突然ですが、毎晩ちゃんと眠気に襲われていますか? ぐっすり眠れていますか? 毎朝の目覚めは最高ですか?

・・・自信を持って頷くことのできない方のほとんどは、なぜ眠れないのか、なぜ目覚めが悪いのか、原因が分からず悩んでいたりするのではないでしょうか。

本当に眠れない夜って、昨日までどうやって寝てたんだっけ? なんて考えて途方にくれてしまう程、どうしたらいいか分からないものだったりしますよね。

そんなあなたにぜひご紹介したいお店『oluha(オルハ) 上質睡眠専門店 (以下、oluha)』の店長であり、睡眠改善インストラクターの國井修さんに、睡眠にまつわるお話をじっくりとうかがいました。

お客さまひとりひとりと向き合う、
睡眠のプロフェッショナル

『oluha 上質睡眠専門店』店長の國井 修さん。睡眠改善インストラクター、睡眠健康指導士の資格を持つ、“睡眠のプロフェッショナル" です。どんな相談にも優しく丁寧に向き合ってくださいますよ!

睡眠改善インストラクター、睡眠健康指導士として、多くの方の睡眠と向き合い研究し、よりよい睡眠を世に広めるための啓蒙活動も行っている國井さん。睡眠のプロとなるきっかけは、身近にあった、寝れない起きれないと悩む声でした。

もともと羽毛の製造販売をしているメーカーで直接エンドユーザーさんと多く接する機会があり、「病院に行くまでではないんだけど寝れないんだよな」とか「朝起きれないんだよな」という相談をよく受けたんですね。

健康の三大要素って「食事・運動・睡眠」って言われているじゃないですか。その食事と運動というのは、意識のあるところで皆さんやられていることが多いから、いいものを取り入れる意識も高い。だけど、睡眠は寝てしまって意識が無い時のことなので、現状がまったくいいのか悪いのか分からないし、よくするためにどうしたらいいのかも分からない。だから疎かになりがちで、ただ眠れないっていう悩みが、ひとりひとりに渦巻いていました。

その悩みにお応えしようと、いろいろなところで勉強をして、それをもとにお客さまにアドバイスをすると喜んでくださって。睡眠には、寝具を含む睡眠環境だけではなく生活習慣など、あらゆる角度の条件が関係していて、また、健康や美容・エイジングケア、さらに子どもの成長や認知症などに至るまで、睡眠でしか出来ないこともいっぱいあるということが分かってきました。それが積もりに積もって、睡眠の奥深さというものを実感したというのがきっかけです。

oluha店内には、睡眠にまつわるさまざまな商品や、暮らしによりそったグッズが並んでいました。

睡眠に関する悩みは、その人をとりまく環境や性格、体質や、その日の体調も複雑に絡み合って出来ていて、特効薬のような解決策は無いのだそう。だからこそ、國井さんはそれぞれのお客さまに合わせてアドバイスをしていると言います。

実際にoluhaがオープンするまで、ご相談に来られるのは45〜60歳位の方々を予想していました。しかし20代後半〜30代前半の方もかなりいらっしゃるんですよ。驚きました。自分自身の経験からすると、20代・30代の時って眠れない方がおかしいって位の感覚だったんですけどね。いまは男性女性、そんなに若くて眠れないの? って方が多い。 それだけ近頃はストレスが多いということなのではないでしょうか。

本当にひどいようであれば、一度病院に行って受診されるのをお勧めすることもありますが、それほどでもない場合は、睡眠環境を出来るだけ整えたり、生活習慣を見直すことで眠れる可能性は高くなります。症状が重い方は、通院と睡眠環境づくりどちらも並行してやられた方がいいかもしれません。でも、病院で薬を処方してもらって、それが無くちゃ寝られないってなる前に、いろんな方法があるんですよってことをお伝えしていきたい。

だから、oluhaは「睡眠の環境や、生活習慣を整えていきましょう」というご提案をするお店なんです。商品だけを販売するのではなく、情報もしっかり提供したいと思っています。

上質な眠りを手に入れるために、
気をつけたい5つのこと

ーでは理想の睡眠を取るためには、どのようなことに気をつければいいのでしょう?

ひと言で言うと、寝る前にいかにリラックスした状態になれるかということですね。

自律神経ってありますよね。人間は活動モードになる「交感神経」とリラックスモードになる「副交感神経」のバランスを取って生きているんですが、副交感神経が優位にならないと眠気が来なかったり、いい眠りが出来なかったりするんですね。ですから、いかにリラックスした状態を眠りにつなげていくかということが大切で、それにお風呂や食事だったり、香りや音も関係してきます。

ー確かに小難しい考え事をしながら緊張状態で布団に入っても、眠気ってやってこないですもんね。では、具体的には何をすればいいのでしょう?

では、お風呂の入り方からお話しましょう。

お風呂はよく、ぬる目のお湯に20分位ゆっくり入るのがいいって言われていますよね。冬場であれば40〜41度、夏場であれば38〜39度くらい。それは深部(しんぶ)体温に落差をつくってあげるためなんです。深部体温と言いますのは、人間の体の中の体温のことで、1日の間で上下しているんですね。日中活動している時はやっぱり高いんですが、睡眠中はぐっと低くなるんです。これが、人間の深部体温のリズムなんです。

そして、いかにいい眠りが出来るかっていうのは、深部体温の落差をいかに大きくつくるか、ということなんです。「ぬる目のお湯に20分入る」ことで、深部体温は若干上がります。額にちょっと汗をかいてきたなーっていうのが、深部体温が37.5度を超えそうですよ、という合図です。その後寝る準備をしてるうちに体温が下がり始めてくると落差ができるんで、ぐっすりいい眠りが出来ます。

額から汗がダラダラ出てくる状態となると、深部体温が38度を超えてますよっていう合図です。熱いお風呂だと深部体温が上がり過ぎてしまって、時間を空けないとなかなか下がらないんで眠れなくなっちゃうんです。

赤ちゃんは眠たくなると、手足が暖かくなると言われていますが、あれは深部体温を下げるために熱を放出しているんです。なので、冷え性で手足が冷たいと深部体温の落差が生まれず、浅い眠りになってしまうんです。

ちょっと上げて、落差をつくってあげるといい眠りが出来ます。

いつもシャワーで済ませちゃうという方も、ちょっと気合いを入れて湯船にお湯をはってみましょう! バスグッズを揃えたりして、気分を盛り上げるのも手ですね。

次に食事ですね。
睡眠っていうのは部分的なことによって影響が出るのではなく、ずーっとつながっているんですよ。なので、眠れないという方は、夜の過ごし方だけではなくて、朝の過ごし方がダメなのかもしれない。

朝食には、1日のエネルギーを補給するっていう目的がありますよね。そしてもうひとつ、体内リズムを整えるという大事な効果もあるんです。

人間の体の中には「体内時計」というものがあって、その主時計は、目の裏の脳・視交叉上核ってところにあって、マスタークロックと呼ばれています。で、最近、末梢時計って言いまして、体の各臓器に時計があるっていうことが分かってきたんですよ。それが朝食を摂ることによって消化が始まって各臓器が動き、この主時計と末梢時計の時間をぴたっと合わせることで、脳と体がちゃんと起きて体内時計が整い、活発に動けるんですよ。

ーなるほど! てっきり食事とお聞きして、夜ごはんについてを想像していたんですが、朝ごはんが大事なんですね!

いえ、夜ごはんにも気を付けたいことはあります。夜ご飯は食べてから寝るまで3時間は空けていただきたい。胃の中に食べものが残ったまま寝ると、それがストレスの原因になります。ストレスって、交換神経が優位になる一番の原因なんですね。ですから、出来るだけ時間を空けてもらって、ある程度消化をした状態で寝ていただくのがいいです。その中でも、唐辛子なんか食べると体が熱くなるじゃないですか。そうすると深部体温がふっと上がって落差がまた出来るので、よりいいですね。唐辛子は熱しやすく冷めやすいんで食べ過ぎはよくないですが、深部体温を上げるひとつの方法として、そんなものもあります。

そして朝食では、「夜の睡眠ホルモン」と言われる「メラトニン」の原料になるものを摂った方がいいですよ。睡眠ホルモンが多く分泌されると、ちゃんと眠くなってくるんです。で、そのメラトニンの原料となるのは、「トリプトファン」と言う物質なんですね。それを朝摂ると、昼には「セロトニン」っていう感情のバランスを取ってくれる物質へと変化します。このセロトニンが少ないと、人はキレやすくなると言われています。それが夜には、メラトニンという物質に変わります。

このメラトニンは、体の中では生み出せないので、食物から摂らなきゃだめです。ですから、できれば朝食は、肉や魚類、卵、納豆や豆腐、豆類に乳製品などを摂ることをおすすめしています。ですが、いろいろ覚えるのも大変ですよね。なので和食に牛乳やチーズ、ヨーグルトをプラスということをなんとなく意識していただければいいかと思います。

ただ、皆さん忙しいですよね。こんなにちゃんと朝食摂れないよという方、たくさんいらっしゃると思います。そんな方は、プチトマトでもいいんです。プチトマトって栄養があるのもそうなんですが、皮があるので結構噛みますよね。それを3,4粒食べるだけでも何もしないよりは、ずっといいんです。

朝ごはんの理想は「和食+乳製品」。無理ならプチトマトでも! 各臓器を動かして時計を体内時計を合わせましょう。

ー理想のメニューはあるけれど、それに縛られなくてもいいと。自分なりの方法で、出来る範囲でいいのであれば、頑張れそうです。

朝忙しいし、食べなくていいやって方も多いと思うんですけど、こういう大切な働きがあるんだって分かれば、ちょっとでも何かしたいと思ったりするじゃないですか。栄養を補給するためだけの働きじゃないんですよね。朝食を摂ることで睡眠ホルモンが増えますから、自然と眠気がやってくる。と、つながっているんです。

ー他には、どんなことに気を付けるといいのでしょう?

照明ですね。夜になったら、暖色系の照明にされた方がいいです。そしてテレビや、パソコン、スマートフォンなんかは、見ないようにするのが理想です。

何でかって言いますと、蛍光灯や、テレビ、スマートフォンってブルーライトが出ていますよね。それが目に入ってくると、光が脳まで直接届いてしまうんですよ。そうすると、脳が朝って判断をしてしまうんですね。そうすると、睡眠ホルモンのメラトニンが抑制されてしまうんです。

ブルーライトの波長って、青空の波長と似ているんです。だから、朝のブルーライトはとてもいいんです。直接脳に届いて、朝だよって教えてくれます。体内時計って、24時間より少し長いと言われているんですが、朝日や朝にブルーライトを浴びることによって、それがちゃんとリセットされるんです。

ーそうなんですか。枕元にスマホを置いて、眠れないとき眠気がくるまで触ってしまいがちですが、それって悪循環なんですね。

そうなんです! ブルーライトって厄介で、光が強いんですよ。例えば、お布団の中でスマホを見るときって、画面が目から近いじゃないですか。ある距離からさらに半分近づけると、光は4倍の強さになるんですよ。距離の二乗に比例してくるんです。そうすると、夜これから寝るはずなのに、朝だと認識してしまうってことは、脳と体のリズムがずれますよね。それがひどいと、海外旅行で起こる時差ボケと同じような状態になってしまうんです。朝本来は動けるはずなのに、なかなか起きれなかったり、ぼーっとしたり、昼間すごく眠くなって、夜はなかなか眠れないという悪循環になってしまう。

ただ、いまスマートフォンを触りながら寝ている若い方かなり多いんですね。だからと言って、それを無理に止めようと思ってしまうと、それ自体がストレスになってしまう。そうなると交感神経が優位になっちゃって眠る体勢がつくれなくなってしまう。ただ、悪いんだってことを分かっていれば、1時間見ていたのを半分に減らしたりして、いい循環が生まれてくれば、眠気が勝って見たいとも思わなくなるかもしれません。そういうのでいいと思うんです。

ー何か出来ることから、ちょっとずつ整えるってことですね。

そして音や香りというのも、脳に直接働きかけてくるので、寝る前の環境づくりにはとても効果的ですね。川のせせらぎや波の音、森林の中で鳥がさえずるような自然音とかっていうのは、かなり心を落ち着かせてくれると言われています。そして心地いいと感じる香りやハーブティーなんかもいいですね。

寝室のベッド脇に、好みのアロマグッズを置いてリラックスできる空間をつくるのも◎

睡眠セミナーでは、皆さんにこの中で出来ることをひとつだけ見つけてくださいとお話しています。そのひとつだけをなんとか継続していって、いい変化が現れると、もっとやっていこうという気持ちになるんで、その時にまた他の方法も試してみてくださいと。あれもこれもといっぺんにはなかなか出来ないものですからね。

じゃあ何から始めればいいのか、と困った方には、無理をしないで出来そうなのものを選んで、どこかひとつ起点を設けて、そこからリズムを整えていきましょうとお伝えしたいです。私は、まず、朝日を浴びることからがおすすめです。