「街選びの決め手は、好きな飲み屋があったから」。カウカモのお客様のそんな言葉にヒントを得て、特別企画を実施! パンが大好きな女優さんである木南晴夏さんをゲストにお迎えし、木南さんの好きなパン屋さんから、「住みたい街」について考えてみました。
■住みたいのは、大好きなパン屋さんのある街
”住みたい街” を決める時、あなたは何から考えますか?
通勤時間や教育環境、治安に加え、価格や沿線のブランドイメージと限られた条件から、物件のスペックを比較して・・・もちろん、それらは大切な選択基準です。
けれど一度きりの人生、もっと直感を、人との縁を、風が導く先を信じて、住みたい街を決めてみる、なんてことも素敵なのでは!? そう、あの赤いリボンの女の子と黒猫が、ほうきに乗って素敵なパン屋さんのある街に降り立ったように・・・。
個性派女優として各方面で活躍中、そして “パン好き女優” としても知られる木南晴夏さんをゲストに迎えお届けしている『木南晴夏さんと行く、素敵なパン屋さんのある街』。前編:笹塚編に続いて、後編で向かった街は・・・
ここ数年メディアへの登場頻度もぐっと増えた注目エリア。そう、「奥渋谷」です。通称、“奥渋(おくしぶ)” と呼ばれる、富ヶ谷・神山町エリアを進みます。
“住みたいのは、大好きなパン屋さんのある街”・・・しとしと降る雨が、なんだかロマンチックに映る奥渋をお目当のパンを求めて歩く木南さん。ついていくと、若者の街の “奥” に潜む、大人がリラックスできる、静かな渋谷に出会うことができました。
奥渋のメインロード「神山商店街」をゆっくりとお散歩しながら、お店に向かいます。
■洗練された中にある「普通さ」にドキッ
駅で言うと地下鉄千代田線・代々木公園駅からJR・渋谷駅をまっすぐ結んだこの地域には、カフェやバー、ギャラリー、洗練された花屋さんや、スイーツショップ、本屋さんなどの専門店が点在しています。
この辺はよく来ます。車の中からディスプレイの移り変わりをチェックしたり、自転車で来ることもありますよ。NHKと松濤スタジオもあるし。
そう言いながら、ふらりと花屋さんに立ち寄った木南さん。
お花屋さんっていいですよね〜。
静かにつぶやきながら、ブーケを手にとる横顔の華やかさと柔らかな表情に、思わずハッとさせられます。
これが、いちばん好きです。色のないところが・・・。
存在感のあるお芝居に定評のある木南さんのイメージからすると、手にしたブーケは意外なほどシンプルでミニマルなもの。なんだか、テレビや映画で見る姿と異なる、等身大の東京に暮らす32歳、普通の女性の一面を垣間見た気がして、ドキッとしてしまいます。
洗練されたツウなお店を巡るのが楽しい奥渋ですが、実は昔ながらのお店も侮れないこの近辺。例えば「魚力」は、明治創業の魚屋さんが出す、新鮮な素材と家庭の味が自慢の定食屋さん。
ここの、さば味噌煮や鮭ハラス塩焼きの “普通の美味しさ” に、がっちり心と胃袋を掴まれるファン続出! と言うくらいの有名店のようです。
奥渋には、確かに洗練されたツウ好みの雰囲気が漂っています。とはいえ、その空気は決して排他的でもなく、足を運び慣れない人にとっても心地がいいから不思議です。それは、もしかすると奥渋の所々に「普通さ」が潜んでいるからなのかもしれません。
■寄り道した大人のたまり場でホッとする
雨足が強くなってきたので、傘を閉じ「Coffee Supreme Tokyo」に寄り道をすることに。
隣のコーヒーショップともライバル関係というより、「コーヒーの奥渋」って感じで一緒に盛り上げていけたらいいな〜という気持ちで、住んでる人だけじゃなくて、オフィスをこの辺に持っていたり、働いていたりする人を含めた地域の人とのふれあいを大事にしています。
と、話してくれたバリスタさん。
国籍や年齢、職業もまばらな人達が、パラパラと集まっては散っていくこの一角。実は、用途や気分によって使い分けができるほど、奥渋は今、話題のカフェが目白押しなのです。
そして今、美食家に注目されるビオワインのお店「アヒルストア」もご近所さん。連日予約が取れない人気店なので、ふらりと立ち寄るのは厳しいかもしれませんが、こちらも、大人が心地よく酔えるたまり場であることには間違いありません。
さて、カフェラテで一息ついた木南さん。足取り軽く、再び傘を開きます。
道中、「食のセレクトショップ」を謳う代々木八幡のベーカリー「365日」、小さなお店に常時80種類ものパンが並ぶ代々木上原「カタネベーカリー」、そしてモチモチの食感がお気に入りだという代々木公園近くの地下のお店「テコナベーグルワークス」と、周辺のパン屋さんの情報が次々と木南さんの口から飛び出します。
そうなのです、この近辺は美味しいパンの激戦区。そんな中、木南さんが雨の中、目指す場所が、ますます気になります。
■正に “ROJIURA"、路地裏の隠れ家に流れる静かな時間に満たされる
そしてついに到着。奥渋を渋谷方面にずっと歩き、東急ハンズを横目に路地を曲がって行き着いた先が、今回の最終目的地「Bistro Rojiura(ビストロ ロジウラ)」です。
パン屋さんかと思いきや、今回の目的地はビストロ・・・!?
そうなんです。ここは、「あんバターリコッタチーズサンド」っていうのを出していて、その見た目にずっと惹かれていたんです。
だけど、パン屋さんじゃなくてごはん屋さんってこともあって、ふらっと行きづらくて、場所も(この辺の地理を)知ってるようで、よくわからなかったし・・・。
と、隠れ家という言葉がぴったりの店内をキョロキョロと見渡し、目を輝かせる木南さん。そして、大好きなパンを見つけて、うっとり。男性だったら、案内したお気に入りのビストロで、横目で盗み見た彼女の表情がこんな風なら、内心どんなに嬉しいだろう・・・なんて、おもわず妄想してしまいます。
店内は渋谷とは思えないほど静かで、木南さんの “本日のオーダー” への期待も、キッチンにしっかりと伝わっている様子。
シェフの西恭平さんは、ディナーの仕込みの手を止め、早速、木南さんのリクエストに応えます。程なくして、女性の手のひらサイズの中に、諸々がしっかり詰まった、噂の一品が登場しました。
ついに、“あんバターリコッタチーズサンド” との対面の時を迎えた木南さん。
すご〜い! 思ったより、ちっちゃかった。かわいい〜!!
とはしゃぎ、そしてじっくり観察し、香りを堪能し、どこまでもパンと真剣に向き合います。
まるで、どこかで見たことがある映像ー “渋谷の喧騒の中、運命的な出会いを果たすふたりの時間はスローモーション” といった具合に、キッチンでいつの間にか再開された賑やかな仕込みの音を背景に、パンと木南さんの語らいの時がゆったりと流れるロジウラです。
そんな映像は知らないけどもこのアクティブなキッチンとカウンターを隔てた寛いだテーブル席の対比、既視感があるぞ!? と思われた方は、もしかするとご名答! ロジウラは、代々木八幡の人気フレンチビストロ『PATH(パス)』の姉妹店。
夜はコース料理を提供するPATHですが、ロジウラはアラカルトメニューでよりカジュアルに利用できます。実際、ディナーではひとりカウンター席でしっかりと料理とワインを堪能する大人のお客様も多いと西さんが教えて下さいました。
味はもちろんですけど、空間を楽しんでもらえたら嬉しいです。様子を見て、ひとりでゆっくりお食事をされているお客様と話をすることもあります。こないだは、お客様がさりげなく、肉の火入れ加減を褒めてくださって、嬉しかったですね。
人は美味しいものを食べると、誰かとほんのちょっと語らいたくなるものなのかもしれません。
コンパクトなお店で、目が行き渡るお店だからこそ生まれるコミュニケーション。そんなやりとりで、ロジウラでのひとときが一層、満ち足りたものになりそうです。
思い出したように顔をあげた木南さん。
岩塩が効いてましたよね。
キッチンに向かって話しかけると、かしこまるでもなく、かといって片手間にというわけでもない絶妙な間合いで西さんが答え、会話が弾み、いつの間にやら話題はパンについて・・・
このパンの粉はリスドールです。
と西さんが言えば、
あ~だからパリパリしてるんだ!
と、小麦の話までよくわかる木南さん。
これは・・・デジャブ!?
渋谷の路地裏のビストロで、雨音を聞きながら、静かに盛り上がる語らいのひと時。窓の外にふと目をやると、やっぱり雨がロマンチックに映る奥渋でした。
■あなたが、そして大切なあの人が、住みたいのはどんな街・・・?
さて、そろそろ、木南さんとパン屋さんを求めてお散歩をした1日も終わりに近づいてきました。
雨の日、思いがけず素敵なデートをしたような・・・そんな余韻と共に、前編・後編を通して、印象に残った木南さんの言葉を思い出します。
それは、それぞれのシェフに、仕事をする上で大切にしている五感は、特に “嗅覚” だと伺った際のこと。
「では、女優として大切な五感とは?」と質問した時のご解答ー
お芝居って、基本的にはキャッチボールなんです。だから、目で伝わってくるもの、目で返すことそれが大事かな・・・やっぱり目、視覚ですね。
なるほど、目は口ほどにものをいうと言いますが、思い返せば、パンを頬張る木南さんも、リスのようにじっくり咀嚼する木南さんも、口はいっぱいでも本当に目からたくさん伝わってくるものがありました。
それは言わずもがな、パンが好きだということ、そして、美味しいパンがあることで日常が素敵になるというようなニュアンスのこと・・・。
木南さんと訪れた「笹塚」と「奥渋谷」。
晴れの日に歩いたら、季節が変わったら、きっとまた異なる魅力を感じられることでしょう。
ふと、慣れない街のパン屋さんで新たな暮らしを始めたあの女の子と黒猫のことを考えます。
『落ち込むこともあるけれど、私、この街が好きです。』と手紙に書かれたその街では、どんなパンが焼かれていたのでしょうか・・・?
日々を素敵にするために、自分にとって必要なもの。
大切なあの人の毎日を彩る、あの人の好きなもの。
それを本当に教えてくれるのは、口ではなくてきっと、あなたの、そしてあの人の目。
そして、そんな街の暮らしをあなたにお見せできるのは、もしかしたら私たち。
空飛ぶほうきではないけれど、カウカモがその街へ、その住まいへと、きっとあなたをお連れします。
<Bistro Rojiura>
住所:渋谷区宇田川町11-2 宇田川柳光ビル1F
TEL:03-6416-3083
営業時間:Breakfast&Brunch 8:00〜14:00(L.O.13:00)、dinner 18:00~24:00(L.O.23:00)
定休日:月曜日(+月に1回日曜日)
ウェブサイト:https://bistrorojiura.jimdo.com/
>cowcamo MAGAZINEのinstagramでは、記事に掲載していないカットも特別に公開中! 合わせてぜひチェックを◎
>前編:笹塚編はこちらから。「近所にある いつものパン屋さん オパン」さんにお邪魔しました!
>あなたにとって東京とは?
7/24(火)-7/29(日)あなたの知らない東京に出会う “音楽写真展” TOKYO SOUNDSCAPE by cowcamo開催!
取材・文:國井千穂/撮影:廣川かりん/編集:國保まなみ・cowcamo編集部