気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の暮らしぶりを「街の先輩」に聞いてみました! 「街の先輩に聞く!」、 第9弾は「広尾」です。


外国人の姿も多く見受けられ、インターナショナルで少し敷居の高いイメージのある街、広尾。六本木や渋谷など大都市に囲まれながらも独特の落ち着いた空気が流れるこの街ですが、広尾に住んでいる人は一体、どんな暮らしをしているのでしょうか?

住民の日常生活を覗いてみようと、記者は50年以上前からこの街の食を支えてきた国際的なスーパーマーケット「ナショナル麻布スーパーマーケット」に潜入。「買い物」という切り口から広尾の人々のリアルな「日常」の姿を探ってみようと、買い物中の方々に「カゴの中身を見せて下さい!」とお願いしてみました。

こちらが、ナショナル麻布スーパーマーケット。広尾駅から徒歩3分のところにあります。

■突撃! 今日のディナーはなんですか?

スーパーに入ると、異国の香りが漂い、海外の商品がずらりと並ぶ店内に、他の国のスーパーマーケットへ入ってしまったのか? と戸惑ってしまうほど。

圧倒される気持ちを振り切り、さっそく買い物中のお客さんに、カゴの中身を聞いてみました。

すみません、突然ですが、何を買っているのか見せてもらえませんか?

すると男性は笑顔で「いいですよ、今日はお肉を買いに来ました」と、カゴの中身をこちらに見せてくれました。

アメリカ出身で、今はバリバリ働く奥様を支える専業主夫をされている、というこちらの男性が買ったのは、牛の頬肉。この牛の頬肉はこのナショナル麻布でしか売っていないそうです。「今夜はこの肉を、圧力鍋で赤ワインと一緒に煮込みます。これが祖国の家庭の味なんです」と、笑顔で話してくれました。

続いて・・・。

「今日のディナーは、タコスにする予定です」と話してくれたのは、友達と一緒に来ていたこちらの女性。他にもディップやワインなどを購入していました。

日本人の方にも聞いてみました。こちらの女性は、年末に行った海外で試した離乳食を、赤ちゃんのディナーとして購入。「日本のものより果物の種類が豊富なところがお気に入りなんです」と話していました。

広尾に住む人々の「カゴの中身」をのぞかせてもらった結果、国際的で、料理や食事の時間をゆったりと取り、家族や友人とお家で過ごす時間を大切にするーーそんな広尾の人々のライフスタイルが、垣間見えた気がしました。

■国籍に縛られない暮らしを楽しむ

30年以上前からこのスーパーマーケットで働いている、副店長の寺沢正男さんは、広尾には海外の行事や国籍を超えた交流を楽しむ住民が多い、と話します。

お話を聞かせていただいた、副店長の寺沢さん。お客さんとの思い出話をたくさん聞かせてくださいました。

うちのスーパーはお客さんの滞在時間が長くて、色んな国籍の方が待ち合わせたり、お喋りしたりしているんです。2階には個人が情報を発信するための掲示板もあるので、コミュニティのハブみたいな機能も担っているのかな。そこでも日本人を含め、いろんな国の方が交流しているのを見かけます。

敷地内にはお花屋さんもあり、多くの人で賑わいます。

BULLETIN BOARD = 掲示板。いろんなお客さんが自由に貼った、求人情報やお知らせが。

商品も、ワインやチーズ、エスニック調味料など海外の方に向けたものの売れ行きがいいそう。お店では、イースターやハロウィン、サンクスギビング、クリスマスと、海外の行事にも力を入れています。

ずらりと並ぶワイン。

数え切れないほどのたくさんのチーズが並びます。

サンクスギビングのときは一匹まるまるのターキーを多めに販売するなど、他のスーパーではなかなか買えない、行事にちなんだ商品を売っています。イースターのときは、卵を隠すイベントを開催することもあります。日本の方もこの辺りは海外生活が長かった方が多いから、海外の行事も同じように楽しまれていますね。

ターキーは実はサンクスギビングの時以外でも年中入手可能です。

お客さんの6割以上は外国人というこのスーパーマーケットの特色は、そのままこの広尾の街の特色でもあります。広尾から麻布へ抜けるこの近くのエリアには、フランスやドイツなど大国の大使館が集中しています。その影響もあってか街には外国人の姿が多く、チェーン店にも英語の看板が掲げられています。この日のお店の外にはフードトラックもあり、さまざまな国籍の方が集まっていました。外国人だけでなく、国籍を超えた繋がりを求める日本人にもまた、広尾は住み良い街であるようです。

広尾駅近くのCoCo壱番屋にも英語の看板が。

この日のお客さんには、道を挟んで向かいにある、有栖川宮公園でランニング中と思われる方々の姿も。

■お気に入りの一軒を自分で探す楽しみ

国際色豊かなこの街を好むのは、お客さんだけではありません。寺沢さんは、街に出店するお店側にも「出店しやすい土壌がある」と話します。

ナショナル麻布スーパーマーケットの前にある、サーティーワンアイスクリーム。

実はここのサーティワンアイスクリームは日本でのフランチャイズ1号店なんです。この辺りは海外の文化、生活様式を持ってきたようなお店が出店しやすい土壌があるんだと思いますね。駅前の通り(外苑西通り)を隔ててこちら側と向こう側ではまた雰囲気がかなり違って、向こうは昔からの商店街になっているんですけど、そちらにも新しいお店がよく生まれていますね。

広尾駅周辺を南北に走る外苑西通り。MEIDI-YAの右横の道は「広尾散歩通り」と呼ばれている。

広尾駅周辺は、外苑西通り沿い、西側の広尾商店街方面、東側のナショナル麻布方面の、どちらに行っても多くの飲食店があります。なかでも昔ながらの商店街であり、親しみやすい下町っぽさも残る広尾商店街は、今ではすっかり定着したフレンチフライ専門店「AND THE FRIET」や、昨年オープンした食品メーカープロデュースのお肉屋さん「NICE TO MEAT YOU.KODAMA」など、時代の先端を行く面白いお店が常にオープンしているエリア。大きな駅ビルでは体験できない、国際色豊かなお気に入りのお店を探求する楽しみを味わうことができます。

フレンチフライ専門店「AND THE FRIET」

食品メーカープロデュースのお肉屋さん「NICE TO MEAT YOU.KODAMA」。

■都会にありながら、暮らしやすさを追求できる

30年以上、広尾で街の変化を見続けている寺沢さん。広尾にはインターナショナルスクールも多く「ファミリーにとってもいい環境」だと話します。

広尾の象徴のひとつ、ヴィンテージマンション「広尾ガーデンヒルズ」。この中にも実はナショナル麻布の別店舗があります。

住む人が増えていると感じます。マンションが多くなったというのもあると思いますが、やっぱり広尾は住みやすいのかな。特にこちら側の麻布方面は住宅街なので静かですし、治安もいいです。

中心地に囲まれた広尾エリアですが、電車は日比谷線一本しか通っていないせいか、人もそれほど多くなく、ゆったりとした雰囲気が流れています。新宿・品川・渋谷などへは都営バス、六本木・麻布十番へは港区のコミュニティバスが通っており、アクセスのよさも兼ね備えています。

有栖川宮記念公園や都立中央図書館などもあるため、日中はお散歩する子どもたちや高齢者の姿も目立ちます。都会にありながらも人の生活する風景が見えるところが、周辺の街とは違う魅力になっていると言えるでしょう。

有栖川宮記念公園の様子。

東京五輪へ向けてさらに多国籍な街に

国際的な環境の中で人々がゆったりと生活を楽しむ街、広尾。これからの広尾は、どんな街になっていくのでしょうか。

新しく住む方はさらに増えていくと思います。東京オリンピックもありますし、日本人と外国人との共存共栄がさらに深まっていく街になると思います。

2020年の東京五輪へ向けよりインターナショナルな都市へと進化していく東京。広尾はまさに、そのモデルとなる街と言えそうです。

<ナショナル麻布スーパーマーケット>
住所:東京都港区南麻布4-5-2
営業時間:08:30〜21:00 (年始のみ休業)
ウェブサイト:http://www.national-azabu.com/


■この街で暮らしたいと思ったら

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