利便性がよく、魅力的な施設がすぐ近くにある都心でも手ごろな価格で購入できるなど、さまざまなメリットを持つ中古住宅。
でも、いざとなると購入に踏み出せないという方もいらっしゃるよう。その中には、「入居してから、隠れた欠陥(=瑕疵)が見つかったらどうしよう・・・。」と、戸惑う声が聞かれます。
いえいえ、心配には及びません。
なぜなら、瑕疵(かし)を無償で補修するための保険や、火災・地震のときの損害をカバーする保険などがすでに整っているからです。今回は安心・安全な中古住宅を選び、住み続けるのに役立つ、さまざまな保険や保証などをご紹介していきましょう。
住宅瑕疵担保履行法は新築も中古も保証?
新築住宅は建物に瑕疵が見つかったら、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」、通称、住宅瑕疵担保履行法に基づいて、供給した建設業者や宅建業者などの事業者が補修などを行うよう定められており、住宅の構造耐力上で主要な部分や、雨水を防止する部分に、事業者は10年間の瑕疵担保責任を負っています。そのため、新築住宅を供給する事業者には、保険加入や供託が義務付けられていて、その資金で補修などを行うわけです。事業者が倒産していても、買主は保険会社から直接2000万円までの補修費用を受けられます。
一方、中古住宅はこの法律では瑕疵担保責任の対象ではなく、瑕疵の保証期間は売主によって異なります。売主が宅建業者の場合は、宅建業法上の義務に対応して保証は2年間。個人間売買の場合は、民法の規定が適用され、買主が瑕疵に気付いた時点から1年以内であれば損害賠償請求、あるいは契約解除を請求できるとしています。しかし、民法は強制ではないので、一般的な中古住宅の瑕疵担保責任の期限は引き渡し後1~3か月程度とすることが大半。個人間売買とは、宅建業者は仲介のみ行い、元の所有者(個人)が売主の場合を指します。
中古も既存住宅売買瑕疵保険で補修が可能
でも、心配はご無用。新築住宅と同様に保証を付けたいときには、『既存住宅売買瑕疵保険』を利用する手があります。
被保険者は買主ではなく、売主である宅建業者や対象物件の検査事業者です。物件が買主に引き渡された後、瑕疵で生じた欠陥を補修や賠償した場合に、事業者に対して住宅専門の保険会社から保険金が支払われる仕組み。事業者が倒産したときは、保険会社から買主に直接保険金が支払われます。注意したいのは、売主によって被保険者が異なるということ。
売主が宅建業者の場合は宅建業者自身が保険に加入します。買主は、物件の売買契約前に、売主に対し保険に加入してもらうよう依頼しましょう。一方、売主が個人の場合には、物件が保険加入の基準に適合しているか検査を行った検査事業者が保険に加入します。買主はこの検査事業者を、保険会社のホームページに掲載されているリストから選びます。買主は売主にあらかじめ、保険を利用したいことや売買契約前に物件の検査が必要なことを伝えて了解を得ておきましょう。
また、中古住宅を買ってリフォームする際に利用するための、『リフォーム瑕疵保険』も用意されています。こちらは、発注者はリフォームする住宅のオーナーなどですが、被保険者はリフォーム事業者。工事後に欠陥が見つかった場合、保険会社から事業者に費用が支払われるので、発注者は無償で補修することができます。ただし、被保険者は保険会社への事業者登録が必要。ですから、発注者は保険会社のホームページなどから登録業者を探して、リフォーム工事と保険の加入の双方を依頼します。未登録のリフォーム事業者に依頼したい場合は、まず保険会社への登録を相談してみましょう。
この保険ではリフォーム工事の施工中や工事完了後に、建築士の資格を持つ検査員が保険適用の可否について検査を行います。これによって、施工の質が向上するという副次的な効果も期待できそうです。
火災や地震での損害も保険でフォロー可能
火災や地震などのときの強い味方が、火災保険や地震保険などの損害保険です。万が一損害を受けても、保険金を活用して迅速に住宅の補修をすることができます。
中古か新築かという違いが、直接、保証内容に影響することもありません。というのも、住宅に掛けられる「保険金額」、つまり損害が生じたときに支払われる建物の保険金の上限がいずれも同様に「新価」に基づくためです。新価の算出は、いずれの場合も保険会社か代理店が行います。
新価とは、その建物を再築あるいは再購入するのに必要な金額のこと。新築して間もなくの戸建ては、建築費がそのまま新価になります。中古の戸建てでは「年次別指定法」で新築時にかかった金額から現在の建築費を推定します。もし、新築時の建築費が不明なら、「新築費単価法」を用い、構造と立地に沿った新築費単価×延床面積で現在の建築費を出します。建売住宅の場合は、建物のみの金額が該当する点に注意しましょう。
区分所有のマンションは、分譲価格は新価に当たりません。その価格には地代や共用部分の建築費が含まれているからです。そのため、新築費単価法から新価を推定します。
一方、地震保険は、火災保険では対象にならない地震、噴火、津波などでの損害を補償するもの。火災保険とセットでの加入が要件です。契約金額は火災保険の30~50%以内で、建物は5000万円、家財は1000万円が上限。保険料は新築か中古かではなく、建物のある地域と建物の構造で決まります。
安心・安全な中古住宅を選ぶ基準
住宅としての基本的な設備や耐震性を備えた物件かどうか、参考になる基準もあります。物件探しのときに、チェックポイントに加えるといいでしょう。
・適合リノベーション住宅
『適合リノベーション住宅』とは、一般社団法人リノベーション住宅推進協議会が定める優良なリノベーションが施された中古住宅のこと。同協議会では、リノベーションを表面的な変更ではなく、機能や価値を再生するような改修や、暮らしに対処した包括的な改修と考えています。その中でも、協議会の技術基準に基づく品質確保などを伴っているものを優良なリノベーションとし、統一規格を定めました。具体的には、「検査→工事→報告+保証+住宅履歴情報」の一連のフローに則り、品質基準に適合する既存住宅を適合リノベーション住宅としています。最低2年のアフターサービスも要件なので、快適に住み続けられる物件の目安にしていいでしょう。
現在は、集合住宅の「区分所有マンション専有部(R1住宅)」、「一棟建物(R3住宅)」のほか、「戸建て住宅(R5住宅)」の3つのカテゴリーでそれぞれ統一規格が定められ、全国に適合リノベーション住宅が普及しつつあります。適合した買取再販などの物件を探すなら、同協議会のホームページ(http://www.renovation.or.jp/bukken-list/)が便利。また、適合したリノベーションを行いたいときは、同協議会の正会員(登録リフォーム事業者)の中から、居住地付近など条件に合うリフォーム会社を選ぶこともできます。
・耐震基準適合証明書
「中古住宅は耐震性能が心配・・・。」という方にチェックしてほしいのが、『耐震基準適合証明書』です。この証明書を取得した物件は、耐震診断を行い一定の基準がクリアされているもの。すでにリフォームが施されている買取再販物件の場合でも、この証明書が付保されていれば耐震性能は問題ないと考えていいでしょう。
耐震基準適合証明書を取得すると他にもメリットが生じます。代表的なのは、要件の築後年数をオーバーした物件でも、住宅ローン減税を利用できるようになること。住宅ローン減税の要件は、通常は木造などの非耐火住宅で築20年以内、マンションなどの耐火住宅で築25年以内です。他に、登録免許税や不動産取得税の減額、固定資産税が1/2、地震保険10%割引などが適用されます。ただし、個人間売買でこの証明書を取得する場合、手続きに一定の順序やマナーがあるので注意を。手続きの順序や必要書類を熟知している、不動産仲介会社などに相談するとよいでしょう。
手続きの流れは主に2種類。ひとつは引き渡しまでに売主に証明書を取得してもらい、その物件を購入すること。引き渡しまでに耐震診断を実施し、現行の基準に満たなければ改修まで完了させるので売主との調整が必要です。もうひとつは、引き渡しまでに証明書の仮申請を行い、引き渡し後に買主が耐震診断や改修を実施するやり方。入居までに改修を済ませ証明書を取得しておきます。なお、後者は登録免許税の減額は対象外です。
保険や保証を活用すれば、中古も新築と同様に安心して購入し、住み続けることができます。自分や家族にとってベストの住まいを、中古・新築を問わず広い範囲からじっくりと探してみましょう。諦めかけていたあの憧れのエリアで、マイホームが見つかるのも夢ではありませんよ。
構成・文:介川亜紀/イラスト:cowcamo