気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました! 「街の先輩に聞く!」、 第85弾は「新井薬師前」です。


■新井薬師前ってどんな街?

今回降り立った街は「新井薬師前」。名前だけ聞いてもピンとこない人も多いのでは?実は歴史のある緑豊かな場所で、とってもいいところなんです。

そんなこの街について教えてもらうべく、「薬師あいロード」にお店を構えるキャンディショップの「PAPABUBBLE(パパブブレ)」さんを目指して散策開始です!

まるで異国を訪れたかのような雰囲気が漂う「PAPABUBBLE」さんの店構え。詳しくは後ほど!

と、その前にこのエリアの位置関係や交通手段をご紹介しておきましょう。「新井薬師前」は「高田馬場」駅から3つ先、西武新宿線のローカル駅。この一帯はJR中央線・東京メトロ東西線と都営大江戸線に挟まれたエリアだから、少し足を延ばせば「中野」駅や「落合南長崎」駅も利用できるんです!バス便も豊富で、「江古田」駅や「池袋」駅までもビューンと気軽にお出かけできちゃいます。どうですか?結構ポテンシャルあるでしょう?

OpenStreetMap contributors

■まずは豊かな緑と住まいが連なる北エリアへ

「新井薬師前」は、駅の南と北で雰囲気が全く違うのが特徴的。北エリアには緑豊かな公園が点在し、それを取り囲むような形で古き良き戸建住宅や団地、ファミリー向けの大型マンションなどが建ち並びます。穏やかで心地の良い時間が流れる、閑静なエリアです。

上・奥に見えるのは古くからある団地。下・公園沿いには閑静な低層マンションが連なります。

なかでも「哲学堂公園」は、哲学者・井上円了が立ち上げた明治時代からある珍しい公園!哲学の世界を建物やモニュメントで視覚的に表現して、訪れる人たちに学びを与えてくれる場所です。広々とした敷地に運動場も備えていて、老若男女がそれぞれ心向くままにくつろいでいます。

「哲学堂公園」には平日でも家族連れが散歩を楽しむ姿が。

■街の顔「新井薬師」と「中野」へつながる南エリアへ

続いて「PAPABUBBLE」さんがお店を構える南エリアを散策しましょう。「中野」駅へと続く南口のバス通りには、昔ながらのお店が連なる商店街が。小さな飲食店や喫茶店、古本屋さんなどが並びます。ちょっと横道にそれれば、隠れたところに名店も。一杯ひっかけてふらふらしたくなっちゃいます。大通りから少し足を延ばすとスーパーマーケットも。お買い物にも困らなそう!

左上・南口駅前の昔ながらの商店ビル。右上・裏路地にある名店「焼きとり・焼とん・四文屋」。左下・駅前にはスーパーもあって便利。右下・南口駅前には小さな個人商店を中心とした商店街が。

小さな商店街を抜けたら、街の中心まで向かいます。

てくてくと歩けば見えてくるのは「新井山梅照院」、通称「新井薬師」。駅名の由来になっているここを語らずして始まりません!都内でも指折りの歴史ある寺院で「西の浅草寺、東の新井薬師」なんて言われていたのだとか。

なんとその歴史は1586年から始まります。今が2021年だから、ひええ、435年の悠久の歴史を辿ってきたようです。ひれ伏したくなるありがたみ!

上・「新井薬師」本堂。お参りする人の姿も。左下・参道では8の日に縁日が開かれる。右下・寺のすぐ横には広々とした公園も。

江戸時代に徳川秀忠公の第五子である和子の方(後の東福門院)が大変な眼病を患い、新井薬師で祈願をしたところ、祈りが通じて症状が治ったのだとか。そんな奇跡が話題となり、今でも新井薬師は「目の神様」「子育て薬師」なんて呼ばれているそうです。私も眼精疲労をなんとかしてくださいって祈ろうかしら……。

ちなみに、毎月8のつく8日・18日・28日は縁日が開かれて、参道には屋台や出店が立ち並び大賑わい!1ヶ月に3日もお祭りがあるなんてちょっとウキウキしちゃいますね。

■門前町である「薬師アイロード」

その周囲に広がる商店街は「薬師あいロード」。古くから新井薬師の門前町として賑わうこの商店街は、約130ものお店が立ち並ぶ地元っ子の御用達。大正時代から営む店を始め、親子2代・3代で営む店も珍しくありません。さてさて、われわれの目的地ももうすぐそこです。

上・「新井薬師」の参道である「薬師あいロード」入口。左下・由緒正しき豆屋さん「薬師 但馬屋」。創業はなんと大正。右下・ペット用品店の「泥棒市場」。昔ながらの佇まいが好奇心をくすぐります。

商店街の中程まで進んだところで、「PAPABUBBLE」さんに到着!今回お話を伺う横井さん曰く、そんな古きよき空気漂う「薬師あいロード」も近頃はちょっと様子が変わってきたんだそう。一体どんな変化があるのでしょうか?お話を伺ってみましょう!

取材班を店先で迎えてくれたPAPABUBBLE JAPAN CEO・横井智さん。

■スペインの裏路地に似ていた?

「PAPABUBBLE」と聞いて、その名をご存知の方もいるかもしれません!2005年に日本に上陸して、今や全国で16店舗を営むスペイン発のアートキャンディショップです。

ここはまるで外国のお店?と思わせるようなポップで可愛いショーウィンドウ。心惹かれて店内に入ると、目に飛び込んでくるのはカラフルで絵柄のさまざまなキャンディたち。この日はハロウィンに向けて期間限定商品も店頭にお目見え。思わず歓声をあげてしまう取材陣です。

鮮やかな色合いが目を引くキャンディ。果実味あふれる絶妙な甘酸っぱさとほろほろとした口溶けはこのお店ならでは!「食べておいしい、見ておいしい」キャンディ作りの秘訣は、砂糖の使い方、火の入れ方なんだとか。

ハロウィン期間限定のキャンディ。カボチャやおばけが描かれた断面がかわいい。

ところでこの「PAPABUBBLE」、日本1号店はなんとここ「薬師あいロード」にあるお店なんです。今や百貨店や駅ビルにもたくさん出店されていますが、一体どうしてここで創業したのですか?

お店が角地にあることも大事だと語る横井さん。

横井さん:「PAPABUBBLE」は菅野という前任者が創業したのですが、彼によると日本に進出するならば、スペイン・バルセロナにある本店の雰囲気に似た場所で店を作りたいと思っていたそうなんです。

バルセロナの本店は、ちょっと路地裏のへんぴな場所にあって。そこは本当に地元の人だけが通うイワシのフライしか出さないバルとか、アーティストがひっそりと開く小さなギャラリーとか、大手のチェーン店ではない、個人のこだわりのお店がひしめくところだったんです。

日本でも同じような環境を探し回っていたんですけど、「新井薬師前」にはバルセロナと似た空気が流れていると感じたそうで。この場所で創業することにしたようです。

このちょっと路地裏かのような雰囲気がバルセロナの街と似ていたのだとか!

え、バルセロナと「新井薬師前」が一緒?うーん、なんだかちょっと想像がつきません……。

横井さん:確かに当時ここはいわゆる昭和な商店街でして。特に一等地でもなく、ちょっと中心からは外れてるんです。でも、めちゃくちゃ外れてもない。その微妙な距離感がよかったんじゃないでしょうか。人が住んでいる気配を感じられながらも、昔から営むちょっと個性的なお店もある。それがこの「薬師あいロード」だったんです。

言われてみれば、商店街を南下して早稲田通りに出ると、今やすっかりサブカルの聖地となった「中野ブロードウェイ」がすぐそばに。そんな文化の発信地と付かず離れずのこの商店街で、こだわりのお店を構える。確かに知る人ぞ知る隠れ家感があります!なんだか少し分かってきた気がします。

左上・早稲田通り沿いに建つサブカルチャーの玄関口「中野ブロードウェイ」。「新井薬師前」からこんなにすぐそばにあったなんて、なんだか意外です!左下・右・「薬師あいロード」から早稲田通りを突っ切ると、そのまま「昭和新道」へ。打って変わって、居酒屋やバー、スナックがひしめき合う賑やかな雰囲気に。

「PAPABUBBLE」が開店した当時は、まだあまり若いお店がなかったそうですが、同時期にオープンした斜向かいのインド料理店とともに、徐々に新しい風を運び入れていくことになります。そこから10年ほどかけて、商店街の顔ぶれは徐々に世代交代していきました。

上・八百屋さんに自転車で買い物にくる近隣の方々。左下・今や数少なくなった銭湯も「薬師あいロード」では健在です。右下・タバコの香りがほんのりと残る喫茶店。

■好奇心旺盛な街の人たち

それにしても伝統的なお店も連なる中で、新進のキャンディショップってどうですか?みんな受け入れてくれるものなのでしょうか。

横井さん:この商店街を訪れる人って、平日は特に50代の人が中心なんです。でもね、不思議なのはみんな結構新し物好きで、ある意味ちょっとミーハー心がある。うちの商品は平均700円とキャンディにしては値段が高めなんですけど、『たとえ高めでもいいものはいい』と、迷うことなく買っていかれますね。みんな洗練されたおしゃれなものが好きっていう印象です。

へえ、驚いた!キャンディショップに訪れるのが50代の方々とは、ちょっと想像ができませんでした。躊躇なく軽やかに行動されることになんだか憧れます。

この場所で飴作りの様子が見られることも!しかし、残念ながら取材時は新型コロナウイルス感染予防のため、実演販売は縮小中とのことでした。

横井さん:この間も近所に新しいカフェがオープンしたんですけど、そしたらもう、みんな何だ何だ!って覗きにくるんですよ。それも70代・80代の人がです。昭和の時代を生きた方たちですが、そこはやはり都会のセンスをお持ち。みなさんしっかり新しいことや文化に飛び込もうとする好奇心が旺盛ですね。

左・「PAPABUBBLE」の斜向かいにある「南印度ダイニング」。右上・そのお隣には近年オープンしたカフェ「LA TAPIO COFFEE & TEA」が。右下・こちらはサンドイッチ店の「サンセットビア エフシー」。ところどころに新しい店が増えているようです。

お年を召しても好奇心旺盛でチャーミングな街の人たちの姿が垣間見えて、なんだか心が温かくなってきました。

新しいものを「なんだか楽しそう、おもしろそう」と受け止める「新井薬師前」の人たち。その好奇心に支えられるかのように、今やすっかり新旧揃い踏みの商店街だそう。

横井さん:私たちはこの通りの新陳代謝に貢献したのかもしれませんね。お煎餅屋さんとか喫茶店なんかは昭和のいい空気感を残しながらやられている中で、新しく海外の方が入ってきたりもしています。うちの目の前のカフェは台湾の方がやっているお店ですしね。ちょっとずつ、ちょっとずつ。おしゃれな店が増えてきていますよ。

休日は人通りの多い「薬師あいロード商店街」。

■背伸びせず等身大で、軽やかに生きる

ところで、横井さん自身も「新井薬師前」に住んで約20年とうかがっているんですが……どんなところが気に入ってこの街に長く住んでいるんですか?

横井さん:私は子どもが生まれたタイミングでこの街にやってきました。それまで都内のいろいろな街で暮らしてきたんですけど、都心に行くとちょっとざわざわしていたり、いつもパリッとした格好で背筋が伸びた装いを求められるようで落ち着かない。でもこの街は利便性がよいのに、なんだか落ち着いている。そのうえ物件も高すぎないし、子どもをひとりで歩かせても安心できる。そんな魅力があったんですよね。

近所の子どもたちが試食品をつまみにくることも。『うちの味に親しんでもらって、いつか買いに来てくれたら』と微笑む横井さん。

歩いて回っていてもよくわかります。穏やかな空気と閑静な住宅街に、ファミリーが穏やかに暮らしている印象を持ちました!

横井さん:そうでしょう?なんていうかバランスがいいんです。何より都会の洗練された文化とも近い場所なのに、みんな気合が入りすぎず、気取ってない。ご近所付き合いは気を使いすぎない。程よい距離感が絶妙なので、新しく引っ越してくる人にとっても居心地がいいと思います。最近若い世代も増えてますよ。

うーん、なんだか引っ越したくなってきました!

左・商店街を伸びやかに走る子どもたち。安心できる場所がここにあります。右・商店街をTukTukが走るお茶目な場面も。

それでは最後に横井さん。「新井薬師前」のおすすめスポットについて教えてくれませんか?

横井さん:それはもちろんこの商店街ですよ(笑)。伝統と新風が交錯した、気取らないけれどトレンドも取り込むこの場所です。

中野からこっちへ来る方は大体ブロードウェイで引き返してしまいますが、ぜひもう少し足を延ばしてみてください(笑)

それはさておき、私が一番好きなのは中野通りの桜並木です。春は通りをずっと歩いているだけで本当幸せな気持ちになれる。特に夜は人がいないから桜を独り占めした気分で。

中野通り。「中野」駅方面から桜並木が続いている。

「新井薬師前」が好きで「PAPABUBBLE」に参画した横井さんの街愛は深い!

お話をお聞きして、この街の一番の魅力は、住んでいる人にしかわからないこうした何気ない日常なんだなと感じました。

トレンドに敏感だけど、気取らず無理せずに等身大の暮らしをしたい。そんなおしゃれで堅実派なあなたにとって「新井薬師前」は、軽やかに生きられる街かもしれません。

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【INFORMATION】
店名:PAPABUBBLE 中野店
アクセス:東京都中野区新井1-15-13(googlemap
TEL:03-5343-1286
営業時間:平日10:00~20:00 / 日祝10:00~19:00
定休日:なし