動けなかったんですが、エージェントさんがカウカモ専用のチャットアプリに条件の合う物件の情報をいくつか送ってきてくれて。その中から見たい物件を選んで、年明けにここを見に来ました。

奥さま:この桜新町の物件を内見する朝、主人と「たぶんここに決まりそうだね」って話したのを覚えています。築年数の割に値段が安かったことと、私たちが望む条件が揃っていたので。実際に内見してみると日当たりがよくて、明るくて。「ここにします」と即決しました。

ただ、私たちの前に申し込みが入っていて、1度あきらめかけたんです。2週間後にその方がキャンセルしたので、運良く私たちの順番が回ってきて無事に契約することができました。

南側の掃き出し窓とキッチンの小窓から自然光が巡るLDK 。

■間取りを大きく変えずに、快適さを求める

無事自宅を購入することができたYさん。続いては内装について考える番です。Yさんご夫婦の家づくりは、猫を飼うことを前提としたリノベーション計画。カウカモの紹介で2社の設計チームによるプレゼンテーションを受け、グリ設計の山川陸さんに設計をお願いすることに決めました。

設計をお願いした、グリ設計の山川さん(左)。

ご主人:山川さんの提案プランはコンセプトがしっかりしていて好印象でしたね。僕らはたくさん要望を出したんですが、ポイントを押さえてプランに反映してくれていたので、この人にお任せしようと思いました。

山川さん:「2LDKの間取りはほとんど変えずに、水回りを拡張したい」というご希望を軸にプランニングしました。一番に考えたことは、「この住まいのポテンシャルを活かして、どうしたら快適さや気持ちよさを取り込めるのか」ということです。

そのひとつの解が、玄関と各部屋をつなぐ廊下の取り方です。山川さんは玄関と廊下が交わる壁の一部を切り取り、そこに腰掛けられる高さのベンチを設けました。

左:玄関扉を開けて室内を見渡す。グレイッシュなハニカム型のタイルが空間を引き締めている。/右:玄関入って左折。廊下の壁の一部を切り取り、ベンチ兼ディスプレイ棚にした。

ベンチ兼ディスプレイ棚の横のドアを開けると、こんな雰囲気に。廊下の壁の一部を角度をつけて切り取ることで、視界を広げ、玄関にも明るい光が見えるようにした。

山川さん:通過する機能しか考えていない廊下は、空間としてもったいない。今回は大きく間取りを変更しなかったので、そこから各部屋との繋がりを寸法や素材で細かく調整しています。リビングの窓から入る自然光を玄関まで届けられるよう壁面の一部を切り取ったので、明るく印象的な廊下になりました。

また、何を残して生かし、何を新しくするのか。Yさん夫婦のように、間取りを大きく変えない場合、その取捨選択が住まいの快適さや使いやすさに大きく影響します。今回のリノベーションでは、Yさん夫婦の希望で、前オーナーが残したインテリアの一部を継承したいという希望もあり、それらを生かしたプランが求められました。

ご主人:物件を購入するにあたり、前オーナーの奥さまにお会いしてお話をする機会があったのですが、この家にすごく思い入れや愛着があるのが伝わってきたんです。だから、残せるものは残して僕らがそれを継承したいなって思ったんですよね。

奥さま:前オーナーは建築の構造設計のお仕事をされていたそうで、内装材や設備にとてもいいものを使っていらしたんです。その中で使えそうなリビングの無垢の床材、漆喰壁、ドイツ製の洗面ボウル、ダイニングテーブルは譲り受けて、山川さんにプランニングに生かしてもらいました。

前オーナーから譲り受けたダイニングテーブルを囲んで。

前オーナーが残したドイツ製の洗面ボウルを活用。

山川さん:ただ、全てそのまま使うことは難しかったので、床材はYさんご夫婦自らサンダーをかけて整えてもらいました。漆喰壁はそのままだと漆喰がポロポロと落ちてきてしまう状態だったので、上から塗装して剥がれにくくして、テクスチャーを残しています。

Yさんご夫婦、自らサンダーをかけて整えたという床。

和室の壁面も洋室同様、元の漆喰壁のテクスチャーを生かしながらグレイの塗装を塗り、モダンな旅館のような雰囲気に仕上げた。

■google driveを駆使してイメージ共有

Yさんの住まいで目を引くのが、鮮やかな色づかいです。トイレの壁面の若草色、ランドリーの壁面の一部に塗ったターコイズブルー、リビングのカーテンレール上のキャットウォークのイエローといったビビットカラーがインテリアのアクセントになって、より一層明るい雰囲気を演出しています。

左:トイレは、背面と天井に若草色に塗装し、爽やかな雰囲気に。/右:ランドリーと洗面の壁の一部にはターコイズブルーの塗装を施した。鏡の前に立つと鮮やかなブルーの背景が映り込む。身だしなみの時間が楽しくなるように、という山川さんの粋な計らいがデザインに生きている。

ご主人:山川さんにインテリアのイメージを伝えるために、たくさんの写真を見てもらいました。google driveでファイルを共有してそこにどんどん写真を入れていき、採用したものはドキュメントに貼って、みんなで更新された情報も共有できるようにしたんです。

カーテンレール上のキャットウォークのイエローが、インテリアのアクセントになっている。

奥さま:空間のイメージを言葉で伝えるのって難しいですよね。写真の方がダイレクトにイメージが伝わると思うんです。

山川さん:ビジュアルコミュニケーションは非常に有効です。たくさんのビジュアルを通してお施主さんが本当は何を求めているのか、その手がかりがつかめることがよくあります。鮮やかなカラーリングは、ご主人からメキシコの建築家ルイス・バラガンがお好きだというお話を伺ったので、どう色を使えば各部屋に対して効果的かを考えてプランニングしました。強い色も一部のアクセントに使えば、空間がぐっと華やぎます。

■猫も人もストレスなく共存するために

Yさんの住まいの室内ドアの下には小さなフラップ式のドアが付いています。そう、これは猫用ドア。リビングや寝室のドアが閉まっていても、猫ちゃんはこのフラップ式の通路から自由に部屋を行き来することができるのです。

リビングと廊下の間のドアの下に付けたフラップ式の猫用ドア。頭を押すとどちらの向きでも開けるので猫はドアが閉まっていても自由に行き来ができる。

ご主人:一緒に暮らす猫がストレスなく過ごせる場所にしたかったので、ドアは特注して猫用ドアをつけてもらいました。人間が開け閉めしなくても猫は自由に部屋を行き来できますし、冷暖房効果も維持できるので人にとってもストレスがないんですよ。

寝室への入り口にも猫用扉を設けている。来客時は寝室のゲージでおとなしく待つおもちまる。

奥さま:猫は高いところに登るのが好きなので、カーテンレールの上にキャットウォークを作っています。いずれ壁に階段状の棚をつけていつでも猫が登れるようにするつもりです。

■やりたいことは我慢ぜず、まず口に出すことから始めよう

リノベーションを終え、念願の猫との暮らしを始めたYさんご夫婦。今は、どのような日々を送っているのでしょうか。

奥さま:おもちと暮らし始めて2ヶ月。すっかり彼中心の生活です(笑)。最初は新しい環境に緊張していたけれど、すぐに慣れて元気に家中を走り回っていますよ。毎日、大運動会。猫用ドアも大活躍です。

やんちゃ盛りのおもちまるの姿を見つめるご主人と奥さまの表情は常に笑顔に溢れている。

ご主人:猫がいる生活って賑やかで楽しい。早く棚をつけて、おもちが登れるようにしてあげたいですね。

内見から引渡しまでの5ヶ月間のリノベーションはずっと楽しかったですね。成功の秘訣? うーん、そうですねえ。我慢をしない、無理をしないことかな。やりたいこと、実現したいことは、とりあえず伝えてみること。当然できることとできないことがありますが、プロの設計士さんやエージェントとコミュニケーションを重ねることで、自分にとって大切なことが何なのか見えてくるので。とにかくリノベは楽しんだ者勝ちです!

Yさん夫妻のリノベーションから見えてきたのは、人にも猫にも快適であることを前提とした知恵と工夫でした。ペットも大切な家族の一員であるからこそ、飼い主もペットにも不自由があっては本末転倒。猫の習性を考慮しながらインテリアの邪魔をしないキャットタワーや猫用ドアはリノベーションだからこそ実現できたアイデアと言えるでしょう。家中を元気に走り回るおもちまるの様子からも、Yさん夫妻とこの家が大好きなことが伝わってきます。

また、前オーナーさんの家への思い入れや愛着を継承しているからこその、あたたかさや心地よさを空間全体から感じました。これから、この家での日々がどんなふうに重ねられていくのかとても楽しみです。

ーーーーー物件概要ーーーーー 

〈所在地〉東京都世田谷区
〈居住者構成〉ご夫婦+猫
〈間取り〉2LDK
〈面積〉60㎡
〈築年〉築37年
〈設計〉グリ設計

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