中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。

今回は、ゲストを招いて料理を振る舞うのが趣味だというTさんのご自宅を訪ねました。


内装をすべて解体し、ゼロから空間を造り替える “フルリノベーション” 。住まい手それぞれのこだわりを詰め込んで、理想のライフスタイルを叶えられることが魅力だ。今回ご紹介するT邸は、特徴的なキッチンスペースを設えた大胆な構成に思わず目を奪われる。

■レストランの厨房かと見紛える大型キッチンがお出迎え

躯体の無骨な風合いが印象的。日頃から磨きこんでいるというステンレスキッチンの鏡面が映える

LDKに入るとまず左手に見えるのが、こちらのステンレスキッチン。対面式のカウンターは、ハイスツールを5脚並べられるほどのワイドな造りだ。

Tさんがこのような特徴的なキッチンスペースを求めたのは、以前の住まいでのある不満が理由だった。

グラスは様々な種類を用意。コロナ禍以前は、グルメな友人たちと夜な夜なお酒を嗜んでいたそうだ

Tさん:今まで暮らしてきたのは廊下にキッチンがある賃貸の1Kだったんです。よく友人を招いてホームパーティーを開いていたのですが、料理中は扉1枚を隔てるため会話を楽しめないことが不満で。

『みんなで料理や会話ができる、大きなキッチンスペースが欲しい』という想いが募っていったんですよね。そこで、どうせなら自分のやりたいことを表現してみたいと思い、物件を購入してフルリノベをするに至りました。

せっかくのシングルライフ。趣味の料理を極めたり、家で過ごす時間をより充実させたいと考えたTさん。フルリノベーションを前提に物件を探し、2016年に築42年(完工時)になる大規模マンションの一室を購入。

物件コーディネート、設計・施工は、ワンストップ・リノベーションサービスを提供するリノベーション会社「リノベる。」に依頼した。

スウェーデンのASKO(アスコ)社製の業務用ガスコンロ。とろ火から渦を巻くような勢いの火力まで調節が可能で、料理好きなTさんも『料理の幅が広がりました』とご満悦

Tさん:キッチンを中心としつつ、リビングを広く取りたいとお願いしました。改装前は3LDKだったのですが、約65㎡の専有面積を有効活用するため思いきって1LDKに変更したんです。

ガスコンロはかねてから使いたいと考えていたスウェーデンのASKO社製の業務用を採用しました。日本の既製品のシステムキッチンにサイズが合わなかったので、結果的にキッチンもフルオーダーにしましたね(笑)

複数人で調理をしてもぶつかることなく、同時にいくつもの料理を作れるのがこのカウンターの魅力と語るTさん。カウンターの端は、キッチン・リビングどちらにいるゲストの顔も見える特等席なんだとか

キッチンは、料理をしながら談笑を楽しめるちょうどよい広さ。火を使った調理はキッチン背面で、その他の調理はカウンターに向かってできるセパレート型をチョイス。

リビングと繋がりながら、誰もが気兼ねなく顔を出し調理に参加できる、そんな距離感が絶妙だ。

Tさん:以前の住まいでは料理をする人は会話に参加できなかったので、みんなで楽しめるこのキッチンを作れて本当によかったです。今はコロナ禍でゲストを呼ぶことはできませんが、この場所が好きなので1日の半分以上はいるかもしれません(笑)

写真左奥、ガスコンロ左の引き戸の先にパントリーがある。見せる収納と隠す収納を両立した設計だ

Tさん:キッチンにはパントリーも確保しています。友人の家を訪れた際、キッチンまわりがきれいに保たれていたのでその秘訣を聞いたら、奥に隠れていたパントリーを見せてくれたんです。それで『自分の家にも欲しい!』と。

あまり見せたくないものは引き戸で隠して、整理整頓できるので重宝していますね。

■こだわりはキッチンだけじゃない

音響設備が充実のリビング。壁面は、GLボンド痕(既存の壁工事に使われていた接着剤の痕)を活かした質感に

作った料理をつまみながら、リビングでお酒片手に音楽鑑賞を楽しむのが至福のひとときだというTさん。3LDKだった住まいを1LDKに変更したことは、今回リノベーションが満足できる内容になった大きなポイントだという。

Tさん:計2件の内見をしたのですが、片方は部屋の形が細長かったんです。こちらの物件は正方形に近い形だったので、内装の変更に自由度があるなと感じて購入を決めました。

部屋数を減らしキッチンとリビングをどれだけ充実させられるかを重視した結果、空間の使い方に余裕をもつことができ、全体的なバランスがよくなったと思います。

キッチンでみんなとわいわいとする日もあるし、リビングでひとり趣味に浸る日もある。楽しみ方がひとつに留まらない住まいづくりができたかなって。

限られたスペース・予算のなかで、欲しい機能を盛り込むために頭を悩ます。だからこそ感じられる、住まいが自分のライフスタイルにフィットする感覚。それこそが自らリノベーション内容を考える “オーダーリノベ” の魅力だろう。

ただ、理想を叶えるために妥協したポイントも。

Tさんの理想は、広いバスタブを備えたバスルームだった

Tさん:キッチンにこだわった分、妥協したポイントもあります。バスルームを想定していた箇所に壊せない構造壁が見つかったため、思い切ってバスタブを置くのを諦めたんです。

狭い湯船に浸かるくらいなら広々としたシャワールームをつくった方がいいと。そのおかげで、レインシャワーを浴びながらリラックスできる場になりました。

リノベーションにあたって大事なことは『住まいを通じてどんなライフスタイルを送りたいか』の軸をはっきりさせることだというTさん。その軸さえ明確であれば、限られた予算のなかでもメリハリをつけて自分の希望を叶えられると語っていた。

Tさんのこれからの楽しみは、コロナ禍が収束したあとのゲストを招いたホームパーティー。クオリティを上げた料理を提供するため、日夜研究に勤しんでいるという。

こだわりを突き詰めることができる、理想の環境が整った住まい。その横顔はとても真剣で、生き生きとしていた。

―――――物件概要―――――
〈所在地〉新馬場
〈居住者構成〉単身男性
〈間取り〉1LDK+WIC
〈面積〉65.4㎡
〈築年〉築46年(取材時)
―――――設計・施工―――――
〈会社名〉リノベる。
〈WEBサイト〉https://www.renoveru.jp/