家の大きな面積を占める "壁"から広がるお部屋の表情。今回はインテリアペイント『PORTER'S PAINTS(ポーターズペイント)』をご紹介するにあたり、PORTER'S PAINTSの日本の総代理店である株式会社NENGOさんにお話を伺ってきました。ペイントの魅力、そしてペイントを通して提案する「100年後」の日本の家づくり・まちづくりに残るような暮らしのかたちとは何なのでしょうか。
毎日を過ごす空間は、自分らしく心地のよい場所にしたい。そう思う方は多いのではないでしょうか。居心地のいい空間づくりにこだわるならば、家の大きな面積を占める "壁" に、あなたの家だけの表情をつくってみませんか。
今回ご紹介するのは、オーストラリア生まれのインテリアペイント『PORTER'S PAINTS(ポーターズペイント)』。
このPORTER'S PAINTSの日本の総代理店である株式会社NENGO(以下、NENGO)のオフィス・工房におじゃまし、PORTER'S PAINTSを取り入れた家づくりの魅力についてうかがいました。
お話を伺ったのは、PORTER'S PAINTS SHOPの店長をつとめる山口円さん。穏やかな表情で語られる山口さんからは、日本にもペイントをもっと普及させたいと言う熱い気持ちが伝わってきました。
日本の家づくりを見直したら見えてきた、ペイントの魅力
株式会社NENGO(以下、NENGO)は、耐火・断熱工事、不動産マーケット、そしてリノベーションなど幅広い事業を展開しています。その中で、オーストラリアからPORTER'S PAINTSを取り入れた背景には、NENGOの家づくりに対する強い想いがあったようです。
創業時から行ってきた断熱工事を手掛けるなかで、NENGOは日本の建物が20年〜30年で壊されていくのを残念に感じていました。建てては壊して、街が変わっていってしまう日本の文化に対して、建築に携わる会社として何かできることはないかと考えたところ、海外の家づくりにヒントがあったんです。それは、お父さんがするような日曜大工。
海外の人は、自分で手を加えてメンテナンスすることで家の付加価値をつくり、住み継いでいく文化があります。でも、日本では自分で手を加える機会がなかなかない。そこで、住む人が愛着を持って暮らせるようなきっかけ作りができないかとNENGOは考えました。(山口さん)
家族の歴史を刻むように、暮らし方に合わせて色を塗り重ねていき、住まいへの愛着につながるもの、それが "ペイント" だったそうです。
株式会社NENGOショールームの素敵な内装。エントランスを入ると、ペイントで塗り重ねられた表情豊かな壁にうっとり。写真左奥はスタッフの皆さんが働くオフィススペース。
世界中を探して見つけた、PORTER'S PAINTSとは。
PORTER'S PAINTS創業者の祖父であるフレッド・ポーターは、ヨーロッパの建造物に造詣が深く、仕事を通して伝統的な味わい深い塗料の魅力を研究し、伝統的な塗料の作り方を何冊もの日記に残していました。ポーターが亡くなって少し経った頃、それを見つけた孫である創業者のピーターが、世に出さなければという使命感から、最新の技術を融合させて作ったのが現在のPORTER'S PAINTSなんです。(山口さん)
そんな背景によって生まれたPORTER'S PAINTSを選んだ、注目すべき理由のひとつは、例えばローラーでペイントを塗ることでは出せない “質感" を表現できるということでした。
テクスチャーによって生まれる “壁に反射した光の表情や陰影" を大切に考え作られたペイントは、質感は10種類以上あり、同じ色でも表現できる幅が広がります。
たとえば、「ストーンペイントコース」。コースとは "粗い" という意味で、その名の通り粗めの石英が入っています。左官の塗り壁のような仕上げですが、ナチュラルすぎないモダンな感じも出せるのが特徴。初めてトライする方も、この質感が出せるのでテクニックいらず。
こちらは、塗料の中に大理石の粉末が含まれており、マットで落ち着いた空間になる「ストーンペイントファイン」。光に当たるとなめらかな表情になるのが人気のポイント。
ショールームの一角。この壁に塗られたペイントは、すべて同じ色ながら、テクスチャーの違いで壁に異なる表情ができています。
PORTER'S PAINTSの色の種類は約300色弱。色には強いこだわりがあり、大量生産ではなかなか出せない絶妙な色を揃えているそう。
驚いたのは、すべての色に番号ではなく「名前」が付いていること! しかも、ラビアンローズ(バラ色の人生)や、ビーズニーズ(ハチの膝)、パンナコッタ、ドンキーグレーなど、個性派の名前がズラリ。カラーカードを見ているだけでも楽しく、ワクワクしてきます。
左上・1階の工房には、顔料やカラー見本が並びます。/右上・輸入した塗装のベース。ペイントの種類(質感)ごとに輸入し、お客さまのご注文をいただいてから、日本で顔料を混ぜて提供されます。/左下・16種類の顔料からお好みに応じて調色し、オリジナルの色も作れます。/右下・色は選びやすいよう見本も充実。同じ色味でもかなりの種類があるんですね!
色で悩まれるお客様は、気に入った名前で選ばれることがあります。美味しそうな名前もあるので、みなさん楽しみながら選ばれていますよ。(山口さん)
山口さんは、季節やトレンドによって選ばれやすい色や質感に傾向があると言います。
夏は、爽やかな色が人気で、冬は逆に重厚感のある色が選ばれる傾向があります。質感の流行は年によって違いますが、今年は光沢がでるようなものや、2色重ねて濃淡を出す表情が人気。冬は石灰が入ったマットな質感が人気です。有名物件に使用された色を見たお客さまが、こんな風にしたいとオーダーされることも多いです。傾向はありますが、お客さまにはまずはお好みで選んでいただいています。(山口さん)
必ず人間の手を加える「ヒューマンメイド」へのこだわり
PORTER'S PAINTSは一缶一缶、自然由来の顔料を使い人間の手で調整を加える「ヒューマンメイド」。例えば、ひとつのベージュを作る時にも、レシピに沿った丁寧な工程を経ています。
左上・ハンドメイドで作られた色見本。今回は一番上の明るいベージュ「RUBBLE」の調色を見せていただきました。/右上・「RUBBLE」の色構成は、なんと4色。茶色、黄色、青を顔料に混ぜていくと、自然なベージュができあがります。/左下・石英が入っており、もったりとした質感。/右下・色に差異が出ないよう、乾燥させてから必ず目で見て確かめます。
注文を受けて作ったペイントは、日付とお客様の情報とともに保管されています。もし「3年前に塗った壁に傷が付いたので補修したい」と言うお客様からの依頼があれば、3年前のデータをもとに同じ色を作ります。1日に10〜30色ほど作るそう。
たとえ過去と同じレシピで作っても、自然由来の素材を使っているので色に差異が出ます。そのため色を目で見て、しっかり調整するそうです。
生活の中で感じる "表情の変化" が最高に楽しい!
日本人に特に人気の高いグレイッシュなカラーでペイントしたリビング。「空間への光の入り方や色の条件で壁の表情が変わるので、そういった変化をお客様は楽しまれますよ」。(山口さん)。(設計:カガミ・デザインリフォーム、プロデュース・施工:NENGO)
PORTER'S PAINTSは、床材や家具に合わせたペイントの提案をしており、自然にフィットする仕上がりがお客様の満足度が高い理由。朝昼夜で色の変化が楽しめ、空間が豊かになります。
実際にPOTER'S PAINTSを使用されたお客様の中には、暮らしてみたらとても快適で、他のお部屋も塗りたいと希望される方が多くいらっしゃいます。ペイントは塗り重ねができるのがいいところ。成長に合わせて子ども部屋をスタイルチェンジするのもおすすめです。(山口さん)
ワークショップで「セルフペイント」を体験!
PORTER'S PAINTSは、塗り方を学びご自身でペイントするセルフペイントと、PORTER'S PAINTSを熟知した専門の職人の方に施工を依頼する方法があります。
セルフペイントの場合は、ワークショップを通してペイント方法のレクチャーを受け、自分の手を実際に動かして体験します。
ここにも "人の手を介して販売したい" というピーターのヒューマンメイドへの思いがあります。それに、壁は毎日見るものなので、質の高いペイントで美しく仕上げて欲しいと私たちも思っています。実際の色を見て実践してもらうことで、仕上がりには大変ご満足いただいていますよ。(山口さん)
そんなワークショップにcowcamo編集部も潜入してきました!
ワークショップに参加されたご夫婦の体験シーン。養生から下地材の塗り方、ペイントの方法までを教わり、実際にペイントに挑戦! ペイント経験があるご主人が奥様をサポートし、コミュニケーションをとりながら楽しまれていました。
使用する刷毛(はけ)は、PORTER'S PAINTSが探し抜いた、イタリア製のもの。いのししの毛を枝毛加工することで壁にスムースにペイントを滑らせることができ、こしもあって塗り心地がよいと職人の方の間でも評価が高いそうです。
筆者も体験してみたところ、ドロっとした重みがあるペイントも、刷毛を動かしてみると予想以上に滑りがよく、すぐに壁になじみました。
いろいろな方向に刷毛を動かしてざっくりと塗ることで、空間に奥行きが出て、光の表情もきれいに出るそうです。石灰の白く浮き出た質感や色むらなども、乾燥してみて初めて分かります。
もっとペイントが選ばれる暮らしをつくりたい
山口さんは、ペイントによって、その後の暮らしに対する感性が豊かになると言います。
お客様の中には、ご夫婦や家族でのコミュニケーションが増え、会話に深みが生まれたという方もいらっしゃいます。例えばリビングや寝室をどのような色にするか、奥様とご主人で「こういう雰囲気にしたい」など、それぞれの想いを会話の中で楽しみながら、色を選ばれることも。
家づくりを通してコミュニケーションにも変化が生まれた、なんて声は特にうれしいです。また、家具選びや家のアレンジが楽しくなったという方も多いですよ。(山口さん)
エントランスを入ってすぐのオープンシェルフには、社員ひとりひとりの顔写真がディスプレイされ、温かな空気が。
家づくりにおいて、壁はこれまでクロスを選択することが一般的だったかもしれません。でも、壁は家で一番広い面積を占めるので、空間に雰囲気が出せるんですよね。これからもっと「ペイント」という選択がしやすくなればいいなと思っています。
「壁一面」に生まれた愛着が、家全体への愛着へつながって、そんな愛着を持った人が増えていくことで、やがて広く街全体へ波及し、それが100年後にも残したい街づくりにつながっていくのだと思います。(山口さん)
日本のその地域らしさ・風土を見直しながら、「100年後」の日本の家づくり・まちづくりに残るような暮らしの提案をしたい。そんな想いで、これからもペイント事業にも力を入れていくというNENGO。 "NENGO" という名前にも、そういった意味が込められているそうです。
取材・文:本田里奈子/撮影:cowcamo